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以下、文章化したものです。
今日お話しするのはキヤノンについてです。
キヤノンが2021年の業績予想を上方修正しました。
これを受けてキヤノンの株価は上昇しています。
果たしてキヤノンの株価や業績はこれからも伸びていくのでしょうか。
上方修正の理由
まず何が起きたのかというと、業績と配当の予想を上方修正しました。
企業は決算のタイミングでその期の業績がこれぐらいになるということを、決算短信で発表します。
キヤノンは12月決算なので12月決算の3ヶ月前ぐらいにこの予想を発表していたのですが、今第1四半期が終わったところでその予想をさらに上に引き上げるということを言いました。
その内容というのが、売上高が3.4兆円から3.5兆円になり、これが2.9%増、それから営業利益が1585億円から1980億円、これが24.9%増、そして配当が前期と80円から90円に引き上げるというような発表をしています。
この背景には、以下の3つのような要因があります。
一つは家庭用プリンターの需要があったということです。
在宅勤務が増えてきて、オフィスに出向かなくなりました。
一方では一部の書類は紙に印刷しなければならないということがあるので、在宅勤務の中でもプリンターが必要になってきます。
そのプリンターの需要が伸びているということがあります。
二つ目はミラーレス、つまりカメラです。
遠くに出かけられなくて身近出来る趣味としてカメラを始める人が多く、また、インスタグラムなどでより良い写真を撮るために、スマホよりも本格的なカメラを使う人が増えています。
三つ目に、実はキャノンというと半導体の製造装置という物も持っています。
今世界中で半導体が足りないという風に言われているので、これを作る半導体露光装置というものをキヤノンの技術を使って持っているのですが、これが市況によって伸びると想定している訳です。
これを受けまして株価が上昇しています。
10月頃に一時は1600円台というところだった株価は、その後上昇を続けまして、決算を受けても上昇しています。
直近でいうと2618円ということで、この半年で大きく上昇してきた銘柄ということになります。
ペーパーレス化で打撃!オフィスプリンターの需要減を補うものは…?
この流れを見るとコロナで厳しいというところはありまして、そのタイミングで減配なんかも行われたりして踏んだり蹴ったりだったのですが、そういった状況から回復していよいよ再び成長軌道に乗るのではないかという風にも見えます。
ところが状況そう簡単ではありません。
私達は長期投資を行っているので、あくまで目先の話ではなくてもっと長いスパンでの話、業績や株価の推移を考えなければなりません。
そういった観点で見ますと実はこの10年の株価は右肩下がりと言っていいのではないでしょうか。
元々は4500円とか4000円とかそれぐらいの株価あったものが、今2700円というような数字です。
一時期よりは上がったにしてもやはり右肩下がりになっています。
この理由というのが業績にあります。
こちらは営業利益の推移ですが、営業利益7700億円あったところが、今や2000億円程度ということで、右肩下がりというのは間違いありません。
直近も最悪だった2020年12月期からすると、上がったとはいっても2019年のレベルに戻ったにすぎないというところなのです。
すなわちキヤノンの業績というのは長期的に見て衰退を続けています。
それが今回の決算を受けて解消されたのかというと決してそんなことはありません。
例えばその要因にあります家庭用プリンターの需要があったということですが、そもそもの問題はオフィス用プリンターの需要が減少しているということです。
オフィスに行って紙を印刷してきたのですが、今やそれをタブレット1台で完結出来てしまうというペーパーレス化が進んでいる訳です。
特にこの部分が大きくてキャノン利益の推移は2021年度今期の予想を見ますと、その利益のほとんどはこのプリンター事業で実は稼いでいます。
この事業というとまさにキヤノンが切り開いてきた事業でしかもかなり儲かります。
売上高は減少を続けているといっても利益率としては10%ぐらい、要するに一度設置してしまえばあとはキヤノンがどんどんインクを補充することで、そのインクでものすごく儲けられる訳です。
しかし今後オフィスそのものがあまりに使われなくなってしまうと、当然オンラインやデジタルの管理というのがやりやすいということになってきますし、またオフィスに出勤するにしても、お客さんに資料を見せる時にはタブレットの方が速いということにもなったりします。
したがってこのプリンターというのはやはり衰退を続ける可能性が高いです。
カメラについても、一時は簡単なコンパクトデジカメみたいなものが、全部スマートフォンに取り込まれて厳しい状況が続いていたのですが、そこは一段落して今はむしろより良い写真を撮るためにはデジタル一眼だったり、ミラーレス一眼だったりそういった物を持たないといけないということで、その需要というのは安定してきてはいます。
しかし増えるというものでもないので、そこでキヤノンが力を入れているのは監視カメラです。
監視カメラ市場は安定成長が続いているので、監視カメラ企業を買収するなどして成長はしています。
あとは医療です。
MRIなどのシステムなのですが、東芝メディカルという会社を買収して、ここも今利益の10%を占めるところまできています。
こちらも安定成長ということで伸びてはいるのですが、一方ではこのプリンターの衰退というのは急速に進んでいるので、これらの成長で補い切れるかというとそれほどではないというのが私の見解です。
また産業他とありますが今半導体の需要が伸びているということですが、これは正直水物ですから振れ幅が激しいということになります。
したがっては長期的な成長という意味ではまだまだ物足りないということになります。
以上の分析からキャノンを長期投資の観点で見るとするならば、まずはこのオフィスプリンターの衰退にどこまで抗えるかということです。
今現時点で医療や監視カメラは安定成長事業としてやっていますが、衰退を補うほどにはまだ至っていないというのが現状です。
そして半導体は市況の影響が大きいので安定的に伸ばし続けるというものではありません。
現時点で屋台骨の衰退を補うには至っていません。
直近で業績が伸びたというのもたまたまオフィスプリンターが家庭用プリンターに移ったり、あるいは巣篭もりでカメラの需要が伸びた、半導体の市況が良かったというところではありますが、長期的に継続するかどうかということを考えると必ずしもそういうものではない事業ということになります。
そもそも業績そのものを見ても1年前が酷かったにしろ、2年前に戻ったにすぎないということです。
長期的な視点で見ますとをやはりまだオフィスプリンターの衰退に対する解決策というのは見つけきれていないというところではないかと思います。
イノベーションのジレンマから抜け出せるか
そしてその株価ですが、とはいえオフィス用プリンターは全く無くなるものではないでしょうし、カメラなんかも比較的安定はしています。
では株価が割安だったらいいのではないかというところなのですが、今この業績を上方修正したところに対して、PER20倍というところです。
過去の推移から見ますとキヤノンのPERは18倍ぐらいが平均的です。
すなわち高い業績予想に対して18倍を上回っているところなので、やはり業績の衰退を長期的に補えないと考えると、やはり割高という印象が否めません。
そして必要なのは次なるM&Aなどでしょう。
一方ではいくつかの会社を買収したりして、一時は1兆円ぐらいあった現金も、今は4000億円くらいになっています。
手持ちの現金でやるということはどんどん難しくなってきますし、一方では勝負をかけようと思ったらその時には借り入れを起こしてでもやる必要がありますが、その能力というのは経営者の能力にかかってくるということになります。
そして私が判断するとすれば悪い会社ではありませんが、大胆な変革、大きなM&A、あるいは過去の成功に囚われずに全く新しい事業を始めるということでもなければ、投資妙味は見出しにくいです。
これと対となるのが富士フィルムです。
富士フィルムはフィルムとかカメラの事業が厳しいという風になった時に、じゃあということで医療とか化粧品とかそういった分野に乗り出して、今ではそちらの方が稼ぎ頭となりつつあります。
この稼ぎ頭を変えるという心意気が無ければキャノンの成長というのはなかなか見出しにくいというのが長期的な考え方としてはあります。
何より衰退と言いますけれどもキヤノンという会社自体は世の中には求められているのですから、いかんせんプリンターでの成功が大きすぎたが故に、そこから次へ踏み出せていない、イノベーションのジレンマとも言うのですが、そういったところにハマってしまっているというのがキヤノンの現状です。
目先の株価とかそういったことは分かりませんけれども、長期的な観点で持ち続けられるかというと、必ずしもそうではないというのが私の判断です。
投資はこういった冷静な分析が求められるところで、決して株価の動きだけで判断するものではないということです。
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かつて、持っていて高配当を頂きました。
増やして財産株にしたいとも思いましたが、今一歩心引かれませんでした。
プリンター高性能ですが、壊れやすくアフターサービスもあまり宜しくなく、がっかりしたのも、会社に対する失望になったかもしれません。
時が来ましたら、投資顧問の戸を叩く時が来ると思います。
栫井さんの分析力に納得します。
コメントありがとうございます。
その時が来ましたら、よろしくお願いいたします。