資生堂 ドルチェ&ガッバーナ(D&G)・TSUBAKI撤退の真意!【ニュース×投資脳#04(2021 04 30)】

YouTubeに動画をアップロードしました!

以下、文章化したものです。

 


資生堂がドルチェ&ガッバーナとのライセンス契約を、今年限りで終了するというニュースが出ました。

実は資生堂は今年の2月にもTSUBAKIとかunoに代表されるパーソナルケア事業を売却しています。

このような動きだけ見ると、資生堂は苦しい状況にあるのではないかと見えますが、その真意は別のところにありました。

苦しいわけではない?選択と集中の一環

資生堂が4月の28日に発表したことですが、ドルチェ&ガッバーナとの契約を今年いっぱいで終了するという発表をしました。

資生堂とドルチェ&ガッバーナあまり結びつかない方も多いのではないかと思いますが、ライセンス契約を結んでいまして、資生堂がここの商品の製造とか、マーケティングを担当していました。

資生堂は欧州事業に関してはこのドルチェ&ガッバーナを主力として、かなり大きなお金をかけてマーケティングを行っていました。

しかしこれは正直あまり実を結ぶものではなかったので、撤退するということになってしまいました。

日本では瑛人のあの歌が流行って一躍有名になりましたが、必ずしも事業としては上手くいっていなかったということになります。

またこの少し前の2月にはパーソナルケア事業、TSUBAKIとかunoとか専科など皆さんにもお馴染みのブランドを外資系のCVCファンドに売却していました。

この金額が1600億円です。

これだけ見ると資生堂は経営苦しいのかなという風に見えますが、実際に2020年の12月期は116億円の最終赤字をを記録しました。

もちろんこの期はコロナ真っ只中ですからやむを得ない部分はあるのですが、財務的に苦しいという推測が出来ます。

実際この業績の推移を見ると直近では大きく下がって、売り上げがおよそ20%、営業利益は何とか黒字を保ったのですが、最終赤字というような形になっています。

ところが少し前の業績に戻ってみますとこの2016年から2017年、2018年というところにかけて、営業利益がおよそ3倍というところにまで一気に伸びています。

実は資生堂はコロナがあるまでの業績は絶好調でした。

その理由というのがかなり明確です。

これが2018年12月期の決算説明資料からの抜粋なのですが、ここにある通り日本、中国、それからトラベルリテールというセグメントで大きく業績を伸ばしています。

それぞれ何なのかというと日本はインバウンドがかなりを占めています。

この時期皆さんも記憶にあるかもしれませんが、外国人観光客がどんどん日本の百貨店なんかを訪れて、化粧品を爆買いしていた時期です。

これで資生堂は大きく儲かりました。

さらにはトラベルリテールというのが何なのかというと免税店です。

日本の免税店は日本事業のところに入っているのですが、このトラベルリテールは日本以外の免税店ということになります。

ここで日本を訪れない海外旅行をした中国人というのも、免税店ですから色んな税金がかからなかったりするので、そこで資生堂は積極的に販売を行って、その結果中国マネーがここからも吸い取れて、ここに見えるのは中国マネーによってかなり資生堂が潤っているということがわかる訳です。

実際このような動きを受けまして株価は大きく上昇しています。

2013〜15年という辺りは1000円2000円といった株価うろうろしていたのですが、ここからインバウンドが高まるにつれて上がってきまして、一時は9000円台というところまでいき、4、5倍というぐらいまで上がってきたところだった訳です。

コロナを受けて下がりましたが、まだだいぶ粘っている段階ではあると思います。

こんな状況ですから資生堂は次何をするかというのはおおよそ見えてくるのではないかと思います。

すなわち選択と集中です。

今、資生堂の社長をやっている魚谷さんという方は実はいわゆるプロ経営者でして、コロンビア大学のMBAを持っていて、アメリカのクラフトや、日本コカコーラなんかでかなり実績を挙げてきた人なんです。

こういった経歴を持っている人なので、いわゆるアメリカ流の事業を売って、集中すべきところに集中する戦略というのはお手の物です。

集中するためには余計な贅肉をそぎ落とさなければならないので、こうやってセグメント別の業績を見ますと、日本中国これはまあまあ儲かっているのですが、その他米州欧州といったところは恒常的な赤字が続いていました。

実は魚谷さんが就任してから色んな会社を買ったり、あとこのドルチェ&ガッバーナに関しても2016年からということですから、ここを何とかしようとテコ入れを図っていたのですが、それが5年くらい経っても上手くいきませんでした。

それを受けて早めの撤退ということになった訳です。

これを見ますとこのドルチェ&ガッバーナからの撤退というのはなるべくしてなったという風に言える訳です。

ところがパーソナルケア事業を売却する必要があったのかというところには疑問が残ります。

このパーソナルケア事業のTSUBAKIというと皆さんも結構知っていますし、もうブランドとしてはかなり確立したものになっていたのではないかと思います。

財務的にも直近では苦しいとはいえこれまで儲かっていた蓄えがありますから、慌ててお金を調達しなければならないというほどの状況ではありません。

ところがここがプロ経営者の考え方なんです。

まず資金力を確保するというのはもちろんあります。

実はこれまでM&Aなんかも行なっていましたから、徐々に現金が少なくなってきたというところがあります。

稼いだ利益、つまり営業キャッシュフロー以上の投資を行ってきたので、フリーキャッシュフローがこれまでマイナスという状況でした。

そういった状況をコロナで厳しくなったので改善しようという思いが一つあるとは思います。

そして経営資源を高付加価値に集中したいという思惑があります。

というのもこの化粧品というのは、実は原価は2割くらいしかありません。

それに対して沢山のマーケティング、とにかくCMを流したりとか、アピールするためにそっちにお金をかけています。

その結果があれだけの高い商品価格ということになるのですが、ぶっちゃけ高ければ高いほど残る利益というのは大きくなります。

逆にこういった日用品事業というのは激しい競争があったりして、あんまり儲かる分野ではありません。

ならば中国で爆買いでお金を落としてくれる人がいるなら、そっちのために高い商品を作ったほうが資生堂としては儲かるという風に考えたと思われます。

だとしたら頑張って精力を注いでまでそんなに利幅のない、シャンプーとか売っていてもしょうがないという風に考えたのではないかと思います。

さらには当初TSUBAKIが参入した時には、コンビニやドラッグストアやスーパーで売られているものの中では、プレミアム感のある商品として売り出したと思うのですが、その後ボタニカル系のものや、ノンシリコンなどそういったシャンプーも同じように置かれるようになって、高価格帯のシャンプーの競争というのもそこから激化したというのがあります。

それだけみると、もうあまり旨味がないと判断したのではないかと思います。

ところが資生堂がどんどん高級品にシフトをしていく中で、関連性の低い日用品部門を持つ意味が本当にないのかというとそこには若干の疑問が残ります。

というのもシャンプーなどはマス層への商品ですから、このTSUBAKIを宣伝をしていたのはSMAPなのですが、そうやって多くのマス層に訴えていけばやがて愛着が生まれて、そしてお金が出来た時には資生堂の高いコスメを買うというような流れも考えられます。

それを失うということはマス層に対する看板を失う可能性も秘めているということで、実は諸刃の剣だったりもします。

最近では同じように武田も大衆薬事業を売却してしまいました。

武田も同じようにやはり多くの人に会社名を認知してもらうためには、大衆薬は必要だとずっと言われていたのですが、結局今は外国人社長になりまして、数字で見る限り無駄だということで売ってしまっていますが、果たしてどうなのか、数字で表れない部分もあるのではないかというのはあります。

とはいえこの資生堂の当面の戦略としてはやはりこれからも成長が続いて、しかもその中で日本企業の中で優位性を誇っている資生堂が、中国市場を主力に据えないという理由はない訳です。

中期経営計画でも示されている通り日本はもう2023年の売り上げは2019年に対して減るという風に言っています。

なかなかお膝元で売り上げを減らす目標を掲げるというのはなかなかありません。

それだけ思い切った動きを取っています。

逆に中国に関しては数値は示されていませんが、およそ2倍ぐらいになるイメージを想定しているのではないかと思います。

中国に関しては年率も10%以上で成長していくということが考えられますから、そこにとにかくしがみつくだけでも、それぐらいの同じような業績の成長が当面を期待出来るということではないかと思います。

当然リスクというのも孕んでいまして、今は日中関係はそこまで悪いというわけではないのですが、これがまた悪化してしまうようなことがあったら、日本ブランドのバッシングのようなことが起きますから、そういった時はガタッといってしまうということも考えられます。

その辺のリスクは高まっている状況ではないかと思います。

不味くはないが旨くもない

ここまで資生堂の戦略が分かったところで投資家としては、資生堂の株は割高なのかを割安なのかということを考えるわけです。

先ほどと同じチャートを示しますけれども、この10年で見ますと大きく上がって、しばらくは上げ止まったような動きになっています。

 

株価が上がってしまっているので、成長が続かない限りは持ち続けるのって難しくなってきます。

それで実際に成長するかどうかということですが、今後より売上をガンガン伸ばすというよりは当面は収益性の確保というところを急いでるようです。

2023年の目標は売上高は増えずに営業利益増10%から15%にする、そしてフリーキャッシュフロー、これはお金をどんどん会社に残すというようなことを言っています。

ではこれを目安に今割高か割安かということを考えてみると、今の時価総額が本日(4月30日)時点でおよそ3.1兆円です。

そしてこの2023年目標の営業利益率15%というところに当てはめた純利益というのが、およそ1,000億円と計算出来ます。

時価総額÷純利益というのがPERなのでそれを計算すると、およそ31倍ということになります。

ものすごく割高ではないけれどもそんなに割安でもないという数字です。

これから本当に中国市場で伸びていくというなら、十分に許容できる数字ではあると思いますが、すごく旨味があるかというとそこまでではない状況になります。

したがって資生堂の今後に関しては中国事業での成長というのを見守っていくという状況になろうかと思います。

という訳で売りとも買いともなかなか判断がつかないという状況になります。

ほとんどの株はそういう状況にありますから、結局当面は見守るということになります。

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