イギリスのEU離脱はバリュー株投資家にとってチャンス

イギリスの国民投票でEU離脱が過半数を占め、世界の金融市場に混乱をもたらしています。バリュー株投資家はどのような行動をとるべきでしょうか。

最悪の事態を想定する

何かよくわからない事象が起きた時、バリュー株投資家が行うべきことは、考えうる最悪の事態を想定することです。それを(1)起きる確度(2)世界経済への影響度に分解して考えます。

想定される最悪の事態は、他のEU加盟国も連鎖的に離脱を決定することです。そうなると、EUは統制を失い、欧州は一時的な混乱に陥るでしょう。

最悪の事態が起きる確度、つまり連鎖的にEU各国が離脱する確率ですが、これは決して高くないと考えています

イギリスは、ユーロも採用せずにポンドを維持するなど、EUから一歩退いた立場でしたから、離脱となる土壌もありました。地理的に見ても唯一大陸から離れています。

南欧や東欧諸国は、やっとの事でEUに加盟した国もあるくらいですから、離脱という動きになる可能性は高くありません。可能性があるとしたら、独立してもやっていける可能性のある経済的に豊かな北欧などに限られます。

その中でも最悪は、フランスが抜けてEUが事実上崩壊することです。しかし、それでも多少のやりづらさは出てくるでしょうが、各国が貿易をやめるわけではありません。一時的な混乱を経て、落ち着くべきところへ落ち着くでしょう。

経済的に考えると、ヨーロッパが抱える最大の問題は低成長とデフレです。これはバブル崩壊後の日本経済と酷似しています。ヨーロッパは「日本化」を避けるため、EUという巨大経済圏を作り、移民を積極的に受け入れてきたわけですが、その流れが停滞することにはなります。

一方、世界経済の成長をけん引しているのはいまや中国やインドを始めとする新興国と、世界最大のGDPを誇るアメリカです。ヨーロッパの成長が一時的に停滞したとしても、長期的な観点では世界経済への影響は甚大とまでは言えないのです。

世界経済におけるイギリスの立ち位置

では、決定事項としてイギリスのEU離脱の影響はどうでしょうか。

イギリスは世界第5位の経済大国です。とはいえ、世界のGDPに占める割合は約3%に過ぎません。現在言われているようにGDPが5%縮小したとしても、世界経済に直接的に与える影響は0.15%に過ぎないのです。

それよりも、世界のGDPの12%を占める中国の経済成長の方がより重要なのは明らかです。

また、EUから離脱すると言っても、鎖国するわけでもありません。むしろ貿易は拡大させたい方向性であり、イギリス世界経済からすっぽり抜けるということはあり得ないのです。

冷静な判断こそ強み

冷静に考えると慌てふためくような状況ではないはずですが、なぜ世界の金融市場はこれほどまでに混乱しているのでしょうか。

最も端的な答えは「予想していないことが起きた」からでしょう。多くの知識人は、最終的には残留派が勝利すると予想していましたから、離脱派の勝利は紛れもない「サプライズ」でした。

人は予期しないことが起きた時、パニックに陥ります。パニックによる売りが売りを呼び、ついには世界的な暴落となるのです。私が投資において心理を重視するゆえんです。

賢明なバリュー株投資家にとって、こんな時こそがチャンスです。

割高なため投資を見送っていた素晴らしい銘柄はないでしょうか。もしあれば、改めて株価を確認してみましょう。価格が価値を下回る「安全域」が発生しているかもしれません。

市場が最も悲観的になっているときこそ買いのチャンスである。市場が最も楽観的になっているときこそ売りのチャンスである。(ジョン・テンプルトン)

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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2 件のコメント

  • 私は85歳の(1931年生まれ)老人ですが、惚け防止やマイナス金利時代を
    迎えて居るので、資産運用(株式投資・投資信託等)に関心あります、今後とも
    宜しくご指導をお願いします。
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    • 横山様、ご愛読ありがとうございます。詳細はこれから確定させて参りますが、月額1万円程度のサービスとする予定です。開始までもうしばらくお待ちいただければと思います。

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