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以下、文章化したものです。
今回お話しする銘柄はJR東日本です。
4月の末にJR東日本が2020年度の決算を発表しました。
JRというとこの新型コロナで人々は外出を控えて鉄道に乗らなくなっていますから、決算はかなり厳しく、当然のごとく赤字となっています。
さらに言えばこのコロナ禍を契機にテレワークや、外出や出張をしないというような生活も定着しつつあります。
このような状態でJR東日本はこれからどうなってしまうのでしょうか。
コロナで大赤字!からの本気の改革
これが2020年度のJR東日本の決算です。
ここにある通り、営業利益が5203億円の赤字、経常利益が5797億円の赤字、そして当期純利益が5779億円の赤字と、かなり大きな赤字となっています。
前年度の利益よりも大きな赤字を出しているわけです。
JRというと安定した会社とみられていますからこれだけの赤字を出すことはそうそうありません。
これに合わせて株価も下落していまして、19年の新型コロナウイルスが蔓延する前までは1万円前後で推移していたものが、一時期は5400円というところまで下がって、今も7500円ぐらいで推移しているという状況です。
当然、業績とともに株価もコロナ前までは回復していないということになります。
さらに言えばテレワークの普及などで今後も鉄道の利用はかつてのようには戻らないということが考えられますからJRは厳しいという見方もあります。
一方、今回のを決算を見るとかなりJR東日本の本気度は高いのではないかとみられる部分もあります。
私はむしろそっちの方に着目しています。
まず、普通、決算発表の資料というと、今期の決算はどうでした、そして来期の計画はどうです、さらにはもう少し長期的な計画としてはこんな感じですというような出し方するのですけれども、JR東日本の今回の決算発表を必ずしもそうではなくて、いきなり2027年度計画はこうですよというかなり長期的な目線、そして前向きの目線のものが示されました。
確かに目先のことばかり言うとコロナ話ばかりですから、気持ちが萎んでしまうというところはあるのでしょうけれども、それにしてもだいぶ意欲的だなという印象を受けました。
その意欲的というのは一つは運輸事業ということになります。
JRはかつての国鉄ですからなかなか地方路線を切れなかったり、前例踏襲で今ある路線をもう一回同じように戻す為の投資というのを行ってきましたが、このコロナで財務的に厳しい状況になっているので、それをもう一度見直して大きくコスト削減を行おうというところが見て取れます。
ここにあります通りキャッシュフローの改善で2020年度は1500億円のコストダウンを行って、さらにはもう一段の固定費の削減、維持更新投資の見直しというところに踏み込んでいます。
さらには時代の変化にも合わせて設備のスリム化や、車両更新周期の見直し、そして大規模プロジェクトによる事業採算性のさらなる追求というところが書かれています。
もともと利益も出ていた会社ですから、こういった無理にコスト削減しなくても十分にやっていけるといったこともあって、こういったところになかなか踏み込めないところがあったと思うのですが、いよいよ先行きが厳しいというところに追い込まれると、ここで本気を出せばかなりインパクトは大きいと思っています。
2027年にはかつてよりも毎年1000億円のコスト削減を行うという風に掲げています。
この会社は営業利益としては3000億とか4000億とかですが、そこに対してコスト削減1000億円というのはかなりインパクトが大きいということがお分かりいただけると思います。
もちろん鉄道の利用が減って売り上げが減ってしまうというところはあるはあるでしょうけれども、それを踏まえてもそれを上回るのではないかと思われるコスト削減計画という形になっています。
さらにもっと大きな前向きなポイントがあります。
それがこの収益力向上、成長・イノベーション戦略の再構築ということです。
簡単に言うとREITへの参入です。
回転型ビジネスモデルとありますが、これまでJR東日本の不動産ビジネスというと駅ナカの開発が中心で、せいぜい隣接するところくらいの開発でした。
これによって業績を上げてきたというのは間違いありませんが、そこから先というのはなかなかありませんでした。
ところがREITを行うことでそこから大きく広げていく余地というのが生まれてきます。
この回転型ビジネスモデルは、すなわち新たに取得して作った建物を他の投資家に売却することによってまた資金を得て、その資金を元に次の物件を開発しようというものです。
JRないし旧国鉄というのはこれまで多くの負債で苦しんできた経緯がありますから、借金をして事業を拡大させていくというところになかなか積極的になれなかったのですが、この仕組みを使えば借金はほとんどすることなくて、売却資金によって新たな資金を調達して次を開発するということが出来ます。
まして、駅という中核を抑えている会社ですから、そこから周囲を開発出来るということになると、出来ることは無限だとも言えるのではないかと思います。
JR東日本は東京首都圏を抑えているわけですから、やはりかなり強みを持っているということが言えます。
今、私募ファンドの組成を加速し数年間で1000億円規模への拡大を目指すと言っています。
この1000億円だけということになるとあまり大きくはないのですが、これがいよいよもっと大きなREITということになると、大規模開発の中核を担っていける会社になるのではないかと思われます。
ちなみに1000億円の私募ファンドとなっていますけれども、REITの中でもこれぐらいの金額であれば中堅どころというところですので、かなりの規模なのですが、本気でやると思ったらREITの中でもかなり上位層に入ってくるのではないかということが考えられます。
今説明した話を図解しますと、すでに物件を持っているないし、新たに建てた物件があったとして、この権利を一部切り出してこれを投資家に売ります。
そしてその投資家から売却資金を得て、もともと立てた値段より高く売れたら会計上の利益というのを出るので、損益計算書へもプラスになりますし、当然お金も入ってきます。
このお金を基に新たな物件を建てるということになります。
これを繰り返すことでここに売却した不動産の権利が塊となって現れてきます。
これをまとめたものがREITと呼ばれるものです。
投資家はここから家賃収入というも貰っていくわけなので、JRとしては一旦の家賃収入は手放すのですが、どんどん次から次へと新たな開発が行えるという、スピードを加速するシステムということになるわけです。
例えばイオンモール、皆さんご存知でしょうか。
この会社もREITの仕組みを利用してどんどん作ったモールを売却することによって、新たな資金を調達して次のモールを作るということをやっていて、それで成長を続けています。
このモデルをJR東日本もやるのではないかと、そうすれば成長の起爆剤になるのではないかということが考えられます。
またREITのメリットとしましては資金を調達するということもありますし、JRはすでに持っている物件というものがあるので、それを自ら開発するということは付加価値をかなり付けやすいです。
したがって会計上の利益というのもかなり大きなものが、特に初期の段階においては期待出来ます。
これによって会計上の利益の引き上げということも考えられますし、当然キャッシュに入ってくるということになります。
一方では売るといっても完全に手放してしまうわけではなくて、権利の一部ないしは運営をJR東日本が担うということになれば、そんなに外部から勝手に開発されたりとかそういったリスクも防ぐことが出来ます。
そういったことからJR東日本はこのREITを使うには実はかなり理に叶った会社であるということが出来ます。
これによって駅ナカから街全体へと拡大する、これがJR東日本の成長戦略だということが考えられます。
意欲に好感。今後に期待
さてこのように不動産だったり、鉄道に関してはコストの削減という形で政治戦略を進めていくということが考えられますが、それを踏まえた2025年度の数値目標というところが掲げられています。
運輸事業で2520億円の利益、不動産ホテル事業1130億円の利益、トータルで4500億円の営業利益という形になっています。
当然2025年度ですからコロナは収束した前提で作っているのだとは思いますが、この4500億円というのがおよそ過去最高益の水準で、この水準になりますと現在の株価7500円というところから考えるとPERはおよそ10倍ということが計算出来ます。
この10倍というのは果たして高いのか安いのかということなんですが、コロナになる前でJR東日本の株価、PERというのはこのように推移していました。
平均値が13.9倍というところになっていて、最小が12倍、最大16倍というこの間をうろうろしていました。
今この時に10倍ということになると平均で考えると14倍ぐらいなので、40%ぐらいの上昇余地はあるのかなという風に思いますし、高いところまでいけばもう少し上が目指せる会社なのではないかと思います。
もちろん大事なのはこのコロナが収束して、鉄道にお客さんが戻ってこないことにはまた赤字ということにもなりかねませんから、コロナが収束するということは大前提として大切ですが、テレワークなどで運輸の需要が減る中でもちゃんとコスト削減をして利益を埋める体質にして、不動産などでどんどん新規の成長を取り込んでいく、そういうことが出来ればJR東日本の将来は明るいのではないかと思います。
私は実はどちらかというとJR東日本の状況に関して懐疑的だったのですが、これだけ意欲のあるものが示されたということは今後に期待が持てるという風に感じました。
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