野村「バブル並利益」が示す警告―好調な業績とアルケゴス事件が暗示するもの

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以下、文章化したものです。

 


日経新聞が、野村が過去最高水準の利益を上げたことで、逆にこれからに対しての不安が高まっているという不穏な記事を出しています。

今回は野村証券の状況というのを皮切りにこれからの相場の見通しを考えてみたいと思います。

アルケゴスなかりせば…

日経が出した記事です。

これに書かれていることを簡単にまとめると、21年3月期の決算を発表して、決算そのものは税引前利益が2307億円ということで、これは必ずしもバブル後最高益というわけではなかったのですが、この中身に注目したいです。

最近もニュースになったのですが、野村はアルケゴスという多大なレバレッジ、つまり借金をして巨額の金額を取引して、そしてその取引によって3000億円もの損失を被ってしまいました。

これは野村だけではなくてクレディスイスやモルガンスタンレーといった、他の投資銀行でも同じことが起きています。

こことの損失で3077億円の損失を被りました。

一方で個人の売買だとか、あるいは投資銀行部門といったところでは大きな利益を上げています。

したがってこの一過性と見られるアルケゴスの損失を除いて、税引前利益に足し戻した時にこれが無かったら4764億円という税引前利益を上げられたという風に言っています。

この数字はバブル後最高水準ということになります。

グラフで表すとこのようなことです。

この87年9月に4937億円、90年3月に4888億円、それからリーマンショック前の2006年3月に4456億円、そして先ほどの数字が4764億円といういうことです。

これを見ると野村など証券業界の業績が非常に好調であることがわかります。

というのも昨年2月から3月にかけての新型コロナショックで株価大きく下がったのですが、その後世界的な金融緩和によって逆に大きく上がる局面となってきました。

そこで多くの投資家が勢いづいて野村證券も含めて、株式の取引を行った結果、大きな利益を上げるということになりました。

アルケゴス事件はショックの予兆?

ではそれで野村だったりで株式市場、あるいは経済というのは絶好調なのかというとそう簡単には行かないではないかというのがこの記事の内容でした。

というのも証券会社の好調な業績と、一方でおきるアルケゴスに代表される事件というのは、非常に相場の見通しに暗雲を立ち込めさせるものだと言えるからです。

証券会社が業績好調なバブルの時の1991年には、尾上縫事件というのが起きています。

この人がどういう人かというと、北浜の料亭の女将でした。

ところが、正直金融に関する知識は全くないにも関わらず、今で言うならばスピリチュアル的な方法で株が当たるというようなことで、多額の取引のアドバイスなども行なっていました。

しまいには銀行からトータル2兆円もの借入を行って株式に投資するのですが、結局は上手くいかなくて、そして最終的には詐欺に手を染めて実刑判決まで受けてしまいました。

もちろんこれがバブル崩壊の引き金になったわけではないのですが、バブルの時にはこのように銀行も2兆円ものお金を個人に貸し付けていたということですから、いかにこの銀行とか証券会社がリスクに対して無頓着であるのが分かると思います。

この後バブルが崩壊して株価が大きく下がったことは皆さんも記憶しているところだと思います。

さらに言えば2007年にもパリバショックというものが起きていました。

この時にはアメリカでサブプライムローンと呼ばれる低所得者向けの住宅ローンが流行っていたのですが、ここは実体的な彼らの経済力に対して過剰な貸付を行っているものだったと言われています。

一方でその貸付金を金融商品として組み込んだものが、世界中の金融機関にばら撒かれていました。

それらを組み込んだファンドをこのBNPパリバという会社が持っていたのですが、そこが突然解約に応じないということを発表しました。

これによって金融業界は大混乱に陥ってしまうのですが、ただその時はそのファンドの解約停止という一瞬の出来事として終わったのですが、皆さんご承知の通りその後同じようにサブプライムローンというのが厳しいということがわかって、2008年にはリーマンブラザーズが破綻して、いわゆるリーマンショックが起きています。

このように大きなショックが起きる前には必ず小さな前触れとなるようなものが起きています。

そしてこの2021年、アルケゴス事件というのが起きています。

このアルケゴスというのがデリバティブ、少額の自己資金で多額の取引を行うことによって、一時は何兆円もの利益を個人であげたのですが、それが失敗して今度は破産することによって、その取引先となっていた野村証券を始め、多くの投資銀行が損失を被ってしまうという事件が発生しました。

これらの事件のいずれにも共通しているのは、高いレバレッジということです。

つまり借入金など、自己資金の何倍もの取引を行うという危険な取引が絡んでいます。

これは特に株価が好調な時に起こりやすいです。

証券会社はイケイケどんどんでリスクを取る人に多額の貸付を行なうようになってきます。

するとどんどんその貸付によってリスクがさらに何倍にも何十倍にも膨らんで、やがてはそれが耐え切れなくなって崩壊するというのが、バブルの形成と崩壊の流れです。

そこに絡んでいるのはこのようなレバレッジと人々の強欲というところになります。

バブルを起こす証券会社の性質

投資家が強欲であるというのはもちろんなのですけれども、そこには少なからず証券会社の性質というのが絡んでいます。

証券会社の性質というと、そこで仕事をしている人の性質といっても言い換えても良いかもしれません。

というのも私自身が証券会社に所属していたので、彼らがどのような行動を取るのかということは身に染みて分かっています。

端的にいうと、この証券会社というのは基本的には手数料ビジネスなので、その時が良ければそれで良しという考え方をしています。

つまり、例えば証券会社の営業担当で言うならば、彼らもとにかく今相場が良かったら少しでもお客さんに動いてもらって、そして沢山手数料をもらう訳です。

それは相場が良い時でないとなかなか営業トークに結びつきませんから、良い時はどんどん買ってくれと言います。

しかし今度は株価が下がって顧客が損をするということもあるのですが、どっちにしろそういった時には手数料を取れないので、顧客が損をしたか得をしたかというのはもはや関係がないのです。

しまいにはそのような時にはもう異動によって担当替えが起きていますから、もはやも知らん‎‎顔ということなんです。

あまり表には出せない言葉なんですけれども、そういった取引をしなくなったお客の事を”死んだ客”というようなこともあります。

これほど場当たり的なビジネスを行っている人たちであるということが出来ます。

もちろん全ての証券会社員がそうだと言うつもりはありませんけれども、トータルとしての性質には未だに少なからずそういうところが残っているのだと思います。

これは日本の個人営業もそうですけれども、全世界の金融業界に関してやはり同じようなことが起きているというのは間違いないわけで、その一端として現れたのが今回のアルケゴス事件ということになっています。

つまりこういった証券会社に金融業界の舵取りを任せている以上、調子が良い時は大きく伸びて、そしてダメになったら一気に引き去っていき、そしてバブルが崩壊するというような動きはこれからも避けられないという風に考えられます。

振れた振り子は必ず戻る

そんな時に私たちが意識すべきなのは、その動き、その流れを意識することです。

それをよく教えてくれるのが私も何度もお勧めしている『投資で一番大切な20の教え』という本に書いてあります。

長期投資家なら一度は必ず読んでみてください。

あのウォーレン・バフェットも株主全員に読んで欲しいということで、株主総会で配った本でもあります。

今回の件がここに書かれていること、それは「振り子」を意識するということです。

このように証券会社は株価がどんどん上がっている時には、後先も考えずにとにかく今取れる手数料を取ろうと思って無茶な取引もお客さんにさせていきます。

しかしどこまでも上がり続けるものというのはありませんし、一方でこのレバレッジをかけることによって、リスクはどんどん膨らんでいきます。

そのリスクはやがて崩壊することによって、今度は振り子が逆に動き出すということ、しかもそれは動くときは一気に動くということになるわけです。

証券会社を代表する言葉のもう一つにシテイグループのCEOが言った言葉なのですが、”音楽が鳴っている間は踊り続けなければならない”というものがあります。

今のように株価な好調な時には後のリスクなど考えていられないので、とにかく今出来る利益を上げようということを言っています。

しかしその反対には必ず揺り戻しというのがやってきます。

賢い皆さんは是非そのようなことを意識して市場を眺めていただくことをお勧めいたします。

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