【東芝】経産省とつるんで株主に圧力…国とズブズブの闇

YouTubeに動画をアップロードしました!

以下、文章化したものです。

 


今回お話しするのは東芝についてです。

東芝が経産省と組んで外国人株主に株主総会における議決権に関して圧力をかけたということが第三者委員会によって暴かれています。

これには国の中枢の様々な人物が出てきて、その報告書は非常に読み応えのあるものとなっているのですがいかんせん長くて分かりにくいというところがあります。

その内容を簡単に分かりやすく説明したいと思います。

国の力を使った”ズルい”プロキシーファイト

この話の発端は2020年の株主総会での話です。

定時株主総会が7月31日に行われました。

そこでかなりこの議決に関して綱渡りの状況が続いていました。

というのも、東芝というとアメリカで買ったウェスティングハウスの原発が大損を出してしまったり、あるいは不正会計問題などもあり、不祥事や経営不振によって様々な苦しい状況になってきたわけです。

それで資本が足りなくなったおかげで、外国人株主など外部の株主から資本を調達したがゆえに株主構成としては外国人がかなり多い状況となってしまっていました。

ここにあります通りエフィッシモ、これは村上ファンド系のファンドですけれども、エフィッシモが15.5%、それから3D、ハーバート、ファラロン、キングストリートと、外国人投資家、特に”モノ言う株主”と言われる人たちが多くを占める株主構成となっていました。

その他外国人も含めるとおよそ全体の62%が外国人によって占められていたということになります。

上場企業にとって一つ大切なのは安定株主工作ということがあります。

安定した株主がいないと外部の株主は何を言ってくるかわからないということで株主総会の運営が不安定になってしまうわけです。

それによって会社の提案が通らない、例えば会社が提案した取締役が選任されないなど、経営が不安定となりかねません。

このような状況ですからいよいよ経営陣は肝を冷やしていました。

当時の社長の車谷さんをはじめとする取締役の面々が株主総会によって選任されない、否決されてしまう可能性があったわけです。

それだけではなくて、これらのファンドから社外取締役への株主提案も出ていて、それが可決されたとなると株主提案で選ばれた取締役が経営陣に送り込まれて引っ搔き回されるようなことになってしまいかねなかったわけです。

こういったときに起こるのが、『プロキシーファイト』と呼ばれる議決権争奪戦です。

どうやって自分の有利になる議決を取りまとめるかがそれぞれの陣営において急務となります。

しかし、東芝はここでちょっとずるいことを考えてしまいました。

この経営陣は経産省を使って何とかしようと考えたのです。

実は東芝は”国策銘柄”と言われるほど国とズブズブの関係なのです。

先ほどのアメリカのウェスティングハウスを買収したときも、完全に経産省が主導して行った案件とも言われています。

そんな中で何を考えたのか、もちろん国が株主に直接働きかけるというのはなかなか難しいですが、一方でこれが彼らが考えたのは外為法を使えば何とか出来るのではないかということを考えました。

実はこの外為法というのが問題が起きていた時に改正されたばかりでした。

それまでは10%以上を有する場合は報告を求めていたのですが、今回の改正によって指定業種にかかる1%以上の出資で事前登録が必要ということになってきたわけです。

つまり1%以上持つこと自体は問題ないのですけれども、出資比率の1%以上を持っていた場合、その外国人投資家が当局の監視下に入るということになっています。

外為法というと基本的には国の安全保障に関わることですから、安全保障に問題を与えるのではないかということを国が判断すれば、これらの投資家に対して売却命令を行うことが出来るわけです。

つまりこれを使っていちゃもんを付けてしまえば、外国人投資家を排除することが出来るという風にも拡大解釈できかねない法律になっています。

資本主義的な考え方からするとずるい法律だなという風には思いますが、これが5月18日に施行されていたところでした。

そこで東芝の経営陣は経産省に働きかけます。

まずはこの一番の敵であるエフィッシモを懲らしめてくださいという風に、仲の良い経産省に告げ口をします。

しかし経産省もなんでもかんでも外為法とそう簡単にはいきません。

改正されたばかりですし下手に外為法を乱発してると、さすがに外国人投資家からの信用を失ってしまうということになりますから、これだけでいちゃもんをつけるのは簡単ではありません。

ところが東芝も引き下がらず何とかして欲しいということを言います。

経産省としても東芝という大企業が、こんな大変な状況になってしまっては困るなという風にも考えたのかも知れません。

この後行動に出ることになります。

ちなみにこの時には東芝は業績不振によって、東証1部から東証2部に落ちていたところでした。

それで何とか東証1部に復帰しようと頑張っていったところです。

これで東証1部に復帰出来ないということになると、経産省としては嫌だなという印象を持っていたのかもしれません。

仮に株主提案が通って現在の取締役が落ちてしまったり、新しい取締役が入ったりすると、一層掻き回されて1部上場が売れてしまう可能性もありましたから、それは経産省としてはあってはならないという風に考えたのかもしれません。

ではどういった行動に出たのかというと、経産省としてはこの3Dというファンドに遠回しながら、コミュニケーションを取りましょうというような形で打診しました。

そこで言ったとされていることが報告書に書かれていますけれども『隣が大火事の時に横でバーベキューしていると、それでは済まないことになることもある』と、非常に婉曲的な表現ですが、どういうことかというと、3Dはエフィッシモに比べると大人しいファンドではあります。

東芝の一番の敵と目しているのは村上ファンド系のエフィッシモなのですが、例えばこのエフィッシモは村上ファンド系と言いながら、本籍をシンガポールに置いているので外国人投資家ということになります。

そこで経産省がエフィッシモに対して外為法を発動して、売却命令を出したり、今後日本での投資活動を難しくするようなことをしたら、3Dは同じように株主提案を出していますから、あなたのファンドもタダでは済まない可能性がありますというような、一見脅しとも取れるようなことを言ったという風にも言われています。

またもう一つ基金としてはハーバードの基金です。

アメリカの大学というのは積極的に基金を運用して大学の運営資金に当てているのですが、ここに対しては経産省が直接行ったのではなくて、経産省の幹部であるM氏という人が個人的な繋がりも使って、働きかけたという風に言われています。

ところがこのハーバードの反応としては後々ロイターの記事などでも出てくるのですが、M氏に対して『HMC関係と関係のない人物から、東芝の選挙に関し望んでもないミーティングの要請を受け、礼儀としてミーティングに応じたが、そのやり取りは内容も時期も極めて不適切なものであるとわかり、投票しないことにした』

これが東芝からきていたなら適切な会話ということになるかもしれません。

けれども東芝とも直接関係のない経産省の幹部がいきなりミーティングしようと言ってきて、しかも今まさに株主の議決権を争っている直前のところで、こういう風にしてくれて働きかけてきたというのは、不適切と言わざるを得ない、圧力を感じたと言われてもおかしくないということで、天下のハーバードですから毅然とした対応を取ったということになります。

ただ結果としては投票を棄権したのですが、棄権したことがプラスに働いたということにもなっています。

何故ならもしこのハーバードが株主提案の方に賛成に回っていたら、もしかしたら通ったかもしれないということになったからです。

ということからここで投票させなかったというのは意図としては、上手くいったとも言えるかもしれません。

しかし話はこれで終わりません。

ここで出てくるのが当時官房長官だった菅総理です。

この報告書の中で菅官房長官のこと名前を伏せて『丘の上』と呼んでいたらしいです。

菅総理が行っているという朝食会に東芝から幹部が参加しまして、こういった状況を説明しました。

そこで菅総理の発言としては強引にやれば外為法で捕まえられるんだろうというようなことを言ったのです。

確かに先ほど説明したようにこの外為法というのはかなりふわっとした法律で、正直政府の一存次第でこの外国人投資家を排除できてしまう含みを持った法律です。

しかしそれを乱発するというのも国の権限としてはあってはならないと私は考えます。

ところが菅総理は強引にやればいいんじゃないかと発言したということです。

これは実際には行われることはなかったのですけれども、菅総理や政府のずるい、汚い考え方がこのセリフに反映されているのではないかと感じてしまうところです。

これ自体は直接的に何か問題になっているというところではないのですが、こういう事がありましたと報告書の中でも出てきましたという事です。

それで最終的な結果はどうなったかというと、会社提案を可決、そして株主提案は否決されました。

この会社提案の方で実は車谷社長もかなり薄氷で、CEOの株主総会での議決案として滅多に見られないぐらいギリギリの採決だったわけです。

3Dやエフィッシモが出していた株主提案は最終的に否決されます。

しかし先ほど言いましたようにこのハーバード基金が株主提案に賛成するような事があれば、直接的には足りなかったのですが、少し票が動けば可決される可能性もあったということにはなっているので、やはりこの圧力をかけたという問題が響いている可能性があります。

そしてこれを流石におかしいと思ったエフィッシモは2021年3月に臨時株主総会で、これを調査するという株主提案を出しました。

その株主提案は可決され、この第三者委員会の報告書が出てきたということになります。

その後他の動画でも出しているのですが、東芝はCVCというイギリスのファンドによって買収されるような提案を車谷社長の主導で行って、エフィッシモも排除しようとしましたが、結果それも上手くいかなそうで、車谷社長は辞任をを迫られて今はいないということになります。

政治に勤しむ会社に先は無い

このように車谷社長も結局何がしたかったのかというところですけれども、基本的には自分の保身というものを考えたのではないかというのが一つ考えられます。

このエフィッシモの提案や外国人株主に取り囲まれる状況では、自分の再任すらままならないというところもありました。

また東芝という会社にとってみても国とのズブズブの繋がりがあって、報告書の中にも出てきましたが、東芝ほどの会社が大変な状況になっては困るという、ある種自分達の会社が特別であるかのような発言も随所に見られるわけです。

実際に政権と深いつながりを持っているというのも確かなのでしょうけれども、このように政治の話ばかりやってる会社というのは先が見えないわけです。

本当に大切なの政府を見て仕事をするのではなくて、顧客を見て仕事をすることです。

いかに顧客のために尽くすか、それが最終的に企業の利益という形になって帰ってきます。

経営陣がそれをせずにこうやって政治に明け暮れているようでは、会社の将来というのはを決して見えません。

そういった会社に長期投資は全くできないということになります。

実際に業績に関してもずっと売上高は右肩下がりになっています。

株価も長期で見るとずっと下落傾向にあります。

一時的に上がったりはするのでしょうけれども、結局それは投機と変わらないということになります。

一方で東芝というと技術などはまだ持っている会社でもあります。

車谷社長が退任し、今は綱川会長が兼務しているという状況ですけれども、今後東芝にまともな経営陣が出てきて、従業員や顧客に真面目にやっている人が報われるということを切に願っています。

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