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以下、文章化したものです。
今回はエーザイについてお話ししたいと思います。
製薬会社のエーザイですけれども、直近でアメリカで自社が開発する認知症治療薬が承認されたということで、株価に火がついて、現在ストップ高というような状況です。
エーザイに関してはこれから買いかというと、非常に難しいところではあります。
そもそも製薬会社にはどういう特徴があるのか、投資する時にはどのような注意点があるのかということについてお話し出来ればと思います。
伸るか反るか!エーザイに見る製薬会社の特徴
NHKのニュースですけれども『アルツハイマー病の新薬米FDA承認と発表 エーザイが共同開発』という記述があります。
アルツハイマー病というと実際に多くの人が悩んでいる病気です。
ただでさえ高齢社会に突入しているのに認知症になってしまうと、ますますその介護が大変になってしまいます。
これで大変な思いをされたという方も少なくないのではないかと思います。
これが解決出来るとしたら世の中的には相当なイノベーションというような形になります。
当然それだけ強い需要があるという訳です。
この神経細胞の働きを弱めてしまうのにアルミロイドベータというものがあるらしいのですが、この新しい新薬はこれを取り除くという作用をするということです。
これまで進行を遅らせたりするような薬が出ていたのですが、そもそも進行を止めるような薬というのは出ていなかったということなので、そういう意味でこの薬が画期的なものです。
ちなみにこの新薬の名前がアデュカヌマブというものなのですが、これがアメリカの厚生労働省にあたるFDAから承認を得たということで、非常に大きく前進したというような形となっています。
これがどれほどすごいものなのかというと、ここにあります通り、ピーク時の売上高は1兆円規模になってもおかしくないといいます。
実はエーザイはバイオジェンというアメリカの会社と共同開発をしています。
それで収益を分担することになるのですが、アジアに関してはエーザイが利益の8割を手にして、そして米国と欧州はバイオジェンが担っているのですけれども、それでも利益のうちの45%と31.5%がそれぞれエーザイに入るということです。
エーザイの売上規模というと6000億程度ですから、これで1兆円の少なくとも半分以上の収益が仮に入るということになると、売上は2倍ぐらいまで十分に想定出来るほどのインパクトということになります。
これを受けて株価はウナギ昇りに上がっています。
過去5日間で28%上昇となっていますが、6月4日にはストップ高で、今日は6月9日ですけれども、今日もおそらくストップ高になりそうです。
ストップ高というとおよそ20%ですから、20%と20%でトータルで50%ぐらい上がってしまうのではないかというところになっています。
その後も上昇が続くかもしれませんが、こればかりは短期的な投資家の動きによって、大きく変わってしまうので、何も言うことは出来ません。
一つ確実に言えるとしたらこれまでエーザイ株を持ってきた人にとっては、かなり大きなリターンを得られたということになります。
さてこのエーザイという会社がどういう会社かというと、マネックス証券の銘柄スカウターにかなり詳しく書いています。
ちなみにこの銘柄スカウターの概要は四季報よりもかなり詳しく書かれて、しかも個別の薬の名前なんかも書かれていたりするのでかなり有用です。
ぜひ四季報と並べてこちらも見ることをおすすめします。
余談ですが、ここにあります通り、がん領域と神型認知症領域に特化した医薬品会社ということになります。
ここにあります通りアメリカのバイオジェン社と共同開発の認知症抗体薬アデュカヌマブを上市化という形になっています。
これまでも数年かけてずっと検査などが行われてきて、いつ承認されるかどうかというところがエーザイ株の焦点となってきました。
先程これによってもしかしたら売上が2倍くらいになってしまうのではないかというような話もありましたが、医薬品会社というのはこういった一つの薬によって収益が大きく左右されるものとなっています。
実際にこのエーザイに関しても売上の構成を見ると、このレンビマというのは抗がん剤なのですけれども、これがおよそ2割以上を占めていて、続いてもやはり大きな割合を占める薬が並んでいます。
このように新薬の会社というのは少数のヒットした薬によって、会社の収益が支えられているということになります。
それが今回のように爆発的に伸びるということも意味するのですが、逆に考えればその薬が何らかの要因でなくなってしまったり、または新薬の開発が上手くいかなかったりした時には、ガクンと会社の屋台骨を揺るがしてしまうほどのものになってしまいます。
前回この承認プロセスが進むかどうかの一つのステップのところのエーザイのCEOのコメントなんですけれども、一度資金中止となって、しかしもう1回やはりいけるという時になった時のコメントです。
この薬が承認されるかされないかでもエーザイの状況は180度変わってしまいます。
それほど一つの薬に懸けるものというのは大きくなっています。
もちろんこの認知症治療薬のプロセスというのもずっと続いていまして、これで上手くいったりいかなかったりというのがずっと続いていました。
したがってこのように株価は見事に6000円と1万2000円の間を乱高下してきたともいえるかもしれません。
まさにこのエーザイや新薬製造会社の経営状況、投資家心理というのを上手く反映したチャートになっているのではないかと思います。
それでは晴れて承認を受けてまだまだこれから伸びるのかというと、そう楽観視は出来ないというのも今の状況としてあります。
というのも今回の承認はあくまで迅速承認と言われていて、目先本当に後がない人にとって使うために、仮の承認を出したということに過ぎません。
今後臨床で使っていく中でほとんど効果がないということになれば、また承認を取り消されるということも十分に考えられるものなのです。
実際にこの事前のテストの段階では多くの項目において有効性を示せてなかったという実験結果も出ています。
したがってまだまだ予断を許さない状況であります。
ただ仮にこれが使用されるということになると、それこそ数兆円というビジネス、しかも認知症ですからずっと続くわけです。
収益に大きく貢献することは間違いありません。
改めてこの製薬会社について考えてみたいと思うのですが、、製薬会社は名前も知れていて大きな会社に見えるのですが、今説明したように一つ二つの製薬に頼っている会社というのが、大きな会社でも少なくありません。
となるとやはり皆さんが思っている以上にギャンブル性の高い投資対象であるということはぜひ覚えていただきたいです。
というのももう一つ、今説明した新薬開発の問題とは別に特許の問題というのがあります。
つまり、まず新薬を開発します。
これはまさに万に一つ成功するかしないかという世界です。
今迅速承認が出た段階でも綱渡りという状況が続いています。
どんどん薬は開発されてきますから、そこからさらに新しいということになると、これはもっと大変です。
そして晴れてこうやって新薬が開発して承認されたということになると、しばらくの間は売上が倍になると言いました。
一時的に大儲けするとことが出来ます。
こうなった場合には株価も上昇して投資は成功だったと言えるかもしれないですけれども、もっと長い観点で見ればやはり難しいところが潜んでいます。
というのも薬には特許があります。
特許というのが一般的に20年なんですけれども、ただ20年丸々儲ける期間があるかというとそういうわけではなくて、20年から審査等にかかる時間を引かなければなりません。
一説には審査の期間等を引くと実際に販売出来る期間は、5年から10年とも言われています。
そうなると、これだけコストかけてやったのに、利益をあげられる期間というのは必ずしも長くはない、それがこの製薬会社の宿命ということになります。
安定のメガ・ファーマか、スペシャリティ・ファーマで夢を見るか
ここまで見ていただいた方はいわゆるバフェット型の利益を伸ばし続ける企業としては、なかなか製薬会社は該当しないのではないかということがお分かりいただけるのではないかと思います。
もちろん会社としてもそれに手をこまねいているわけではありません。
ひとつの方向性としてはやはり新薬の開発をはどんどん続けて、また新しい薬が出ればまたそ利益をあげられる、特に自分が得意とする分野で、エーザイだったら認知症とかそっちの分野に特化してるっていうことですから、突き詰めれば突き詰めるほどより新しいイノベーションが生まれる可能性があるわけです。
それによって他の会社では開発出来ないようなものを開発する、これはスペシャリティ・ファーマと言われていて、いわゆる専門特化型の新薬製造会社になるというのが一つの方向性としてあります。
もう一つの方向性としては、そもそも新しい薬を開発出来るかどうかなんてギャンブルに等しいので、開発されて出来てしまった物を会社ごと買収してしまおうというアイデアがあります。
こうすれば確かに買収の費用というのはかかるのですが、すでに開発されたものを手に入れることが出来ます。
すると計算が出来ますから少なくとも無駄になることはありません。
またこの新薬を開発するバイオベンチャーにとっても、上手く開発できた暁にはこうやって大きな会社に買収されることで、多額のリターンを得ることも出来るわけです。
そういう意味でお互いにとって良い状況とも言えるわけです。
では日本の製薬会社のランキングを見ますと、1位が武田薬品、2位が大塚ホールディングス、3位アステラス製薬、4位第一三共、5位は直近でこのエーザイを中外製薬が抜いたという状況になっています。
しかしこうやって見ますと上位に来る多くの日本の製薬会社というのは、先ほど説明したような新薬をどんどん開発して、なんとか生き残っていこうという会社が非常に多いです。
一方で一つ頭抜けているのがこの武田薬品工業で、武田は実は別の戦略をとっていて、まさにこの買収によって収益の安定性を確保しようとしているところがあります。
この買収によって大きくなった会社のことをメガ・ファーマと言うのですけれども、武田はこのメガファーマの仲間入りをしようとしています。
2018年にシャイヤーという会社を6兆円で買収しました。
とんでもない金額ですけれども、買収することによって世界のトップ10入りを目指したというのが、この武田の動きということになるわけです。
今この図では8位くらいに入っているのですが、現時点の2021年版では5位になっています。
というのもこのメガファーマと呼ばれる世界では、ものすごい大きな企業達は、例えばロシュ、ノバルティス、ジョンソンアンドジョンソンこの辺はもう同じように次々に製薬会社を買収してどんどん大きくなっています。
武田は少し置いていかれているような状況です。
上位になればなるほど資金力が付いてくるので、さらに次の会社を買収する力が出てくるわけです。
したがって競争はメガ・ファーマの数が絞られてこない事には、ますます厳しい状況になってくるというところになります。
一方で新薬開発というのも簡単ではありませんから、先ほど挙げたような日本の会社というのもやはりうまく開発出来なければ難しいということになります。
その中で実は上手くやっているのは中外製薬で、中外製薬の実は株式の6割を先ほどの世界第一位の製薬会社であるロシュが株式を持っています。
このロシュの販売網とか技術を使って中外製薬はどんどん新薬を開発しています。
直近では血友病の薬というのが出来て、これがものすごく売れています。
株価も伸びて業績も好調です。
このように美味しいとこ取りのやり方もあります。
ただ基本的にやはりこの製薬会社の見方としては新薬開発というのは、やはりギャンプル的な性質が強いということになります。
一方で医薬品に対する需要というのは無くなりません。
となるとではどういう観点で投資したらいいのかというと、常にどんな状況であっても、医薬品を提供し続ける会社というのは必要なので、そういった安定性が欲しいという人にとっては世界上位に入る、このメガファーマーなどを安い時に買っていくというのが一つ着実な投資方針としてあるわけです。
一方で今回のエーザイのようにスペシャリティ・ファーマ、特定の分野に特化したところだったら、一つの薬の成功によって巨額の利益を得られる可能性も含んでいます。
となると、夢を追う投資をしたいならこのようなスペシャリティ・ファーマに投資をするということを考えてみても良いかもしれません。
これはどちらが良いという話ではなくて、それぞれ投資する人の好みですから、あとは適当に買うのではなくて、よくその会社がどういう特徴を持っているのかどういう新薬を開発していて今後どんな可能性があるのか、そこまで見極めてから、夢を追うのであればその夢に賭けてみるというのはありではないかと思います。
ギャンブル的という話をしましたけれども、それをを知ってやるのか知らずにやらのか全然意味合いが違ってきます。
ぜひ個別の会社よく見てどこに夢をかけたら良いのかということまで考えてみてください。
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