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以下、文章化したものです。
大塚家具がヤマダ電機の完全子会社になって、上場廃止になるということが決定いたしました。
大塚家具というとこれまでお家騒動なんかもあって、その後経営が厳しくなっていたと報道されています。
そしてここにきてついに上場廃止ということになってしまいます。
この事例を見ることで私たちはどの企業に投資してはいけないのか、そして逆にどのような企業に投資すべきなのかということを認識することが出来ます。
この失敗の本質を見抜いて是非あなたも良い企業を見つけ出せる力を付けてみてください。
お家騒動だけじゃない!大塚家具の失敗
ヤマダホールディングスは2019年にこの大塚家具の過半の株式を保有して子会社化していました。
そしていよいよ完全に他の株主をなくして、そしてヤマダの傘下で再建を図っていこうということになっています。
ではその大塚家具の状況はどういった状況かというと、ここにあります通り売上高は見事に右肩下がりです。
そしてこの赤の棒線グラフで示されているのが営業利益なのですけれども、ひたすら止まることなく赤字が続いている厳しい状況です。
これに合わせで株価も低迷していて、これは5年のチャートですが、かつて1000円ぐらいあったものは今や300円という数字になっています。
過去5年で7、8割近い下落になってしまいました。
これだけ業績が悪化していると当然といえば当然のことで一時は倒産も噂された程ですけれども、その最悪の状況には陥らなかったというところであります。
そもそもこのような状況になったのはお家騒動、創業者である社長とその娘の対立ということがありました。
大塚家具といえばもともとメーカー直接仕入れというような形で、家具を仕入れて、そして当時としては比較的安めの価格で販売して、それを百貨店なんかを中心に売るということで一世を風靡しました。
バブルなど1990年代にかけては大きく業績を伸ばしました。
そんな時に2009年社長の勝久氏の娘であります大塚久美子氏が社長に就任しました。
この時は勝久氏としても娘ですから非常に期待を込めて就任したと思います。
ところがこの久美子氏はもともと経営コンサルとして働いていたということから、色々勝久氏が行っていた経営方法の改革を行おうとしました。
実は大塚家具は会員制で、積極的に店員が接客をして高いものを買ってもらうといったスタイルを取っていたのですが、久美子氏としてはそれが現代のスタイルに合わないということで、もっと入りやすくポップな雰囲気にしようとしました。
すると勝久氏は逆に怒ってしまって、俺のやり方を否定するのかというような形で対立が起こります。
2014年に久美子氏が社長を解任されて平の取締役になってしまいます。
そして当時会長となっていた勝久氏が社長も兼務するというような形になりました。
その後久美子氏は今度は株主を巻き込んで、今度は勝久氏に対抗しようとしました。
結果この株主を上手く言いくるめた久美子氏が議決権の争奪戦に勝って社長に復帰、その後勝久氏は退任するということになりました。
久美子氏は社長に復帰してそしてまた大塚家具を経営していくわけですけれども、先ほど業績を示しました通り2015年に就任してからというもの、そこから衰退の勢いが止まらなくなってしまいました。
見事に右肩下がりということになります。
いよいよお金も尽きてしまって貸し会議室のTKPからお金を入れてもらったりしたのですが、それでも結局立ち直ることが出来ずに2019年にはヤマダ電機の子会社なるわけです。
当初は子会社になっても社長に残ったままだったのですが、202012月に辞任を申し入れて久美子社長も退任するというような形になりました。
そしてこの9月にヤマダ電機による完全子会社化が行われて、上場廃止になるというような経緯になっています。
こうやってみるとお家騒動が大塚家具衰退の原因だったように見えるのですが、もちろんそれが引き金を引いたことは確かなんですが、私は必ずしもそれだけが原因だとは思っていません。
何故なら大塚家具の立ち位置というのは非常に厳しいところにあったからです。
大塚家具が失敗した要因としては3つ挙げさせていただきます。
中途半端な立ち位置、リストラの遅れ、そして3つ目が経営者の覚悟の無さです。
中途半端な立ち位置というのは、このアニュアルレポートに自らそれを示してしまっているというところなのですけれども、先ほど大塚家具というとメーカー直接仕入れによって、他の家具店よりも安く売るということで業績を伸ばしてきたと言いました。
しかし今やニトリやIKEAなどものすごく安いところが台頭してきました。
するとその時点で大塚家具にとって安いというポジションは失われてしまって、むしろどちらかというと割高というところになってしまいました。
ただ割高といっても高級な家具を扱っているわけでもなくて、確かに良い家具ですけれども、最高級品ではない、しかもこれまでは中流層を相手にやっていましたから、大塚家具で買ったからといって、ハイブランドということにはならないわけです。
その結果どっちつかずというところになってしまって、富裕層が来るわけでもなければ、中間層以下が来るということもなくなってしまいました。
この点勝久氏は会員制を続けたいということで、その会員制のお客さんというのは例えば百貨店に来るような、そこそこお金を持っているお年寄りだとは思うのですが、今後も経営が長く続けられるかどうかは別として、少なくとも彼らがいるうちは、会員制のビジネスによって存命出来た可能性は十分にあるという風に思います。
ところが久美子氏はむしろをマス層を取りにいき、一方ではニトリなどに対抗する明確な策もないまま、このような立ち位置の不明瞭な戦略を取ってしまったというのが一つの失敗というところになります。
またもう一つはリストラの遅れというところがあります。
ここにあります通り売上高販管費率です。
この販管費というのは例えば物件の減価償却費、あるいはの物件を借りている費用だったり、あるいは人件費だったりします。
それがニトリが売上高に対して38.6%なのに対して、大塚家具は63.6%です。
すなわちショールームや人件費とかにお金をかけすぎていました。
売上高販管費率がこれだけあるとこれに当然原価が加わってしまうので、原価が3割、4割いった時点でほとんど利益が残らないというような状況になってしまいます。
これではどう頑張っても利益を出すのは難しいです。
となると必要なのはリストラということになって、このショールームも私が数年前に行った時もガラガラでした。
全く利益を生んでいないというのが一目でわかる状況でした。
これを例えば縮小するなり、数を減らすなりして、まずはコストを削減しなければならなかった。
またその時行って感じたのは売り場にお客さんが全然いないのに、店員さんはいっぱいいたりしました。
なので店員さんの手が余ってしまっているわけです。
お客さんも来なくてしかも会員制も辞めてしまいましたから、少ないお客さんに積極的に接客するというようなこともなかなかないわけで、人員に関しても明らかに余っているという状況でした。
これではどう考えても成り立ちませんから、まずはそこをスマートにさせることが第一なんですけれども、これがが出来なかったということはら最大の失敗要因なのではないかと思います。
同じように有明にも大きいショールームを持っていたりします。
これらは削減出来なかったことによって、どんどんお金だけが流出して、数年前にはいよいよこの現金が底をついてしまうのではないかというようなことにもなってしまっています。
またこの現金がなくなるというのには伏線もありまして、実は勝久氏を久美子氏が追い出した時に、株主の賛成を少しでも得ようと配当を引き上げたんです。
配当を引き上げるというのはつまり会社にある現金を払い出してしまうということですから、そこで多額の現金を払い出したが故に、もう会社の金庫にお金が残っていないというようなことにもなってしまいました。
お家騒動が将来の経営に尾を引いてしまっているということになったわけです。
また何より足りなかったのは経営者の覚悟の無さだったと思います。
覚悟というのはこの久美子氏の覚悟だという風に思います。
こうやってお家騒動で敵も沢山でき、そんな中でも合理的に考えたら、やはりリストラしなければ始まらない状況だったのは目に見えていました。
ところが敵を沢山作ってしまいましたから、ここでリストラということになると、従業員の人心を掌握出来ないということになってしまいかねませんでした。
ただそこで覚悟を持っていればでもしも従業員全員いなくなったとしても、私はこの会社を再建するために何とかやりきるぞという気持ちでいなければならなかった。
それほど困難な状況に立ち向かっていたはずなんですけれども、実際はリストラなんかも目に見えて行うこともなく、ただただ現金の流出が続いて、苦しい状況になって外部に助けを求めざるを得なくなったというのが大塚家具の状況です。
特に私が強調して言いたいのはこの経営者の覚悟というのは一番大切なことだということです。
どんな企業であってもやはり経営が駄目になってしまったら、そうそう伸びるものではないです。
逆に苦しい状況にあっても経営者がちゃんと気持ちを振り絞って覚悟を持ってやることが出来れば、その会社は復活する可能性がかなり高いという風に実感として持っています。
投資する時にはそういった経営者の覚悟というのは是非皆さん見ていただきたいと思います
痛みなくして改革なし
さてこのままでは投げっぱなしになってしまうので、大塚家具はどうすれば良かったかというところを最後にまとめたいと思います。
やはり方向性としては高級路線化、売り上げのボリュームは減ってしまうのですが、売り上げの価格を上げることによって利益が残るというようなやり方が一つの選択肢としてあったと思います。
これはもともとこの大塚家具でやっていた会員制ビジネスだったり、今勝久氏が匠大塚でやっているようなスタイルが一つの方向性としてはあったのではないかと思います。
また逆にマス層を重視してそれこそニトリやIKEAに対面で挑んでいくという方向性も、頑張ればなきにしもあらずだったと思います。
ニトリとかIKEAだとどうしても画一的なスタイルになってしまいがちですが、大塚家具は自分で作っているわけではなくて、色んなところから仕入れているわけなので、その仕入れの目利きというのを海外で良いものを見つけて、安く仕入れて、それをニトリよりも少し高いくらいで売るということをすれば、ニトリは嫌だという需要をある程度取り込めたのではないかと思いますが、そういった動きもなかなか見られなかったというところです。
それからショールームを持っていて大塚家具という名前も知られていますから、逆にショールームで物を売るということはしないで、販売に関してはオンライン倉庫から持ってくるということを中心にして、コストをギリギリまで削ってやるというやり方もあったのではないかと思います。
ただどれをやるにしても何かを捨てなければ経営の改革はありえません。
これまさに痛みなくして改革なしという形で取り組められなかったというのが大塚家具の最大の敗因ではないかと思います。
これからヤマダ電気の傘下で再建を図っていくのですけれども、ヤマダ電気の顧客というと、やはり家電を安く買いたいという人が非常に多いと思うので、そうなると取るべき戦略というのはマス層重視、つまり何とか原価を下げて、そして販売販管費率をギリギリまで下げて、そして売価を安くすることによって、マス層を取り込むという戦略が今後考えられる方向性かなという風に思います。
今後ヤマダホールディングスの傘下でどれだけ再建出来るのか、またそれがヤマダの業績にどれほど影響を与えるのかというのは今後も見守っていかなければなりません。
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