買ってはいけない投資信託、買っても良い投資信託。顧客の99.4%がプラスになる投信会社

日経新聞の広告に感じた「違和感」

拙著『年率10%を達成する!プロの「株」勉強法』の広告が日本経済新聞に掲載されたので、久しぶりに紙の新聞を買って読んでいると、気になる広告が目に飛び込んできました。

【出典】日本経済新聞(2021年6月25日朝刊)

「資産形成物語 ウサギとカメ」と題して、長期投資のメリットを謳っています。「非課税制度活用」「長期vs短期 株式投資」「金融機関の賢い選び方」と比較的まっとうな内容が並んでいるのですが、最後の「投資で勝つメンタル」のところが私としては引っかかりました。

【出典】同上(画像をクリックで拡大)

この中で、いずれの会社も「アクティブ型投資信託」を推奨しているのです。ここまでの流れを見て、投資についてある程度知識のある方なら「あれ?」と思うところでしょう。なぜなら、個人投資家が抑えるべき基本的な知識として、「アクティブ型投資信託はインデックス型投資信託に勝てない」という命題があるからです。その詳細は、「ウォール街のランダム・ウォーカー」という不朽の名作にまとめられています。

アクティブ型投資信託が負けやすい理由

なぜアクティ型がインデックス型に勝てないかというと、以下のような理由が考えられます。(一部私の意見も含みます。)

  1. 一時的にインデックスを上回るものがあっても、最終的には「平均回帰の法則」により並のパフォーマンスに収束する(結局は猿がダーツを投げたのと変わらない)
  2. 最終的なパフォーマンスがどちらも「平均」なら、手数料が高い分アクティブ型が負けやすい
  3. 1を前提とすると、直近の調子が良いファンドに資金が流入しやすく、それらは負ける可能性の方が高い(当然、負ける投資家のほうが多くなる)

最終的な実力がインデックスを上回る投資信託があるかどうかは議論が分かれるところで、もしそれがないとしたら長期にわたるウォーレン・バフェットの好成績が説明できないことなります。そのため、この話は一旦置いておきましょう。

問題となるのが、「手数料」と「販売会社の姿勢」です。

手数料に関しては、例えばインデックス投信で手数料が最低水準の「SBI・全世界株式インデックス・ファンド(愛称:雪だるま)」では買付手数料がゼロ(ノーロード)で、信託報酬が「0.1102%程度」となっています。これに対して、アクティブ型は買付手数料が3%前後、信託報酬が2%前後です。

すなわち、アクティブ型を買うと、最初の1年だけで投資金額の5%が手数料として持っていかれてしまいます。これだけで、インデックスファンドに勝つことが難しくなることがおわかりいただけるでしょう。

それでも、インデックスを上回る成績をあげるファンドを買えば問題ないと言えるかもしれません。しかし、その先は販売会社の姿勢、あるいは購入する個人投資家の下心が大きく影響してきます。

アクティブファンドの説明でピンとくる人もいるかもしれませんが、ここで最も多く手数料を取れるのが「買付手数料」です。すなわち、ただ持つだけでも良いですが、それ以上に短い期間でたくさん売買してもらったほうが多くの手数料が取れるのです。そのためには、できるだけ値動きが激しい方が、営業トークもしやすくなるでしょう。(「そろそろ利益確定しませんか」「損切りして次に行きましょう」と。)

そして、値動きの激しい投資信託は、得てして直近で話題になり、すでにかなり値上がりしているものが大半です。そのようなものこそ、個人投資家の興味をひきやすくなります。(最近で言うなら、「AI」「半導体」など、いわゆるテーマ株ですね。)

しかし、上がりすぎた株はやがて落ちてくるのが世の常ですから、営業トークと下心が合致したものほど、高値掴みになりやすく、損をしてしまう投資家がとても多くなってしまうのです。まさに、来るべくして来た道です。

これに輪をかけてひどいのが、投信会社の側も「売れる」投資信託の開発に余念がないことです。とりあえず「テーマ」に沿ったものを新商品としてどんどん発売していきます。しかし、そこに魂はこもっていませんから、やがてテーマが過ぎ去ったり、値下がりによって見向きもされないようになり、やがてその短い生涯を終えることになるのです。

したがって、少なくとも設定から間もない投資信託は避けるべきと言えるでしょう。

買っても良い投資信託。顧客の99.4%がプラスになる会社とは?

それでは、アクティブ型の投資信託を選んではいけないのかと言えば、必ずしもそうは思いません。一定の基準をクリアすれば、成果は保証できないにしろ下手なものを買うことは避けられると考えます。

例えば、時流に乗ることを意識した「テーマ株」でなく、しっかりとした哲学を持って長年運営され続けてきたものは一定の価値があると考えます。ファンドマネージャーの顔が見えているとなお良いです。例えば、「さわかみ投信」や「ひふみ投信」なんかはこのあたりと言えます。

また、特定のセクターや地域に投資したいと考える場合にも有効です。特に、新興国への個別株投資は制度上も銘柄選定上も難しかったりするので、投資信託で代用する方が近道の場合があります。これらは投資信託というよりも、米国上場のETFの方が種類が豊富で恣意性がないのでおすすめです

【出典】SBI証券(画像は一例です)

あとは、インデックス型で十分ではないでしょうか。そこで、インデックス型と投資信託がハイブリッドになっている投資信託会社として私が注目しているのが「セゾン投信」です。ここは、インデックス型の投資信託をひたすら積み立てることを呼びかけています。

インデックスファンドへの投資で案外大変なのが「この投資で本当に良いのだろうか」「もっと有利な投資先があるのではいか」と悩んでしまうことです。そこから脱却しようと下手に動いた結果、パフォーマンスを悪化させてしまう個人投資家が少なくないのです。

その点、セゾン投信では社長の中野さん自身が「積立王子」を名乗って積立投資を推奨しています。販売会社に頼らず、主な販売手段はセミナーということで「教育」と「運用」の両面から個人投資家を支えているのです。その結果、2021年3月末時点で、セゾン投信の顧客の99.4%がプラスになっているのです。

【出典】セゾン投信

もっとも、純粋にインデックスファンドを積立していればこの結果が得られたわけですが、そのことを地道に教え続けたがゆえの結果だと考えます。ちなみに、私も中野社長にお会いしたことがありますが、物腰やわらかく、しかし深い洞察力のある方だと感じました。

この機会にぜひ、投資信託についても考えてみてください。もちろん、つばめ投資顧問もセゾン投信のように「教育」と「運用」の両面で個人投資家の皆さまを支えたいという思いは変わりません。

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