米国株 vs 日本株、投資するならどっち?

米国株が素晴らしい理由「株価推移」「シリコンバレー」「株主優先主義」

近頃、世の中では猫も杓子も米国株という風潮が漂っています。私の方にも、もっと米国株の推奨を増やして欲しいという相談がやってきます。一部の識者の間でも、もう日本は捨てて米国だけに投資しろという論調すら聞こえてきます。果たして、私たちは、米国株だけに集中すべきなのでしょうか?

なぜここまで米国株が取り沙汰されるのかといえば、これまでの株価推移にあると考えます。30年単位のチャートを見ると、一時のアップダウンはあるにしても、S&P500は大きく伸び続けています。

【出典】Google

S&P500を30年間持ち続けるだけで30倍以上にもなった計算です。一方で、日本の30年前といえばバブル経済がちょうど崩壊する時期でしたから、それからの株価推移は無残なものとなっています。この比較を取るだけでも米国株に優位性があるように見えてきます。

TOPIX推移(【出典】株探)

また、その中身についても、魅力的なものが多く含まれています。世界的IT企業であるGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)と呼ばれる企業はいずれも米国企業です。これらのIT企業の急成長が、米国株を大きく引き上げてきたことは確かです。

アメリカにはシリコンバレーをはじめ、このようなIT企業が発生し、成長する土壌があります。その成長を享受できる米国株はやはり素晴らしいと言えます。「次のApple」が誕生し続ける限り、米国株の先行きは明るいように見えます。

米国株が素晴らしいと言える3つ目のポイントに、株主優先主義があります。米国で「企業は誰のものか」と尋ねたら、多くの人は「株主のもの」と答えるでしょう。日本だと、「従業員」や「お客様」との声も多くなるのと対照的です。

株主優先の考え方があるからこそ、配当や自社株買いには積極的です。多くの米国企業は自己資本比率を大幅に減らしてでも配当や自己株式取得に回す傾向があります。中には、債務消化に陥ってまでも株主還元を行う企業も見られます。それほど株主からの評価というのは大切なのです。

株主優先主義を取る以上、至上命題となるのが利益の成長です。利益を成長させるためには、様々なアイディアを駆使して、経営を軌道に乗せる必要があります。その仕組みが米国企業に整っているのです。

投資収益の源泉は「成長」と「リスクプレミアム」―足元の調子が良いほど、将来の期待収益は減少

ここまでの話を聞くと、「なんだ、やはり米国株で間違いないじゃないか」という声が聞こえてきそうです。ただし、私の真意はそこではありません。

ポイントになるのは、株式投資における利益の源泉です。それには大きく二つあると考えています。

一つは企業の成長によるものです。利益が成長すれば、やはり株価も伸びるというのは、長年の経験則でもほぼ間違いありません。ただし、それだけで株価が説明できるかというと、必ずしもそうではないと考えます。なぜなら、どれだけ成長している企業でも、無限に伸び続けるということはないからです。

そこで大きく影響してくるのが、「リスクプレミアム」という考え方です。リスクプレミアムとは、心理という言葉に置き換えても良いかもしれません。人々は、目先調子が良いものに対して楽観的に、逆に調子が悪いものに悲観的になる傾向があります。

楽観的になるということは、リスクプレミアムが下がり、株価指標であるPERが上昇することを意味します。実際に、足元のアメリカの株価は、PER22倍と、歴史的に見てもかなり高くなっています。これは人々が米国株に対してとても強気になっていると同時に、リスクプレミアムが低下していること意味します。リスクプレミアムの低下は、将来の株式収益率の低下を意味するのです。

それに対し、日本のPERは17倍と、米国と比べて低めとなっています。これはまだ、リスクプレミアムがある程度高く維持されているということです。このリスクプレミアムが、解消することがあれば、今度は株価の上昇局面というものが訪れます。

米国株は目下非常に調子が良いですが、それは将来の成長を先取りしているだけとも読み取ることができます。成長を株価が先取りしたら、その先はしばらく伸びないという状況が続くことも珍しくないのです。個別の企業ではもとより、1970年代の米国株はほぼ横ばいという状況が続きました。この期間は「株式の死」とも呼ばれ、今の米国株ブームとは対象的にもう誰も株式には投資したがらないという状況だったのです。

ただ、皮肉なことに「株式の死」以後30年間の米国株は黄金期を迎えることになります

個別銘柄を買うなら日本株がベターな理由

本稿は「米国株か日本株か」というテーマですが、どちらかといえば「インデックスが個別株か」という議論が適切なのではないかと思います。米国株投資を進める人の多くはS&P500への投資を進めていて、あまり個別株に触れているものは見られません。

インデックスの観点で言えば、日本のインデックスである日経平均株価やTOPIXを買うよりも、米国のS&P500やダウ平均を買った方が有利だという点に関しては私も同意します。

なぜなら、リスクプレミアムの問題はあれ、長期で見るほど株価は業績の成長性に依存してくるからです。そこに関しては、いまだに米国企業の方が一日の長があるとに考えます。インデックスを長期でホールドし続けるなら、米国株で間違いないでしょう

一方で、個別株で見れば、必ずしもそうはいきません。前述の通り、米国株は全体的にPERが高く、リスクプレミアムが低い状況となっていますから、この株価で買った場合の「期待収益率」は決して高くないのです。

日本の個別株を見れば、リスクプレミアムが高い、すなわちPERが低い銘柄もみられます。これらの企業がうまいこと成長すれば、企業の成長とリスクプレミアムの解消という二つが交わって、高い収益率を記録できる可能性があるのです

これを見つけるためには、みんなが知っている銘柄ではなく、あまり知られていないようなものを探す必要がありますから、異国の地である米国の企業を探すよりも、日本企業を探した方が一日の長があると思います。

個別の企業に関して見れば、日本の企業は成長しないというのは誤解で、むしろ言葉の壁などによりある程度閉鎖された市場であるからこそ、競争が緩く、うまくいけば、大きく伸びることができる企業も存在するのです。これを探すことが投資家の楽しみとも言えます。

投資に国境はない、良いと思う企業を買え!

以上を踏まえて、私たちは一体どんな投資を行ったらいいでしょうか?

一番大切なのは、「日本株か米国株か」あるいは「インデックスか個別株か」ということにこだわらないことです。

なぜなら、それぞれに良いところ悪いところがあり、両面を見つめて意思決定する必要があるからです。インデックス投資に関して言えば、先ほど説明したように、日本株より米国株の方が良いといえるでしょう。

また、そもそもインデックスに投資するというのは、どこの国が成長するとか、そういった恣意性を挟まないことが最も重要ですから、その意味では、米国株よりも世界株に投資した方が良いと言えます。アメリカが今後もどこよりも繁栄し続ける絶対の理由などないのです。私も、確定拠出年金なんかは米国株ではなく、世界全体のインデックスに投資するようにしています。

個別銘柄に関して言えば、私は投資に国境はないと考えています。世界の金融は間違いなく繋がっていますし、実体経済という点でも、グローバルに展開している企業がほとんどです。そんな中で、米国企業だから伸び、日本企業だから伸びないという概念はもはや存在しないのです。

私たちは、企業・株式市場の所在地に関係なく、自分の身近なところからよく知った素晴らしい企業を探し、それらに投資することで、企業を見抜く力による収益すなわち「α」(アルファ)を稼ぎ出すことが、大きく資産を伸ばすためのポイントなのです。

ぜひこの考え方を実践し、あなたの投資に生かしてみてください。

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1 個のコメント

  • 私は今バンガードのS&P500と全世界株式しか保有していません。何十年も株式投資をしてきましが長い目でみればこれが1番正解だと思っています。

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