「5年で2倍」を達成するPERと成長率の考え方―低PER思考からの脱却

YouTubeに動画をアップロードしました!

以下、文章化したものです。

 


私自身はバリュー投資家を自認しているのですが、こうやってバリューにこだわっているとどうしても低PERの銘柄にばかり注目しがちです。

しかし、低PERにこだわるばかりにこれまで失敗してきたこともしばしばありました。

今回は低PERにこだわらず、グロース株と言われるような高成長株を買うには、どういった基準を設ければいいのかということについて説明したいと思います。

低PERにこだわりすぎる弊害

まず、低PERにこだわる弊害と言いますと、思いつくところで私が3つ挙げさせていただきました。

その1つがバリュートラップというのがあります。

PERが低いからという理由で買うと、やがてはその低いPERが解消されて株価が上がるということを期待するのですが、いつまで経ってもその低いPERが解消されないということが起こり得ます。

こうやって下がらないにしてもずっと上がらないというような状況が続くことがあります。

これがバリュートラップと呼ばれるものでバリュー投資家が陥ってしまいがちです。

2つ目に金融相場での劣後というのがあります。

まさに私がここ最近で経験したところでもあるのですが、金融相場すなわち今みたいに金融緩和で金利が引き下がるという局面になると、どちらかというと高成長でPERが比較的高い銘柄の方は株価が上がりやすい傾向があります。

これは金融理論の勉強していれば自ずとそういう形になってくることがわかるのですが、とにかく低PERばかりの銘柄に寄ってしまうと、今みたいな相場でどうしても儲けられないということが起きてしまいがちです。

それから良い銘柄なのに買い時を逃してしまうということも珍しくありません。

私が今回主に注目したいのはこの3つ目のところなのですが、企業の分析をしていて、この銘柄はすごい成長していると思いながら、一方でPER20倍とか25倍そういったものに出くわすことがしばしばあります。

バリュー投資家の観点から言うとPER25倍は少し高いという風に思ってしまって、ついつい買いを見送ってしまうということがあります。

しかしそういった銘柄に限って、その後も株価が順調に伸び続けるということがあります。

業績自体は成長しているので本当に悔しい思いをしているわけです。

例を言うならば直近ではエムスリーはコロナ前に非常に注目していて、経営自体は99点だというようなブログもアップしたのですが、それにも関わらず買っていなくて、その後の大幅な上昇を逃してしまったというところがあります。

本当に”良い企業”なら問題なし

バリューが成長に劣後しているといういうのはこのグラフでも表されていまして、これはフィナンシャルタイムズの引用ですが、赤で示されたものがS&P500バリューと呼ばれるもので、青がS&P500グロースと呼ばれるものです。

これはアメリカの指標ですが、多くは日本でも同じようなことが起きていると考えてください。

ずっとこのバリューとグロースというのは上に行ったり下に行ったり、どちらかが良くてどちらかが悪いという期間が続きました。

特に顕著なのが、例えば2000年前後のITバブルにおいては、グロース株みたいなのは一時はバリューを上回るのですが、その後今度はITバブルの崩壊、あるいはリーマンショックの時などにはこのグロース株というのは逆に大きく下がりやすい傾向があります。

したがってこの2000年前後ではグロース株は一旦大きく上がったのですが、その後下がって、さらには2008年リーマンショックがありましたから比較的堅調だったバリュー株に比べて、このグロース株というのは後塵を拝していました。

ところがリーマンショック後に金融緩和が進んでいる状況でもあったので、特にこのグロース株が強くなってきました。

ましてこの足元のコロナ禍では金融緩和の継続によって、さらにグロース株が伸びるという展開になりました。

また単に金融緩和の話だけではなくて、グロースというと、特に素晴らしい企業に関してはその成長が継続するというところがあるんです。

バリュー株はどうやって株価が上がるのかというと、基本的にはPERが上がることによって株価が上がるということを期待します。

これを割安感の解消とも言います。

今PER10倍で取引されている銘柄がこの銘柄悪くないのではないかということで15倍で取引されるようになったとしたら、50%の上昇ということになります。

その中で一方で多くは利益成長を見込んでいないということになるのではないかと思います。

一方でグロース株についてはPERがすでに25倍30倍というような高値で取引されていることもありますから、さらに上がるというのはファンダメンタルズ的には期待しないということになります。

もっとも、短期的なトレーダーの話では20倍30倍40倍であろうがさらに上がるという風に考えて取引する人もいるのですが、長期投資やファンダメンタルズの観点からは期待してはいけないというところになります。

ただ一方でPERが上がらなくても利益が成長することによって、PER30倍のまま利益成長にしたがって株価が上がっていくとこういったことを考えるわけです。

先ほどのバリューとグロースのチャートを示しましたけれども、バリューは実はこの上昇というのが一瞬で過ぎてしまうという可能性があります。

PERの上昇というのは1回ですから10倍が15倍になって、基本的にはそれで終わりです。

一方でグロース株というのは成長がどこまで続くかわからないのですが、これが続く限りは株価が伸びやすいという事になります。

さらに言うと、強い企業がどんどん強くなるという傾向が最近続いています。

例えばグーグルとかマイクロソフト、それからアマゾンなどです。

そういったところはもともと強いのですが、それがIT、世界に拡大するということでどんどん利益を伸ばしてきて、時価総額を伸ばしてきて、世界の時価総額ので大部分を占めるようなそういったことになってきました。

つまりグロースはさらにグロースを生むというそういった展開もあり得るわけです。

これに関してあのウォーレン・バフェットが言った金言があるのですが、バフェットというともともとバリュー投資をやるという風に多く認識されていますし、特に昔はそういった動きをしていました。

実際にこのITバブルの時も下手なIT銘柄に手を出さずにバリュー株に徹底することによって、損失を逃れたという風に言われています。

しかしそのバフェットが言ったことには『そこそこの企業を素晴らしい価格で買うよりも、素晴らしい企業をそこそこの価格で買う方が良い』と言っています。

すなわちずっと強くて成長が続くような銘柄を、PER20倍とか25倍とかそれぐらいの安いとは言えない水準でも、買った方が良いということをあのバフェットが言っています。   

これはどういうことかというのは実はずっと私の中でもモヤモヤしていたところではありました。

ただ金言を一つ理解出来たのがグーグルへの投資です。

私は投資顧問サービスやっているのですが、このAlphabet(Google)を2017年の8月に推奨しました。

株価が930ドルでPERが23倍でした。

このPER23倍というのは当時私が扱っていた銘柄の中でもかなり高い方のPERだったと思います。

しかし何故この銘柄を推奨したのかというと、まさにこのウォーレン・バフェットの金言に従ったんです。

素晴らしい企業だというのは間違いないと思っていましたので、PER23倍で割安とは言えないけれどもこれぐらいなら買いではないかという風に思いました。

その後ずっと2019年の後半までそんなに上がらなくて、1000円前後をウロウロする展開が続いていたのですが、このコロナショックというのがありまして、2021年の8月には今2800ドル、そしてPERは30倍とそんなに上がったわけではないのですが、利益の成長によって株価がなんと3倍にも成長したというところになっています。

ここからわかることは要するにしっかりした銘柄を持っていれば、別に割安な銘柄を買わなくても、十分に成長出来るということです。

特にグーグルに関してはもう非の打ち所がないくらいのビジネスモデルを持っています。

私も一度推奨した銘柄はフォローし続ける、何かあった時にはすぐに分析を入れるだとかそれをお客さんに発信するとかそういった動きを行っているのが、グーグルに関してはそういったことをする必要はほぼありませんでした。

もうすなわちで1回買っただけでもう放っておくような状態でした。

そんな放っておいたにも関わらず何もせずに4年で3倍ものを利益を上げることが出来ているということで、私としてはこういった投資を目指したいなという風に思っています。

PEGレシオの妥当性は?

ただ難しいのがPER23倍でも買いと言いましたが、なかなかPER23倍で割安と見出すのは容易ではないというところがあります。

そこで一般的に使われる投資の指標としてPEGレシオというものがあります。

PEGレシオすなわち成長性を加味して、株価の割安感を探るというそういう指標があります。

このPEGレシオとはPERを年間の利益成長率で割ったものです。

これが1以下ならば成長性に対して十分に割安であると言えます。

この考え方をもとに伝説的な投資信託の利益を上げたのが、アメリカのファンドマネージャーであるピーター・リンチという人です。

これが一つ参考になって例えば実際の数字を当てはめるならば、PERが15倍で成長率が10%ならpeg は1.5ということになります。

ただ少し気になっていたのが、PERと利益成長の数学的な関係が全く無いのです。

感覚的な数字でしかなくてそれに疑問を抱いていました。

例えばPERが10倍だとしたら成長率10%なのですけれども、PER10倍で成長率を10%もあるのにPERが10倍の銘柄ってそうそう存在しません。

PEGレシオが1を下回るような銘柄は見つからないのではないかという風に思っていました。

そこで私が考えたのが例えば5年で2倍というのは私の投資の一つの目標です。

5年で2倍だったら年率は15パーセントの成長というところになります。

これを達成するためにはどうしたらいいかという観点で、PERとEPS成長というのを見直してみました。

5年で2倍を達成するための前提です。

株価はEPSとPERによって算出されます。

そして5年後のPERは15倍に収束するというような仮定を置きました。

これはどんなに良い成長する企業でもどこかでその成長が止まるということも考えて、成長が止まるのだとしたら、どれぐらいのPERに落ち着くべきか、保守的に通常平均である15倍に収束するという風に考えて計算してみました。

また成長率は複利での年率平均ということになるので、例えば5年で2倍なんですけれども、4年間は100でいって、5年後に200になった場合も年率平均15倍という数字になります。

この前提をもとに計算したのがこのグラフです。

これはPER10倍の時にこの利益成長が何パーセントあれば、5年で2倍が達成出来るかというそういったものです。

すなわちこのグラフで言うならば、青線よりも上にあれば5年で2倍以上が期待出来るというものです。

具体的な数字を当てはめますと例えばPER10倍の場合に、5.9%以上の年間成長率があれば、5年で2倍を達成する可能性が高いと言うに言えます。

さらには15倍の場合14.9%、20倍の場合21.7%、25倍の場合27.2%ということになります。

こうやって計算してみると実は先ほど説明したPEGレシオというのは、案外的を射てきます。

例えば15倍で14.9%ですから、PEG1というのはほぼ当てはまるわけです。

それが20倍も25倍もかなり近い数字になっているわけです。

ただ一点気をつけなければならないのが、PERが下がってくるとかなり違ってくるというところです。

10倍の場合すなわち6%の成長ぐらいで十分に倍を達成し得るということです。

ここから分かることは確かにこの15倍以上だったら、だいたいPEGレシオ1以下というのが当てはまってくるですが、割安株になればなるほどそこまで大きな成長しなくても十分に成長率に対して割安と取れるということです。

もっともここで前提としているのがPER10倍から最終的に5年後には15倍になる、すなわちその間も成長しているので成長性が見直されて、高い評価をむしろ受けたというところになってくるので、その点に関しては注意が必要です。

ただ可能性としては割安株のところにもありますし、一方でPERが高くなっても全く買えないかというとそうではなくて、それなりにハードルは上がっているのですが、そのハードルを越えるような銘柄があれば十分に利益を上げられる可能性があります。

むしろPERが高い銘柄というのは先ほどのグーグルので説明しましたように非常に良い銘柄である可能性が高いです。

そういった銘柄は本当に何もしなくて放っておいても大丈夫だという場合があります。

ぜひ私はそういった銘柄を探したいなという風に思います。

「5年で2倍」を達成した企業は?

この5年の平均のEPS成長率というところですが、具体的にこの年間5.9%、それから14.9、21.7、27.2とどういう企業が達成しているのかというのを知っているとイメージが湧くと思います。

これは福利ですから毎年平均で25%以上成長し続けるというのは容易ではありません。

ただそういった企業も中にはあるので、ぜひ次の例て見ていただきたいのですが、6%に関しては多くの企業が達成しているのです。

だからこそPER10倍とかの中で成長率はそこそこの銘柄を見つけ出すというのはそれほど難しくなかったりします。

これがバリュー投資が一つ人気を集めている要因でもあります。

そういった中でこのよう過去5年間に関して年率6%以上というのを達成しているわけです。

ヤクルトも地道な会社のイメージがあります。

ヤクルトとか綜合警備保障、ツルハドラッグ、それからHOYA、そして日本電産も案外この辺に収まってきます。

その前が結構伸びてたのですが実は最近は6%程度ということです。

さらに15%というところになりますと、これはPER15倍だったら2倍以上達成出来そうかなというところなのですが、それでもいわゆる高成長企業といわれるところが入ってきます。

信越化学工業や、リクルート、そしてニトリとこの辺が年率15%ということなので、将来PERが15倍に戻るならという前提なんですけれども、ぜひ5年で2倍というリターンを達成したければ、15倍よりも安い価格では買いたいというところであります。

さらに22%というところで言うと、ワークマン、ライオン、エステートと似たような会社になってしまいました。

けれども例えば20%以上となるとワークマンはかなりの成長株ですよね。

ここまでにならないと年率20%の成長は達成出来ないとこういうところは一つ肝に銘じていただいた方が良いと思います。

このEPSがずっと伸び続けるというのはそんな簡単ではない、一方でもし見つけたらかなり銘柄の選択肢が広がるという風に言えるかも知れません。

27%以上というところでは神戸物産とかIRジャパンというところもあったりします。

一つ異質なのがソニーです。

かなりの大型株ですが、ソニーはずっと伸び続けたというよりは、色々試行錯誤してきたことによって、まさに復活銘柄としてここに来ているわけです。

こういった企業だったら仮にPERが今現時点で30倍で同じような成長が続くのだったら、現在のPER30倍ぐらいであっても十分5年で2倍とかそういったリターンが期待出来るという風には言えます。

結論として言えることはとにかく割安な成長株を買えということです。

一番大切なのは冒頭でも言いましたが、長くなればなるほど利益の成長がどれだけ続くかということが大切になってきます。

そういったしっかりした素晴らしい企業を少しでも割安な価格で買いたいというところなのです。

もちろん割安株がダメということではなくて、成長株が割安で置かれているならこれ以上に良いことはありません。

ただその割安な成長株を見つける基準として単純にPERが安いというだけでは、見つからなかったりするので、このPEGレシオや、先ほどのグラフみたいに5年で2倍を達成出来るかどうかを一つ目安にしていただければ良いと思います。

これをやっていただくことによって単純な割安株だけではなくて、割安で成長する株をきっと見つけ出せることが出来るという事になってきます。

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