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以下、文章化したものです。
今回はソフトバンクグループについてです。
ソフトバンクグループはここ最近冴えない値動きが続いていたのですが、直近で大きく上昇しています。
これがなんと9月7日の一日で10%近く急騰し、9月8日昼の時点でここからさらに10%近く上昇しています。
ソフトバンクグループというと常日頃から株式市場を賑わす銘柄ですけれども、ここに来てまた大きな動きとなっています。
ソフトバンクグループの株価が何故このような動きをしているのかということと、今後の可能性について見てまいりたいと思います。
最近の下落要因3つ
ソフトバンクグループが昨日今日で非常に大きく上げているのですが、それまで株価推移はどうだったのかというところについて見ていきたいと思います。
これがこの2年間の株価推移です。
コロナショックを受けて一時大きく下がって、現在の株式分割の株価で4000円を割るところまで下がりました。
ところがその後好調な株式市場といういうこともありまして、今度は大きく上昇する展開となり、コロナ後から年始にかけて株価は4000円を割るところから、1万円を超えて2倍超の上昇を遂げました。
昨年でも大型の銘柄のうちでは非常に大きな上昇率を遂げた銘柄となりました。
しかし年始のピークを経て、株価は下落基調にあったわけです。
ピークからマイナス40%ぐらい下げているという状況です。
何故ここまで下がったのか下落要因を説明いたしますと、一つは利益確定売りということがあるのではないかと思います。
昨年で2倍以上に上昇してきた株価ですから、新しい年を経てそろそろ売っておこうかと考える投資家が多かったのではないかと思います。
それもあっては売りに押されてじわじわ下がってきていたというところがあります。
それから中国不安、このソフトバンクの価値というのは実は半分近くがこの中国のアリババによって占められているというところがあります。
詳細を見てみましょう。
これがソフトバンクグループが保有する株式の内訳です。
ちなみにソフトバンクとソフトバンクグループ、非常にややこしいのですが、私が今解説しているのは持ち株会社のソフトバンクグループのことです。
携帯電話をやっているソフトバンクの親会社ということになります。
このソフトバンクグループの方ですが、今は会社として事業を行っているわけではなくて、様々な企業に投資することで、その価値を増やそうとそういうことを目的としている会社です。
したがってこの会社の価値というのはそこが持つ株式の価値によって評価されるべきだという風に考えます。
その上での時価ですが、それに関していえばトータルで30.16兆円で、そのうちアリババが12.4兆円、39%を占めています。
ニュースなどで報じられているように、今中国では大きな変革が起こっています。
あの習近平国家主席がいわば独裁体制に近い体制を築こうという風に考えています。
習近平思想は共同富裕という考え方です。
これで何が起きているのかというと、これまで目立っていたアリババやテンセントなどの中国株式市場を牽引してきたハイテク企業があるのですが、これらが力を持ち続けるのは習近平にとって邪魔だということが考えられました。
そうやって今このアリババとかが政治的にいじめられているというところがあります。
アリババの傘下にありますアリペイをやっているアントフィナンシャルという会社の上場も、政府の横やりが入って中止になってしまいましたし、アリババの創業者であるジャック・マー氏は今は経営からは退いているのですが、一時は中国に対する批判のようなことを言ったことで、一時拘束されてしまったというような噂もあるぐらいです。
そういった思想を急に習近平国家主席が進めているので、中国の企業株価というのは今大きく下がっているというところがあります。
その中でも1位2位を争う時価総額を持つこのアリババがソフトバンクグループに関しても、4割もの価値を占めています。
これがマイナスになってしまうということになると、ソフトバンクグループも当然無傷では済みませんから、それもあってこのように株価が下落しているという状況があります。
これが中国不安によるソフトバンクグループの株価の下落です。
そして3つ目としてあるのがそもそもの日本株離れというところがあります。
今年2021年に入ってから日本株はあまり調子が良くないところがあります。
年始にかけては一時大きく上がったのですが、その後ズルズル下がるような展開がありました。
一方でアメリカ株は大きく上昇が続くという展開でしたから、わざわざ日本株を買わなくても、アメリカ株買えばいいのではないかというような流れが機関投資家もそうですし、個人投資家に関してもそういった動きが見られました。
このように日本株離れが進んだというところです。
その中では日本株というと、この日経平均を左右しているのは実は日経平均を構成する上位数社だけで占められているというところがあります。
この日経平均寄与度ですけれども、1位がユニクロのファーストリテイリングです。
これが今9%の寄与ということになりますが、全体の9%がファーストリテイリングの動きによって左右されるというものです。
そして2位が東京エレクトロン、そして3位がソフトバンクグループ5.4%となっています。
この日経平均、トレードしようと思うとインデックスとかETFを買えばいいですが、それ以上に端的に言えばこれらの銘柄を買えばそのインデックスに付いていけるというところがあります。
またそのインデックスを構成するETFなんかも、日本株に急にお金が集まるというところになると、これらの銘柄を自動的にどんどん買っていくということになります。
したがってソフトバンクグループのこれまでの下落というのは、日経平均の下落で、様々な投資家の日本株離れというところと無縁ではありません。
今回の上昇要因3つ
しかしここで大きな転換が起こりました。
菅総理の退任というニュースです。
正直、菅政権の支持率というのは下落の一途でしたから、このままだともしかしたら自民党が今度の衆議院解散総選挙で負けてしまうのではないかというような動きが見られたわけです。
しかし菅さんが退任するということになると、逆にこれから総裁選がどんどん盛り上がるということになりますから、むしろ自民党にとって有利に働くだろうという投資家の読みが働きました。
ちなみに投資家というのは何より安定した政権を求めます。
政権が安定しないとそれはすなわちカントリーリスクが高まるということなので、投資家、特に外国人投資家はあまり投資したがりません。
逆に日本では延々と続いていた自民党政権が、そのまま残る可能性が高いということになると日本にも投資しやすい、まして自民党というと、その他の野党と比べると企業寄りの政策を取るので、自民党政権が継続するということになると株価も上がりやすい、そういった連想で今日本株に見直しが入ったということが言えるわけです。
これまで下がっていたところが回復の余地を与えたというところになります。
これを受けて日経平均株価は8月にかけてはコロナの状況というのもありましたからズルズル下がっていましたけれども、この菅総理の退任表明を受けて奇しくもぐんと上がって、一時は3万円を突破するというようなところに来ているわけです。
その中で日経平均を買いたいということになると、当然ソフトバンクグループも自動的に買われるという一つの側面があります。
上昇要因の一つとしてこの日経平均の買い戻しがあるというところがありました。
さらにはこのソフトバンクグループに関しては、実は株価が指標面で見たときに安すぎるという話が実はあります。
安すぎるというところなんですけれども、一つ気をつけていただきたいのはソフトバンクグループにとって、一般的に用いられるPERの株価指標は無意味だということです。
昨年2021年3月期の実績に対するPERは現在ソフトバンクグループはなんと3倍です。
平均が15倍程度といわれるところですから、それに対して3倍ですからこれが普通の数値だったらありえないぐらい安いわけです。
ところがソフトバンクグループに関してはこれが意味をほぼほぼ持ちません。
何故ならソフトバンクグループは投資会社だからです。
利益というと基本的には物を売ってそこから費用を引いて残ったものが利益ということになりますが、ソフトバンクの事業はそういうものではありません。
基本的に株を買ってそれを価値を高めて売ることによって、利益を出すという考え方です。
したがってこの出てくる利益というのは、継続的に決まって出てくるものではありません。
株式ですから1回買って売ったらそれで終わりということになります。
しかもこのソフトバンクグループの会計はというと、買って売って利益を初めて計上だったらまだわかりやすいのですが、持っていても株価というのは変動してくるので、そういった未実現の利益、あるいは損失も損益計算書、つまり最終的な利益に反映してしまうというものです。
これはすなわち何が言いたいかというと、ソフトバンクそのものの実力というよりも、株価に左右されている面が非常に大きいというところになってきます。
一時的に何兆円という利益が出ることもあるのですが、その前には逆に何兆円という損失を出している可能性があります。
当然その逆も然りというところになってくるわけです。
こういった状況があるからソフトバンクグループにおけるPERは無意味となります。
ではどうやってこの割高割安を判断すればいいとかというと、NAVというのものがあります。
このNAVというのは何かというと、Net Asset Valueすなわち純資産価値というものです。
一般的に資産に対する株価が割高か割安かというのはPBR株価純資産倍率で見られるものなんですけれども、ソフトバンクにおける純資産というのは直接的に見るよりも、明らかに時価として出ている株式があるわけです。
その持っている株式に対してそこから負債を引けば、純粋に時価で計算した時の純資産という数字が出るわけです。
仮にこの瞬間にソフトバンクグループを解散するということになったら、ほぼ確実にその純資産分は株主が分配を受けられるというそういうものになります。
PBRより時価を反映した正確な純資産だということが出来ます。
それを計算するとソフトバンクグループが2021年6月末において15450円あります。
ところが現時点でも株価は7500円くらいですから、これを見る限り時価で評価された純資産の僅か半分の価格で評価されているということになります。
これが、言うならば”適正に”評価されるのだったら、ソフトバンクグループの株価が2倍になっていても全然おかしくありません。
だからこそソフトバンクグループ安すぎるというところがあるので、下がれば下がるほど割安株を求める投資家にとっては今が買いだという風に考えやすいというところになります。
実際にバリュー株を主体とするかぶ1000さんという有名な個人投資家さんがいらっしゃいますが、あの人もソフトバンクグループをこういった理由から買っていたりします。
こうやって色んな投資家を呼び込みやすい状況であったというのが、もう一つの要因というところになってきます。
そして3つ目としてはドイツテレコムとの提携のニュースがちょうどこのタイミングで入ってきたというところがあります。
もともとこのソフトバンクグループはアメリカでスプリントという携帯電話会社買いました。
そのスプリントがTモバイルという携帯電話会社と一緒になることが決定しました。
その結果ソフトバンクはこのTモバイルの株式を持っていたのですが、そのTモバイルを持っているのは実はドイツテレコムという会社でした。
このTモバイル株式をドイツテレコムに渡すことで、逆にソフトバンクグループはドイツテレコムの株式を取得して、4.5%の株式を保有することになりました。
ドイツの州とかも株主になっているので、これによって民間としては第2位の株式になりました。
これによって何が起きたのかというと提携を発表しました。
すなわちソフトバンクグループはドイツテレコムに対して、取締役を派遣するなどして提携を強化して、それによってお互いが得をするような動きになれたらいいのではないかというようなプレスリリースを出しています。
ドイツテレコムに関してはドイツを中心に9500万人の加入者がいますから、それはの一つの材料となりつつあるわけです。
ただしこのニュースはそこまで大きなものではないのではないかと思います。
それ以上にアリババの動きとかそちらの方が圧倒的に大きいです。
ただこのタイミングでこのニュースが出たということは、くすぶっているところに閣下剤を点火するようなものにもなったというところではあります。
ハイリスクハイリターン。孫社長の手腕に注目
さてソフトバンクグループの今後の見通しについてですけれども、何よりNAVの倍率が0.5倍で、時価で考えたらこの株価は2倍になって評価されるべきというような意味です。
ところが、ここには当然リスクというものがあって、その一つがアリババです。
アリババは相当大きい会社で急になくなってしまうようなことはないとは思うのですが、中国政府、特にこの習近平国家主席はなにをやってくるかわかりませんから、ある日突然アリババの価値がゼロになるなんてことも可能性としてはゼロではない、そこが当然リスクとして組まれます。
もしそうなった場合はソフトバンクグループの価値が40%吹き飛んでしまういうことになりますから、それでも尚このNAVが1倍超えないというところもあるのですが、当然リスクとしては残ります。
それに関わらずこのソフトバンクグループはかなり借金をして投資しているというところがあるので、借金をするということは株式の価値が半分になると、負債は消えるわけではないので、保有資産の価値の変動以上に損失を被ったりします。
利益が出る時は出るのですが損失も同じように大きくなりやすいというところがあります。
要は先ほど利益の出かたのところでも説明しました通り、ソフトバンクグループの状況は実は株式市場次第で、日経平均が大きく占めているというところもありまして、株式状況次第、つまりハイリスクハイリターンのところがあります。
これはある意味を日経平均のレバレッジETFを買っている、そういう印象すら受ける銘柄です。
私としては割安感は比較的あるという風に正直思っています。
買いたいと思うのも正直山々です。
ただし、はっきり言ってソフトバンクの孫正義社長がどう動くかによって大きく変わってしまう銘柄です。
これだけ大きいのにトヨタみたいに明確に車事業とかそういったものがあるわけではなくて、とにかく色んな会社、しかも我々からなかなか見ることの出来ないスタートアップに投資をしたり、そういった動きを行っているので、なかなか読むのが難しいというところにあって、結果としてそのところが短期の投資家を呼び寄せやすいという部分もありまして、株価は大きく動きやすく、しかもレバレッジもかかっているハイリスクハイリターンというところがあります。
まずソフトバンクグループが目指しているところは、インターネット革命といったところですから、その実現に向けて着々と進んでいるということであったら、少なくとも純資産価値でかなり割安で、半分しか評価されてないというところなので、アリだという風に思っていますが、なかなか理解が追いつかない部分もあります。
株価に関しては短期的には今勢いついて、しかもこういった割安という状況がありますから、まだまだ上がってもおかしくないと正直思っています。
ただ当然ハイリスクハイリターンなので、下がる時は相当やられてもおかしくないそういったことはもちろんあると思っています。
したがって私としては様子見なのですけれども、孫正義さんは素晴らしい経営者だと私も思っておりますので、今後の動きによってはまだまだ面白いですし、その状況で割安という環境があるので、私もこれから注目を続けていきたいと考えています。
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