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以下、文章化したものです。
今回は中国の恒大集団という会社が債務不履行、すなわちデフォルトを起こしたということで、これがリーマンショック級の倒産になるのではないかということが金融市場で囁かれています。
その実情と中国のこれからというところについても見ていきたいと思います。
デフォルトはなぜ起きた?
まずこの中国恒大集団が債務不履行(デフォルト)を引き起こしました。
個人投資家が恒大集団の本社に押しかけてお金を返せと言っています。
この個人投資家の多くはここが発行している理財商品で高利回り商品の債券になるのですが、7%程度のリターンが見込めるといって個人向け債みたいなものです。
それを買ってたいたのですが、それがなんと償還期限になっても償還されないということで、文句を言いに来たのです。
ちなみにこの中国恒大集団、エバーグランデとも言うのですが、一体どんな会社なのかというところについて振り返ってみたいと思います。
中国恒大集団とは中国最大級の不動産開発会社ということになります。
この規模がかなり大きくて2018年フォーチュン500というアメリカの企業が発表している世界の企業のランキングで世界で230に入りました。
そして2019年の中国版では16位に入ったというところでして、中国の不動産会社としては最上位となっています。
創業者であります許可印氏は一時中国でナンバーワン富豪になったほど、企業が大きくなって時価総額が大きくになって、一時は世界中で様々な企業、あるいはサッカークラブ、サッカー選手などを爆買いしていた時期がありました。
これが2018年くらいのことです。
事業としましてはマンション販売を中心に規模を大きく伸ばしていて、最近では金融、あるいは自動運転といったところにも手を出していました。
皆さんの身近なところでは、サッカーを見られる方はアジアチャンピオンズリーグ(ACL)なんかで出てくる、恒大と書いた中国のチームが出てくるのが記憶にあるのではないかと思います。
ACLなんかでもしばしば優勝もしていて、特に元ブラジル代表の選手なんかを高い金額を払って呼び寄せてきて、チームやリーグを強くするというところをやってきているので、それが爆買いとも言われるわけです。
これは実はアリババと共同で保有しているクラブということになっています。
さて2019年頃まで絶好調を極めていた会社が、何故ここに来てデフォルトに陥ってしまったのかというところについてもう一度見てみたいと思います。
負債総額は日本円で30兆円にも及んでいるということです。
30兆というと莫大な金額ですから借金が多いというのはわかります。
ただし私が気になったのは、負債は大きいのですが、不動産会社というのは新たな不動産を仕入れる為にどんな会社も必ず借金はしているのです。
なのでこれだけ企業が大きくなっていく過程では、必ず借金は増えていくというのはこれはある意味自然なことです。
なので負債総額30兆円というだけで即座にヤバイ、財務状況が悪いと判断出来るものでもないかと思います。
実際に利益はずっと出し続けてもいましたし、また自己資本比率についてもそんなに高くはないのですが、20%弱ぐらいの無理のないと言ったら言い過ぎかもしれませんが、債務超過だとかそういった状況では決してなかったという風に認識しています。
ところが大きく変わったのは、中国の政府の方針がここ数年で大きくガラッと変わりました。
この不動産会社を習近平国家主席は目の敵にしていたのではないかというぐらい、厳しい規制を敷いてきました。
その一つが昨年政府が不動産企業への融資を厳格化しました。
これをレッドラインと言うのですが、これが具体的な内容として3つありまして、資産負債比率が70%超あったらいけない、すなわち自己資本比率が30%を切るといけないということです。
それから純負債資本倍率は100%超、負債から現金を引いてそれと資本を比較した時に、負債の方が資本より小さくなければいけない、さらには短期的な流動性手元資金の短期債務倍率が100パーセント未満でないといけないというようなことを言いました。
自己資本比率が30%以上、手元資金に関しても不動産会社にとってはかなり厳しいラインであったのではないかと思います。
そしてこの恒大集団に関してはなんといずれも満たしていないということです。
これが中国政府の恐いところで、各銀行に通達を出しました。
この基準を満たしていない企業に対してはお金を貸さないように言いました。
これは不動産の企業にとってはお金を貸してもらえないというのはまさに兵糧攻めにあったのと同じです。
日々大きなお金が動く会社ですから支払うお金というのは、常にお金を借りて物件を売ってを繰り返すのが不動産ディベロッパーなのですけれども、お金を貸してくれなくなると、その流れが急にストップしてしまいます。
すると今度は支払うべきところが沢山あるわけですが、そこに支払えなくなってどんどん首を絞められるといった状況になってきます。
特にこの作っては売ってのディベロッパーと言われる業種は特にそうで、リーマンショックの時には日本でも多くのマンションディベロッパーが融資もあまり受けられなかったり、あるいは物件が売れないということになって、バタバタと倒産が相次いだのです。
今この中国の恒大集団もまさにそのマンションディベロッパーのような状況になっています。
おそらくなのですが中国政府がこれほど厳しい融資の基準を設けなければ、普通に活動していたのではないかと思います。
しかし中国政府から目の敵にされてしまったが故に、こういった状況になってしまって何とか手元の資金をひねり出そうと不動産を投げ売りしていました。
物によっては最初の価格から30%も引き下げた価格で売っていたりもしたのですが、それでも間に合わずに一部の借金が返せないというデフォルトに陥ってしまいました。
金持ちは敵だ!習近平の思惑
私に言わせてもらえば恒大集団はそのものが悪い以上に官製倒産だと思っています。
すなわち中国政府がこの企業を狙い撃ちにして、倒産はしていないのですがそういった近い状況になっています。
狙い撃ちにされて倒産させられた事例なのではないかという風に思います。
この背景には習近平国家首席が最近強く掲げてきた、共同富裕という考え方があるのではないかと思います。
今中国では習近平国家主席が永久皇帝になろうとしています。
命ある限り中国のトップであり続けようという風にしているわけです。
そんな中でこの人が怖いのは実は大国のアメリカよりも、内部の反乱を非常に恐れています。
かつての独裁者といわれる人達も多くは内からの反乱によって倒されてしまったわけです。
習近平国家主席はすでにかなりの独裁体制を築いていますから、この人が倒れるとしたら内部の反乱、クーデターとかそういったものによると考えられるわけです。
だからこそ怖いのは民衆の蜂起、民衆が反乱を起こすというのがこの人にとって一番怖いわけです。
それを防ぐ為に一つは共産主義の本望である、金持ちは富を多くの人に分配せよとこういうようなことを言っています。
中国は改革開放の経済の中でどんどん資本主義化が進んで、この恒大集団の元会長のようにものすごい資産を築く人達が出てきました。
これは中国一とは言わずとも、やはり都市部に行けばすごく良い建物に住んで、高い車を買っている人もいれば、スラムのようなところで暮らしている人いるといった二極化がどんどん激しくなってきました。
そして民衆の数として多いのはやはり富裕層よりも、中間層以下のほうが多いわけですから、そちらの支持を取り付けた方がこの習近平国家主席にとっても、安泰だということにもなるわけです。
それはすなわち共産主義の本望でもありますから、それを盾にこの習近平氏は金持ちは富を分配せよというようなことを言って、いわば金持ちを目の敵にしているのです。
特にこの恒大集団というのは先ほど爆買いをしていたという話もありましたけれども、かなり贅沢な暮らし、あるいは企業経営に関しても派手なことを繰り返していました。
ここを懲らしめることで少なくとも批判の目は自分ではなくて、金持ちの方に向かうという流れを作ろうとしているのではないかということが考えられます。
近年ではアリババのトップ、こちらも中国を代表する富豪なんですけれども、その人は習近平の中国政府を批判するようなことを言って、一時拘束されるようなことも起きています。
それほど今習近平国家首席は金持ちに対して厳しい政策をとっています。
またもう一つの問題としては不動産価格の高騰というのがあります。
何より中国は実はものすごく不動産価格が上がっています。
それの一つにはこの恒大集団のような企業がどんどん作っては売ってをしたが故に、人々の購買意欲を煽ってマンションの価格が高止まりしたというところがあります。
しかしそれだけマンションが高くなってしまうと、マンション買いたい人が不動産の価格が高くて手を出せないわけです。
そうなると不満が高まっていきますし、また一方で上がりすぎた不動産価格というのは、やがて暴落するというのは日本のバブル崩壊の事例からも中国としてはかなり学んでいると思います。
そういったバブル崩壊のような事例になる前に、中国は不動産価格を引き下げたいという風に思っています。
そこで目をつけたのがこの不動産会社への融資の厳格化というところです。
また不動産会社にお金が流れなくなれば、不動産業界というのも停滞していきますから、その結果として投げ売りという話もありましたけれども、不動産価格は下落していくのではないかということが考えられます。
そして不動産価格が下落するなら生活費が下がったことによって、多くの民衆の支持を得られるのではないかという風に考えているのではないかと思います。
不動産価格の高騰に関しては、実は私は2019年の12月のコロナになる直前に上海に行ってきました。
その時に撮影した写真が中国の状況を非常によく表していると思います。
例えばこのボロい建物は日本で言う団地だったり、なんならそれより狭い、今にも倒れそうな印象すら受ける古い建物です。
しかしこれが実は一部屋一部屋がなんと億ションなのです。
こんなボロい建物が、上海の中心部ではありますが、最上階が2億とも言われて不動産価格がそれだけ高騰しているということを如実に表しているものです。
しかも中国の若者はもっと大変です。
中国の男性が中国の女性と結婚しようと思うと、結婚する時にはすでに家を買っていないといけないという常識があります。
私の中国人の友達も全く同じようなことを言って、日本に住んではいるのですが横浜のマンションを買って彼女にプロポーズをしていました。
とにかくお金持ちなら良いですが、そうでない人にとっては、なかなか手が届かず結婚も出来ないという苦しみを味わっているのが今の中国の若者なのです。
これを引き下げたいと習近平国家主席が考えていてもおかしくないというところで、億と言われるとバブルではないかというのは感覚的にもわかります。
さらには電車に乗って上海から南京に行ったのですが、その途中がずっと田舎なんですけれども、駅の近くになると突如高層マンション群がいきなり現れるのです。
その一部分だけ綺麗に町が整備されていて、それほど開発が急に進んでいるというところがあります。
しかしそこに行ってみると実は綺麗になっているのに、人が全然いなくて、マンションに関してもあまり電気が点いてたりとか、洗濯物干されているとかそういった状況があまりなくて人気がありませんでした。
それこそ恒大集団なんかが開発して売ったのでしょうけれど、その多くは人が住むようではなくて、投資用として買われているに過ぎないのではないかと思います。
当然実需がないものですからバブルが崩壊するというのも時間の問題だったというのは肌感覚としてはわかりました。
当然習近平国家主席もわかっていますから、やばい状況になってしまう前に今のうちにもバブルを崩してしまおうという風に考えているのではないかと私の実体験からも感覚的にはわかると言えるのではないかと思います。
この生活費を引き下げるということに関しては、直近で学習塾の非営利法人化を求めたというようなこともありますから、学習塾というと中国の一人っ子政策で1人当たりの教育費というのが上がっていて、その多くは塾とかに投入されていたりします。
しかしそれを非営利法人にして塾の金額を引き下げることによって、中間層を少しでも優遇しようという風に考えているのではないかと思います。
更にもう一つ大きいのが、その教育というのはまさにその中心で共産党思想ないし、この習近平思想を学習塾の非営利化によって、人々に植え付けるということが、実は最大の目的なのではないかと思います。
習近平氏を信奉せよというようなことをこの共同富裕の主なコンセプトの、最終目的として言っているのではないかという風に見えるわけです。
もしこれが達成することが出来れば、多くの民衆が彼を支持するようになって、生きている間は独裁体制として安泰だというようなことも考えているのではないかと思います。
そして自分の敵対するような勢力をどんどん追い払って、さらに権力を盤石にしようとしているという風にも見えます。
ちなみにこれは本人が言ってるわけではなくて、私の勝手な解釈ですのでその辺はよろしくお願いします。
リーマンショックの再来?
話を戻しますとこの恒大集団のデフォルトが、リーマンショックの再来になるのではないかと一部で騒がれています。
しかし私は必ずしもそうはならないと思っています。
何故ならリーマンショックとは全く意味合いが異なっているからです。
リーマンショックというとリーマンブラザーズという証券会社が破綻したわけなのですが、その背景にあったのはサブプライムローンと言われる米国の住宅ローンでした。
リーマンブラザーズの負債というのが60兆円ぐらいあったと言われるのですが、肝要なのはそのリーマンブラザーズの負債ではなくて、その作っていた商品の背景にあったサブプライムローンががばがばのローンだったというところだったのです。
それこそ債務不履行になってもおかしくないようなローンが、証券化商品を通じて世界中にばら撒かれていたからこそ、世界中の金融機関が傷んでしまったということがその背景にあるわけです。
今回に関していえば確かに中国で30兆円の負債で、さらに2兆ドルのドル建て債券があるというところなのですが、それだけだと30兆円ないし、2兆円からの波及効果というのはあまり想定されません。
もちろんこの恒大集団だけではなくて、様々な中国の不動産会社が苦しくなってくるというところも確かですが、基本的には中国国内で完結する問題だという風に考えています。
世界中に証券化商品としてばら撒かれているよう状況にはありません。
したがって金融危機にはならないということです。
ただし一方で最大の問題は不動産価格の下落です。
不動産価格が下落するということは不動産界隈とか銀行とかにもある程度のダメージはあるというところなのですが、何より大きいのは中国である程度お金を持っている層に対するダメージがあるというところです。
中国人は世界の工場として中国の経済成長が進んできたというのがお金持ちになった一つの背景としてはあるのですが、それ以上に大きいのは不動産価格の上昇です。
持っていた不動産、マンションの価格高騰によって、回転売買を繰り返すことによってお金持ちになってきたという側面があるわけなんです。
しかしこうなってくると不動産価格が上がらない、下がるということになると、その動きが出来ないので、中国は金持ちで成り上がる手段を失ってしまうというところになってきます。
そうなると起こるのが景気の減退です。
もうこれ以上豊かにはなれないのだからあまり贅沢出来ないと考えるのではないかと思います。
中国に様々な高級ブランドが大挙して押し寄せていて、私が一昨年に上海に行った時もそういったブランドが軒を連ねていましたが、そういったものが今後難しくなるという風に思われます。
したがって中国の景気がかなり減速するということは間違いないですし、そこに関連している欧米の企業なんかも、ある程度ダメージを被るのではないかと思います。
中国に依存している企業に関してはやはり景気減速の影響を多少なり受けるのではないかということが考えられます。
もっとも中国というと人口がいるので、その人口を見込んで中間層に対して商品を提供しているような企業だったらそこまでダメージは無いのでしょうけれども、高級品に関しては注意が必要だということではないかと思います。
したがって金融危機になるほど深刻なものではないのですが、一方で中国の景気ということを考えると、必ずしも軽視も出来ないというのが今のこの中国の状況ではないかと思います。
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