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以下、文章化したものです。
中国の恒大集団という会社が経営破綻の危機に瀕しているということで市場では話題になっています。
これがもし破綻してしまうようなことになると、中国市場における不動産バブルの崩壊、中国における景気の後退ということが懸念されます。
今回は日本企業でそれらの影響を直接的に受けそうな企業というのを、ピックアップして紹介しておきたいと思います。
すぐにそのリスクが現れるというわけではありませんが、将来的に懸念が残るという状況ですのでチェックしておくと頭の整理がしやすいのではないかと思います。
”金持ち叩き”が影響
恒大集団が倒産してしまうようなことになったら、どういった影響があるのかということです。
まずそもそもこの中国恒大集団という不動産会社ですけれども、これが倒産の危機に瀕しているのは必ずしも自発的に不動産事業が悪化したとか、経営が無理をしたからということではありません。
これは官製倒産という風に見えまして、中国の政府が不動産業界に対する引き締めを強めた結果、銀行が不動産に融資を行うことが難しくなってしまって、この恒大集団をはじめとする不動産企業の資金繰りが急に苦しくなってしまったというところがあります。
したがってこれは中国政府によるある種見せしめ的な部分があるわけです。
これによって何が起きるのかということですが、中国経済自体が今現時点で何かおかしな状況になっているというわけではなさそうなんですけれども、倒産することによって見えてくるのは中国政府、特に習近平国家主席の意図だというところになってきます。
この習近平国家主席は今独裁体制というのは非常に強めていまして、その独裁体制を継続させるためには民衆の支持を確実に掌握しておくということが不可欠になるわけです。
その為にやっているのがこの恒大集団前会長なんかはかなりの金持ちで、派手な金遣いをやっていたのですが、それを習近平は目の敵にして、彼らを懲らしめることによって、民衆の批判をそちらに向けようとしているわけです。
また同時に今中国は不動産バブルとなっていますから、それによって家を買えない人たちがどんどん出てきているわけです。
その状況を打破して不動産価格を下げることによって、民衆の支持を得るのと同時に、不動産バブルだということも確かですからバブルの崩壊による経済の悪化、かつての日本の不動産バブル崩壊のような状況になってしまうのを事前に防ごうとしている節があります。
これがですねこの恒大危機の主要な論点だという風に私は考えます。
これが一部ではリーマンショックのようになるのではないかと言われているのですが、リーマンショックというのは世界のあらゆる金融機関が、アメリカのサブプライムローンと言われる信用力の低い人のために組成した住宅ローンが、証券化商品として世界中の金融機関にばら撒かれた事が発端になっています。
今回の恒大集団の負債総額は10兆円と言われているのですが、その大部分は中国国内の富豪ですとか、個人投資家によって払われているものなので、世界全体のリスクは限定的、しかも中国国内に関しても官製倒産というところなので、そのリスクというのは当然見積もった上で、大丈夫だろうという計算をしてやっていると思います。
したがってリーマンショックのようになるリスクは限定的だという風に考えます。
一方で不動産価格を下げさせると言いましたけれども、不動産価格が下がるということは様々な影響が出てきます。
特にこの中国人というのは世界の工場として所得を上げてきたというのはもちろん大切なんですけれども、それ以上にこの土地価格が上昇したことによって、マンションを転売を繰り返すことによって、豊かになってきたという側面が非常に大きいです。
それが崩壊するということになると、こうやって豊かになってきた人がジリ貧になってしまうということも確かですし、そもそも習近平氏の思惑としても金持ちを叩くということを考えていますから、高額消費はだいぶ慎まれるのではないか思います。
習近平氏が最初に国家主席に就任した時も、贅沢は敵だというような、高額消費を叩くような政策が見られました。
したがって不動産などの高額消費について非常に影響が非常に大きいという風に考えます。
もっと大きな視点で見ると高額の消費が落ちてくるということは、経済は全部繋がっていますから、中国経済全体も萎んでしまうという可能性ももちろんありますが、今回はそこまでは突っ込まない形で、より直接的な影響を受けそうな会社ということで、3社ピックアップしています。
マネーポストの記事ですが、中国での売上比率が多い企業ということで、上位33社ということで上がっています。
1位TDK、2位村田製作所、3位日本ペイント、4位日東電工、5位資生堂というような順番で並んでいるのですが、ただ私が考える上ではこのランキングが単純に今の中国恒大危機の影響を直接に受ける順番だという風には考えません。
というのも特に製造業に関しては確かに中国で作っているのですが、多くの企業は日本企業が中国の工場で企業間取引の為の商品を作って、一旦中国のメーカーに売って、そこからさらに世界中に売られているという状況があります。
例えばアップルのiPhoneを思い浮かべていただければと思いますが、日本企業が部品を作って、それを中国の鴻海ですとかそういった会社に売って、そしてアメリカ日本をはじめ世界中に売っているわけなのです。
したがって最終消費者は必ずしも中国だけとは限らないので、ここで中国比率が高いからといって、中国の景気の影響を直接受けるかというとそうではないという風に私は考えます。
したがってこの最上位に来てるTDK、それから村田製作所がいずれも電子部品のメーカーというところになってきます。
それから日本ペイント、日東電工この辺りはあまり中国比率というのは考えなくていいのではないかと思います。
あくまで中国の工場に製品を卸している企業というところになってきます。
一方で大きな影響を受ける企業というのは、これからピックアップしてみました。
第1位:TOTO
私の主観ですが、直接的に影響度の大きい企業のランキング1位はTOTOです。
TOTOというとトイレを作っているあのTOTOです。
何故影響が多いのかというところなんですが、売上高で見ると中国は2021年3月期時点で14.7%となっています。
そんなに大きくないという風にも見えるかも知れません。
実際に先ほどのランキングで見ても16位というところになっていますので、50%近い所がある中でそんなに大きくないようにも見えるかもしれません。
ところがこのTOTO、トイレですからどういった時に需要が発生するのかというと、一番大きいのはやはり家を作る時にトイレを作るので、それ以外ではそんなに大きな需要というのは発生しないわけです。
ここで不動産バブルが崩れて新しいマンションが作られないと、需要が当然落ちてくるというところが考えられます。
さらに中国におけるTOTOの位置付けというのはかなりの高級品です。
日本以上に高い価格で売っているというところがあります。
売上高はこのようなグラフになっているのですが、その結果中国における利益を見るとなんと日本が52%なんですけれども、中国での利益もかなり大きくなって28.9%と3割近い利益となっています。
中国での利益率が高いというところですが、これがそもそもこのマンションにトイレを設置するという需要がなくなる可能性がある上に、先ほど高額消費が難しくなるという話をしましたから、今TOTOのトイレというと中国では贅沢品なので、それに対する需要というのは当面今のような政策が続くのであれば厳しいのではないかというところが考えられます。
実際に株価もこれを受けて大きく下落していまして、それでこの中国恒大の影響が騒がれるようになってからもガクンと落ちて、年初来マイナス3パーセントという数字に進んでしまっています。
したがってTOTOは比較的安定した会社であるとは思いますが、やはりこの中国の利益に依存していた部分というのはあったので、今後注意が必要いうところにはなってくるかと思います。
第2位:資生堂
第2位として挙げるのが資生堂です。
資生堂ってどんな会社かというと皆さんご存知の通り化粧品の会社です。
この会社実は最近非常に大きく株価も業績も伸ばしてきたのですが、その大きな牽引役となっていたのが中国なのです。
こちらは目標値ですが2019年時点で売上高に占める中国の割合が19%となっています。
しかしただそれだけではありません。
資生堂の売上が中国本土というのもありますが、それに合わせてトラベルリテール空港の免税店なんかで、顧客は中国人がほとんどだとは思うのですが、トラベルリテールと中国を合わせて売上高のおよそ3割を
占める状況になっています。
現時点でも3割、利益に関してもTOTOのような大きな差はないのですが、ただこれからの目標を見ますと、日本に関してはむしろ減少する方向で、最近でもシャンプーなどの大衆向けの商品を事業売却するというような状況もありまして、より中国への依存を高めています。
しかしこの高額消費というところになると、中国における資生堂がどこまで高額消費に該当するかというのは定かではありませんが、景気後退も受けるとしたら、今これまで順調に業績を伸ばしてきたようには行かないのではないかとということが一つ考えられます。
株価を見ますとこれを受けて直近まですごく大きく下げていたかと思ったら、その相場に乗って上がったのですが、さらに恒大ショックではまた下がっているという状況になっています。
化粧品なのでコロナ禍でかなり厳しい戦いを強いられています。
一方で株価はそれほど下がってないところがあります。
PER的にも過去の水準で見ても30倍程度というところは維持しています。
この30倍というのはここ数年の成長が評価された数字だと思うのですが、ただこれが今後も維持出来るのかどうかというのは成長性に関しては少し疑問符が付いているかなというところではあります。
第3位:ピジョン
3つ目の会社として挙げるのがピジョンです。
ピジョンというと哺乳瓶とか赤ちゃん用品の会社です。
この会社がとにかくで中国によって伸びてきたと言っても過言ではありません。
売上高で見ますと2020年12月期時点で中国が36%と結構高いところになっています。
日本が42%というところです。
もっと顕著なのが利益に関してでして、日本が16%なのに対して、中国なんと68%なんです。
このピジョンという会社も中国においてはかなり高級品の分類になっていまして、特に一人っ子政策が長かったので、中国人は子供にとにかくお金をかけます。
一時は危険なミルクなんかも売っているというような状況もありましたから、子供に安心安全のものを飲ませる為には、高い商品もやむを得ないというところで、中国では常に日本の製品は大人気なのです。
その中で当然高い価格で売れますから利益率も高いとというところになっています。
ピジョンか難しいのは単純に中国での利益率実が高いから恒大ショックが大きなリスクになるかというと、必ずしもそうではありません。
確かに中国での高額消費は控えられてくると思います。
けれども一方でこの子供の安心安全の為に高いものを買うというところですから単純な贅沢とは少し違う向きもあります。
むしろ中国の一般の人たちの不満としては、子供にお金がかかり過ぎるというところがあって、最近では勉強の為の塾なんかを非営利法人化しないといけない、塾代を下げさせるよう施策を行いました。
そういう動きを考えると子供用品を下げさせるというのは、この部分に関してあまり現実的ではないと思ってまして、多くの人々はやむを得ず高い商品を買っているのではなくて、自ら進んで安心のピジョンを買っているという側面があります。
むしろそういった民衆の支持を得る為には、子供を育てる為に補助金などそちらの方を出してもおかしくないのではないかとも見えます。
なのでピジョンに関してはプラスマイナスあるのかなという風には思っています。
即まずいという状況ではないんではないという風に思います。
株価を見てみますと非常に大きく下がっていまして、年初来マイナス33%という数字になっています。
もっとも株価が非常に高かったという所もあって、PER34倍というところがあります。
これも最近の中国での成長を受けて株価上昇してきたところがありますから、一旦落ち着いているところなのかなと思います。
影響大きいランキングとしましたけれども、この会社に関してはむしろ下がってきたら場合によってはチャンスというのもまた巡ってくるのではないかなと思います。
まだPER34倍なんでそこまで安いとも言えないのですが、むしろそういう積極的に見てみる銘柄かなとも思います。
さて、影響度に関してさらに気になるのはファーストリテイリングだったり、良品計画といった中国に大きく進出している企業群ではないかと思います。
特にこの2社に関して言えば実は私はそこまで影響は大きくないと思っていまして、というのも売り上げの全体からの割合が2割程度あるのですが、ただこれらの会社は必ずしも高額消費とは言えないですよね。
むしろ日常に使うところだと思います。
したがって富裕層叩きの対象にあるような会社ではないわけです。
むしろこの中間層のところですから直接的には無風なのではないかという風に考えています。
もちろん中国全体の景気が減ったら、中国人の財布の紐が固くなりますから、その時は影響を受けるのですが、一方でこのファーストリテイリングなんか特に日本でのデフレの中で伸びてきたというところもありますから、不況の耐性は強いというところになってきます。
この辺りは中国の割合が大きいですが心配しなくていいのではないかと思います。
今回影響の大きい会社として3社挙げさせていただきました。
TOTO、資生堂、そしてピジョンというところです。
良いところ悪いところあるかと思うのですが、何かしらの影響が受けているということも間違いないので、この辺は要注意していく必要があります。
もちろんマイナスだけではなくて場合によっては、チャンスになり得るということもあるということを考えて、見ていきたいという風に思います。
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いつも素晴らしい分析だと思います。
それに解りやすい。