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以下、文章化したものです。
今回お話する銘柄はワークマンです。
ワークマンというと最近メディアでも持て囃されています。
けれども株価に関してはこの1年全く振るわない状況となっています。
もうブームは終わってしまったのかということも含めて、ワークマンの分析を行なっていきたいと思います。
店舗を増やさずに成長してきた
ワークマンの過去1年の推移を見ますと、下落基調が続いているということになります。
1年でマイナス27%ということで、今年買った人はほぼみんな損失になっていという状況です。
ではこれまではどうなっていたのかというと、これが過去5年の推移です。
実はこの5年でかなり大きく上昇してきた銘柄です。
ここにある通り281%ですからおよそ4倍になっています。
ただしピークでは株価1万円ぐらいありましたが、それが今や6000円ぐらいというところで、ブームが終わってしまったようなチャートを描いています。
ワークマンのブームは本当にもう去ってしまったのでしょうか。
テレビ等で聞いているところではワークマンがワークマン+という新業態を始めて、それまで作業員に対するものを売っていたところが、一般向けのカジュアル分野にし進出した、だから業績が伸びているんだという風に見えているかもしれません。
確かに表面的な仕様としてはそうなのですが、もっと深くこの会社を分析すると、何故そこに行き着いたのかということがよくわかってきます。
もともと作業服や作業用品一本でやってきた会社で、その市場自体はほぼワークマンが独り占めしているような状況でした。
2012年ぐらいまでは売上高は横ばいで利益もそんなに悪くないという感じでした。
しかし、2012年からじわじわと伸び始めて、そして2019、2020、2021というところで一気に売り上げも2倍近くなるような状況となっています。
こういった急成長の企業というのは、多くはこの間にどんどん新しい店舗を出店して店舗数を増やすことで業績を拡大しているのですが、ワークマンは実は店舗数としては増えてはいるのですが、劇的に増えているわけではありません。
むしろ店舗はすでに沢山あった会社です。
ここが大きなポイントです。
店舗をどんどん増やして拡大する企業というのは、どこかで無理がくるものです。
例えば最近の事例でいうといきなりステーキのペッパーフードサービスです。
これは、一気に店舗を拡大しすぎたが故に、借金やその他の負債が嵩んでしまって、尚且つ店舗運営に上手くいかない、競争もどんどん増えていくということで、業績拡大したかと思ったら今や倒産するのではないかというほどの風前の灯になってしまいました。
その点ワークマンはすでにもう盤石な作業服という基盤を築いていて、店舗も増やさずにこれだけ業績を伸ばしてきたというところは、他の急成長企業とは大きく違うところになっています。
土屋CEOの「しない経営」
では何故ワークマンがそれを可能としたのかというところについて、深く見ていきたいと思います。
ワークマンの業績が伸びた要因は先ほどから説明しています通り、ワークマンは作業服もいう非常にニッチな市場ではありますが、その中ではガリバーでした。
しかし成長の限界というのも見えてきました。
作業服市場が全く無くなることはありませんが、一方で拡大するような市場ではありません。
そんな中ですでにワークマン店舗数としては、2010年代前半の頃でも800店舗近くありましたから、こういった小売店の場合全国の店舗数がおよそ1000店舗ぐらいが限界と言われています。
1店辺りの商圏が10万人が限界という風に言われています。
もう1000店舗が見えていましたから実は成長の壁に突き当たっていました。
そこで採用されたのが土屋さんという人です。
社長ではないのですがその方がこのワークマンの経営を大きく変えました。
その変えたというのがこの作業服という事業に対して、エクセル経営を持ち込みました。
このエクセル経営とは何なのかというと、要するにデータを分析することによって、顧客の動向を把握して、そして顧客のニーズに合った商品を生み出すというものです。
こういったことをやろうとすると多くの企業は、外部から専門家を連れてきて、分析させてその数値を割り出して、数値を細かに分析して結論を導き出すみたいなことをします。
けれどもワークマンはそうではありませんでした。
むしろ外部の人材ではなくてもともといる従業員に対して、エクセル教育を行うことで一人一人がデータアナリストとして、ワークマンの経営を磨いていこうという意識を持つに至りました。
そもそもこのワークマンはアナログワークマンと自分達でも言っているように、もともとデータなんかほとんど無い、何なら在庫データすら持っていないという会社でした。
それに対して全従業員にエクセルの研修をやって、数値の分析の仕方を教えることによって、自分たちが一体何をしているのか、どういった方向に向かっているのかということを、数値を用いて深く認識させたというところになります。
多くの会社では何を売るか、店舗に何を仕入れるかというのはそこにいる人達の勘と経験によって行われているものなのでしょうけれども、そこにこうやって数値データを用いたことによって、売れ筋商品というのが明確に分かるようになりました。
売れている物を売れていない物を勘で決めるのではなくて、数字でちゃんと売れている物を仕入れるということが出来るようになりました。
さらに予想外の事も起きましてそうやって数値を分析していると、時々異常値が発生することがあります。
例えばある地域の店舗で他ではあまり売れていないような特定の商品がバカ売れしていると、他の店舗の10倍ぐらい売れているということが起きたりします。
通常の統計的な分析仕法ではそういったものは異常値として取り除くのですが、ワークマンでは敢えてその異常値は一体何なのかということを単に数値ではなくて、実際に具体的に分析しました。
するとわかってきたのが、作業用の靴として売っていたものが実はすごく滑りにくくて安心だということで妊婦の方が買われていたということが明らかになりました。
そうやっていくうちに実はワークマンが対象と出来る市場というのが、この作業服という限られた範囲だけではなくて、カジュアルとかアウトドアといったところにもニーズがあるんだという事に気が付けるようになりました。
しかもワークマンは1000店舗近く持っていたので、すでに規模の経済を発揮出来る状況でした。
そうやって同じ商品をかなり安く売れる状態になっていて、それを機能性もありますし、そこに新たな売り文句を付けて、新たな市場アウトドアやカジュアルといった市場に、投入したことによって、自らの市場範囲を拡大することが出来ました。
だからこそ成長しましたし、ここから生まれてきたのがワークマン+でした。
つまりこのワークマンがアウトドアやカジュアルに進出したのは、最初からそこに進出しようと思って進出したのではなくてエクセル経営によって、データを分析したことによって、すでにもうある潜在ニーズを確実に掴むことが出来た、だからこそ失敗することなくこれらの新市場に進出することが出来ました。
この経緯を表しますと元々持っていた強みで、作業服市場、あるいは作業員のニーズというのを把握していました。
作業員というと過酷な環境で働くので、寒いところだと暖かくしないといけないですし、雨にも風にも耐えられて、そして足元は当然滑らない物、そういったも必要とします。
それをなんとか全国に展開することで安く作業服を作る技術に関しては、すでにかなりの部分を持っていました。
そして全国で1000店舗あるので日本中どこでも売れるそういった状態でした。
それだけの規模の経済を発揮出来ますから、コスト競争力同じ物を作るにしてもより安く作ることが出来ました。
ここに大きな変化をもたらしたのが2012年にやってきた土屋CEOです。
スーパーマーケットベイシアグループの創業者である土屋さんの甥なんですが、三井物産に勤めていたということですが、そこから招聘されてやってきます。
なので創業家ではあるのですがちゃんと実績を商社で詰んできました。
商社では様々な新規事業の立ち上げに関わったというので、経営に関してはすでにかなり知っているところがあった、つまり創業家の強みといわゆるプロ経営者としての強みどっちも持っていた、そういう器用な人材だったということが出来ます。
そしてワークマンに持ち込んだのが先ほど説明したようなエクセル経営です。
そしてこの人自身がかなり新たなマーケットを開拓していくというのはこれまでもやっていますし、それが得意だということなので新規市場開拓という精神を持ち込みました。
さらには著書にもあるのですが「しない経営」ということで従業員管理に長けていました。
この”しない”というのは頑張らないとか社内行事をしないといった、いわゆる昭和の経営スタイルと真逆を行くようなそういった経営でした。
この人は曰く無理をしてもどうせ続かないと、だったら5年10年と先を見た時にちゃんと会社に根付くような経営スタイル、従業員の働き方のスタイルを見つけていかなければいけないという先進的な経営スタイルを取り入れた方だったということが出来ます。
従業員の給与もそれまで500万円台だったものが今や700万円台に増えています。
これも給料100万上げるという宣言をして、従業員に頑張ってもらったという部分があります。
こういったこともあってワークマンも成長を遂げてきました。
ニーズのデッドスペースを発見
さてこのワークマンのポジショニング、一体何が凄かったのかいうところを、もう少し細かく分析してみたいと思います。
例えばアウトドア市場というとメジャーなプレーヤーとしては、ノースフェイス、パタゴニア、コロンビア、モンベルといったブランドがあります。
けれどもこの辺は確かに機能性は高いですが、やはり値段が高いというところはあります。
アウターを買うとしたら1着1万2万と、そういった物が売っているところだと思います。
ここに対して実は安く買おうと思ったら、当然安かろう悪かろうですからその他大勢としては、価格は落ちて安くなるけど一方で機能性は十分ではないものが売られているというところです。
これはなかなか買っても仕方がないというところです。
そんなところで一般的な選択肢としてはそこに風穴を開けたのが、このワークマンとなっています。
すでに作業服市場で全国に展開していたので、規模の経済発揮出来て、しかも作業員という過酷な環境にいる人達の物を売っていましたから、その機能に関しても十分なものを持っていました。
それを作業服という場所だけで展開していたのですが、その強みをアウトドアで活かしている人達がいました。
そしてそれが売れ筋のエクセルの異常値として現れてきたことによって、ワークマンはその変化、その兆しに気が付くことが出来ました。
それだけではなくて今や個人が発信できる時代ですから、ワークマンの製品を本来の作業服用途としてだけではなくて、アウトドアとかそういった分野で使っているブロガーやユーチューバーの方がいました。
それをユーチューバーに任せているだけではなくて、そのユーチューバーの方に声をかけました。
狩りをする女性がユーチューバーでいらっしゃったのですが、その女性を捕まえて実際に声を聞いて、さらにはワークマンの商品も宣伝してもらうというそういったサイクルを作り上げて、新たな市場へ進出していきました。
アウトドアはコロナ禍もあって流行っているところがあります。
しかし初心者がいきなり何万も出すというのはハードルが高いです。
それに対してワークマンの商品でいけるということになったら、安いので手が届きやすいです。
しかもワークマンは今や全国に店舗がありますから、行こうと思ったらその辺にあります。
うちも千葉なんですが知ってる限りで3店舗ぐらいはあります。
それほどの独自の強みをすでに持っていて、それを変化によってぶつけ出すことが出来て、そしてユーザーにとっては良い物をより安く手にすることが出来るといった結果をもたらしました。
結果としてはワークマンがアウトドア市場に進出してきたと表面だけ見ればそういうことなのですが、この背景を知ることによって何故そうなったのか、何故それが可能だったのかということがより深く知れるのではないかと思います。
成長は続く?
さて今後の可能性としてです。
作業服からカジュアル、アウトドアに進出してきましたが、実は同じやり方ですでにあるワークマンの商品というのを他の市場に投入して、機能性を持ちながら、より安く提供出来るのではないかというところは、実は考えてみれば色々な市場があります。
すでにかなり顕在化して商品を投入している部分があるのですが、例えばバイク、スポーツ、靴などです。
実は作業服とバイクは非常に相性が良いです。
実は私自身バイクに乗るのですがこのワークマンのつなぎがありまして、バイクに乗ると冬は凍えてしまうぐらい寒いのですが、しかしこれを着たら冗談抜きで部屋の中にいるような温かさがバイクに乗っててもずっと続きます。
しかも当然雨も防げるのでカッパの役割も果たします。
これが1万円弱ぐらいで買えてしまうので、私もバイクは初心者ですからとりあえずこれ買ってしまおうという風になりました。
これを買ってから私はバイクでどんな気候でもどこへでも行けてしまうという気持ちにもなれました。
さらにはスポーツとか靴の分野に関しては、私は大学時代に陸上部に所属していたのですが、その先輩が陸上部なのでちゃんとしたアシックスとかナイキとかアディダスといったメーカーのシューズをこれまで履いてきていました。
ところが社会人になってジョギングしたいなという時になって、このワークマンのジョギングシューズが結構良いという話になっています。
ガッツリやる人が履いて良いというぐらいなので、それは良いと思うので、私自身も試してみたいという風に思っています。
これがなんと1900円です。
私達が大学時代に靴を買おうと思ったら、長距離をやっていましたから月によっては1000キロとか走ります。
1000キロも走ったら靴1足2足潰れてしまいます。
それが一足が1万2万が当たり前の世界です。
それが1900円で買えるのだったら練習用としていくらでも買えます。
そういった可能性まだまだ沢山あるのではないかと思います。
各市場が大体数千億円ぐらいずつあります。
もちろん全部取れるとは言いませんが、そこから10%20%を取れるだけでも数百億ずつ市場増やしていくことが出来るという風にポジティブな見方をすれば考えられます。
ワークマンの売上高が今1000億円くらいですから、その100億ずつ取っていけば2倍になる日もそう遠くはないという風に考えられます。
もちろんリスクというのもありまして、多くの小売の企業は店舗数を増やすことで成長するので、今1000店なので店舗数を増やすこと自体は実は上限か近いんということが一つ考えられます。
アウトドアの市場が大きくてしかも今流行ってるということになると、巨大資本が入ってくる可能性があります。
ユニクロとかイオンなどといったところが入ってきます。
売上の規模が違うので規模の経済では勝てません。
ここと真っ向勝負に発行勝負になったら負けてしまうというところはあります。
最後は成長疲れです。
これまで社員が給料も上がって頑張ってきました。
これまで出来なかった事を色々やってきたという部分もあるのですが、ずっとそれを続けられるか、土屋さんも意欲が続くかというところももちろんあるのではないかと思います。
ここまで頑張らなくてもすでにこの盤石な基盤でやってる会社で、業績も良いですし、財務状況も何ら問題ない会社ですから、それに対してどこまで成長疲れがあるのか、むしろ頑張らない会社と言いましたから、プレッシャーをかけて短期で伸ばしていこうというそういう会社ではありません。
したがって今後しばらく成長が落ち着いて横ばいになる可能性は十分に考えられると思います。
では株価はどうなのかというところを見てみたいと思います。
この1年で3割下がっていると言いました。
今3割下がった時点でPER27倍です。
これだけを見て判断してもいけません。
PERというのはこれからの成長を見て考えないといけません。
過去のPERの推移を見ますと最近盛り上がってたというところから、一番高い時は80倍ぐらいありました。
これはさすがに高すぎると思うので、もしそれまでに持っていったらこれぐらいの時にはもう売っておかなければなりません。
しかし今は30倍弱ですからだいぶ下がってきてきました。
大体これぐらい成長する会社は20倍から30倍というのは真っ当な位置だと思います。
ブームになる前はそれぐらいの数値でした。
さてPERだけで判断するとそういうことになるのですが、私が何をするのかというと将来の業績をざっくり見通して、それに対してどのぐらいの株価が見通せそうかということを判断します。
5年後の想定です。
例えば売上高が今1000億円くらいですけれども、これが2倍近い2000億円になるという風に考えましょう。
今営業利益率が大体20%ぐらいなので営業利益は400億円になるとします。
それから導き出される営業利益と純利益というのが300億円ぐらいです。
これに対してPERが20倍から25倍ぐらい見込めるだろうという風に考えると、300億円にPERの20倍から25倍をかけると、5年後の想定時価総額というものが出せます。
これが6000億から7500億円ということになります。
そして現在の時価総額が5020億円ということになります。
妥当な数字としてはこんな感じになるのかなと思います。
なので持っていればプラスになる可能性はやはり高いのではないかという風に考えられます。
一方で5000から6000億ですからそんなに大きく伸びるものでもないなという風にも見えます。
これを良しとするかどうかというのが最終的な投資判断ということになりますので、是非長期投資をされる方はこういった考え方を身に付けていただければと思います。
さてまとめとしてはワークマンは作業服業界において盤石の強みを持っていて、そしてこの土屋CEOが就任したことによって、エクセル経営という大きな変化がもたらされました。
つまりこのもともと持っていた強みに変化が加わると、時に大化けして業績がものすごく伸びることがあるということを、我々は長期投資家としては認識しておきたいところです。
企業の強みというのをとにかく見極める、これが私がやりたい長期投資ということになります。
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