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以下、文章化したものです。
足元で原油価格が上昇しています。
原油価格で連想されるのが石油関連会社です。
しかし石油関連と言うと地球温暖化の最大の敵とも見られていて、事業自体も衰退産業ではないかと見られていてなかなか手が出せません。
そんな中で石油会社として日本を代表する会社にエネオスがあります。
このエネオス、実は配当利回りが5%近い高い水準になっていて、配当狙いの投資家にとっては非常に魅力的な銘柄にも見えるわけです。
このエネオス、果たして買っていいのかどうかということについて解説したいと思います。
石油はオワコン?
まず原油価格ですけれども足元で大きく上昇しています。
コロナショックで一時原油価格は大きく引き下がったのですが、一方でコロナが落ち着いてきて一部で経済活動が再開されたりすると石油に対する需要が高まり上昇基調になってきました。
原油価格が上がってきたら一般的に石油輸出国機構(OPEC)が増産を行うことが多いのですが、今回はその増産が見送られたということでさらに原油価格上がっているという状況です。
これがWTI原油先物という代表的な指標で、1バレル80ドルを超え、なんと7年ぶりの高値になっているのです。
原油価格が上がったということになると、短期的な投資家の目線としては関連銘柄がないかということを考えるわけです。
そうやって石油関連の銘柄を当たっていくと行き着くところがこのエネオスです。
PER10.5倍、PBR0.61倍、配当利回り4.82%と、いわゆるバリエーショ指標を見ると結構割安感があるという銘柄です。
特に配当に関しては5%近いということで配当が欲しい投資家にとっては非常に魅力的な銘柄です。
一方でネガティブ要素も多く浮かぶ銘柄でもあります。
何より石油は衰退産業なのではないかという風に見えるわけです。
今世界で流行っているのが電気自動車ですよね。
電気自動車はガソリンを使いませんからガソリンスタンドも要りません。
さらにこの脱プラの流れで減った買い物袋も石油製品です。
脱炭素の流れで席をどんどん使わないということになるといよいよ衰退産業なのではないか、ましてそれを日本でやってる会社ですから脱炭素がなかったとしても人口の減少によってますます石油需要が減っていくということが想定されます。
ESG投資にも逆行しています。
ESGとは、『環境・社会・ガバナンス』で、まさにこの環境によくない投資ということでそもそも機関投資家がこういった企業を買うのを避けようという動きになっています。
そのせいで株価も上がりにくい環境になっています。
事業とは別のところで投資資金が入りにくい状況となっています。
また、原油価格が足元で上昇してきたと言っても、上がるときは上がりますが下がる時は大きく下がります。
このコロナショックの時は、原油の需要が無くなったということで原油の行き場がない置いておく場所すらないということで一時先物価格に関してはお金を払ってでも売りたいというマイナス価格もついたほど、変動が激しいものです。
従ってこの原油価格の変動だけに賭ける投資というのはある種ギャンブルに近い動きとなってしまうわけです。
これらを見ているとどうしても良くないイメージが先行してしまう銘柄でもあるわけです。
ただ逆に私たちバリュー投資家から見てみると、こういうネガティブ要素というものはその企業の株を安く買えるチャンスにもなり得ます。
安く据え置かれているということです。
長期的な株価というのはやがてはその企業、株式が持つ本質的な価値というところに収束していきます。
人気がないといったネガティブ要素によって本質的な価値より低いところで株価が抑えられているのだとしたらそれは絶好の買い時になってくるわけです。
先ほどPER、PBR、配当利回りというバリエーション指標を示しましたけれども、これらが非常に魅力的な水準に見えるのも不人気であるからこそです。
ではそういった銘柄のなかでどういった銘柄だったら買えるのかというと、事業がしっかりしていて、人気はないけれども今後もしっかりと利益を出し続けられる企業、キャッシュフローを生み続けられる企業であればこれは投資対象に十分なり得ると考えるわけです。
なぜなら、株価が何倍にも上がることはないかもしれませんけれども一方で配当がしっかりと支払われていて、あまり下がるとその割安感を見込んで買う投資家というのも一部いますから、どこまでも下がり続けるというようなことはほぼ無いわけです。
こういったこともあって実は私がこの投資顧問サービスを始めた時の最初にお勧めした推奨銘柄がこのエネオス、当時のJXTGホールディングスだったのです。
精製マージンと在庫影響
なぜ私がその会社を推奨したのかということについてこれから具体的に説明したいと思います。
まずこの意味を理解するためには、エネオスなどの石油元売り会社のビジネスモデルを理解するところから始めなければいけません。
石油を売っているので基本的にはその売り上げは原油価格に連動するという風に見えるかもしれません。
確かに売り上げだけ見るとそうなのですが、ではこの会社が生み出している利益はどこからもたらされるのかということを知らなければなりません。
まず、日本では石油はほぼ取れませんから外国から輸入する必要があります。
石油元売り会社が仕切って外国から原油を輸入してくるというわけです。
しかしこの原由、実は原油のままだと使い物にならないのです。
これを例えばガソリンや灯油などにして使うためにはこれを精製しなければなりません。
従ってこの石油元売り会社というのは日本中に製油所を持っています。
この製油所で原油を精製することによってマージンを上乗せしたものが、例えばガソリンならガソリンの販売価格になるわけです。
従ってこの石油の精製マージンというのは原油価格が上がろうと下がろうと常に一定の金額を上乗せして販売できるものなのです。
原油価格が下がったとしても精製マージンは大きく減るものではなく、販売価格が下がるので売上高は下がってしまうのですが、そこから得られるマージン、つまり粗利益に関してはそれほど変わることはないということになります。
よって長期的な視野で見た時には実はこの石油元売り会社が得られる粗利益というのは原油価格のようにそう大きく変動するものではないのです。
もちろん原油価格があまり上がりすぎるとそもそも誰もガソリンを買わなくなって販売数量が減ってしまいますからマージンの合計が減ってしまうということもあるでしょうし、原油価格が下がった時にはマージンをパーセンテージでやっていると原油価格が下がった分パーセンテージをかけた時のマージンも減ってしまうということも考えられます。
ただ基本的にはやはり原油価格ほど大きく利益が左右されるビジネスモデルではありません。
常に原油を仕入れてそれを精製することで利益を得ている会社です。
精製したものを海外から輸入するというのはあまりない話ですので、石油精製は国内で必ずやる必要があり、海外との価格競争に陥るというわけでも必ずしもありません。
しかし実際のところはこの石油元売り会社の株価は結局原油価格に連動する部分がやはり非常に大きくなる
わけです。
それは結局目先の業績、利益が原油価格によって大きく変わってくるからです。
なぜそういうことになってくるかと言うと、今度は会計のからくりを見なければなりません。
まず、在庫の影響というのが大きいわけです。
原油価格が上下しても最終的な精製マージンは変わらないという話をしましたが、例えばガソリンならガソリン価格は仕入れ価格にかかわらず原油価格に連動して上がったり下がったりします。
しかし一方ではその原油をすぐに売るということはできずやはりある程度昔に買ったものを精製して売るということになるのである程度昔に買った時の金額が原価として残っているのです。
すなわち原油価格が右肩下がりになっている時は、販売価格は同じく下がるものの、原価としては高い時のものが残っているので、高く買って安く売ることになり、会計上のマージンが削られることになります。
従って原油価格が下がっているときの会計上の利益はかなり削られてしまうことになります。
だからこそ赤字ということも起こり得るのです。
しかし、時間が経ってくると原価も下がった時のものになるので、マージンも適正な数字に戻ってきます。
これを長期で見ると利益はあまり変わらないのですが、やはり原油価格が下落している時は会計上の見た目の利益が減りやすいところがあり、株価もそれに反応して下がってしまうことが起こり得ます。
原油価格の上昇時はこの逆のことが起こり、会計上の利益は大きくなります。
これがいわゆる「在庫影響」というもので、会計上の利益というものは大きくぶれることになります。
寡占化と再編で安定
しかし、何度も言っています通り長期的な視野で見たときにはやはりこの精製マージンというのはある程度均一化されてくるものなので、原油価格に左右されず長期的な目線でどれだけ価値を生める会社なのかということを見なければなりません。
昔はかなり多くの石油元売り会社があって、ガソリンなどの価格競争が起こっていた時代もありましたが、今はそういう状況ではなくなってきています。
経済産業省の主導もあって、再編が進んできたのです。
日本において、人口が増えず石油の需要も停滞ないし下落している中で、多くの元売り会社が争っていたらどの会社も潰れてしまう可能性がありました。
しかし、石油というと、もし戦争になった時やあるいは経済的な安全保障に関わるものなので、国内に石油精製所が無いというのは大きな問題となります。
そこで経済産業省主導の再編が行われたのです。
今では大きなところだとエネオス、出光、コスモ石油くらいのものとなっています。
”寡占化”が進んでいるのです。
ほぼ3社しかない中で、さらにエネオスが最大手ということになると、価格決定力を持つようになります。
石油製品の価格をある程度決めることができるようになり、少なくとも「赤字覚悟で値下げする」ようなことはする必要はなくなってきています。
同時に、昔は人口が増えていた時代もあったので、製油所を作りすぎていたところもありました。
1つの製油所しか持たない小さい会社はその製油所が無くなると会社が終わってしまうので製油所を潰すことはできませんが、会社が統合すると要らない製油所を潰すことができるようになり、コストを削減できるのです。
寡占化による価格決定力の強化と再編によるコスト削減、これが今石油業界で起こっていることです。
こうなると、財務状況やキャッシュフローの状況が非常に安定してきます。
他の会社が価格競争を仕掛けてくることも無くなり、かなり計画性を持って投資などを行うことができます。
その結果、このように営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを引いたフリーキャッシュフロー、つまり会社に最終的に残るお金が、特に2015年くらいからはずっとほぼプラスで安定しています。
キャッシュフローが安定しているということはその先にあるバランスシート、安定性というのも強化されていきますから、これを見ると経営的には相当安定していると言えます。
確かにガソリンの消費などトータルのパイは減ってきているかもしれませんが、一方でガソリン車が無くなることもないでしょうし、石油の需要が無くなるということは現在の技術ではまず考えられないので、生き残った者の「残存者利得」というものを得続けられる状況でもあると考えられます。
キャッシュフローがこれだけ安定していると株主にとって何がいいかというと、このフリーキャッシュフローの中から配当が支払われるので、配当に良い影響があります。
横這いというところからじんわりとですが上がってきて、しかも安定しています。
この間実は会計上は赤字の年もありました。
ただ先ほど説明したように、ここで言う赤字は本当は問題ないけど原油価格の変動によって会計上の赤字が出ているだけに過ぎないということです。
一方、配当の原資となるキャッシュフローは安定していますから安定した配当を出し続けることができているわけです。
今後もよっぽどおかしなことがない限りこの状況は続くのではないかと考えます。
もちろん、どんどん成長する会社かとそういうわけでもないですが、ただ残存者利得の中で安定したキャッシュフローを出し続けられる状況はやはり変わりにくいのではないかと思います。
また、積極的な面としては脱炭素の動きも行っていて再生可能エネルギーに投資したり、半導体材料など先進材料の分野にも進出しています。
こちらは石油と違って安定した利益を出しつつあります。
この辺の投資が功を奏してきたら今後の経営の安定化というところにも寄与するでしょうし、新興会社の再生エネルギー会社を買収したりしてそちらの方にも進んでいるという風には見ておいてください。
ただあくまでまだ利益の半分ぐらいは石油関連から出ているというところでもあります。
投資するなら欲張らず
ではこのような会社をどうやって買えばいいのか。
これは過去10年のチャートですが、2018年から19年にかけて大きく上がった時はありますが、基本的には400円から500数十円の間のレンジ相場がこの10年続いています。
説明した通り、成長はないけれどもただ大崩れすることもない、そういった銘柄です。
従って、今足元で原油価格が上昇していますがこれは会計上の利益を引き上げる可能性があるので一時的には追い風になる可能性が十分にあるという風に考えます。
今見てきた通り配当を継続する力はを持っています。
一方で株価は長い間、一時期上がった時を除けば400円から500円のレンジで続いています。
ちなみに私がこの投資顧問サービスを始めて最初に買ったのは2016年の夏ですから、300円台で買いました。
その後上がって、500円台半ばくらいで売りました。
50%くらいの利益を得たというところになっていますが、その後大きく上がったのにはついていけなかったのでそういう勘はまだまだ磨かないといけないところです。
一方でこのレンジから外れたところでもあったので仕方がなかったかなという側面もあります。
これを受けてどういった戦略が望ましいかというと、まずはこの5%弱ある配当をメインに投資するというのがいいのではないかと思います。
基本的にはキャピタルゲインを取る投資ではなくてインカムゲインを取る投資だという風に考えた方がいいと思います。
それほど大きく株価が上昇するものでは基本的にはないということです。
下がるようであれば下値を買い集めていればそこから大きく崩れるようなことはなかなかないというところになってきます。
一方で何年にもわたって上がり続けるということもなかなか想定しづらい銘柄でもあります。
これは経済のパイが広がらないというところもあります。
確かに2018年の時は大きく上がりましたが、一方でこの後瞬間的に下がっていますから、これは逃げ遅れたら元の木阿弥というところにもなってきます。
確かに言えることは「欲張らない」ということがこの会社に投資する秘訣なのではないかと思います。
安く買っていれば、5%の配当を得てコツコツと買ってもし何十%上がったら売るということをやれば、それほど大きな利益ではないかもしれませんが少なくともこの配当+αくらいの利益を得られる、そういった銘柄になってきます。
決して悪い状況にはなく、経営戦略上も確かなことをやっている会社だという風に認識しておりますのでぜひそういった目で見ていただければと思います。
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