日本郵政株、売出しで買った人が今すぐ売るべき理由

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以下、文章化したものです。

 


今回は日本郵政についてです。
 
直近で政府の株式の売り出しがありましたが、この売り出しで買われた方も多いのではないかと思います。
 
果たして、買った方はこのまま持っていていいのかどうかということについて議論して参りたいと思います。

とにかく厳しい日本郵政

まず、これが日本郵政の現在の状況です。
 
上場から見た時の株価というのは右肩下がりになっていて、コロナ禍で大きく下がったところからは一時回復しましたが、この売り出しを受けてまた下がっているというところです。
 
売り出しというと政府が株を市場に売るわけですから市場の株式需給が悪化して基本的にはやはり下落しやすい環境になります。
 
一方で、これだけ下がってきたがゆえにバリエーション指標が非常に低い数値となっていて、10倍を切ったら即割安という風に見えるPERが9.7倍、純資産と比べて1倍を下回れば割安とされるPBRはなんと0.25倍と純資産の4分の1でしか評価されていないという数字になっています。
 
さらには配当利回りは5%を超えて5.71%と、それだけ見ると超高利回り商品のようにも見えます。
 
今割安で配当もあるので株価が伸びるのであれば長期で持てるという考え方もできますし、売り出し価格が820円で10月29日金曜日の終値が875円なのでこの時点で売れば配当予想の50円よりも利益を取れるという考え方もできます。
 
 
どのように考えれば良いかをお話します。
 
日本郵政がどんな事業をやっているのかというと、持ち株会社になっていて、日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の3社から成ります。
 
このグループのメインの収益源は何なのかを見るために経常利益の部分を確認します。
 
 
これ見れば分かるように、収益の大部分は郵便ではなくて銀行などからもたらされているものなのです。
 
つまり、日本郵政グループは郵便の会社だと思われがちですが金融事業によって支えられているというところがあります。
 
 
事業の損益の見通しを考えるためにはゆうちょ銀行とかんぽ銀行を見ていくことが有効だと考えられます。
 
まずゆうちょ銀行です。
 
経常利益が右肩下がりになっています。
 
一つの要因としては金利が低いことが挙げられます。
 
銀行ですからどうしても金利がつかないといくら預金を預かってそれを運用しても利益が上がらないという状況があります。
 
一方で預金残高自体は増えているのですがやはり金利の低下には抗えていません。
 
利益がどんどん目減りしています。
 
かんぽ生命に関しても同じような状況が続いていて、ましてつい最近にはかんぽ生命の保険商品を売るのにかなり強引な営業とか不正な営業というのがあり、そういった不祥事も相まってどんどん収益が落ちていっている状況です。
 
直近で利益が少し上がっていますがこれがなんと不祥事によって営業活動を自粛したことによりコストが下がり利益が上がったといういびつな状況になっています。
 
要するに、長期で見ればジリ貧ということです。
 
さらには、皆さん分かっていると思いますが連絡手段として郵便を積極的に使おうとは思いませんよね。
 
無くなることもないですが郵便の取扱数量は減少しています。
 
一方で伸びているのはゆうパックなのですけれども、ゆうパックはヤマトや佐川との競争もあって大変な業界でもあります。
 
 
また、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の窓口手数料も、ネットバンキングもあり窓口を使う人が減り、収益が落ちてきています。
 
 
オーストラリアのトールの一部を買収した国際物流事業もありますが、これも赤字だったりギリギリ黒字だったりというかなり厳しい状況です。
 
トータルで見ると、業績はどこをとっても落ちてきていて、株価も同じように下がってきているということです。
 
以前も言及したように、実は私自身が証券会社に所属していた時に日本郵政の担当をしていました。
 
なので会社のことをよく調べるわけですが、知れば知るほどこの会社はどうも厳しいなというような状況が見て取れたわけです。
 
外部環境として郵便が厳しいというのは明らかですけれども、それ以上にですね内部の経営というのが統制が取れたものになっていないのです。
 
経営陣は役所や銀行からの天下りだったりしますし、職員に関しても、これまでは公的機関だったので身を守りがちで、頑張って業績を伸ばしていこうというような人たちの集まりではないのです。
 
そんな中でかんぽ生命の不祥事にあった通り、民営化してノルマだけは追加されることになりその結果不正がはびこってしまう、明らかになったのは最近ですが、上場を準備していた頃から問題になったりしていました。
 
それほどこの会社は厳しいと言わざるを得ないところがあるわけです。

おすすめはやはり手離すこと

では今後の見通しです。
 
あまり良いところが無い日本郵政ですが、上向く要因も少なからずあります。
 
 
ポジティブ要因として一つは金利の上昇があります。
 
収益の大部分を占めるのはゆうちょ銀行とかんぽ生命なので金利が上がれば必然的に収益が上がってきます。
 
これはゆうちょ銀行に限らず他の銀行についても言えることです。
 
ゆうパックは好調というところもありますから、単純にやっていてはなかなか利益を出すのは難しいと思いますがうまく効率化できればプラスに働き得ると思います。
 
また、日本郵政が新たな中期計画の中で盛んに言っていることが、DXによるコスト削減です。
 
これは一方で人を減らすことになるのでリストラにも繋がりますが、利益を伸ばすためには必要なことでもあります。
 
ネガティブ要因はこれまでいくつも挙げてきましたが、まずデジタル化によって郵便自体が減少しています。
 
DXを利用してプラスになる部分もありますがやはりマイナスの部分が非常に大きいです。
 
それから人件費です。
 
人は減らそうとしていますが一方で人手不足にもなっていますし、最近では岸田政権の政策にもなっている非正規雇用の人も社会保障に入れるということになると会社も一部を負担しなければならないのでその分人件費も上がることになります。
 
不祥事によってもはや死に体となっているかんぽ生命をどうするのかという問題もあります。
 
これらのことから、単純にこれまでの流れだけでは良くなくて、リストラを含む抜本的な外科手術が必要になると私は考えています。
 
簡単なことでは立ち直るのは難しいです。
 
今は元岩手県知事の増田さんが社長となって改革を行おうとしていますが、この方は民間経験があるわけではありませんからまだまだ前途多難だと思います。
 
こういった、成長があまり見込めなくて一方で規模だけはあるから安心できるというような企業を見るときに大切なのは配当です。
 
株価の上昇はどうしても見込みにくいところがありますから一方で安定した配当を出し続けてくれればそれくらいのリターンは得られるという見方をしなければなりません。
 
日本郵政の配当は毎年50円というのを基本としています。
 
2025年度まではこの50円を維持するというふうに言っています。
 
ところが今回の政府の売り出しによって政府の売却が終了したのです。
 
政府が売却を計画しているうちは、政府もなるべく高い価格で売却したいのでなんとか配当は維持させて
株価を少しでも高く留まらせようと考えるのではないかと思います。
 
しかし売却が終了してしまいましたからもう日本郵政の株価を高く留めておくべき理由が無くなってしまいました。
 
従ってこの配当が2025年以降どうなるかということも分かりませんし、もしかしたら2025年を待たずに減配してもおかしくないです。
 
利益が減っていて、50円の配当を維持するといっても配当性向50%超という利益の半分以上を配当に出すという状況が続いています。
 
正直先の見込みもあまりありませんからいつ減配してもおかしくないという状況ではないかと思います。
 
そもそも、国有財産である日本郵政株をPBR0.25倍という本来あるべきところの4分の1で売ったのは、復興財源に充てるという名目があるので2027年度までに売らなければならないということもありますが、今以上に下がる可能性があるからではないかと考えられます。
 
ここで言えることは、政府が株価を下支えする思惑もなくなりつつあるというところではないかと思います。
 
ではそんな時に投資家としてどうするのか、特に今回の売り出しで820円で購入した人はどうするのか。
 
10月29日金曜日の終値であるが875円で売却するとしたら、55円、購入金額に対して6.7%の利益が出ます。
 
しかも売却するので以降の株価変動リスクはありません。
 
一方で配当を見込んで保有を継続した場合、3月末まで保有したら50円ですから6.1%の配当を得られ、これで考えるとほぼトントンという風にも見えます。
 
ただし、持ち続けて配当を受ける権利を獲得した後というのは株価が維持されるかというとそうではなくて多くの場合、高配当株であればあるほどその後この配当分くらいは株価が下がりやすいのです。
 
「配当落ち」という現象です。
 
これは2021年の3月末のものですが、3月29日から翌営業日にかけて終値ベースで68円下落しました。
 
配当の50円をもらって売ってしまうことが多く、その直前にある程度上がることもありますが、結局それまでの株価推移がものを言いますから配当をもらおうと思っていてもなかなか厳しい部分もあります。
 
さらには株を持ち続ける限りは保有期間における株価変動リスクを負うことになります。
 
長期で見た時に、金利の上昇を除いてはそうそう株価は上がりにくく、確かに割安ではありますが一方で業績がかなり厳しいですから買いたい投資家はそう多くないのではないかと思います。
 
見どころといえばやはり配当だけというところになってきて、万が一業績悪化などによって減配があるとしたらさらなる株価の下落というのをを想定しておかなければならないかと思います。
 
 
このように、日本郵政の株は持っていてもあまり良いことはないというのが私の結論です。
 
もし売り出しで買われた方がいらっしゃいましたら速やかに売却することをおすすめします。
 
そしてもっと成長性の見込める良い企業に投資するというのが確立の高い方法だと思います。

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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