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アメリカの調査会社グラウカスが、伊藤忠の会計不正を指摘するレポートを公表し、同社の株価が下落しています。レポートでは、伊藤忠に東芝と同じような事態が起きていると指摘していますが、本当のところはどうなのでしょうか。
グラウカスのしたたかな戦略
グラウカスは調査会社であると同時に、ファンドの運用を行っています。その手口は非常にしたたかです。
まず、会計不正が行われている可能性のある企業を見つけ、その株を空売りします。そして、売りを推奨するレポートを書き、株価が下がったところで株を買い戻して利益を出すという手口です。
一歩間違えば、風説の流布ともとらえられかねない方法です。しかし、グラウカスはあくまで有価証券報告書等の開示資料から問題点を指摘しているだけで、虚偽ではないとしています。きれいな言い方をすれば、「会計の番人」です。
法律上問題ないからといって、倫理的な問題が残ります。そもそも会計というのは完全なものではなく、解釈のちがいは必ず起こるものです。私としては、グラウカスのやり方には全く賛同できません。
これまでアメリカや香港、インドなどを中心に活動してきましたが、ついに日本にも上陸しました。そして最初に目をつけられたのが伊藤忠というわけです。
会計不正と言うほどのものではない
今回の指摘は3つです。1つ目はコロンビアの石炭事業への出資、2つ目は中国CITICへの投資、3つ目は中国企業の頂新の持分に関するものです。いずれも利益のかさ上げに利用したとしています。(グラウカスのレポートはこちら。)
伊藤忠は、すぐさまレポートを否定するリリースを出しています。監査法人による監査も受けており、問題ないという立場です。私も見ましたが、会計不正と言われるほどのものではないと思います。
しかし、市場は敏感に反応しました。レポートが公表されてから、一時年初来安値を更新しました。それに伴い、PERは5.3倍、配当利回りは4.7%に達しています。バリュー投資家なら、つい手を出したくなる数字です。
「非資源ナンバーワン商社」
ここで伊藤忠という会社について振り返ってみます。
伊藤忠は三菱商事や三井物産と肩を並べる大手商社の一角として数えられます。商社の中でも特徴的なのが、非資源事業への注力です。
三菱商事や三井物産は昨年度、資源価格の下落により創立以来初の赤字を記録しました。一方の伊藤忠は順調な業績を維持し、総合商社の中で初めて純利益ナンバーワンに躍り出たのです。
好調の理由は、資源分野に大きな投資を行っていなかったからです。資源への投資をリスクと考え、食品や生活関連事業への投資を推し進めてきました。その結果、資源価格の下落による痛手を被ることがなかったのです。
伊藤忠が抱える大きなリスク
業績も堅調で、一見優良に見える伊藤忠ですが、実は大きなリスクを抱えています。グラウカスのレポートにも出てきた、中国のCITICへの約6,000億円に及ぶ投資です。CITICは伊藤忠の持分法適用会社になっていますが、この出資方法が特殊なのです。
CITICへの投資にあたって、伊藤忠はタイ大手財閥チャロン・ポカパン(CP)グループと折半出資会社を設立しました。出資会社がCITIC株式の約20%を取得したことで、CITICは伊藤忠の孫会社となりますが、保有比率は実態として約10%にすぎません。
しかし、形式上持分法適用会社になっていることで、CITICの利益の10%が伊藤忠の連結利益に反映されるのです。この状況では伊藤忠がCITICの経営に重大な影響を与えることはありませんから、連結と言われてもピンときません。グラウカスもこの点を問題にしています。
伊藤忠は2015年初にCITICへ巨額投資を行いながら、当初発表されていたような提携効果をいまだ得ることはできていません。さらに、私もこれまで指摘してきたように、中国は経済成長に関する大きなリスクを抱えています。チャイナ・ショックが現実化することにより、伊藤忠も損失を免れない可能性があります。
割安な株価は、中国リスクを反映したものと考えられます。CITICの業績が急激に悪化したとしても、伊藤忠の経営を大きく揺るがすほどのものではないと思いますが、短・中期的には株価に大きなダメージを与えるでしょう。
伊藤忠への投資は、中国リスクを見極めてからでも遅くないと思います。
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何時も読ませて頂き、とても勉強になり有難う御座います。
資料も楽しみです。
活用出来る様願うのみです。
お読みいただき、ありがとうございます。
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