「バリュートラップ」を避けよ!

「バリュートラップ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。割安株がいつまで経っても割安なまま低迷したり、割安だと思っていたのにそれ以上値を下げてしまうことを言います。バリュートラップはどのようなメカニズムで発生し、それを避けるためにはどうしたらいいのでしょうか。

指標が低いだけでは割安とは言えない

バリュー株は一般的にPERやPBRが低い銘柄のことを指します。これらの指標が低ければ、利益や純資産の額に対して株価が割安に評価されていることを意味します。多くのバリュー投資家は、単純に指標を使ってスクリーニングをかけ、投資する銘柄を絞っていると思われます。

しかし、指標のみに頼るスクリーニングには大きな落とし穴があります。ひとつは、いつまで経っても低い指標が続いてしまうケースであり、もうひとつは業績そのものが大きく悪化し、決算発表と当時に株価が下がってしまうケースです。

PERは「成長期待マイナス将来への不安」です。高い成長期待はPERを押し上げ、不安はPERを押し下げます。低いPERが続くということは、将来への不安がいつまで経っても解消されない状態であり、業績悪化によってその不安が現実になるケースもよく見られます。

いずれにしても、低いPERにはそれなりの意味があり、指標だけを見て銘柄を決めることは大きな危険を伴います。スクリーニングによる数値だけを頼って企業の実態を見ないことがどれほど危ういかお分かりいただけるでしょう。

ちなみに、私はPBRをほとんど気にしません。PBRのもととなる純資産は、会社を精算した時に株主に分配される金額を表していると言われますが、実際に解散したとしたら持っている資産の大部分は簿価よりも大幅に安い価格で売らなければならないため、その金額が実現することはないからです。PBRが1倍を下回っていても、決して割安ではないと考えます。

「成長期待」と「将来への不安」を明らかにする

もし、全ての投資家がPERだけをもとに取引をするならば、いずれ全ての銘柄のPERは1つの水準に収束するでしょう。そうならないのは、各企業への「成長期待」と「将来への不安」が異なるからです。そこまで理解しなければ、本当に割安なのかどうかを判断することはできません。指標を使ったスクリーニングは入り口としては使えないこともないですが、最終的には企業の実態を見ることが絶対条件です。

あなたがPERで割安な銘柄を見つけたとしましょう。それ自体は素晴らしいことですが、そこからさらに分析が必要です。なぜそんなに割安に放置されているのか、原因を探らなければなりません。

「成長期待」が低い銘柄は、当然PERが低くなります。明らかな衰退産業で、業界トップでもないなら、将来性は見込めないでしょう。よほどのことがない限り、このような銘柄に長期投資する魅力はありません。

大きなリスクを取っていたり、業績が大きくブレる銘柄は「将来への不安」が大きく、PERは低くなりがちです。ただし、このような銘柄は事業が成功するなどの不安が解消された時に大きく上昇する場合があります。

指標と実態との「ズレ」を見つける

割安に放置されている原因を理解したら、それが本当に企業の価値に対して大きなマイナス要因となるかを検証する必要があります。例えば、石油関係の銘柄が原油安の影響で大きく割安になっているとしても、実は原油価格の影響をそれほど受けないのであれば、実態以上に割安に評価されている可能性は十分にあります。

株価は短期的には人の心理で決まるものです。人の心理は絶対的なものではなく、ちょっとした出来事で大きく動きます。人の心理と企業の価値との間に乖離を見つけることができてはじめて、バリュー株投資家としては一人前です。

もし指標面で割安な銘柄を見つけて、その原因がわからなかったり、割安である自信が持てなかったりしたら、ぜひ私に聞いてみてください。専門的な観点からその企業を分析し、割安かどうかについての意見を差し上げます。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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