買える株は全体の2割にすぎない

会員の皆さまから銘柄に関する相談を受けますが、買いを思いとどまらせたり、保有株の売却をアドバイスすることが多くなっています。あまりに慎重だと思われるかもしれませんが、バリュー株投資の本質である長期厳選投資には「買わない銘柄」を決めることが最も重要です。

株価よりも企業の実態を把握

私は銘柄分析をするときに、株価よりもまずは企業の実態を把握することに努めます。先に株価を見てしまうと、どうしても先入観にとらわれてしまうからです。

企業分析に使用するのは有価証券報告書です。有価証券報告書には投資に必要な情報の大部分が盛り込まれています。フォーマットは法律によって定められているため、どの会社であっても同じように分析できます。

分析の内容は様々ですが、大きく分けて業績事業内容主な販売先を見ます。それらを総合的に判断し、その企業が競合他社にはない競争優位性を持っているかどうかを判断します。

まずは業績です。一概には言えませんが、売上高営業利益率が高い企業は何らかの競争優位性を持っていることがほとんどです。同時に、業績は安定しているのかブレやすいのか、成長しているのか衰退しているのかを確認します。

業績を一通り見たら、事業内容を確認し、なぜその業績になっているのか想像力を働かせながら分析します。利益率が高い企業の競争力の源泉は何なのか、為替はどのように影響するか、その市場に成長性はあるかというようなことです。

販売先を確認することも重要です。例えば、国内の顧客ばかりを相手にしていればあまり成長性はなさそうですが、新興国が主な市場であれば成長力は高いと言えます。また、法人相手の事業で、特定の企業や業界に偏っていれば、業績の変動も大きくなります。

一通り事業内容が理解できたところで、会社のリスクを点検します。リスクの内容は有価証券報告書の「事業等のリスク」に記されています。例えば、為替が大きなリスクになっている企業では、円高局面では急激な悪化に気をつける必要があります。

企業分析だけで約8割の銘柄は投資対象から外れる

他の企業が持っていない競争力があり、会社の価値を大きく劣化させるリスクがない企業が長期投資においては初めて投資対象となります。逆に、競争力がなく、会社の根幹を揺るがすようなリスクがある企業は投資対象になりえません。

以上の企業分析により、約8割の企業は株価を見る前に投資対象から外れます。短期的には株価が上がらないというわけではないのですが、長期で見た時に大きなリターンを生む可能性が低く、そこに資金を振り分けることは機会損失となってしまいます。

長期投資の王道は、小さな儲けにこだわらず、大きな儲けを見据えることです。だからこそ、中途半端な銘柄ではなく、より可能性の大きい銘柄に集中投資することが成果に結びつくことを覚えておいてください。

残り2割の銘柄が割安になるのを待つ

こうして買うに値すると判断された約2割の銘柄ですが、その多くは割高な水準になっています。なぜなら、多くの投資家がその銘柄をいい銘柄だと判断しているからです。

しかし、逆に言えばその銘柄を欲しがる人が非常に多いということです。買いたい人が多い銘柄は株価が下がりにくく、長期的に良好な株価展開が想定されます。

このような銘柄が、外的な要因や、企業の価値とは本質的に影響のない要因で株価が下がったとしたら、それは大きな投資のチャンスです。

もちろん、いくら株価が下がったと言っても、PERが50倍にもなれば価値を正当化することは難しいでしょう。しかし、PER20倍程度なら、これから先の利益成長を考えると、十分に割安と言える銘柄も眠っています。この判断が投資家の腕の見せどころです。

もっとも、一番シンプルなのは、リーマン・ショックのように市場全体が大きく下げたタイミングで、2割に相当する優良な株を購入することです。バリュー投資家がやるべきことは、このような優良銘柄に日頃から目をつけておき、株価が大きく下がったところで購入するチャンスをうかがうことです。

現在の株式市場は高い水準にあると考えています。このようなタイミングでは無理に投資しようとせず、優良銘柄を探しながら大きなチャンスが来るのを待つことが重要です。

※本記事は会員向けレポートの一部を抜粋したものです。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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