今回のテーマは『原油高相場の歩き方』です。
目下、ウクライナ紛争の影響で原油価格が高止まりしていますが、こんな時に私たち投資家はどんな行動を取ればよいのでしょうか。
短期、中期、長期、それぞれの考え方を解説します。
経済制裁と各国のエネルギー事情
まず原油価格です。
ロシアのウクライナ侵攻を受けて原油価格が大きく上昇しています。
ロシアは世界有数の原油、天然ガスの輸出国なのです。
原油というと中東のイメージが強いですが、ロシアはサウジアラビアに次いで2位、天然ガスに関しては世界1位の輸出量となっています。
どこに輸出しているかというと、なんと今対立している西欧諸国、特にドイツです。
欧州諸国にはパイプラインをつないで輸出しています。
そして今、アメリカ、ヨーロッパを中心に、ロシアに経済制裁を与えなければならない流れになり、ロシアをSWIFTから排除しました。
さらに、ロシアからの原油等の輸入をストップするということになると、ロシアのダメージは大きく、それによってウクライナへの侵攻を止めさせようと考えています。
しかし、これだけ原油・天然ガスの輸入をロシアに依存していると、そこからの供給がストップするとエネルギーの供給がままならなくなってしまいます。
それでも経済制裁を行うというのならドイツなどの国々は他の国から原油を調達しなければならず、原油を売る方としては多少高くても買ってくれるので原油価格を引き上げることになり、原油先物価格がどんどん上がるという状況になっています。
ところがこの原油の輸入を規制するという動きは一筋縄ではいかない部分もあります。
真っ先にロシア産の原油の輸入を停止すると言ったのがアメリカとイギリスなのですが、この2国はエネルギー自給率が非常に高いのです。
自国で消費しているとはいえ、アメリカイギリスは産油国です。
ロシアからの供給が止まっても痛くもかゆくもない部分があります。
だからこそ真っ先に禁止したわけですが、一方でドイツや日本などの自給率が低い国々はロシアからの供給が無くなるとかなり厳しくなってしまうので、ロシアからの輸入禁止には二の足を踏んでいます。
オイルショックと同じ道をたどる?
ただ、確かに原油価格は上がっていますが、このまま上がり続けるかというと必ずしもそうではない側面もあります。
同じような状況になったのが1970年代のオイルショックの時です。
当時は中東戦争によってOPECが石油の供給をしないと言ったり原油価格の決定権を握って価格を引き上げようとしたりしたため、供給不安から原油価格が高騰しました。
しかし、その後の動きに注目すると、石油に頼りすぎてはいけないということで脱原油、産業構造の変化が起こりました。
さらに、原油を輸出すれば儲かるということで、非OPECの国々が原油を増産しました。
需要の減少と供給の増加によって、原油価格の下落をもたらしました。
つまり、原油価格が上がり続けるということはなく、もはや論点はどこでピークアウトするかというところになっています。
今回のケースもオイルショックの時と同じような経路をたどるのではないかと考えています。
実際にアラブ諸国は原油を増産すると言っていますし、アメリカのシェールガス開発も進んでくると思われます。
時系列でまとめてみます。
まず、ドイツ等が戦争を止めることを優先して対露制裁に参加するとなるとさらなる原油価格の上昇の要因となります。
逆に自国の経済を考えて参加しないとすると、これ以上は原油価格は上がりにくいのではないかと思います。
また、戦争が長期化すれば原油価格は高止まりするでしょうし、アラブ諸国やアメリカの原油増産もすぐに出来るわけではありませんから、なかなか下がらないと考えられます。
中期的には金融政策が大きく影響してきます。
FRBはコロナショックで金利をほぼゼロにしたところから、利上げをして正常化させようとしています。
インフレを抑えるためです。
ところが、この戦争によるインフレは必ずしも金融政策による物価の上昇ではなく、原油価格が上がったことによるコストプッシュインフレなので、金利を上げたとしてもインフレが収まらない可能性があります。
物価が上がり、消費が落ち込んでくると景気悪化につながりかねず、景気が悪化している時に金利を上げるとなるとより一層経済活動の意欲を削いでしまいさらに景気を悪化させてしまうこととなります。
金融政策をどのようにするかが非常に難しくなっており、これが目先の株価に大きく影響を与えるという認識を持っておいてください。
また、アメリカのシェール開発が進むかということもあります。
これほど原油価格が上がると、経済理論的には進む可能性が高いと言えますが、一方でグリーンエネルギーへの転換の観点から開発に二の足を踏む可能性もあり、実際にどう動くかが注目されるところです。
もっと長期的な見方をすると、『脱原油』というものもあると思います。
実際にモノを作ろうとすると、原油価格などのの変動の影響は避けられません。
コストを下げてビジネスや生活を行おうとすると、『デジタルシフト』が効果的です。
極端な話ですが、飛行機に乗って旅行に行くよりもVRで体験すればいい、というような流れになる可能性もあるわけです。
まとめますと、まずは政治的な駆け引きが原油価格に影響を与えてくるでしょう。
その後、景気が悪化しながらの物価上昇である「スタグフレーション」が起こる可能性が高いと私は考えています。
そして、様々な対策が取られる中で産業構造改革が起こるだろう、というのが、短期、中期、長期の流れではないかと思います。
この流れの中でどう動くべきかというと、物価上昇景気悪化の局面ではどの企業も苦しむことは確かです。
まずはここで生き残って、その後の長期トレンドに乗っていける、人々のニーズに合った商品を提供できる企業を買うことが、いつ何時においても言えることですが、長期投資では重要となります。
短期・中期・長期。それぞれの動き方
では、「長期」というのはどのくらいの期間なのか、また、短期、中期ではどうなのかということについてお話します。
短期というと目先半年くらいになると思いますが、原油価格はやはり政治的状況によって高止まりだったり上がったりする可能性があると思います。
たとえばドイツが無理してでもロシアからの原油の輸入を止めるとなれば、原油価格は上がりやすくなります。
原油価格自体は先を読んで動くもので、ボラティリティも高いので、原油価格そのものの取引に慣れている人ならよいですが、株式の投資家がそれを行うのは難しいでしょう。
なので、目を付けるとしたら、原油関係でありながらまだ目を付けられていない企業や長期的に伸びている企業であれば下落余地は小さいと思います。
そういった銘柄を探して半年くらいのつもりでベットしておくのはありかと思います。
ただし、状況が変わって原油価格がピークアウトしたと思ったらすぐに撤退するということを頭に置いてやらないと痛い目を見ることとなってしまいます。
常に社会状況を見ていなければならないので、特に兼業の投資家には短期投資は難しいと私は考えています。
中期以上の期間になると、別の仕事をしながらでもできると思います。
2~3年ということを考えると、原油価格はピークアウトするでしょうから、今は苦しいけれども原油価格が下がってきたら伸びるというような企業を今のうちに仕込んでおくのはありだと思います。
原油価格が上がった分を商品価格に転嫁できるような技術力や独占力を持った企業なら、今を生き延びることもできますし、原油価格が下がった時に商品価格を据え置きにすれば利益が大きくなります。
数年は待つことになりますが、こういった企業に投資をすることはかなり確度の高い方法だと思います。
長期投資の考え方としては、これは今に限った話ではないですが、資源価格などとは関係なく、長期で伸びていく、社会的な流れに乗っている企業を淡々と買っていく投資になると思います。
中期では逆張りという形でしたが、5年以上の超長期で考えると、逆張りというよりは市場のリスクオフを拾うという形になります。
今、市場は株価変動を警戒していて、大きく割安とまではいかなくても素晴らしい企業の株価も業績とは関係なく下がっている状況です。
よって、長期の銘柄を仕込むのにも良いタイミングであると考えます。
投資期間別に具体的にどんな銘柄があるかご紹介します。
あくまで一例であって、推奨銘柄ではありませんのでご了承ください。
短期については改めて挙げる必要ないかもしれませんが、インペックス、エネオス、住友金属鉱山、三井物産といった資源系のものを、撤退も視野に入れて買っておくのはアリではないかと思います。
中期としては逆に今苦しんでいる企業に注目し、原材料価格の高騰により目先は減益だけれども、値上げを行っていてかつ独占力のある企業は、原油価格が下がった時には値下げを行わず利益が伸びる可能性があります。
銘柄としては、花王、カルビー、ニトリを挙げます。
そして長期としては、厳選したというわけではないですが、グーグル、マイクロソフト、アマゾンなどが間違いないところではないかと思います。
銘柄分析をする際に大事になるのが、その銘柄の株価が下がった時に下がった理由は何かということを調べることです。
例えばこれは先ほど挙げたカルビーのここ5年のチャートですが、ずるずると下がっています。
カルビーは海外進出して非常に株価は調子が良く、PERも35倍くらいあったのですが、その後伸びが止まって、そして原材料価格の高騰によって株価が下がり、PERでいうと17.6倍というところまで下がってきました。
この状況で今年の1月にポテトチップスを値上げしたという話が出ています。
となると、先ほどのメカニズムでいうと2~3年後に原油価格が下がってくるとしたら、利益が伸びている可能性があります。
もちろんこの値上げが消費者に受け入れられるかが大事になってきます。
値上げを受け入れられる強い力を持った企業、バフェットの言葉を借りるなら「経済の堀」を持った企業を探し出すことが株式投資家にとって重要な観点となります。
ずっと業績が伸びている企業であり、今業績と関係なく下がっているのであればそれは市場のリスクオフによるものなので、今後も業績が伸びると想定されるなら買い時以外の何物でもありません。
もちろん、PER等が高すぎないということが重要ですが、最後は企業が業績を伸ばせるかどうかによって決まってきます。
個人投資家ならではのチャンスもある
ここでひとつ豆知識的なお話ですが、機関投資家はこの2~3年以上の投資は分かっていてもできないという事情があります。
彼らは長くても1年単位の成績で評価されるので、2、3年先に上がると分かっていてもこの1,2年がダメだったらクビになってしまうため、中長期の投資はできないのです。
逆に個人投資家はそれができるのでチャンスが眠っていると考えます。
まさに、『人の行く裏に道あり花の山』ということです。
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