【解説】円安は本当にプラスか?円安好影響の時代は終わった!日銀の金利操作の本当の狙い

 

 

目先円安が止まりません。

4月25日現在為替は1ドル128円と約130円の水準をキープしています。

出典:楽天証券

5ヶ月前に今後はますます円安が進むという動画を出しましたが、この2ヶ月で約15円円安が進んでいます。

 

 

目下、輸入価格の上昇で企業・経済への影響が懸念されています。

 

今回はそもそもなぜ円安が起こるのか?

そしてこの円安は経済にどのような影響を与えているのか?

長期投資家である我々がどのような行動をとるべきなのか?

 

詳しく・分かりやすく説明します !

 

 

なぜ円安が起こるのか

 

そもそもなぜ円安がここまで進むのか?

その原因は日米金利差にあると言われています。

出典: Tradingview

日本の金利は日本銀行の連続指値オペなど公的機関の強制的な金利調整の影響でほとんど金利変動がありません。一方アメリカは急速なインフレの影響で利上げを進めています。そのため単純に金利の高いドルに資金を預けていた方が利益を得やすいためドル買い円売りの動きが進み、ますます円安に拍車をかけています。

 

では日本銀行のトップ、黒田総裁はどのような考えを持っているのでしょうか?

 

3月22日の発言を見てみましょう。

 

 

 

 

 

 

このように黒田総裁は円安は日本経済に対してプラスであると言い続けています。

では円安にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

 

 

円安の4つのメリット

円安のメリットは大きく4つあります。

 

1 為替差益・金融所得

2 輸出

3 インバウンド

4 経済波及

 

それぞれ大事なポイントを説明します。

 

 

 

為替差益・金融所得

一番分かり易いです。 例えば1ドル=100円で米ドルを買ったとします。その後円安が進み1ドル=130円になったとすると30円の利益が出る。これが為替差益です。

現在は多くの会社が海外で子会社を設立したり、 私たち一般消費者も外国預金や外国株を持っていることが多くなったため、以前よりも金融所得のメリットが大きくなっています。

 

輸出

日本で安い賃金・安い労働力で生産した商品を海外に輸出することで、外国通貨で商品が売れます。その際に円安が進むと円に換金した時、為替差益分が利益となり、輸出産業は利益が出ます。

 

インバウンド

外国人からすると円安は少ない外貨でより多く円に交換できるため日本は安い国、バーゲンセールだ!というような感覚になります。過去には中国人による爆買いなどインバウンドが より明確になったこともありました。

 

経済波及

前記の影響で利益を出した企業の従業員の給料が上がった場合、より消費が加速するため日本経済にもプラスの影響があると考えられます。

 

 

 以上が一般的に言われる円安のメリットですが実際は必ずしもプラスの効果が大きいとは言えません。これらの1から4は主に高度経済成長期の時の話であり現在はそれぞれ影響が変化しています。

 

 

最も変化が大きいと言えるのは輸出です。

以下のグラフをご覧ください。

かつてはメイドインジャパンでブランドを確立していた製造業も、現在はその多くが海外で現地生産し海外で決済をしています。必ずしも輸出産業とは言えず円安のメリットを受けづらい経済環境となっています。

 

 

またインバウンドもコロナの影響で、もはやメリットをもたらしません。

 

 

円安最大のデメリット

一方、円安には大きなデメリットがあります。

それが輸入価格上昇。つまり企業のコスト増加です。

更にロシアウクライナ情勢の影響で様々な原材料が上がり、世界中でコスト増加の影響をもたらしています。

 

一見すると黒田総裁の円安がプラスになるという方向性は必ずしも当たっているとは言い難い状況です。

しかし同時に日本銀行がこの状況を把握していないとは思いません。なぜ日本銀行は円安を受け入れ金利上昇を阻むのでしょうか。

 

 

 

日本銀行が考える最悪のシナリオ

 

キーワードは金融抑圧です。

金融抑圧とは簡単に言うと金利を押さえ込むことです。

 

現在、日銀では約100兆円の歳出がある中、その約10%・10兆円が金利の利払いに当てられていると言われています。日本の国債の金利はほぼゼロであるにも関わらず、これだけの利払いに追われているのです。その状態で仮に金利が上がってしまうと日本銀行としては財政難に陥ってしまいます。

 

もし本当に財政難が起こると日米金利差に関わらず、日本円は叩き売られ現在とは比べ物にならない円安が待ち構えています。この場合、とうとう輸入によって原材料を仕入れることができず日本の経済は本格的に停止します。

 

これを避けるためにも日銀としては金利を上げるわけにはいかないのです。

日銀が本当に狙っていることは目先の為替動向よりも日本の財政難、これを阻止するために全力で動いていると言えるでしょう。

 

 

 

長期投資家としての姿勢

以上のように目先の円安が続く一方、長期の為替決定理論の中で購買力平価という理論があります。

 

これは通貨をモノ(ビッグマック)の代替物と考えると理解することができます。

 

私たちの大好きなビッグマックが1ドルで売られていたとします。

(為替レートは1ドル=100円)

アメリカでインフレが進みビッグマックの値段が2ドルに上昇しました。

 

ビッグマックを基準に考えると2ドル=100円

つまり円高ドル安になっていると言えます。

 

現在のアメリカはインフレが加速する一方、日本ではインフレの懸念はありません。

購買力平価の考えに基づくと、今後は長期的にドル安円高の時代が来ると考えることもできます。

 

 

私たち長期投資家は目先の円安に振り回されず、是非長期的な姿勢で投資を行いたいものです。

 

私たちつばめ投資顧問では今後ドル安円高に進む方向も考慮し円安ネガティブ銘柄の分析をしています。今、円安の影響で逆境の中にあり株価が下落しているそんな企業が多くあります。それは為替という企業の本質とは違う影響で下落しており、本質的な企業の価値が再度評価された際、また円高に触れた際は大きな反発を狙えるとも言えます。

 

株価のトレンド分析をする短期投資家にとっては嫌われる投資法ですが、いわゆる逆張りを行い2年から5年という長期的な視点で 利益を得ることができる、500円で売られている1000円を見つける、そんな時間が訪れるのかもしれません。

 

 

 

この辺りは投資家によって判断が分かれるところであり、皆さん自身で考えて納得して判断していただきたいと思っています。

 

YouTubeで動画による解説も行っています

 

動画での解説が最も早く公開されますので、いち早く情報を得たい方はぜひチャンネル登録をお願いします!

 

 

 

 

 

執筆者

執筆者:佐々木 悠

佐々木 悠(ささき はるか)

つばめ投資顧問 アナリスト 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。
協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。
銀行勤務時は投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。
2022年につばめ投資顧問へ入社。

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