岸田総理が資産所得倍増プランというものを掲げています。
これまでの岸田総理といえば、何かと投資家に対して後ろ向きとも見える政策を掲げていましたよね。
しかし、ここにきて投資家フレンドリーな政策を掲げてきました。
しかも、この政策は今後の日本株を長期的に押し上げる可能性もあります。
岸田総理が掲げる資産所得倍増プランの具体的な内容とは何か。
そして米国市場のこれまでの変遷をたどり、今後の日本株の見通しを見ていきたいと思います。
「今後の株式相場の行方が気になる」
「岸田さんは何をしようとしているの?」
「資産所得倍増プランで何か変わるの?」
そんな疑問を持っている方は、ぜひご覧になっていただければと思います。
目次
資産所得倍増プランとは何か?
資産所得倍増プランというのは、分かりやすく言うと貯蓄から投資に移行させたいというプランです。
岸田総理が掲げている看板政策『新しい資本主義』の中の1項目として出てきます。
貯蓄から投資へというのは、もうかれこれ20年ほど叫ばれている内容ですが、今回かなり具体的な形で出てきました。
具体策1.NISAの拡充
具体策の1つめは、NISA、少額投資非課税制度の抜本的な拡充です。
NISAとは、投資した分の利益に対してかかる税金を、特定の金額までゼロにする制度です。
通常投資で得た利益は20.315%の所得税がかかりますが、年間120万円の投資枠に対して、5年間は利益が非課税となります。
さらに、積立NISAは年間40万円までの投資に対して20年間、利益に対して非課税となる制度です。
今回拡充されると言われているのは、特にこの積立NISAです。
現在40万円の積立NISAの枠がもっと大きくなる可能性があります。
具体策2.iDeCoの加入年齢の引き上げ
さらに2つめは、iDeCoの加入年齢の引き上げです。
現在、iDeCoに加入できる年齢は65歳までですが、これを70歳まで延ばすということです。
現在、金融資産の大部分は高齢者が持っていることが分かっています。
高齢者のiDeCo加入を伸ばすことで、より預金を投資資産に持っていくとともに、将来の年金に対する不安をなくそうという動きに見えます。
日本と欧米の資産の違い
日本人の金融資産は、半分以上が預貯金となっています。
米国や欧州と比べるとかなり預金が多く、株式・投資信託等が少ないのが現状です。
特に米国では株式の資産が多く、さらに株高ということもあり資産が20年で3倍になっています。
一方で、日本では1.4倍にしかなっていません。
しかし、株式・投資信託等の資産が増えると、当然そこから得られる配当も増えるため、結果として国民が豊かになることを目標としているのでしょう。
数字で見る欧米との差
具体的な数字をご覧ください。
実際の家計の資産状況を見比べてみると、日本の株式等はわずか10数%に対して米国では50%程度、ヨーロッパでも30%近くあります。
日本の残りの資産は預金が50%以上となっており、欧米と比べても偏っている状況です。
現在は銀行に預金していても、ごくわずかな金利しかつきませんから、利子による所得はほとんどない状態です。
これを倍増させようというのが岸田総理の計画です。
資産所得の引き上げは簡単?
資産所得自体を引き上げること自体は、私は難しくないと思っています。
なぜなら、銀行の預金金利がほぼゼロであるのに対し、株式では基本的に5%~6%ぐらいの年平均リターンがあると言われているためです。
配当だけ見ても2%~3%というのはざらにあるため、株式に移行しただけでも、フローの意味での金融所得は確実に増えるわけです。
つまり預金から投資へという流れが進めば、金融所得自体は増えるだろうと考えられます。
総務省統計局が出した家計の金融所得を見ると、利子配当金の部分がいわゆる資産所得になりますが、年間でわずか2.8万円が平均です。
これが倍になっても5.6万円です。たった2.8万円ふやすだけなので、倍にすることは難しくないはずです。
岸田総理の掲げる目標は、実は近い将来達成しうるんじゃないかと思います。
本質は有価証券の割合を増やすこと
しかし、年間で2.8万円所得が増えたからといって、正直私達の生活が変わるとは思えません。
本質的な部分では資産所得倍増自体はあまり意味がなくて、個別の家計の中で株式等の有価証券の部分を大きくすることが本筋なのではないかと思います。
実際それを行えれば、金融の世界では当たり前となっている複利効果を得ることができます。
短い期間では2.8万円が5.6万円になるだけかもしれません。
しかし、長期に渡って複利効果を得られれば、大きな資産になります。そこが本質なのではないでしょうか。
米国の成功事例
それを実現しているのが、米国株です。
こちらをご覧ください。
これは対数チャートといいまして、上になるほど幅が狭くなっています。
あまり大きく伸びすぎると急角度に見えるので、それを抑制してみせたチャートです。
ずっと右肩上がりが続いているのが米国株で、これはまさに複利効果を発揮している状況だと言えるでしょう。
一方で日経平均は、ずっと横ばいになっています。
これを見る限りは、「ずっと上がり続けるわけではない日本株に投資しても良いことないじゃないか」と思われるかもしれません。
実際にその通りで、現状のまま制度も変わらない・何の状況も変わらないんだったら、私も日本株に投資しようとは思いません。
少なくとも、こういったインデックスに投資しようという話にはなりません。
では、なぜ米国は右肩上がりに伸びてきたのかというと、GAFAをはじめとする強い企業が伸びてきたため、特にここ最近は伸びていました。
しかしそれ以前に、上がるだけの土壌が米国株にはあったと考えられます。
米国株が上昇してきた土壌とは何か
その土壌とは何かというと、下記の制度にあります。
- IRA
- 401K
後程解説しますが、この2つの制度です。
まずは1974年にIRAが開始され、78年には拡充されています。
そして1981年には、私たちにもなじみ深い、確定拠出年金、401Kが開始されています。
更に、97年にIRAの別制度となりますロスIRAというのが導入されました。
限度額引き上げも行われていまして、この結果米国株が上昇してきた経緯があります。
これが米国株を上昇させるにあたって、非常に重要な役割を果たしています。
では次の項目で、401KとIRAについて解説します。
401Kとは何か
まず401Kは我々にもなじみのある、確定拠出年金です。
企業やそこで働いてる人が年金を積み立てて、その積み立てたものを投資で運用します。
投資信託ももちろんですし、現金で置いておくこともできます。
また米国の場合は、401Kで個別株にも投資できます。
投資できる年間上限額が334万円、2万500ドルもあります。
日本だとiDeCo(個人型確定拠出年金)よりも投資できる額が大きく、企業型で5.5万円となっています。
年間にすると66万円で、やはり401kの方が金額も大きいです。
IRAとは何か
さらに、IRAとは『Individual Retirement Accounts』の略で、iDeCoに近い制度です。
個人がそれぞれ退職のための非課税口座があり、給与をそこに積み立てれば、まず積み立てた分は所得控除になります。これはiDeCoと一緒ですね。
所得控除税金を少なくできて、利益に対して一定期間は非課税になります。
それで退職した後、60歳以降に引き出せるというものになっています。
年間上限が6000ドル(日本円で80万円)です。
日本では厚生年金がある人だったら年にして27.6万円が上限なので、やはり日本より大きい金額です。
さらにロスIRAというのがあります。
これの場合、所得控除はできませんが、受け取る時が非課税扱いになります。
これは日本でいうNISAに近いかもしれません。NISAの年金版と言っていいんじゃないかと思います。
このように、米国では年金のための様々な税制優遇制度があります。
税制優遇はみんな使おうと思いますから、積み立てによって金融資産が自動的に膨らんでいくわけです。
米国株は年金で支えられている
実際にどれだけの資産が積み立てられているのか、金額を見てみましょう。
DBが確定給付年金で、DCが確定拠出年金です。
先ほど説明したIRAや401Kを含むものですが、数値が大きくなっているのが分かります。
一部は株価上昇によって大きくなっていますが、当然、積み立てなのでどんどんお金の流入があるわけです。
これによって直近で約30兆ドル(4000兆円)もの年金資産が積み上がっています。
そして、驚くべきなのは米国のニューヨークやナスダックを合わせた時価総額が50兆ドルですから、なんと6割は年金資産ということになります。
全てが株式に回ってるわけではないので、完全に対応するものではありませんが、多くは株式に回っているため、半分近くを年金の資金によって米国の株式が支えられているわけです。
年金制度の拡充によって米国株は上昇してきた
一旦先ほどのチャートに戻ってみましょう。
このように、ところどころで年金制度が拡充されたことで、積み立てる人がどんどん増えたわけです。
結果、株式市場に資金が流入してきて、米国株が大きく上昇する土壌が出来てきました。
結論を言いますと、米国株は当然米国の企業が強いということと同時に、その土壌として401KとかIRAがどんどん拡充されてきた結果、これだけ上がってきたわけです。
米国のこれら制度を利用した人たちは豊かになり、それを見た人も「自分もやっておこう」と制度を利用するため、さらにお金が入ってくる流れになりました。
日本は投資に手を出しにくい土壌?
米国とは対照的に、日本はバブルで失敗して「もう株に何か手を出すな」という経験をしているため、投資に手を出さず結果預貯金だけが半分以上に膨れ上がってきた流れがあります。
このため、日経平均株価もバブル時の高値3万8957円というところを未だに超えられず、全体で見たらほぼ横ばいという状況になっています。
ここが米国株と日本株の大きな違いです。
日本株はなぜ上下を繰り返すのか?
日経平均株価の推移を見ても分かる通り、日本株は非常に上下が激しく見えますね。
株価はファンダメンタルズに従う・その利益に従って動きますが、基本的には需給によります。
すなわち、買う人・資金の流入が多ければ多いほど、株価は上がり、資金が流出・出る方が多ければ下がります。
これには理由がありまして、今の日本株市場が外国人に支配されている状況が挙げられます。
売買シェアを見ると、海外投資家が7割を持っています。
しかもこの外国人投資家は足が速いです。
今まさに、米国は金融緩和から金融引き締めに切り替わっていますよね。
金融緩和があると、もっと様々なところに投資しようと日本にも投資しますが、金融引き締めでお金を引き揚げる場合、真っ先に外国である日本から資金を引き揚げていきます。
だからこそ、日本株はこれだけ上下を繰り返す市場になっています。
日本株が上昇するための条件
では日本株が上がるための条件とは何でしょうか。
まずは日本株の売買シェアで、日本人の比率を上げることが望ましいですよね。
つまり、米国のような年金制度によって、日本人の資金の流入が続き、日本人の売買シェアを上げることが理想的です。
これを踏まえて、iDeCoやNISAはまだ始まったばかりの制度ですが、抜本的に拡充される意味は大きいのではないかと思います。
特に大きいのは所得控除です。
投資しておけば、とりあえず今払う所得税を減らすことができるのが所得控除です。
老後に使う予定のお金であれば、ただ預金に入れておくよりも、確実にiDeCoやNISAに入れておく方が税金面でお得なのは明らかですよね。
これを拡充することになれば、恐らく今よりも更に流入が続きやすくなる状況になるのではないかと思います。
そういう意味では、日本株は伸びしろがあると考えています。
日本人の持つ、2000兆円の金融資産の半分である1000兆円は現金として眠っていますが、それらが株式に流れてくるだけでも、株価は安定しやすくなるんじゃないかと思います。
株価が安定してくると、外国人投資家も「日本株で下がるときもそんな下がらないから、置いておこう」という流れになり、今のような頻繁な流入・流出が起こりにくくなる可能性があります。
すると、余計に株価も上がりやすいだろうと考えられます。
日本人が日本の企業に投資するために
しかし、預金を金融資産に動かすといっても、日本株ではなく外国株に流れた場合、先ほどのような日本株が安定するとか、長期的に伸びていくストーリーは成立しません。
現に今、外国株のインデックスオールカントリーや米国株のインデックスを買う人が非常に増えています。
こうなってくると、やはり日本株は恩恵を受けにくいところがあります。
ここで必要なのは、日本企業が投資するだけの魅力を付けるということです。
実際に多くの日本人の投資家は株で金融資産を持っています。
投資信託もありますが、実は金額としては小さい方なんです。
この画像は野村証券の資料ですが、株式投信、さらに外国投信が非常に小さくなっています。
現状のお客さんの資産状況を見ても、外国株まだそんなに多くないんじゃないかと思います。
やはり日本人が、日本の企業の株に投資したいと思っている可能性が高いです。
ここでもし素晴らしい企業が出てきて、大事な資金を日本の素晴らしい企業に投資するという流れが起きれば、日本株の将来も明るいんじゃないかと思います。
将来的には個別株への投資も
一つ政府に要望するとしたら、401K、iDeCoでも個別株への投資が可能にして欲しいというものです。
米国の401KやIRAは個別の株にも投資できます。
日本の401KやiDeCoは、実は投資信託にしか投資できなくて、個別株には投資できません。
NISAだったらできますが、積立NISAはできない。
しかも、現在拡充が検討されているのは、ただのNISAよりも積立NISAの方です。
ぜひiDeCo、401Kでも個別株に投資できるようにしてほしいなというのが私の要望です。
株主的な視点を持つことの重要さ
なぜ私が個別株について大きく言うかといえば、これは単なる金融資産だけの話ではないからです。
岸田さんも『1億総株主計画』と言っていましたが、1億人みんなが株主になったら、株主的な視点を持てます。
日本の社会、特にマスメディアを見ますと、どちらかといえば左寄りですね。
資本家ではなく貧しい人のために、という話が多いです。
しかし、それだけでは国として成長していかないし、イノベーションも起こりにくくなります。
『株主』が増えると社会が変わる
みんなが株式を持って『こういう企業が素晴らしい』という社会的コンセンサスができれば、企業も経営をやりやすくなります。
黒田さんが「物価を上げられる状況になった」と言っただけで、叩かれてる場合ではありません。
株主的な視点を持ったら、「企業がちゃんと適正な価格を載せられるようになってきた」とポジティブにとらえるべき内容です。
株式を持っている場合、企業が適正な価格を載せられるなら株主である自分も潤うし、社会全体のパイも経済のパイも上がっていく、そういう流れが作られるはずです。
また、素晴らしい企業があったとして、そこに投資した人がお金持ちになれば、それを見た次の世代も良い企業に投資するでしょう。
このことから、私はNISAやiDeCoの拡充は、今後資金流入が続くという意味で、日本市場活性化の起爆剤になり得るのではないかと思います。
それが個別の企業で発生してくると、さらに良いと考えています。
もちろん、投資信託を買ったとしても最終的に個別企業を買うことになるため、それも構いません。
だとしたら、今度は実の入った日本株に投資するファンドも必要になってくると思います。
まとめ
これまでの内容をまとめましょう。
- 全国民資産が日本株への投資資産所得倍増計画によって上がれば、安定的な資金流入が見込めて株価が安定する。
- 外国人投資家も投資しやすい環境になる。
- 国民が1億総株主で、株主の視点を持って経営や社会に接すれば、やがて経営もやりやすくなり、企業の動きも活性化する。
- 企業経営の質が向上し、よい経営者、あるいは従業員、良い社会に囲まれて、GAFAのような素晴らしい企業が現れる可能性も。
- 最終的な株価はファンダメンタルズ、企業業績であると思っているため、企業業績が上がり、やがて株価が長期的に上昇することで国民全体が豊かになる。
かなり壮大な話をしてしまいましたが、岸田さんのやろうとしていることをポジティブに捉えるならば、こういったことが挙げられます。
私もこのような素晴らしい日本企業を探したいと思っていますし、つばめ投資顧問はこういった社会情勢に一役買えればと思っています。
素晴らしい企業を買うということを意識して、これから活動に邁進してまいりたいと思っています。
この内容はYouTubeで動画による解説も行っています。
動画での解説が最も早く公開されますので、いち早く情報を得たい方はぜひチャンネル登録をお願いします!
プレゼント①『株式市場の敗者になる前に読む本』
プレゼント②『企業分析による長期投資マスター講座』第一章
プレゼント③『YouTubeプレゼン資料』
メールアドレスを送信して、特典をお受取りください。
※個人情報の取り扱いは本>プライバシーポリシー(個人情報保護方針)に基づいて行われます。
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。
コメントを残す