今回は、排ガス不正問題に揺れる日野自動車とその親会社であるトヨタ自動車の動き。
そしてライバルのいすゞの記事になっています。
この業界は、今非常に大きな変革期にあると考えています。
今回のニュースを理解することで、これからの自動車業界の動きを捉えることができます。
ビジネスや投資に興味のある方は、ぜひご覧になっていただければと思います。
目次
日野自動車が除名処分
画像引用:レスポンス
こちらの記事に日野自動車を「勘当」
トヨタなどの共同出資会社で処分とあります。
この「勘当」というのが、ものすごく衝撃的な事件だということを表しています。
日野自動車が何をしたのかというと、排ガス不正です。
排ガスを基準より低くごまかして提出していたのです。
そのことにより国土交通省から処分を受けて、日野自動車が売れるトラックは、現時点で1台もない。
全く新しいトラックが売れなくなってしまったという状況になったのです。
これに激怒したのがトヨタです。
トヨタといえば、日野の株式を50%超を保有する親会社です。
この排ガス不正の問題というのは、過去にも取り沙汰されています。
例えば、フォルクスワーゲンが排ガス不正をやらかして、7年ぐらい前に結構問題になりました。
しかし日野自動車の問題は(問題自体は似たようなものなんですが)現在の2022年に至るまで(排ガス不正を)放置していた、続けていたということに大きな問題があります。
これに、親会社としてトヨタは激怒したわけです。
問題が発覚してから、株価はガクンと落ちて低迷しています。
処分で漁夫の利を得るいすゞ自動車
今回のトヨタが「除名」したのが、元々は商用車連合と言ってトラックやバスなどを作る日本のメーカーを集めた組織です。
商用車連合にはトヨタが60%を出資して、その他はトヨタグループである日野自動車、そして日野自動車のライバルのいすゞ自動車。
さらには同じようにトヨタと関連性の深いスズキ・ダイハツが入っていました。
その中から日野を除名処分にしてしまうという、なんとも厳しい話になっているわけです。
そこで漁夫の利を得るのが、いすゞ自動車ということになるのです。
先ほど申し上げました通り、日野は今、新しいトラックを販売できないというような状況に陥ってます。
となると、どうしてもトラックが欲しいという場合、いすゞのトラックを買うというのが、最も有力な選択肢となるわけです。
株価と業績は対照的!いすゞは上昇、日野は下落
いすゞ自動車の株価
これを受けて、いすゞの株価上昇していまして、年初来で26%の上昇。
足元でもグイグイ上昇しているわけです。
実はこの株価の上昇傾向というのは、今に始まった話ではなくて、結構長期間にわたって続いています。
例えばいすゞは株価チャートを見ますと、例えば2009年ぐらいからは、比較的右肩上がりになっています。
日野自動車の株価
一方で日野はと言いますと、2009年から見ると一時は上がったんですが、ここ最近ずっと右肩下がりという状況が続いています。
これは業績からもわかります。
日野自動車の売上高/営業利益
画像引用:銘柄スカウター「日野自動車」
例えばこちら日野の業績なんですが、最近では営業利益が2014年3月期をピークに右肩下がりとなっています。
いすゞ自動車の売上高/営業利益
画像引用:銘柄スカウター「いすゞ自動車」
いすゞは一方で、同じ時期に合わせたときに、2014年の利益を上回って、今期最高益を見込む状況になっています。
なぜこれほど差が開いてしまったのでしょうか?
直接的な原因は、正直まだ探り切れていません。
というのも、元々国内のトップ2の会社であって、作っている商品に関しても、そこまで差はないと思うのです。
実際にユーザーの評判とか見ても、それほど差があるという話はありませんでした。
しいて言うなら大きな違いと言えば「日野はトヨタの子会社である」というところにあるのではないかと思います。
今回の動きと非常に関連してくるのですが、実は日野はトヨタグループにある意味守られているというところがあります。
トヨタとしても、商用車が欲しい(トヨタにはおそらく作れません)、両者の思惑が一致して、あまり強く言うことができなかったんではないかと思います。
一方いすゞとしては、トヨタに実はランドクルーザーなど大型車を受注生産を行っていたりしていました。
そういった関係がある中で、もしかしたら、ぬるま湯に浸かっていた部分があるのではないかと考えられるわけです。
すなわち「トヨタがいるから大丈夫」ということです。
いすゞと日野、広がる利益率
日野自動車の利益率
画像引用:銘柄スカウター「日野自動車」
その結果何が起きたのかというと、利益率の差が広がってしまいました。
日野の(直近の)利益率を見ますと、高いところで6%。直近では3%前後で、かなり低迷しています。
いすゞ自動車の利益率
画像引用:銘柄スカウター「いすゞ自動車」
一方でいすゞに関してこの利益率を見ますと、7%~8%という高水準維持しているのです。
これだけ利益率が高いということは、財務に余力がある、その分野の研究開発とか、製造に力を向けることができるということです。
利益率の違いというのが、やがて両者の力の差ということになって表れてきます。
そういった背景が見てとれるわけです。
トヨタといすゞが合同で会社設立
いすゞは、当然トヨタグループである日野と仲良くしようということは普通は考えられないですし、実はトヨタとも一線を画していたのです。
「独立独歩で頑張っていこう」ということだと思います。
ところが2021年トヨタは、いすゞにも声をかけて「研究開発を行う会社を作りましょう」ということで、実際に会社を立ち上げたのです。
それが日野が勘当された会社ということになるのです。
この会社で何をしようとしていたのかというと、今の自動車業界の電動化とか、自動運転化というところに繋がっていくのです。
そういった流れの中で「それぞれの会社でやっている場合じゃない」「一緒に協力してやろう」ということで、会社を立ち上げたんだと思います。
買収によって変わる業界地図
世界でも同様のことが起きています。
例えば、同じように商用車の世界シェアの高いボルボやダイムラーも同じ合弁の資金会社を立ち上げて、システム開発を行うと言っています。
また国内でもいすゞがUDトラックと言って、日本国内で4位の会社(ボルボグループ)を買収して、規模を大きくしているのです。
日本のトラック販売台数
画像引用:ステアリンク「日本で人気のトラックメーカーランキングを調査!海外メーカーもご紹介」
実はこの買収によって、元々国内シェアで日野が38%で1位、いすゞが35%で2位だったのが、UDトラックといすゞ自動車が一緒になることによって、国内首位が入れ替わってしまったという状況もあります。
トヨタの思惑は?
今や国内1位はいすゞとUDトラックの合算ということになってくるのです。
ここで、ちょっと透けて見える気がするのが、トヨタの動きです。
もはや国内での一番のトラックメーカーは、いすゞということになりました。
それでトヨタとしては、日野自動車を50%以上保有する子会社として抱えているのですが、今のような体たらくです。
利益率は上がらずに、なおかつ不正を働いたということで、正直かなり業を煮やしているんではないかということが想定できます。
一方で、運良くと言えるかもしれないのですけれども、昨年、研究開発の会社を立ち上げたことによって、それまでライバルだったいすゞを何とか手の内に、自分と近いところに入れることができたのです。
トヨタはちなみにいすゞにも、5%株式を出資しています。
トヨタとしてはもはや、いすゞとUDを加えた業界1位のトラック会社を手のもとに置くことができたのです。
となると、ある意味、日野というのはトヨタにとって、用済みなんではないかというところが見えるわけです。
ではこれからどういう動きが想定されるのかということをお話しますと、もしかしたら、憶測ではあるんですけれども、トヨタは日野自動車を単体で持っている理由はないのではないでしょうか。
いすゞと日野が経営統合!?
そこで、いすゞと日野を経営統合。
合併させてしまうのが得策なんではないかということが考えられます。
これは経営戦略的に見ても非常に重要で、例えば日本国内だけを見ていても、もはや両者の成長はないわけです。
一方で、国内で盤石の基盤を築いて、いすゞと日野が一緒になれば、トヨタグループとして一緒になって、研究開発とか海外戦略を練って、成長著しい東南アジアなどの海外でも力を発揮することができるのではないかと、経営戦略的には考えられるわけです。
今、海外の商用車シェアというのは(例えば東風とか、中国系など)かなり分散しています。
やはりその国の中で競争している人口の多いところがシェアをとっているという状況で、実際にはそれ以外の部分に関しては、相当分散していると考えてよいと思います。
この競争の中を勝ち抜いていくため、これから東南アジア等をゼロベースのところで戦っていくには、やはり、日野といすゞで争っている場合ではないということが言えるわけです。
ということから、トヨタがこの両者をくっつけて
「世界へ出ていきましょう。」
「なんなら日本連合として世界に出ていきましょう。」
というのが、これからのトラック業界・商用車業界の動きとして想定されるんではないか。
そういうことを今私は考えています。
もしこれがうまくいくなら、いすゞは結構有望じゃないかと思います。
現時点においても結構高い利益率をとっていますし、国内で少なくとも日野との競争がなくなるということであれば、競争を優位に進めることができるでしょう。
今目先、漁夫の利を得ているっていうところもあるんですが、長期的に見ても、そういった状況が考えられますし、もちろん日野を統合するということであれば、日野の今の膿を出し切らないといけないという問題はあります。
けれども、共同環境上は優位になるだろうと。
日本より広い世界のマーケットに出て、力を発揮することができれば、伸びる可能性を十分に有しているんではないかと考えます。
海外もいろいろ考えてやっているわけですから、その確実性は高いとは言えないんですが、見る観点としては面白いんじゃないかと思います。
これからこれらの会社が着実に成長していくということを期待したいというところであります。
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UDトラックでは無くUDトラックスですよ。