市場の波を乗りこなす

世の中のあらゆることについて、今の状態が続いたり、一方向に進み続けることはありません。それは投資についても同じです。株式市場は経済的な側面と、心理的な側面の2つの要因で上がったり下がったりを繰り返すものです。

経済には確かな「波」がある

経済的な側面として、企業の業績が良くなったり悪くなったりするのも、株式市場の波を作り出す要因です。ここでは企業の業績を左右する大きなものとして「景気動向」を取り上げます。

経済学の分野でも、景気には周期の長さによっていくつかの波があることが示されています。これらは株価チャートの解説と違い、根拠のはっきりした説得力のあるものです。

例えば、在庫循環に焦点を当てた「キチンの波」というものがあります。何もない状態から商品が売れるようになってくると、企業は生産量を増やします。生産・消費ともに増加するので、経済は活性化し、好景気が出現します。しかし、やがて商品が消費者に行き渡って需要が減少してくると、売れ残った在庫が増加します。在庫をさばくことが優先されるようになり、新たな生産が行われなくなります。その結果、生産・消費が減少して不景気が訪れるのです。

「キチンの波」は約40ヶ月周期と言われます。その他に、「ジュグラーの波」(約10年、設備投資に起因)、「クズネッツの波」(約20年、建築物の需要に起因)、「コンドラチェフの波」(約50年、技術革新に起因)が提唱されています。必ずしもこの周期で起きるとは限りませんが、多くの企業はこのような波から逃れることはできません。

ある企業の業績がここ数年右肩上がりになっているとしても、本当に成長しているのか、それともただ単に景気循環の波に乗っているだけなのかをよく見極める必要があります。

成長している企業の業績は、多くの場合過去の好業績を更新しています。一方で、景気に乗っているだけの企業は、過去の好業績を超えられないか、それと同程度に甘んじています。今からだと、リーマン・ショック前の好況期の水準が参考になります。

心理はいつも行き過ぎる

株価を大きく左右する大きな要因として、心理的な側面も見過ごすことは出来ません。株式市場は好調な時は過度に楽観的になりすぎ、不調な時は逆に慎重になりすぎる傾向があります。

過度に楽観的になるときはバブルの危険性をはらみます。上昇相場では、買った銘柄がほぼ無条件で上昇していくので、投資家は気を良くして次から次へと買い進めます。そのような状況においては、本質的な価値とかけ離れているかどうかはほとんど無視されます。

もちろん、投資家の中にはそれに気付きつつある人もいるのですが、目の前の利益を優先して目をつぶることも少なくありません。そのような場合に、ある種の言い訳として使われる言葉が「今回は違う」です。この言葉が聞こえ始めたら要注意と言えるでしょう。

逆に、下落相場では投資家は必要以上に不安を強めます。持っている株がまだ下がるのではないかと不安にかられ、本当にいい銘柄までも次々に売却してしまいます。その結果、売却する人が次から次へと増えて、さらに株価が下がる悪循環に陥ってしまうのです。

波に飲まれるのではなく、波を利用する

経済の波と心理の波はリンクする傾向があります。経済が上向きの時は楽観的になり、不調な時は悲観的になります。しかし、いい状態も悪い状態も、いつまでも続くものではありません。時間が経てば、いずれ本質的な価値へ戻ってくることがこれまでの研究でも示されています。

我々バリュー株投資家は、経済や心理の波に惑わされる事はなく、逆にそれらを利用することを考えます。波が大きくなればなるほど本質的な価値との乖離は大きくなり、長期的には儲けるチャンスが広がるのです。

そのために必要なのが、企業の本質的な価値を知るための知識と、心理的な要素に惑わされないメンタリティです。つばめ投資顧問は、その両者を本レポートを通じて皆様に提供します。

※本記事は、会員向けレポートの一部を抜粋したものです。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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2 件のコメント

  • バリュー株投資の本質が非常に解り易く解説されています。
    御社の方針は株式投資の王道哲学でしょう。

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