債務超過の危機に陥った東芝に投資チャンスはあるか?

東芝(6502)が、年末に驚きの発表をしました。昨年買収した原子力関係子会社の状況が当初想定より厳しく、数千億円にものぼる減損損失を計上する可能性があるというのです。

上場廃止シナリオも浮上

東芝の株主資本は直近の決算で約3,600億円ですから、今期それ以上の最終赤字を計上したら債務超過となり、シャープ(6753)と同じように東証2部へ転落してしまいます。

最終的な損失額が判明しない中、東証2部への転落を未然に防ぐには資本増強を行わなければなりません。しかし、昨年判明した会計不正により「特設注意市場銘柄」に指定されているため、公募増資による資本増強は事実上困難です。(「公募増資ができない」規定はありませんが、東証や引受証券会社が良しと言わない可能性が高いのです。)そのため、第三者(銀行やファンド、事業会社等)による増資が必要となりそうです。

株主にとって最悪のケースとして考えられるのが上場廃止です。債務超過が2期連続となった場合や、特設注意市場銘柄に指定されてから1年6ヶ月以内に内部管理体制等に改善が見られない場合、上場廃止となります。指定は2015年9月15日なので、1年6ヶ月後は2017年3月15日です。ちなみに、東芝は指定から1年後の今年9月に報告書を提出しましたが、改善が不十分として指定を継続されています。

上場廃止シナリオは現実的ではないと見られていましたが、今回の発覚によりにわかにその可能性が高まりました。

明るい見通しの事業は少ない

立て続けの不祥事や突発事象に、東芝はかつてないほど苦しい状況に置かれています。昨年会計不正が発覚した際は、子会社の「東芝メディカル」や白物家電部門を売却することで場をしのぐことができました。しかし、すでに売却可能な優良資産はあまり残されていません。

東芝に残されているのは、原子力事業を含む「電力・社会システム」、フラッシュメモリなどの半導体を製造する「電子デバイス」、ビルやPOSシステムなどを担う「コミュニティ・ソリューション」の各部門です。

「電力・社会システム」部門は、以前から世界的な厳しい競争により利益が薄い上、各国の政治環境に左右されるリスクの高い事業でした。今回の減損損失はそれが具現化したものであり、今後ますます厳しい状況に置かれるでしょう。

「電子デバイス」部門は、直近はフラッシュメモリが好調で業績を下支えしていました。しかし、これは中国でのスマートフォン出荷増による一時的な需要である可能性が高く、長期的には価格競争に陥りやすい事業であるため見通しが立ちません。

唯一安定的な利益を生み出すのが「コミュニティ・ソリューション」部門です。一度受注すればその後のサービスなどで継続的な収入が期待できるストック型のビジネスであり、派手さはないものの経営を支えています。

事業の詳細は以下の記事(2016年3月15日付)をお読みください。

https://tsubame104.com/2016/03/15/%E5%AE%B6%E9%9B%BB%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E3%82%92%E5%A3%B2%E5%8D%B4%E3%81%99%E3%82%8B%E6%9D%B1%E8%8A%9D%E3%81%AF%E8%B2%B7%E3%81%84%E6%99%82%E3%81%8B%EF%BC%9F/

現段階では手を出さないのが賢明

ネガティブなニュースにより株価が大きく下がった時はバリュー株投資家にとって絶好のチャンスですが、企業の状況をよく見極める必要があります。過去記事にもある通り、私はこれまでも東芝の状況は厳しいと考えていました

株価が下落したとはいえ、時価総額はまだ1兆円を超えています。明かりの見えない事業環境や上場廃止リスクを踏まえると、まだ割高な水準にあると考えます。現段階では手を出さない方が賢明でしょう。

Print Friendly, PDF & Email

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

詳細はこちら
サイト訪問者限定プレゼント
あなたの資産形成を加速させる3種の神器を無料プレゼント

プレゼント①『株式市場の敗者になる前に読む本』
プレゼント②『企業分析による長期投資マスター講座』第一章
プレゼント③『YouTubeプレゼン資料』

メールアドレスを送信して、特典をお受取りください。
メールアドレス *
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。

※個人情報の取り扱いは本>プライバシーポリシー(個人情報保護方針)に基づいて行われます。
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。

気に入ったらシェアしてもらえると嬉しいです!

6 件のコメント

  • 上場廃止シナリオは現実的ではないと見られていましたが、今回の発覚によりにわかにその可能性が高まりましたとの情報、有難うございます。持ち株は即売却したいと思います。

  • 急な株安を狙え、という栫井さんの助言から、東芝株もチェックしておりましたが、まだ割高ということですね。

  • 持ち株売却をどのタイミングでやろうかと迷っています。12/30の9%アップは個人の押し目買いとの見方があるようですが、この傾向はどの辺りまで続きそうでしょうか。

    • コメントありがとうございます。
      バリュー株投資では、株価の動向を予想することは難しいと考えています。そのため、価値に対して割安なら買い、割高なら売りと判断します。現在の東芝はリスクを踏まえると割高と考えており、買値に関係なく売却し、より割安な銘柄に入れ替えるべきと考えます。何卒よろしくお願い申し上げます。

  • コメントを残す

    Popular Article - よく読まれている記事Popular Article

    • 楽天が公募増資。応じてよいもの?
      楽天が公募増資を行って3,000億円を調達することがニュースになっています。 これによって復活を目指す楽天ですが、同じタイミングで発表された...
    • 【ホンダ】「還元50%」でも期待薄な理由
      ホンダが”決意の「超還元」”ということで、総還元性向を50%にして、PBR1倍割れ解消に向けて動いているようです。 果たして、ホンダはこれか...
    • 株式投資初心者向け銘柄『NTT』
      株式投資初心者の方には、私はNTTをおすすめします。 決して「みんな知っているから」という理由でおすすめするわけではありません。よく知ってい...
    • 日本製鉄、今は買い?売り? シクリカル銘柄の取扱い
      日本製鉄はここのところ非常に調子が良く、配当利回りも6%超ということで人気がありました。 しかし、直近の決算で、47%の減益...
    • どこよりもわかりやすい損害保険業界解説 東京海上HDに投資しても大丈夫?
      23年3月以降、損害保険会社の株価が上がっています。 出典:Yahoo!ファイナンス 青.東京海上 赤.MS&AD 緑.SOMPO...

    Article List - 記事一覧Article List

    カテゴリから記事を探す