今回は、イギリスポンドの急落が、欧州発の経済危機の予兆になっているのではないか?
といった内容の記事です。
ポンドが実は直近で大きく下げているのです。
その要因を見るとともに
- 今世界経済がどのようにして動いているのか。
- 株価も軟調な中、どこで大きな暴落があるのか。
ということを考えていきたいと思います。
目次
急激に進むポンド安
ポンドが対ドルで4%以上下落で、史上最安値を更新したということでニュースにもなりました。
(グラフで)上に行くほど、ポンド安ということになります。
これを見ていただくとわかります通り、この0.9というところが0.95というところまで一気にポンド安が進んだのです。
なぜポンド安になったのかというと、新政権トラス首相が就任しまして、その新政権の方針が大きく影響していると言われています。
政策金利を引き上げるという世界的な流れがあります。
これはインフレ退治のために必要であると言われているのですが、一方でトラス首相は大幅な減税策を打ち出したのです。
減税策、これはいわゆる財政政策になるのですが、こちらはインフレをむしろ加速させるものだと見えるわけです。
従って
- かたやインフレを抑えよう
- かたやインフレがとどまるところを知らないようになってしまう
ような政策をとっているという、ちぐはぐな動きというのが、英国の政治に対する不信感を引き上げたと見られているわけです。
このことによって大きくポンド安になりました。
ただこの年初来のチャート見ていただきますと、確かにここで大きくポンド安に傾いたんですが、そうでなくてもじわじわとドルに対してポンド安が進んでいたのです。
実はこれは、あらゆる国で見られている状況でして、これがドル円です(スライド参照)
皆さんのご承知の通り、ドル円は年初から既に25%円安に進んでいます。
それからユーロと比較しても、これもまた20%近くユーロ安が進んでいます。
先ほどのポンドもありましたし、韓国のウォンも実はウォン安ドル高になっているわけです。
円だけが安いというように報道されています。
しかし世界的に見ると、実はこの円安ドル高というだけではなく、ひたすらドル高、ドル独歩高という状況が続いているわけです。
日本円が安い。
円安になっている理由として、日米金利差が言われています。
FRBが金利を引き上げて、ドル金利が高い中で日銀は金利を引き上げない。
- 金利のより高いドルにお金が集まっている。
- 円からドルに逃げて、ドルにお金が集まってる。
と言われ方をしますけれども、実は円だけではない。
その他の国々の通貨も売られているわけです。
金利差があるのかいうと、実はアメリカに追随するようにイギリス・欧州・韓国(グラフにはありませんが)も政策金利を引き上げているのです。
確かにまだアメリカには及ばないというところもあるのですが、ちゃんと追いすがるように上げているのです。
金利差という意味では、大きく変わってないわけです。
一方で日本だけ利上げをせずに、その差はどんどん広がっているのです。
しかし先ほど見ていただきました通り、実は通貨に対しては、そんなに変わらない。
金利を引き上げようが、引き上げ前と変わらない状況になっているのが見てとれると思います。
すなわち、今ドル高になっているのは、もはや金利差の話ではなくなっているのではないかということが、これらの事実から読み取れるわけです。
ドル高の要因は「リスクからの逃避」
ここで大きく話が変わります。
「今までお金って、金利の高い低いによって動いてるんじゃなかったの?」
というのが大きな見方かと思うのですが、実はそうではないということが明らかになってきました。
先ほどのイギリスの動き、トラス首相がおかしなお金の政策。
このトラスさん、経済分野は明るくないと言われています。
そんな中でおかしな政策をとったことで、イギリスポンドが売られているわけです。
これは、どういう状況なのか。
投資家の心理になって考えてみるといいかもしれません。
とにかく今株もすごく下がっている中で、どういう心理かというと、株価が下がるとき・軟調なときというのは、投資家はとにかくリスクを避けようとする。
そういう傾向があるのです。
実際に今、経済を見渡してどういう状況になっているか考えてみようと思います。
景気後退懸念⇒株式からの逃避
まず、とにかく景気後退懸念。
今、アメリカではテクニカルリセッションと言われるように、2四半期連続GDPがマイナス成長になっていたりします。
実際にアメリカはコロナ禍で、好調だった経済が後退しつつあるというところから、まず株式からお金は逃避している。
だから株価が下がっているわけなのです。
金利上昇⇒不動産からの逃避
また金利の引き上げ。
こちらは不動産に非常に大きく影響を与えるのです。
不動産というのはそもそも、借り入れを通じて買うものなので、金利が上がると不動産が買われなくなって、結果不動産価格が下落しやすくなる。
不動産からの逃避が起きています。
インフレ退治⇒コモディティからの逃避
それだったら株・不動産以外のコモディティとか商品そっちに動けばいいと。
例えば金とかはその代表格。
また石油とか、農産物。
そういったところに逃げようという動きが起こることもあります。
しかしこれもまた金利が引き上がって、中央銀行がインフレを退治しようとしているわけですから、
いやいや、インフレがなくなったら、コモディティの価格も上がらないよ。
下がってしまうよね。
ということから、コモディティからも逃避が起きているのです。
そうなると、株式・不動産もコモディティも全部駄目だということになると、キャッシュで持っておこうという話になるわけです。
ただキャッシュといっても、通貨がそれこそいろいろあるわけです。
日本円で持っておく、それからポンドでもっておく。ユーロで持っておくという選択肢があると思います。
ウクライナ問題⇒非産油国からの逃避
例えばウクライナ問題がありました。
ウクライナ問題で今一番打撃を受けているのは、実はヨーロッパなのです。
ロシアから天然ガスや石油を多く輸入していたんですけれども、ロシアがいよいよ脅しをかけて
「もう欧州には、西側諸国には原油輸出しない」
「天然ガス輸出しない」
というようなことを言っています。
そうなると、いよいよ欧州経済も冷え込みます。
これから冬になって(ヨーロッパの冬は本当に寒いですから)ガスがないということになると、かなり死活問題になってきます。
原油が取れないところ、あるいはロシアに依存していた西側諸国は、経済的に苦しいということになってきます。
政治リスク⇒政治不安国からの逃避
さらには政治リスクというのもあります。
政治不安国からの逃避。
先ほどイギリスの話をしました。
イギリスというと、まだブレグジット前後から政治が安定しないのです。
しかもトラスさんが経済に明るくないということが、早速露呈してしまったと。
このことから既にブレグジットで、金融街としての地位を失いつつあります。
そこでそういったちぐはぐな政策をとられると、いよいよイギリスも駄目だなということで、お金が逃げる。
つまりヨーロッパの国々からお金が逃げる状況になっているわけです。
じゃあどこにお金を置いておこうかと考えると、とりあえず(と言ったらなんですけど)消去法的に考えてドルです。
ドルを持っておけば、まあ安心なんじゃないかというところです。
ドルを持てばいいという考え方は、まさに米国経済そのものの強さを表していると思います。
そもそもドルは、世界の基軸通貨であって、例えば急落することはなかなか考えにくいです。
世界最大のGDPを持つアメリカ。
イギリスのポンドよりも、当然アメリカの方が安定しているでしょうし、ユーロは(これがかなり大きいんですが)経済不安があります。
円も国際通貨としての役割をある程度果たしているのですが、日本とアメリカと比べたら、やっぱりアメリカの方が安泰だということで、そちらに行きます。
他の新興国は言わずもがなです。
すると、アメリカ経済の強さが浮かび上がってくるわけです。
米国経済の特徴
産油国
何より産油国であることが大きいです。
元々ある程度石油は取れていたのですが、最近はシェール革命ということで、シェールガスを技術の進歩によって、たくさん取れるようになった。
今や世界最大の産油国となったのがアメリカです。
と考えると、少なくともロシアの影響なんか受けません。
ロシアウクライナ問題、ヨーロッパは直撃しているわけですが、アメリカは実は対岸の火事にしかなっていないわけです。
それほど強い状況があります。
強い企業
当然企業としても、GAFAに代表されるように、経済を国際的に伸ばしていく企業が存在します。
ゆえに経済がポシャることは、当面ないだろうということが想定されます。
高金利
さらには高金利です。
キャッシュでドルで持っておこう。
と思うわけですが、ただキャッシュで寝かしているというのは、金融機関・投資家としては、選択肢としてはなかなか有り得ません。
普通キャッシュで持つといっても、大体の投資家は、国債に投資をするわけです。
どうせ投資するなら、高い金利の方が良いと考えます。
やはり金利の高いアメリカ、アメリカの国債に投資しておく。
アメリカのキャッシュとして置いておく。
消去法で考えたときに、これ以上の選択肢はないわけです。
米国はドル高を「黙認」
結果、それ以外の通貨ではなくアメリカにお金がいって、米ドル高になっている。
現在はそういった経済状況です。
したがって、もはや金利差というのは(金利差が全く影響していないわけではないのですが)そういう世界ではない。
世界がリスクオフに動いている。
だからドル高が続いているという流れになっているのです。
為替が一方に動くと、当然メリットデメリットありますから、不都合な人はそれを動かしたいわけです。
実際に日銀も為替介入を行いまして、円安から円高に少しでも戻そうという試みを行っています。
ドル高 米国のメリット① インフレの抑制
急速なドル高によって、アメリカが何かしなければいけないかというと、実はそこまでのことが必要ない可能性があります。
というのも、今インフレの状態で、アメリカが何をしたいのかというと、今の一番の目標は「インフレを抑える」ことなのです。
インフレが抑えられないと極端な話、あまり裕福でない人たちの暴動などが想定されます。
ゆえにとにかくインフレを抑える。
そのために今金利を引き上げているのです。
一部金利の引き上げによる景気の後退を受け入れてでも、肉を切らせて骨を断つではないですけど、それを受け入れてでも、インフレを抑制しようとしているわけです。
ドル高 米国のメリット② 自国経済の安定
アメリカも様々な国から物を輸入しています。
特に中国とかメキシコとか、そういったところから物を買っているわけです。
そんな中で、米ドルが高ければ、相対的に考えて、安く購入することができます。
だったら目先のインフレは8.0%台という高い水準なんですが、ドル高によってそれが抑えられる、という側面があるわけです。
ドル高 米国のデメリット 国際競争力の低下
デメリットとしては、通貨高というのは輸出競争力がなくなるということがあります。
競争力の低下があるので、ずっとほっといていいというわけではありません。
しかし目下アメリカの課題を考えると、米ドル高というのは非常に心地よい状態なのです。
ドル高 米国以外の国のデメリット① インフレの加速
一方で米国以外の国にとっては相当苦しいです。
イギリスなどは、例えば直近のインフレ率、アメリカの8%台対してイギリスは10%まで上がっています。
これは通貨安が影響しているということは間違いないです。
インフレはその国の人の生活を脅かすものです。
ではインフレを加速させないようにしたり、あるいは自国通貨安を防ぐためにどうしたらよいのでしょうか?
やはり金利を引き上げるという動きが必要になってくるわけです。
ドル高 米国以外の国のデメリット② 金利引き上げによる経済への圧力
しかし、金利を引き上げると、それはつまり、自国経済の悪化。
(アメリカと一緒なのですが)自国経済の低迷を招きかねませんから、これもまた苦しい状況になる。
よってこのドル高。
アメリカの1人勝ちということになって、アメリカはそれを放置するのがある意味一番得策ということになっているわけです。
日銀が為替会議を行いましたが、これは当然アメリカとの協議の上で「仕方ないか」というような感じで介入を許したのです。
ただ、アメリカは積極的にそこに関わろうとはしてないです。
過去の例を見ましても、本当にドル高を是正しようと思うのであれば、一国じゃなくて協調介入。
あらゆる国が協調して、「今ドル高は困るから、ドルを引き下げる動きをみんなで行おう」という動きに出るわけです。
しかし今少なくともアメリカに関しては、それをする必要がないという状況になってしまっているわけです。
従って米ドル高(動きがあるまではという話なのですが)続くんじゃないかと見られるわけです。
欧州の三重苦
みんなが国際協調介入する可能性ですが、それは何か事件が起きたらということになるのではないかと思います。
その事件となりうる可能性とあるのが、欧州経済の三重苦ではないかと思います。
通貨安
イギリスのポンドがすごく安くなりました。
今株安です。
欧州経済から、とにかく資金が引き上げる。
それはやはり欧州経済がかなり苦しいからです。
その主な要因としては、まず通貨安。
今説明したように通貨が安いことによって、インフレ率が上がって、経済状況は必ずしも芳しくない中で、通貨が安くて物価が上がる。
それが経済をさらに苦しめるという状況があります。
利上げ
あとやはり利上げです。
とはいえ、通貨を安いまま放置したら、ますます自国通貨安が進んでしまいます。
日本がそうなっていないので、ちょっと疑問なところがあるのですが、利上げをしなければならないということになっています。
したがって利上げをすると、それ自体が経済を苦しめるということになります。
ロシア問題
3つ目はロシア問題です。
原油が入ってこない・ガスが入ってこないというところで経済が回らない。
経済の循環が悪くなって、まさにスタグフレーション。
インフレが進行する中で、一方で経済は不況に向かっているというところです。
何が具体的な引き金になるかということはわかりませんが、欧州に大きな爆弾が眠っている可能性があるということは、想像できるんじゃないかなと思います。
投資家はそれを懸念して、資金をリスク資産から引き上げてるのではないかとも想像することができます。
そんな中で、例えば今のイギリスみたいなトラス首相の経済政策の話。
あるいはイタリアでは極右政党が政権を取ったりして、政情が不安定になりつつもあるのです。
そういった様々なリスク要因が絡んで、今の株安というところも演出されているのではないかと思います。
もちろんこのリスクがどこまで実現するかというのは不透明なんですが、当面このような不安定な状況は続くのではないかなと思っています。
つばめ投資顧問の見解
つばめ投資顧問では、長期投資のアドバイスをしています。
長期投資家として言わせてもらうならば、こういう経済不安というのは常につきまとうものです。
一方で、こうやって株価がリスクオフに傾いたときに、素晴らしい良い企業。
今は確かに景気が悪くなるかもしれないけれども、5年後10年後を見据えて成長しているような素晴らしい企業を「こういう不安なときに買うこと」で大きなリターンを将来得ることができる。
そのような投資手法を推奨しています。
したがって「こういうときこそ実は買い」ではないかというような見方もしているわけです。
もし今のような話に興味のある方は、ぜひメールマガジンにご登録いただいて、もしよろしければつばめ投資顧問への入会もご検討いただければと思います。
この内容はYouTubeで動画による解説も行っています。
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