株式の本質的な価値に基づいた「買いどき」「売りどき」

トランプ相場で保有株が上昇し、ほくほく顔の投資家は多いことと思います。しかし、問題は株価が上昇した銘柄をいつ売却するかです。上昇した株価がずっと高いままであることはなく、またいつか下がる可能性もあります。

基準はいつも「本質的な価値」

バリュー株投資では、買うときと同じように売却するタイミングも、その株が持つ本質的な価値に基づいて考えます。株価が上昇するのか下落するのかを予想することはできませんが、価値を見積もることは可能です。したがって、「これからどう動くか」ではなく、「本質的な価値との差はどのくらいか」を常に考えます。

本質的な価値を基準にすると、株価の状態は3つのケースに分けられます。その3つとは①割安②適正価格③割高です。

株価が本質的な価値を大きく下回る①の状態にある場合、まさに買うべきタイミングです。株価は長い時間をかけて②の適正価格近づいていくので、株価の動きを気にすることなく安心して保有できます。

適正価格を大幅に上回る③の場合には、①とは逆のことを考えます。株価はやがて②の適正な価値に近づいて行くので、株価の下落リスクが大きくなっている状態です。保有株が③の状態にある場合にはなるべく早く売却すべきですし、もちろんこの状態にある銘柄を買うべきではありません。

適正価格のときはケースバイケース

最も難しいのは②の場合です。適正な株価であれば、相場の状況によってそこから下落する場合も、上昇する場合もあります。そのため、いくら考えても的確な判断は難しいのです。

そのため、私が1つの基準として提案しているのは、より割安で魅力的な銘柄がある場合には売ってそちらに乗り換え、無い場合にはそのまま保有しておくということです。

より割安と考えられる銘柄は、適正価格にある銘柄と比較して将来の期待収益を高めます。同時に、値下がりしにくい銘柄のウェイトを増やすことで、相場の下落時に強いポートフォリオを組むことができます。

ただし、適正な価格から更に上昇する場合も少なくありません。優良銘柄であればあるほどその可能性があります。そのため、上記に示したようなより良い機会に出会わない限り、一度買った優良銘柄は持ち続けることも選択肢の1つです。

適正価格でも持ち続けるためには、買う銘柄は優良な銘柄に厳選しなければなりません。これが、バフェットが「一生持ち続けるつもりで株を買う」と言う理由です。それだけの魅力がない銘柄には、下手に手を出すべきではありません。

株を売った後は、その後の株価の動きを気にしてはいけません。株価の動きは読めませんから、もしそこからさらに上昇していたとしても、予想できるものではないので後悔しても仕方がないのです。逆に下がっていた可能性もありますから、売却した時にすぱっと忘れてしまうのが吉でしょう。

多くの銘柄は適正価格の範囲内

多くの売買されている銘柄の中で、多くは「②適正価格」の状態にあります。そのため、私が「割安か割高か」と聞かれた場合、「どちらでもない」と答えることがほとんどでしょう。そのような銘柄を敢えて買う必要はありませんし、気に入っているのなら無理に売る必要もないでしょう。

一方で、①や③の状態にある株式はそう多くありません。これらの状態にある銘柄は稀であり、そうなっているとしたらとても貴重な機会です。

大幅に割安な①の状態にあるときには積極的に買いに行くべきでしょう。一方で、保有株が大幅に割高な③の状態にある時は、なるべく早く売却すべきです。①も③も、そう頻繁に訪れることはありません。

当社が会員向けに発行するレポートの「推奨銘柄」においては、②にあたる適正価格レンジを示しています。売買の際にはそれを1つの目安として、投資判断に役立てていただければと思います。

※本記事は、会員向けレポートの一部を抜粋したものです。

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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