かつてYouTubeでも話題を呼んだZEPPYの井村さん。
三井松島ホールディングス(の取引)で10億円の利益を上げたと見られています。
この人の手口が一体どうなっているのか?というところを投資顧問という立場から見ていきたいと思います。
ぜひ投資に興味のある方、井村さんの動向に興味ある方は、ぜひご覧になっていただけばと思います。
目次
株価はこの1年で最大2倍超
まず三井松島ホールディングスの株価。
この1年の推移を見ますとピークで、頭のところから見ると2倍以上になっているのです。
直近で大きく値下がりしているのですが、、非常に大きく上がったタイミングもあって話題になりました。
なぜこの銘柄が話題になっているかというと、もちろん株価が上がったということもあるのですが、冒頭でお示しした井村さんが買った。
それで結果、株価が上がったというところがあるわけです。
そもそも三井松島ホールディングスを元々知っていた方は、あまり多くないのではないかと思います。
多角化を進めるも、利益の7割は石炭関連
どういった会社かというと、1913年からある古い会社で、名前の通り三井グループです。
どういった事業やってるかというと、エネルギー関連と生活関連事業があります。
元々石炭を掘ったり、販売する事業。
エネルギー事業を行っていたのです。
最近では多角化として、ストローの会社を買収したり、あるいは半導体関連。
そういったところにも進出しています。
売上高では実は、生活関連事業がかなり多くを占めるようにはなってきました。
それでも利益を見ますと、7割はやはり石炭関連になってます。
ざっくり東証に上場している企業のうち、石炭に関連する企業がどのぐらいあるか見てみました。
やはりその中でも、三井松島ホールディングスが石炭の事業の色合いが一番強い。
業績に与える影響が一番強い会社だと考えます。
石炭価格は急上昇
そんな中何が起きたのかというと、石炭価格の急上昇です。
原因の一つは、ロシアのウクライナ侵攻によって、石炭や資源全体の価格が上がった。
特にヨーロッパで天然ガスをロシアから輸入できないということになると、いよいよ発電所を動かすためにどうしたらいいんだということになると、昔ながらの石炭火力があるわけです。
そのため、石炭を欲する需要が増えて、価格が上がったというところがあります。
一方で逆に言うとここまでは、低迷していたのです。
なぜ低迷していたかというと、まさに脱炭素の流れで火力発電の中でも、特に石炭は二酸化炭素の排出量が多いと言われていますから、世の中から毛嫌いされていたのです。
それがここにきて急に需要が盛り上がって、毛嫌いされていたということは、生産する人も減っていたでしょうから、(需要と供給で)急に需要の方が大きくなってしまうわけです。
そうなると、物の価格というのは必然的に上がるということになります。
これが大きく動き出したのが、2021年や22年のロシアのウクライナ侵攻後です。
上方修正に次ぐ上方修正
石炭の価格の影響を大きく受ける三井松島ホールディングスは、営業利益がどんどん増えていくことになったのです。
特に期中に、決算期が始まったときにはこんなに良くなると分かっていなかったということもあって、上がってはいるのですが、21年3月期が19億の営業利益だったものが、当初は30億ぐらいだろうと予想したのです。
会社が予想した数字なのですが、石炭価格が上昇して、次のときに合計で70億まで上方修正したのです。
さらにその1回で終わらず、ほぼ四半期ごとにどんどん上方修正し82億、最終的な実績は84億になっています。
先ほどのグラフを見ていただきますと、22年3月期というと(石炭価格は)上がるか上がらないかというところで終わっているのです。
一方で次はもう23年3月期です。
そのときにこれ(石炭価格の推移)で見ますと、200から300というところまで上がっているわけです。
となると当然この23年3月期も高い業績が期待できるわけでして、2023年3月期に当初の見込みで、いきなり143億円利益が出ると見込んでいたのです。
ところがこれで終わらずに、さらに次の決算で上方修正することになりまして、これは8月頃ですかね。
次に232億という23年3月期の予想を出したのです。
営業利益にして、2021年3月期に19億だったのが、232億ですから、10倍以上に跳ね上がっているとんでもない上方修正になるわけです。
井村氏の動向と株価
これを読んだ、予想したと言えるのが井村さんです。
ではどういう動きをしたのか。
井村氏の動きと株価を見てみましょう。
さてこの井村氏の動向なんですが、買い集めているというのがわかったのが、2021年10月14日、およそ1年前です。
何でわかるかというと、大量保有報告書というのがありまして、会社発行する株式の5%以上を取得した場合、大量保有報告書を投資家が財務省に提出することが義務づけられているからです。
そこでこれ(大量に買い付けているのが)が分かったのです。
10月に井村さんが5%以上・60万株という、金額にしておよそ9憶円ぐらいというところで、大量に買っていることがわかりました。
その後すぐ11月15日は上方修正があったのです。
ただこれに関しては、株価はそんなに反応しなかったのです。
ところがそこからさらに3月の上方修正をして、5月に一気に上がってるのは決算です。
決算で何が起きるかというと、2023年の業績予想は先ほど見た140億という数字です。
それが出て株価が爆騰するわけです。
さらにそれだけで終わらずに、この8月にもまた上方修正したのです。
しかし井村さん、実は8月の上方修正で直前に半分、最終的に70万株持っていたのですが、70万株のおよそを半分を売ってるのです。
3145円ぐらいのところで売ってるのです。
その後上方修正が出て、株価は4000円にタッチするのです。
その後株価がズルズル下がってきて、直近ではまた大きく下がってるということになります。
8月の時点で井村さんは半分売ったと先ほど言いました。
そうなると今度は5%を切ります。
5%超えてる場合は、財務省に報告義務がありますが、5%を一回切ったら、切る瞬間まではわかりますがその先は追跡できません。
今半分はどうなってるか、売ったかどうかわかりません。
しかしおそらく決算前に好決算株が大きく上がったタイミングで、やはり売り抜けているのではないかと考えるのが一般的です。
もしここでほぼ売り抜けていた場合には、およそ12億円(税前で)利益を得ていると見えるわけです。
およそ買値からすると、2倍以上の利益を得たであろうと見られています。
元々投資で10億円近い資産を築き上げてきたのですが、それを倍にしたというとんでもない動きなのです。
なぜ買った?なぜ売った?
では井村さんが、なぜ買った(売った)か?というところを見ていきたいと思います。
なぜ買った?
なぜ買ったかというと、まさに資源価格の高騰。
先ほど石炭の話がありました。
全体としてまず資源価格に注目したようなのです。
2021年の話ですから、まだウクライナ侵攻なんか起きていなかったと思うのですが、コロナで実はエネルギーの需要が盛り上がってきた。
あるいはインフレということにもなっていましたから、その辺に注目したということなのです。
その中でもまだちょっと遅れている、十分に上がってない。
石油などは先に上り始めましたから、まだ上がってないものと考えたとき、「石炭だ」と注目したのです。
そして、石炭に関する勉強を徹底的にして、一日30本もの英語の記事を読み続けたとのこと。
最終的に業績の上方修正を見込んで、買いを決断したということらしいです。
なぜ売った?
一方でなぜ売ったのかというと、決算の前(上方修正の前)半分売って、決算の後に株価上がりました。
おそらくそこで取引が活発になったときに売り抜けたのではないかと見えるわけです。
というのも、これだけ5%以上もたくさん買ってしまうと、いざ売ろうと思ったとき、買ってくれる人がいないのです。
買ってくれる人がいないと、無理やり売ろうと思ったら自分の売りで株価も下げてしまうということになります。
だからこそ井村さんは上方修正が終わって、うわっと盛り上がったタイミングを見計らって、そこにいた人たち売りつけたという形で売り抜けたのではないかと見えるわけです。
非常によく巧妙に考えられた取引だったという感じがします。
井村氏の投資スタンス
(井村さんが)どういう投資スタンスかというと、これは本人が言ってることなのですが、市場平均を上回る個別企業の超過リターンであるαを探す。
普通に何の気なしに取引していたら、インデックスくらいの成果しか得られない。
個別株の個別企業に投資するのだったら、それを上回るαと言われるものを徹底的に探すということを言っています。
とにかくここがすごくて、上場企業約3600社の中で一番いいと思える企業に、全財産を投入することが理想だと言っています。
世の中で言われる分散投資とは全く異なる考え方です。
一方ですごくまともなことを言っていまして、株で儲けることは難しい。
マーケット(インデックス)全体よりも知識が豊富でなくてはいけない。
とにかく個別株への投資で利益を出すことに全精力を注ぐ、そういうタイプだということが井村さんの発言から見てとれるのです。
ここまでやるために必要な労力
(井村さんは)実際にそれほどのものをやっていまして、まず何よりこれです。
1日10時間以上の企業分析。
普通労働者の労働時間は8時間と定められていますから、そこに対して10時間。
ひたすら企業の分析を行っているということなのです。
妥協なき情報収集
その企業の分析というのは、一社を分析するのではなくて、3600社全ての企業に決算や適時開示、決算以外のニュースリリースや上方修正というのもあります。
それらにとにかく目を通していたということです。
毎日毎日見ていたら、段々この辺りの分野に上方修正が出ているぞということが、わかってくるのではないかと思います。
今回の場合は、石炭だ。
三井松島だということになり、石炭の今後の価格推移どうなるんだということを、徹底的に英語の文献を読んだりして、上がるかどうかを自分が徹底的に叩き込んだというところがあると思います。
投資に全てを捧げる
全部の企業決算に目を通すという。
私ももう数社、見てるだけでもかなりきついところがありますけれども、それを全ての企業にやる。
これとんでもない事ですね。
当然それ以外に時間を割いて余裕なんかなくて、1日と言いますけれど、おそらく(話を聞く限り)営業日だけではないです。
土日も含めた365日という感覚だと思います。
まさに投資に全てを捧げる。
食とか旅行とか娯楽にも全く興味がないということです。
その一つの証拠として、付き合った女性も今の奥さん以外ないということです。
この井村さん、元お笑い芸人なんですが、芸人時代は貧乏でした。
そこで株式投資を始めて、利益・資産を作っていたということです。
しかしここ数年はもう目の色が変わって、投資に没頭している印象を持ちます。
図書館で「株」というタイトルの本を全て読む
一番最初はどうしたかというと、お金がなかったお笑い芸人だったということですから、図書館で株と名のついたタイトルの本は全て読んだ。
はっきり言って、ものすごい勉強家。
元お笑い芸人というと、ちょっと茶化しまうところがあるのですが、多分私なんか比にならないほどの勉強家じゃないかと思います。
ちなみに実は井村さんのお父さんは、大学教授です。
元々、勉強する家系にあった。
それがたまたまお笑いの道に入ったけれども、結果本人が向いてるのは、こっちだったと言えるのではないかと思います。
ちなみにこの全ての決算・適時開示に目を通すというやり方。
過去にもそういう人がいまして、五月さんという伝説のトレーダーがいます。
私も2012年ぐらいに五月さんのブログを読んでいました。
その時に、井村さんと同じようにひたすら開示を見て、日本ライフラインという会社が上がるだろうと予想して、そこにかなり大きな金額を突っ込んで何十億という利益を出した。
そういう人なのです。
井村さんがやってることは、五月さんの真似をしたとも言えるのではないかと思います。
逆に言えば、それだけやる意味はあると思います。
問題はそれだけのことが続くかどうかということです。
並の人間では多分無理です。
これをずっと続けるというのは。もしかしたらできるかも知れないですけど、それって何のために生きてるの?というところが、もはやあるのではないかという気がします。
ただもちろん、このやり方自体を否定するものではないです。
私もある意味井村さんは、尊敬しているところです。
イナゴが危険な理由
じゃあ皆さんの一般的考え方としては、それだけやってくれてる人がいるなら、その人を単純に真似をすればいいじゃないと思うかもしれません。
ところがそう簡単にいかないのです。
確かにこうやって大きく上昇してるときがあるんですが、一方で目先で悪材料などもあって、急に株価が下がったというところです。
先ほど井村さんが5%の開示を出したと言いましたけれども、5%の大量保有報告書、やっぱりどうしてもタイムラグがあるのです。
実際に例えば上方修正のとき、運よく株価の上方修正が出たから良かったけれども、井村さんは多分、上方修正が出ない可能性も見越して、その前に半分売ってたのではないかと思います。
もし本当に(上方修正が)出なかったら、ここから一気に崩れるわけです。
そんなときに井村さんはもう先に売っている。
しかし売ったかどうかというのは、大量保有報告書は、実は売ってから5営業日以内に出せばいいことになっているので、どうしてもタイムラグがあるのです。
井村さんはもうここで売っているのに、株価が一気に下がっている中で、他の後からついてきた、いわゆるイナゴですよね。
イナゴは売り抜けられるかというと、もう株価が下がってますから、売るに売れない。
あるいはそのイナゴ達の売りが株価をさらに押し下げるみたいな状況になるわけです。
そうなるとかなり、井村さん本人以上にイナゴ達の負っているリスクは大きいわけです。
まして買い値に関しても、井村さんより低い人はほとんどいなくて、おそらく上がってから買った人、上がる途中で買った人が多いのではないかと思います。
そんなところで買っていると、例えば今まで持っていたとすると、既にマイナスに突入している可能性が高くなってしまう。
そういうことから、単に真似をするというのは危険である。
少なくともそういうリスクがあるということ認識せずにやるということは、ある意味で一番愚かなことなのです。
何よりも自分で考えずに取引するというのは(そういう意味でも)あってはならないことなのです。
井村さんは、これだけめちゃくちゃやってるのに、なおうまくいかないかもしれないということで、決算前にヘッジをかけるわけです。
しかしそれを盲信するというのは、さすがに愚の骨頂と言わざるを得ないわけです。
井村氏の手法まとめ
そういったイナゴはいけない。
じゃあどうしたらいいかというと、自分でやってみるという方法はありではないかと思います。
ファンダメンタルズというより、決算ギャンブル
井村氏の手法を真似したらいいかっていうと、手法としてはファンダメンタルズ分析。
長期的な業績推移とか、将来にわたるキャッシュフローの現在割引価値というような、いわゆるファンダメンタルズとちょっと違うと思うのです。
決算ギャンブルに近いです。
数ヶ月から1年の、次の決算がものすごい良いかどうかというのを開示をみて、それからヒントを探り出すわけです。
徹底的に調べ上げれば、確度は上がる
そのためには徹底的に調べ上げる。
まずとにかく全上場企業から、今後そうだというところあたりをつけて、あたりをつけたところをさらに深堀して、毎日30本の英字新聞を読むとか、そういったことまでやれば確度が上がっていく。
ただ確度は上りながらも、やはりそれも100%はないのです。
最高の企業ではなく最高のモメンタム
井村さんの場合は特に、最高の企業というよりは、最高のモメンタムを探しているのではないかと思います。
最高の企業というと、これからずっと好業績を続けるとか、そういった企業のことを言うと思うのですが、井村さんの場合は最高のモメンタムです。
三井松島が最高の企業かというと、おそらくそんなことないです。
あくまで石炭の上昇の恩恵を一番受ける企業という選択だったのだと思います。
なぜかというと、今石炭が一番上がりそうだからという、そういうロジックです。
つまり最高のモメンタムを探す。
瞬間、モメンタムというのは瞬間のことです。
一番この瞬間上がりそうな、エネルギーを秘めているのはどの企業かというのを探しているのです。
モメンタム(瞬間)なので、やがて落ちる
モメンタムとは瞬間のことですから、上がるのは一瞬です。
おそらく三井松島も、石炭価格にしても、今ロシアの問題、ウクライナ問題で上がったりはしてますけども、これはいつか落ち着きます。
そうなるとやはり脱炭素の流れは避けられませんから、また下がる。
その時には株価も下がってくる、元の木阿弥みたいなことになるのです。
だからこそ、イナゴするとどちらかというと、落ちるところに巻き込まれてしまう可能性が高くなるわけです。
業績を調べる力、株価に対する執着心が必要
井村氏の手法を自分でやるためには、業績を徹底的に調べて、そしてなおかつ株価に対する執着心。
なんとなく上がるじゃないかと予想するのではなくて、上がったら売り抜けるとか、業績が発表される前に売るとか、そういったことも全部事前に決めて、そこまで徹底してやって初めてうまくいく手法であると言えるのではないかと思います。
最後に今回のの内容をまとめますと、この手法をやるには、少なくともこれから1年間、株式投資に人生の全てを注ぐ。
それぐらいの覚悟ができれば、井村さんの真似はできるかもしれない。
ただそうでないのなら、やはりリスクはどんどん高くなる手法であると言えるのではないかと思います。
これをあなたはできますか?
ということを、今日は問いかけて終わりたいと思います。
ちなみに一個朗報なんですが、井村さん、実は今ファンドの立ち上げの準備をしているということです。
これだけ株式投資に全てを注ぐ人が作るファンドって、めちゃくちゃ興味ありますよね?
私も興味深く見ています。
そうなるとイナゴじゃなくて、まさに井村さんの取引をそのまま享受できるわけですから、その時は可能性としてはあるなと感じるわけです。
ちなみ私がやってる長期投資というのは、これとは一線を画しています。
素晴らしい企業に投資をすることによって、目先儲かるかどうかではなくて、長期的にその企業の成長とともに、資産が増えていけばいいという投資をやっています。
ゆえにここまでヒリヒリしなくていいよ、ゆっくり伸ばしていければいいなという方にとっては、こちらもおすすめする手法でございます。
ぜひつばめ投資顧問の長期投資というのも、ご覧になっていただければと思います。
この内容はYouTubeで動画による解説も行っています。
動画での解説が最も早く公開されますので、いち早く情報を得たい方はぜひチャンネル登録をお願いします!
コメントを残す