2022年12月15日現在、NISAは5年にわたり年間120万円まで、つみたてNISAは20年にわたり年間40万円まで利益に対する税金が非課税になる、という制度です。しかし同年12月12日の改正の報道がなされ、問題点を解決し、より投資家に優しい制度となりました。この記事では変更点の解説と投資家にもたらすメリットを解説します。
目次
2024年NISA改正、何が変わる?
2022年12月12日、日経新聞など報道各社が一斉にNISA制度改正の報道をしました。執筆時点では確定事項ではありませんが、NHKなど信頼性の高いメディアも改正を報道していることからほぼ確定と考えてよいでしょう。ではどのような点が改正されるのでしょうか?
制度の恒久化
従来のつみたてNISAは2042年まで、一般NISAは2023年までの制度とされていましたが、今回の改正で恒久化されます。さらにつみたてNISAは20年間非課税、一般NISAは5年間非課税という縛りもなくなり、購入時から何年後に売却したとしても利益に対する税金は課されないことになります。
一般、つみたての併用が可能に
従来のNISA制度はつみたて、一般のどちらかを選択して利用することができる制度でした。しかし改正により両制度を併用できるようになります。
年間投資額増加
つみたてNISA年間投資額上限が現状の40万円から3倍の120万円、一般NISAは120万円から倍の240万円となります。最大で年間360万円NISA枠を使用することができます。
生涯投資額の設定
新たなNISA制度は生涯で1,800万円まで使用することができます。このうち成長枠投資(=従来の一般NISA枠)は生涯で1,200万円まで使用することができます。
2023年までの投資は生涯投資枠に含まれない
この改正は2024年に行われますが、それ以前のNISA枠の使用は生涯投資額に含まれません。新制度の投資枠を新たにゼロから使うことができます。
表にすると以下のようになります。
つみたて | 一般
(成長枠) |
新NISA | |
制度の期限 | 2042年まで | 2023年まで | 恒久化 |
併用 | 併用不可 | 併用不可 | 併用可能 |
非課税期間 | 20年間 | 5年間 | 無期限 |
年間投資額 | 40万円 | 120万円 | つみたて:120万円
成長枠:240万円 |
生涯投資額 | 800万円 | 600万円 | 1,800万円
(成長枠1,200万円) |
変更の意味は何か?
この大幅な改正が投資家にとってどのようなメリット・デメリットをもたらすかを考えましょう。
併用、生涯投資額の増加は投資家にとって大きなプラス
まずは金額の変更です。単純ですが、生涯の投資額が大幅に増加となり、投資家としてはこれ以上に嬉しいことはありません。つみたてだけでは物足りない、あるいは一般枠のみでは安定性に欠けるなど、それぞれ改善点がありました。しかし併用することによって、それぞれの物足りなさを補うことができます。また金額も大幅に増加したため、利益が出た場合は非課税のメリットも多く受けることができます。併用が可能となったこと、生涯投資額の増加は我々投資家にとって最高のプレゼントと言えるでしょう。
時間の縛りが無くなり、より長期投資向きの制度へ
時間の縛りがなくなった事も大きな変更です。まず制度が恒久化したことにより、数年後に制度が終了してしまうという不安感が払拭されました。また積立20年/一般5年という時間の縛りがなくなり、長期投資家向きの制度となったと思います。従来は一般NISAの5年間非課税という縛りが、5年以内に売却しなくてはいけないというプレッシャーとなっていました。しかし改正によってあなたが応援したい企業の株式を購入し、生涯に渡って保有し続け、企業の成長を人生を通して見守ることができます。長期投資家にとってこれ以上喜ばしいことはありません。
デメリットは…?
今回の改正でデメリットが生まれたようには感じません。しかしTwitterなどで投資家の発言を見ると、毎月10万円もつみたてなんて無理!という声が上がっています。実際は制度が恒久化した以上、自分のペースでつみたてをしていけば良いのです。現状の年間40万円のつみたてで1,800万円の枠を使い切る場合、45年で使い切ります。それに加え成長枠投資を行えばもっと短期間で枠を使い切ることになります。周りの目を気にせず、焦らずじっくり投資していきましょう。
どんな行動をするべきか?
改正により長期投資家に優しい制度へ変更となりました。では我々投資家は変更に伴い投資行動で変えるべきところはあるのでしょうか?現在のNISAの使い方によってそれぞれ考えていきましょう
一般NISAを利用している方
2023年までのNISA枠は生涯投資枠に加算されないため、NISA枠を使い切った方がお得であることは間違いありません。また改正後はつみたて枠を新たに使いたいという方もいらっしゃるはずです。iDeCoや財形預金など積立型の金融商品をすでに持っている方は、家計の見直しを行い、積立資金をどう捻出するかを考える必要があります。
つみたてNISAを利用している方
つみたてNISAを使っている方は、いわゆる一括投資は未経験という方もいらっしゃるかもしれません。つみたてよりも一括投資の方が価格変動リスクが高くなりますが、株式投資においては企業分析を行うことで社会人としてのスキルが身につく、など金銭面には現れないメリットもあります。2023年を株式投資の勉強の1年とすることで併用可能になった時のメリットを存分に享受できるように準備しましょう。
現在NISAを利用していない方
改正をきっかけに新たに投資を始めたいという方もいらっしゃるはずです。2024年に向けて金融知識の習得、また資金準備の両方を行うべきでしょう。知識は当然必要ですが、投資は自らのお金を実際に動かすことで身に付く感覚もあります。まずは証券口座の開設を行い、積立投資などから投資に慣れることから始めていきたいものです。
まとめ
改めて今回の改正の一覧表を見てみましょう。
つみたて | 一般
(成長枠) |
新NISA | |
制度の期限 | 2042年まで | 2023年まで | 恒久化 |
併用 | 併用不可 | 併用不可 | 併用可能 |
非課税期間 | 20年間 | 5年間 | 無期限 |
年間投資額 | 40万円 | 120万円 | つみたて:120万円
成長枠:240万円 |
生涯投資額 | 800万円 | 600万円 | 1,800万円
(成長枠1,200万円) |
投資家にとって喜ばしい点は一般(成長)/積立併用可、非課税期限の無期限化、生涯投資額の増加、です。特に非課税期間の無期限化によって長期投資家にとってはより投資に身が入る改正となります。2024年の改正に向けて家計の見直しや投資資金の捻出、あるいは金融知識の習得などそれぞれが人生を通してNISA制度を活用できるように準備していきましょう。
執筆者
佐々木 悠(ささき はるか)
つばめ投資顧問 アナリスト 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。
協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。
銀行勤務時は投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。
2022年につばめ投資顧問へ入社。
2023年以前のニーサは新ニーサの生涯投資枠に含まれないということは成長枠の年間価額240万プラスアルファになるということですか?
ソネット様
ご質問ありがとうございます。現行NISA制度は2023年をもって終了となりますから2024年以降の年間投資可能額の+αにはなりません。2024年以降は現行NISA口座での新規買い付けはできなくなりますのでご注意ください。