急伸するシャープ(6753)のレポートを公開

シャープ(6753)の株価が急伸しています。鴻海による買収以降、株価は100円台に低迷していましたが、昨日(2017年3月14日)400円を突破し、時価総額は8年ぶりに2兆円を回復しました。

株価が上昇している要因は、コスト削減を主因とする業績の急回復です。

鴻海に買収されたことで、それまでの経営者では手がつけられなかった構造改革を断行しました。その結果、第3四半期の純利益は黒字化し、2月17日には今期の業績予想を上方修正しています。

私は2016年11月12日付の会員レポートで、シャープを推奨銘柄として取り上げました。ここまでの上昇は想定していませんでしたが、今シャープで起きていることはおおむねレポートの内容に沿ったものです。

以下、当時のレポートを公開します。


<シャープ(6753)>

 総合評価:★☆☆ 目標株価:200円以上
(割安度:★☆☆ 成長性:★★★ 安定性:★☆☆)

【株式指標(2016年11月11日)】

株価171円PER– 倍
時価総額8,521億円配当利回り– %


【投資のポイント】

  • シャープ(6753)は鴻海の下で経営再建中。新社長の戴氏は、有機ELの巨額投資に対して慎重姿勢を取っていて、好感が持てる。
  • 鴻海による買収以降、目を見張る商品がいくつか登場している。そこからヒットが生まれれば、鴻海の圧倒的な生産力で世界を席巻する可能性がある。
  • 時価総額8,000億円超は決して割安とは言い難いものの、うまくいったときは大きく化ける銘柄。まずは目の前の経営改善の成否に注目すべし。

【推奨理由】

 ご存知の通り、シャープは経営危機に陥り、現在は鴻海の傘下で経営再建中です。これまでは液晶への投資失敗で多額の赤字を垂れ流してきました。技術者の流出が続く中、台湾企業主導で再建できるか焦点となっています。

 直近に公表された第2四半期決算ではギリギリ営業黒字に持ち直し、経営再建に向けた意気込みを感じることができました。もちろん、意気込みだけで経営を立て直せるわけではありませんが、着実にコスト削減が進んでいることは事実でしょう。

 決算発表とタイミングを同じくして、日本経済新聞朝刊に『シャープ戴改革の行方』と題する連載が開始されました。本連載から感じ取れることは、戴社長が思った以上に現実路線だということです。

 これまで液晶技術を磨いてきたシャープにとって、液晶の次と目される有機ELへの投資は避けては通れないと言われていますが、同氏はあくまで慎重姿勢を貫いています。有機ELの試作ラインを整備することは決定したものの、すぐに量産体制に入るのではなく、あくまでディスプレイ事業の業績回復を優先するとのことです。

【参考】シャープ戴社長が有機ELに慎重なわけ(マイナビニュース)

 このことに対して、私は好感を持って受け止めています。有機ELは次期iPhoneなど、これからのスマートフォンなどのデバイスの主流となることが確実視されていますが、すでに韓国や中国勢は大規模投資を進めています。このままいけば、供給過剰により価格競争は待ったなしで、価格破壊で赤字を垂れ流した液晶の二の舞になりかねません。

 誰よりも液晶や有機ELに熱が入っているのが、シャープを買収した張本人である鴻海の郭会長です。戴社長は郭会長の忠実な部下として出世してきましたが、その上司に対して意見し、自身の姿勢を貫けるかどうかが焦点となります。戴氏は今月か来月には鴻海の役員を退任するとしており、それを契機にシャープの利益を最優先することが期待されます。

 もし戴社長が有機ELへの設備投資競争から脱し、収益性重視でシャープを経営することができれば、シャープの将来は明るいと考えています。なぜなら、同社のIoTをはじめとする家電製品には目を見張るものがあるからです。

 例えば、今夏に発売した「蚊取り機能付き空気清浄機」は、東南アジアで予想を大きく上回るヒットとなりました。さらに「ヘルシオ グリエ」など、ついつい欲しくなるような商品を発売し、好調な売れ行きを記録しています。鴻海による買収決定以降、このような独自性のある商品が増えてきているように感じます。(コーポレート・メッセージも「Be Original」に変更しました。)

 日本の電機メーカーの問題点は、いい製品を作っても、多くの人にとって必要がない機能に余計なコストをかけてしまっていることにありました。しかし、経営者が外国人となり、広い視野で物事を見られるようになる上、売れる商品ができれば鴻海の圧倒的な生産力で瞬く間に世界を席巻する可能性があります。うまくいけば「白物家電のアップル」になることも不可能ではありません。

 ただし、今はあくまで可能性の段階にすぎません。まずは戴社長が目の前の経営改善を達成できるかどうかがカギとなります。ようやく表舞台に出てきたところで、その能力は未知数ですが、最近の報道やインタビューを見ていると好感が持てます。

 もちろん、鴻海がこれからシャープをどう扱おうとしているかによってその価値は大きく変わるでしょうし、黒字化していない段階で時価総額8,000億円超は決して割安といえる水準ではありません。それでも、もし化けたら大きいということから、期待を込めて掲載いたしました。

 小さく保有して今後の方向性を見守るという戦略もありでしょう。日本の電機メーカーの今後を見つめるという点でも、目が離せない銘柄です。


 

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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2 件のコメント

  • シャープは台湾の株の達人に進められ165円で3000株初めてネット証券で購入しました。倍以上になり驚いています。その方は10倍に化ける可能性ありとのことでしたが〜少しずつ考えながら購入したいです。なかなか利確できません

    • コメントありがとうございます。
      私はすでに割高な域に入っていると考えます。
      コスト削減により利益は回復しましたが、肝心の売上はまだこれからです。ここからの不確実性はより大きいと言えるでしょう。何卒よろしくお願いいたします。

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