日本航空(9201)の買い時はいつか?

これまでウォーレン・バフェットは航空会社への投資を頑なに避けてきました。それは、かつて同氏が航空会社への投資で痛手を被ったことがあり、同じ経験をするのはもうこりごりだと考えていたからです。

しかし、ここへきて米国の航空会社(アメリカン航空、デルタ航空、サウスウェスト航空、ユナイテッド航空)への投資を開始しているというのです。

これまでも、バフェットは「IT嫌い」と言いながらIBMやアップルへ投資を行うなど、前言を覆すような行動を取ってきました。よく調べるとその裏には合理的な根拠があったと考えられるものばかりです。

【参考】バフェットがアップルへの投資を決めた理由

航空会社への投資にも、それなりの理由があったのではないでしょうか。そこで、同じ航空会社として日本航空(9201)について調べてみました。

航空会社は破たんの歴史

株価を見てまず気づくのが、バリュー株投資に適しているように見える投資指標です。PERは8倍とかなり低く、配当利回りは3%です。大型株でこの水準なら、すぐにでも飛びつきなくなります。

売上高1.3兆円のうち1.1兆円は航空路線の運航によるものです。その大部分は旅客輸送で、国際線と国内線がほぼ半々の割合となります。周辺事業も大きくないため、同社を観察するなら基本的に航空運航の状況を見れば良いでしょう。

記憶に新しいのが、2010年の経営破たんです。経営状況の悪化から会社更生法を申請しました。株式は紙くずとなり、多くの投資家が損失を被りました。その後、京セラ創業者の稲盛和夫氏のもと再建を行い、2012年に再上場を果たしています。

日本航空に限らず、世界中の多くの航空会社は何度も経営破たんしています。驚くべきことに、アメリカでは大手航空会社であるパンアメリカン、アメリカン、ユナイテッド、デルタ、ノースウェスト、USエアーのいずれもが経営破たんを経験しています。日本でも、日本航空に次いで2015年にはスカイマークが破たんしています。

航空会社がこれほどまでに破たんを繰り返すのは、構造的な問題があると考えざるを得ません。そこで、なぜ日本航空が破綻したのかを改めて振り返ります。

経営破たんの要因は、端的に言うと業績悪化です。日本航空は、破たんまでの5期のうち3期で最終赤字を計上しています。2006年に公募増資を行ったものの、その後も赤字が資本を食いつぶし、債務超過に陥ってしまいました。

原油価格に命運を握られる

業績不振の背景には、報道されていたような高コスト体質や不採算路線などはあると思います。しかし、それ以上に航空会社の事業特性も関係していると考えます。

航空会社の業績は大きく振れやすいものです。なぜなら、売上・コストともに自助努力ではどうすることもできない要因に左右されるからです。

航空旅客数は景気や国際情勢によって大きく変動します。また、コストの2割を占める燃料費は、原油価格の変動に左右されます。一方で、人件費や航空機材などの固定費が大きく、需要の変動によりコストを調整することが困難です。

日本航空の業績が苦しくなった大きな要因も、原油価格の高騰にありました。2004年頃から中国を初めとする新興国需要の増加に伴い価格が急上昇し、2008年にピークを迎えます。これが、航空会社の経営を圧迫しました。

【出典】世界経済のネタ帳

そして、2008年にリーマン・ショックが発生すると、世界経済の落ち込みとともに航空需要も激減しました。これが追い打ちとなり、経営破たんに追い込まれてしまいました。

破たん後は、不採算路線からの撤退や人件費の削減、航空機材の小型化など、固定費の削減に取り組みました。財務体質は大幅に改善したといえるでしょう。幸いにもこのタイミングに原油価格が下落し、再上場後の業績は好調を維持しています。

バフェットが投資を決定した要因も、固定費の低下が大きな理由になっているようです。固定費が下がれば財務にも余裕が出ます。機材の小型化傾向や技術革新も進み、少しずつ原油価格や需要の変動に影響されにくい体質になっています。

技術革新がさらに進み、航空機の燃費が大幅に改善したり、航空機の価格が下がったりすれば航空会社の経営も安定したものになるでしょう。

まだ安定からは遠く、原油価格高騰のリスク

しかし、私はまだ経営の安定とは言い難いと考えます。燃費が大幅に改善したわけではなく、LCCとの競争も続いています。経営破たん後抑えられていた人件費も、好調な業績の後押しもありじわじわと上昇しています。昨日発表された中期経営計画では、これまで抑えられていた投資を増やすとしています。

原油価格が再び上昇すれば、同社の利益は再び減少に転じるでしょう。以前のように、それだけで赤字を計上するようなことはなくなったかも知れませんが、少なくともバリュー株投資としては今は投資するタイミングではないと考えます。

バフェットの動向も気にかけつつ、航空会社の今後の動向を見守りたいと思います。

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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2 件のコメント

  • はじめまして。
    60代主婦です。株歴は長いのですが、勝ったり負けたり
    安定しません。資金も減るばかりです。
    バリュー株投資は一喜一憂しなくていいので、私には向てるように思います。つきましては当方の予算が60万しかありません。予算的にはどうでしょうか?
    森より

    • 森様
      コメントありがとうございます。返信が遅くなり、申し訳ございません。
      予算60万からでも十分始められます。ただし、しっかり増やそうと思ったら、資金の追加は不可欠です。少額から勉強し、慣れてきたら投資額を大きくしていくことをおすすめいたします。何卒よろしくお願い申し上げます。

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