東京エレクトロン(8035)はどこまで伸びるか?

東京エレクトロン(8035)が高値を更新し続けています。3ヶ月の上昇率は約3割にのぼり、2000年以来17年ぶりの水準です。

その理由は、好調な業績にあります。先日発表された2017年3月期決算では、過去最高の当期純利益を記録しました。

東京エレクトロンは「半導体製造装置」を製造し、サムスン(韓国)やインテル(米国)、TSMC(台湾)などの半導体メーカーへ納入しています。半導体メーカーはその先の最終製品メーカーへ半導体を供給します。

半導体需要は長期的な拡大が予想されています。半導体が欠かせないスマートフォンやデータセンター、IoT機器の発達がその裏付けとなります。

しかし、この数ヶ月〜1年の需要拡大は必ずしも長期トレンドに乗ったものではないと考えます。その要因は中国です。中国では、政府主導で落ち込みそうな需要にテコ入れを行い、スマートフォンなどデジタル製品の増産を続けています。

半導体の種別で言えば、世界市場におけるDRAMの約半分、フラッシュメモリ3分の1を中国が消費していることから、その影響は多大です。

一方で、中国における半導体生産の世界シェアは数%にすぎません。東京エレクトロンの販売先でも中国は12%にすぎず、30%の台湾や18%の韓国とは開きがあります。まだ技術が十分ではないのでしょう。

投資家の関心は、この需要拡大がどこまで続くのかということです。長期的には半導体市場は拡大を続けると考えられますが、前述のように長期トレンドからは大きく上振れしていると考えます。

中国での半導体需要はどこかで必ず限界がきます。スマートフォンは世界中に行き渡りつつあり、そこからいくらIoTが拡大すると言っても、スマートフォンに匹敵するようなブームを生み出すのは容易ではありません。

最終製品への需要がなければ、設備投資は行われません。設備投資は景気の波が色濃く反映されるものですから、東京エレクトロンのような会社の業績は大きく下振れします。東京エレクトロンの売上高は2008年から2010年にかけて半減しました(9,060億円→4,186億円)。

また、東京エレクトロンは世界シェア4位と市場を独占しているわけでもないので、長期的には競争に晒され続けるでしょう。

以上より、業績の好調は一時的なものであると考えます。バリュー株投資家としては、手を出せる状況ではありません。

Print Friendly, PDF & Email

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

詳細はこちら

気に入ったらシェアしてもらえると嬉しいです!

コメントを残す

Popular Article - よく読まれている記事Popular Article

  • 【紅麹問題】それでも小林製薬の株価はなぜ暴落しないのか
    今回は小林製薬を改めて取り上げます。 前回、小林製薬を取り上げてから約3ヶ月が経ちましたが、そこからの進捗と、今何が起こっているのかを示して...
  • 本田技研工業 配当利回り4% PBR0.65倍は投資チャンスか?
    本田技研工業(以下、ホンダ)の株価が好調です。 出典:株探 月足チャート 過去20年の平均PERは約10倍ですが、24年7月9日現在のPER...
  • 配当利回り 3.4%のキリンHDに投資して良い?成長性を考える
    今回は国内大手のビールメーカー、キリンホールディングス(以下、キリン)を分析します。株価は2018年にピークをつけた後、2,000円前後でほ...
  • ヤクルトの株価下落が止まらない!その原因と今後の見通しをアナリストが解説
    今回はヤクルトについてです。 ヤクルトの株価が下落し続けていますが、その理由と今後の見通しについて解説したいと思います。 長期的に成長してい...
  • 次の出世株を探せ!中小型株編【1】
    普段私が取り上げている企業は、やはり皆さんが注目する企業ということになりますが、実際の投資は必ずしもそういった動きにはならないかもしれません...

Article List - 記事一覧Article List

カテゴリから記事を探す