2022年は金利に左右された1年でした。
アメリカの金利の上昇によって株価が下落。
金利が上がらないと見られていた日本も、年末に日銀が長期金利を操作。
実質的な利上げだと見られています。
実は皆さん金利に関して、あまり深く知らないのではないでしょうか?
今後金利がどのように動いていくのか?
これは株式市場はもちろん、私たちの生活に身近な住宅ローンなどにも大きく影響します。
今回は初心者から中級者まで、金利に対する疑問にお答えしたいと思います。
金利について学ぶことで、金利がどう動いても怖くない状況を作って、資本主義社会を生き抜いていく上で役に立てていただければと思います。
目次
金利に関する10のギモン
疑問① そもそも金利とは?
政府や企業が誰かからお金を借りる時、何もなく借りるというわけにはいきません。
金利を支払って、上乗せして返済する。
今年(2022年)に大きな影響を及ぼしたのが、政策金利(中央銀行が決める金利)です。
政策金利の上下によって、株価や様々な金融情勢が動いた。
金利の高低というのは、信用力によって左右される。
ただし国の金利というのは、ある程度中央銀行がコントロールできる。
このことについては、また後半で詳しく解説していきます。
疑問② 政府はなぜ金利を上下させるのか?
景気が悪くなりそうな時には、金利を引き下げる。
金利が下がると、多くの人がお金を借りやすくするという効果があります。
お金が借りやすくなると、企業や個人が、どんどんお金を使う。
そのことによって、経済が活性化されるという側面がある。
ただし行き過ぎてしまうと、お金が世の中に溢れすぎてしまう。
例えば「これから原油の価格が上がりそうだ」みたいな話が出たりすると、そこにお金が一気に流れ込む。
原油高を通じてインフレになるのです。
インフレになると、低賃金で働く人や年金生活者などが困ってしまう。
そうならないように政府は、金融の引き締めをする。
イメージしていただきたいのは、水道の蛇口です。
(金融の引き締めは)蛇口を締めるという感覚だと思ってください。
2022年に起きたのが、蛇口を緩めてそして閉めるという動きだった。
コロナ禍で、経済が危ないということで、各国政府はゼロ金利でお金を流した。
しかしその結果やウクライナ問題などで、物価の上昇が起きている。
物価の上昇を抑えるためには、お金をギュッと締めないといけない。
そこで蛇口を締めて、今のような金利上昇という局面になったのです。
疑問③ なぜインフレになると金利を上げるのか?
蛇口を締めることによって、今まで投機的な資金(原油価格の上昇など)に向かっていた資金を抑えさせる。
お金を借りる時の金利が引き上がると、
「この金利だと元が取れないかもしれない」
「金利が上がるとリスク上がってしまう」
ということで、投機的な動きがストップして、物価の上昇を抑えられる。
人々も(金利が高いから)住宅もあまり作ろうと思わないし、企業の設備投資にも回しにくい。
一般的には金利を上げると、インフレが収まるし、同時に景気も冷え込む。
疑問④ なぜ金利が上がると株価が下がるのか?
金利を上げると景気が冷え込む。
つまり経済が回りにくくなって、各企業の目先の業績がどんどん悪化していく。
また業績が悪化すると金融的には、いわゆる割引率というものがあります。
金利が低い時には高いPERでも大丈夫という、いわゆるディスカウントキャッシュフローの計算ができる。
金利が上がると、PERがどんどん下がってくる。
金利が低い時にPER40倍でも「今の金利なら妥当だ」といわれていた株価。
これが金利が2%から4%になることによって、PER20倍でも「割高なんじゃないの」いった見方になる。
その根本にあるのが、お金の借りやすさがあります。
金利が高くなると、お金が借りにくくなる。
だから株式とか原油みたいなところにお金が流れにくくなる。
結果として株価も下がりやすい。
疑問⑤ 金利はどうやって動かすのか?
政府が動かす金利には、大きく分けて短期金利と長期金利があります。
短期金利は、いわゆる翌日物の金利。
特に日本の政策における短期金利というのは、無担保コール翌日物と言われ、銀行間で「次の日までお金貸して」という時に用いられる金利。
これを操作することで、全体の金利の操作を行っている。
各国政府も超短期のレートを政策目標に据えて、政策金利を操作しています。
日本ではこれを2013年からずっと0%に貼り付けていて、金融環境的にはすごくお金を借りやすい状況にしている。
しかしアベノミクスの時からゼロ金利を続けているにも関わらず、日本の景気が良くなることもない。
同時にインフレにもならない。
デフレというのは、物の価格が下がりますから、どんどん人々の財布を萎縮させてしまう効果がある。
ゆえに少しずつでも、インフレになった方がいいという共通認識がある。
そのため日本を含め各国政府が2%というインフレ目標を設置して、お金を動かそうとしています。
ただ短期金利のゼロ金利を行っても、全然インフレにならないということに業を煮やして、日銀は長期金利まで操作しようとした。
それがいわゆるイールドカーブコントロールといって、10年金利のところまで動かそうとしている。
疑問⑥ なぜ日本は低金利でいられたか?
日本は2%という安定的なインフレ目標を設定したにも関わらず全然インフレにならない。
直近アメリカや世界各国が10%近いインフレに苦しんでいる中で、日本はせいぜい3%台という低いインフレ率に抑えられていた。
だから日本の金利は上がらないというコンセンサスがある意味出来上がっていた。
それによって金利が上昇するアメリカと、金利が上がらない日本の金利差によって、金利の高いアメリカにお金が集まってドル高円安になる。
日銀の実利上げなくとも、130円台までは自然に中方向に戻ってきていた。
疑問⑦ 日銀の実質利上げとは?
日銀は低金利を続けていたわけですが、今年12月にあったサプライズが実質利上げです。
10年の国債を0.25%で連続指値オペといって、金利が0.25%になる価格でずっと日銀が買い続けるとアピールする。
それが上限になって、それ以上金利が上がらないという目論見がありました。
しかしここでいびつな状況が生じてしまったのです。
本来期間の短いものの金利というのは、長いものよりも低くなるはずです。
しかし10年より9年の方が金利が高いというおかしな状況が生じてしまった。
その理由は日銀が10年債を買い続けているから。
それで何が起こるのかというと、0.25%の金利では安すぎるから多くの投資家は買わない。
日銀は連続指値オペ0.25%で買うと言っていますから、どんどん国債を買わざるをない。
ついに日本国が発行する国債のうち半分は日銀が買ってしまうというおかしな状況になった。
これは通貨を発行する銀行が国債をどんどん買い入れるという、実質的に財政ファイナンスと言えるという状況が起きてしまった。
当然これは何か大きな金利の変動、為替の変動があった時にリスクが大きくなってしまう。
ゆえにこれ以上国債をたくさん買えないということで、日銀は0.25%という買い入れ目標を0.5%まで引き上げた。
私は、日銀がこれ以上たくさん国債を買い続けたくないからだと見ています。
しかし市場はそれを実質的な利上げと受け取っていると思います。
実際長期金利が0.25%が上限だったところが0.5%まで引き上がったという事実はあるわけです。
疑問⑧ これから金利は上がるのか?
黒田総裁自身は、これは金利の引き上げではないと言っています。
景気が良くもない、インフレも諸外国に比べて上がってない日本の金利を引き上げるということは、経済を冷やすということに他ならないわけです。
黒田総裁が利上げではないと言ったのは、景気を冷やすのは何としても避けたいから。
正直黒田総裁の会見自体は、ものすごく違和感のあるものでした。
日銀の本音としては、利上げはしたくない。
ところが否が応でも国債を買い続けてしまうという仕組みが限界に達している。
ゆえにこの変動幅を拡大させるという動きによって、実質的にイールドカーブコントロールにおける長期金利を引き上げざるを得なかった。
今確かにインフレ率は3%超えて、目標とする2%を上回っている。
しかしそれは日本経済が加熱して、お金が溢れている状態によって物の価格が上がっているわけではない。
今の金利、物価上昇というのは、コロナ禍によるサプライチェーンの停滞、あるいは海外そのものの物価上昇。
あるいは円安によって、海外からものを買う時の相対的な価格が上がった結果、物価が上がっている。
これって日本のせいではありません。
だから仮に日本の金利を引き上げたとしても、物価は下がらない。
今の日銀としては、物価やインフレを率を下げるために金利を上げようというのは、愚の骨頂。
だからそれはしないと思います。
逆に言うと日本は金利を下げても、お金が回らない。
金利を下げても景気が加熱しない。
人々に経済活動の意欲がなくなってしまっているという側面もある。
いずれにしても、政策金利に関しては少なくとも上げたくないというのが一番の本音だと思います。
そのことを頭に置いていただくと、基本的には低金利で最悪テールリスク。
可能性は低いけれども、大きく動くリスクはゼロにはならないというところは、覚えておいていただければと思います。
疑問⑨ 住宅ローンがどうなるのか?
イールドカーブコントロールを放棄する可能性があるので、長期金利はこれから0.5%から例えば1%になったり、もっと上がるということは実際は考えられる。
一方で短期金利に関しては、各国短期金利の操作を放棄するという話は聞きません。
そして日銀がこれを上げる理由も特にありません。
短期金利は上がりにくい。
短期金利というと、変動金利です。
長期金利は10年以上の固定金利ということになります。
例えばフラット35の金利は上がるかもしれない。
一方で短期に関しては、目先急に上がるというようなことは、テールリスクが起きない限り可能性は低いのではないか。
疑問⑩ 2023年の金利株価の見通しは?
金利の上昇というのが続いてきた2022年でした。
実際金利上昇が効いてきて、景気はどんどん悪くなってきている。
インフレ率はアメリカでもピークを打った感がある。
従って金利はこれ以上は、上がりにくいのではないか。
つまり逆金融相場は、ほぼ終わったかなというところがあります。
一方で実際に景気が悪くなって、企業の業績が悪化するのは、これからかなというところ。
株価に関しては、あまり明るい見通しが描ける2023年ではない。
しかしこれまで成長株、特にそのPERが高かったものに関しては、金利の上昇によって、PERの下落によって、株価が下がりやすい傾向にある。
成長株はやはり成長株ですから、今後業績が上がってくれば、それに従って株価も上がりやすい。
また金利が下がってきた時には、PERの上昇によって株価が上がりやすいという傾向がある。
したがって2023年はまさに成長株の仕込み時の年になると考えています。
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