トランプ大統領の弾劾のリスクが高まったことから、市場は弱気に転じています。しかし、最近の好調な相場は期待先行の危ういものであり、トランプ政権のおぼつかなさを見れば十分に予見できたことです。バリュー株投資家として成功するには、「期待」のような不確実なものをなるべく避け、経済の実態を見極めることが肝心です。先週(5月13日付)の有料会員向けレポートの一部を公開します。
好調なマーケットに浮かれない
フランス大統領選挙ではマクロン氏が勝利し、政治的リスクの懸念が後退したことからマーケットは安堵からの小康状態を維持しています。国内企業の決算発表でも大きなサプライズはなく、日米ともに株価はここ1年間で最高の水準です。
欧州に関しては6月にイギリスおよびフランス、9月にドイツの議会選挙が控えますが、マーケットの波乱要因となる可能性は低いでしょう。そもそも選挙が経済実体に直ちに影響を与えるとは考えていません。
おぼつかないのはアメリカの政治状況です。トランプ大統領がFBI長官を罷免したことで、批判が高まっています。選挙中の自身のロシアとのつながりを調査しようとしたためだとも言われ、「第2のウォーターゲート事件」ではないかと騒がれています。
大統領に「重罪や軽罪」があれば、議会は弾劾裁判により罷免することができます。上記が認められるとすれば、共和党主流派の思惑次第では弾劾裁判を起こすことありうるでしょう。
もし弾劾裁判に至らなかったとしても、国内の信任を得られないトランプ大統領に共和党主流派が加勢するメリットはありません。そうなれば、この半年間株価を牽引してきた減税やインフラ投資は絵に描いた餅となり、市場の期待は剥落するでしょう。
もちろん、それも経済実体にただちに影響を与えるわけではありません。しかし、現在の株価は政策への「期待感」に支えられている部分が少なからずあり、それに乗ることは適当ではないと考えます。
私たちにできることは、実体の伴わない割高なものには手を出さないことです。一方で、経済は政治に関係なく刻一刻と変化するものですから、その動きを定点観測しながら、次の一手に思いを巡らすことが必要でしょう。
裏にはいつも中国あり
当社サイトで以下の記事を公開しました。
半導体製造装置の東京エレクトロンの業績が好調ですが、その実態を調べるほど、裏では中国の存在が際立ちます。
「半導体製造装置」の受注が好調ということは、もちろん「半導体」の生産が好調なことを意味しています。そして、半導体の販売先を調べると、世界販売の3分の1から半分は中国だということがわかります。
半導体の最終的な利用先はスマートフォンが中心だと考えられますが、世界的にはその需要も頭打ちが懸念されています。特に、先進国での普及率は高く、これから急速に伸びるわけではなさそうです。伸びるとしたら新興国です。
いま伸びているのは中国国内の需要が中心です。スマートフォンの出荷台数でも、すでに世界の3分の1は中国です。中国の消費は世界のトレンドからはやや遅れながらも、圧倒的な人口規模によりこの波を作り上げているのでしょう。
しかし、いくら人口が多いとは言え、需要はどこかで必ず頭打ちとなります。その要因は製品が消費者に行き渡るか、景気が悪化し生産が鈍った場合です。
中国経済は2015年に一度落ち込みかけましたが、政府のてこ入れにより盛り返しています。しかし、それはインフラや不動産投資によるもので、いつまでも続くものではありません。無理をしている部分も少なからずあるでしょう。
今年の秋には5年に一度の中国共産党大会が開催されます。政府によるてこ入れが積極的に行われるのはそれまでという観測もあり、その後の中国経済には特に注意を払う必要があります。
中国はすでに世界第2位の経済大国であり、その動きはスマートフォン・半導体だけではなくあらゆる経済事象に影響を与えます。それを恐れるのではなく、よく知っておくことで不測の事態が起きても冷静に対処できるでしょう。
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