独立系投信【ひふみ/スパークス/鎌倉】を比較!あなたが買うべきは?

”アクティブファンドはインデックスファンドには敵わない”

投資を勉強したことがある方なら聞いたことがある言葉だと思います。手数料が高く、パフォーマンスが出ていないファンドが多いことも事実です。

しかし、すべての投資信託がインデックスのパフォーマンスを下回るかと言えば、決してそうではありません。確かに、玉石混交である多くのファンドの「平均」を取ってしまえばインデックスに敵わないのですが、中には長い期間インデックスを上回り続けている傑出した投資信託もあります。

何より、アクティブファンドを比較・評価すると会社の思いやファンドマネージャーの考えが垣間見えてきます。アクティブファンドに投資する魅力としては、そういった「哲学」に共鳴する点もあるのです。

投信を評価する考え方に「5つのP」というものがあります。この考え方を軸に、アクティブファンドの面白さを解説します。

インデックスに飽きてしまったあなたの参考になれば幸いです!

販売会社系と独立系投資信託

投資家からお金を預かり運用する会社を運用会社といいます。今回紹介する投資信託は、いわゆる独立系と分類される運用会社が扱っているものです。

代表的な独立系運用会社はさわかみ投信・コモンズ投信・セゾン投信などが挙げられます。

明確な対義語はありませんが、独立系ではない運用会社は野村アセットマネジメント・大和アセットマネジメント・楽天投信投信投資顧問など証券会社(販売会社)とセットの企業を指します。

独立系運用会社の面白いところは明確な意志がある事です。それぞれの投資哲学や考えが投資先の選定に反映され、それぞれの特徴に差がでています。

今回はスパークス(厳選投資)・鎌倉投信(結2101)・レオス(ひふみ)の3社を紹介します。

投信の評価軸 5つのP

ファンドを選ぶ上で大切な考え方があります。

それが5つのPです。Pはキーワードの頭文字からきています。

1.Philosophy 投資哲学 最も大切。ファンドの根幹となる考え方。あくまで「哲学」なので、スッと腹落ちするものとそうでないものがある。PhilosophyがPeopleやProcessに反映されているかを考える                            

2.People 人材 ファンドマネージャーの考え方は投資哲学と乖離がないか、人員交代の頻度は高くないか

3.Process 投資プロセス  銘柄選定方法に納得できるか、運用の基準が明確であり、リスク管理ができているか

4.Portfolio ポートフォリオ Processを経た結果どんな企業に投資しているか

5.Performance パフォーマンス Portfolioの結果、投資成績はどうなっているか

あなたが投資信託を選ぶ上でとても参考になるはずです。5Pの観点でファンドの特徴を見ると、投資方針や調査方法に明確な差があることが分かります。実際に3種(厳選投資・結2101・ひふみ)のファンドを見てみましょう!

洗練されたスパークスの厳選投資

まず紹介するのは、スパークスの新・国際優良日本株ファンド(厳選投資)です。

中長期的な成長を目標に積極的な運用を行うファンドです。早速5Pの観点で分析します。

投資哲学

高い技術力やブランド力があり、今後グローバルの活躍が期待できる日本企業を中心に投資する。「マクロはミクロの集積である」の考えのもと、ボトムアップアプローチ(企業の財務・経営状況などを一社ずつ細かく分析し、投資対象を選定する方法)で投資対象を策定。

人材

15人の充実したアナリスト体制。藤村 忠弘ファンドマネージャーの考え

企業を一つ一つ、じっくりと見て良い会社に投資することが目標

 (引用元“大切なのは調和、そして貢献──23年間で2,000社超を取材した男が説く、唯一無双の投資哲学”)

投資プロセス

経営者との面談などを経て少数精鋭で直接企業に赴くことで調査の深度を深めていく。経営者とアナリストの1:1で取材をする。

多くの機関投資家が「来期の売上高目標は?」など短期の質問が多い中、スパークスは企業の成り立ちや商品の強みなど、基礎的・本質的な質問を行う

投資環境の分析、期待リターンとリスクについて月に2回の投資製作委員会で意思決定。

ポートフォリオ

純資産総額は1,446億円。29銘柄へ投資中。

出典:1月31日現在 マンスリーレポート

パフォーマンス

2008年運用開始

出典:23年1月31日現在 マンスリーレポート 22年12月24日 目論見書

5Pの観点で分析すると、企業調査に対する真剣さが伝わります。パフォーマンスも過去3年間はTOPIXを下回っていますが、設定来(2008年〜)では大きく上回っています。

投資哲学が分析、パフォーマンスに反映されているファンドだと感じます。

個人的にスパークスの投資哲学や調査方法に信頼感があると思います。また、月次レポートには市況やファンドの運用方法が詳しく記載されており、個別株の分析としても参考になります。

 

暖かい心が滲み出る鎌倉投信の結い2101

鎌倉投信の結い2101は証券会社等では購入ができない、いわゆる直接販売の投資信託です。「投資ブロガーが選ぶファンドオブザイヤー」の9位に入賞しています。

投資哲学

投資はまごころ 金融はまごころの循環

まごころとは、ほんものの価値や豊かさを創造する会社を見極めて、永きにわたって支えるもの。投資とは、ほんものの価値や豊かさを未来へ蓄えること。

事業性と社会性の観点から「よい会社」を選ぶ 

人材

創業者 新井 和宏氏の考え

投資先のファンになる・お金を出す・消費者になる・ダメなところがあれば伝えるといった姿勢を大切にする。

(引用元“新井 和宏(3):インタビュー|幸せ経済社会研究所”)

投資プロセス

現場を大切にする企業に投資したいという思いから実地調査を行い、社員の方をみる意識を持つ。社内掲示物、工場の雰囲気、働く人の姿を見て、企業の雰囲気風土を見極める。人・共生・匠の観点で銘柄選定

人  人材を活かす企業 

共生 循環型社会を作る企業 

匠  巧(匠)みな技術、感動するサービスを展開する企業

ポートフォリオ 

純資産総額は486億円。67銘柄へ投資中。

出典:23年2月6日 月次運用報告書

パフォーマンス

2012年運用開始

出典:23年2月6日 月次運用報告書 目論見書 

スパークスは経営者との対話を重視していたのに対し、鎌倉投信は従業員に視点を置いています。いい会社、という言葉からも温かみを感じます。

投資の方向性として、資産価値の増加に重点を置いていないことが特徴です。

投資を通じて社会を良くしたいと考えている方、日頃から寄付や募金に興味がある社会的活動に関心が高い方におすすめの投信です。

 

レオスのひふみは人気がある

ひふみみんかぶの【アクティブ型】つみたてNISAランキング第1位、「投資ブロガーが選ぶファンドオブザイヤー」7位に入賞しています。今回の記事では、最も知名度があるファンドではないでしょうか。

国内外の成長企業が主な投資対象です。

投資哲学

企業の規模は関係なく柔軟な投資選定を行う。火風水土心(ひふみとうしん)がモットー

火 成長

風 テーマトレンド

水 ディフェンシブ、割安

土 地味で地道

心 正しい事業の姿勢

さまざまな要素を参考にしながら、最も中心になるのは心。

人材

藤野 英人ファンドマネージャーの考え

日本を代表するような良い運用会社を立ち上げて、国民的な投資信託を作りたい。

国民的な投資信託とは長期的に保有され、保有することで豊かな生活が送れる投資信託である。

(引用元“藤野 英人インタビュー | 運用メンバーインタビュー | ひふみ”)

投資プロセス

定性調査ー経営者、製品、ビジョン、現場の声

定量調査ー株価水準、割安感、安定的な収益

2つの観点で成長企業を発掘する。

ポートフォリオ

純資産は1,406億円。275銘柄へ投資中。

出典:23年1月31日 月次報告書

パフォーマンス

2012年運用開始

出典:23年1月31日 月次報告書 目論見書

非常に柔軟な投資対象選定を行っています。組入銘柄数が一番多く、分散効果が最も高い投資信託です。

一方で、人材に難があるかもしれません。

コロナ禍以降パフォーマンスが悪くなりファンドマネージャーの交代が行われています。(藤野氏が22年4月に退任も23年1月に復帰。約9ヶ月間で交代となる)

結果的に投資方針がブレてしまい、掴みどころがない投資信託という印象もあります。

アクティブファンドは投資哲学を見よ!

いかがでしょうか?

投資哲学の違いが選定銘柄や調査方法に差が出てきていることが分かりますね。

最後にそれぞれの手数料を比較します。(2023年2月15日 現在)

購入手数料 信託報酬 信託財産留保額
スパークス※1 なし 1.804 0.3
鎌倉 ※2 なし 1.10% なし
ひふみ※1 なし 1.078 なし

※1 SBI証券でオンライン購入した場合 ※2 直販のみ

それぞれの投信を一言で表すのであれば、

頑固一徹の厳選投資・超然の結い2101・変幻自在のひふみ でしょうか。

最後にインデックスではなく、アクティブを選ぶ理由を考えます。

それは投資哲学に共感し、下落時も買増し・保有し続けられる動機が生まれるから

だと思います。

インデックス投資では下落時に保有する動機はドルコスト平均法などがありますが、それ以上に投資哲学という信念を持って相場の波に立ち向かう方々が、アクティブ投信を購入するのだと思います。

 

私でしたらこのスパークスの厳選投資を購入したいと思います。手数料が最も高いものの、投資哲学や調査方法が最も信頼できると感じます。

今回は紹介しきれませんでしたが、NVICのおおぶねやコモンズ投信のコモンズ30など有名なアクティブファンドがあります。

今後紹介しようと思いますので、メールマガジンの登録をお忘れなくお願いします!

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執筆者

執筆者:佐々木 悠

佐々木 悠(ささき はるか)

つばめ投資顧問 アナリスト 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。
協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。
銀行勤務時は投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。
2022年につばめ投資顧問へ入社。

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