まず買い、そこから考える

新たな銘柄を選ぶとき、慎重を期せば期すほど、どこまで調べたら良いかわからなくなってしまいます。そして、いくら調べたところで将来のことは誰も正確に言い当てることはできません。

そうは言っても、株式投資に取り組む以上どこかで見切りをつけて、投資するかしないかを判断しなければなりません。

しかし、必ずしも1回で全ての資金を投資する必要はありません。ひととおり調べて、その銘柄に対するストーリーに大きな欠陥がなさそうであれば、ひとまず少しだけ投資して、そこから継続的に考えるという方法もあります。

メリットは理解度が深まること

買ってから継続的に考えることで、案外高い効果を得られます。

少しとはいえ実際に買ってリスクを取っているので、その後銘柄に対する情報の感度が全く異なります。新聞を読んでも、今まで気づかなかったような小さなニュースについても、「それが銘柄にどのような影響を与えるか」と考えるようになるでしょう。

時間を追って情報が入ってくることで、その銘柄に対する理解度もますます深まります。決算も読み込んで、自分が描いたストーリーと合致しているかどうか、逐一チェックします。それでストーリーに自信を持ち、株価がなお割安だと考えるなら追加投資を行えば良いのです。その方が、精神的にも安定するでしょう。

また、もし自分の描いたストーリーが間違いだと気づいた場合、大きなリスクを取る前の傷が浅いうちに撤退することができます。これができるとわかっていれば、最初の投資も思い切り良く行うことができるでしょう。

自分を強く持たないといけない

ただし、この方法にはデメリットもあります。

一度買ってしまうと、その銘柄に惚れ込んでしまい、冷静な判断を行えなくなる可能性があります。どんな情報もポジティブに捉えてしまうのです。このような感情は投資ではご法度であり、強い意志を持って自分の判断を否定する必要があります。

少しだけ買った後に、すぐに株価が回復して絶好のチャンスを逃してしまう可能性もあります。そのため、自信があるのなら最初から大きく賭けなければならない場面もあり、難しい判断が求められます。

また、投資のハードルが下がることで、あらゆる銘柄に投資してしまい、結果として平凡な銘柄が集まった分散投資になってしまう可能性があります。そうならないためには、投資する銘柄数や投資の基準を明確に決めて守る必要があるでしょう。

成長銘柄向きの手法

少し買ってから考え、追加投資を続ける方法はどちらかというと成長性に重きを置く銘柄に適していると考えます。成長銘柄は、価値の厳選となる業績がまだ実現していないため、なかなかストーリーに自信を持つのは難しいからです。

ただし、成長銘柄は業績が上向くまでは株価が急上昇することも多くありません。他の投資家にとっても、その企業の成長は半信半疑だからです。したがって、調査と投資決定に時間をかけることができます

業績が上向き始めると株価は大きく上昇しますから、たとえ時間がかかったとしても、ストーリーが間違っていなければ大きな成果を得られるでしょう。

こうして時間をかけて成長する銘柄は、最終的に大きなリターンをもたらす「宝物」になることがあります。ぜひこの方法であなたのお気に入りの銘柄を見つけてみてください。ただし、あくまで「株価が本質的な価値を下回るときに投資する」という原則を忘れないことです。

※本記事は会員向けレポートの一部を抜粋したものです。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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