バリュー株投資は「長期投資」だが、すぐに成果が出ることもある

バリュー株投資は、基本的には「長期投資」です。しかし、単に同じ銘柄を長く保有していればもうかるというものでもありません。場合によっては、買ってから比較的短期で売却を判断することもあります

バリュー株投資が負うのは「時間のリスク」

バリュー株投資における利益の源泉は、企業の本質的な価値と現在の株価の乖離です。価値よりも割安なときに買い、株価が価値にまで上昇してから売ることでリターンをあげられます。

しかし、いくら価値の見通しが正しかったとしても、株価がいつそこに到達するか予測することは困難です。価値があればいつかは必ず株価は追いついてきますが、その時を忍耐強く待たなければならないので、必然的に「長期投資」となります。

株価が上昇するきっかけは様々です。相場全体の上昇の場合もあれば、その銘柄を評価する「材料」が出る場合もあります。これらの大部分は事前に予測できるものではありませんが、どれだけ時間がかかっても最終的には業績が改善することで株価は価値を反映します

業績の向上によって株価が上昇するなら、その見方さえ大きく間違っていなければリスクを抑えられます。そこでバリュー株投資が負っているのは、価値がわからないことに対する「質のリスク」ではなく、いつその価値を達成するかという「時間のリスク」なのです。

短期間で上昇するのは「幸運」

逆に言えば、買ってすぐに価値に到達したとすれば大変な幸運と言えるでしょう。そのような場合、多少目標株価に到達していなかったとしても、私は売却を推奨する可能性があります。

例えば、半年で10%株価が上昇したとしましょう。10%と言うと、バリュー株投資が本来目指す大きなリターンとしては物足りませんが、もし目標株価まであと10%だとしたら売却推奨するでしょう。その理由は、「目標株価まで大きく乖離していないこと」「上昇までの期間が短いこと」です。

半年で10%なら、単純にそれを繰り返したとして複利計算で1年で21%、5年で2.6倍です。もちろんこれ程うまくいくことはなかなかありませんが、目安としては悪くないと考えます。ちなみに、バフェットのリターンも、年率換算で約20%です。

ここで売却せずに持ち続けたとしたら、またいつ下落するか分かりません。株価は短期的には価値とは関係なく動きます。下落後に再び上昇して目標株価に到達するとしても、それまでに時間がかかってしまうなら、その間により割安な銘柄に投資した方が良いと考えます。

あとは、売却に関してはいつも言えることですが、その後の株価の動きは気にしないことです。もしからしたらさらに上昇するかもしれませんが、それは予測できたことではありません。「頭と尻尾はくれてやる」という心持ちで投資に望まなければならないのです。

短期志向に陥らないこと

短期での売却をよしとすると、つい目先の利益を優先した短期投資に陥ってしまう危険性があります。そうなってしまうと、多くの凡庸な投資家と同じになってしまうでしょう。

短期で売却していいのは、あくまで「運良く」すぐに株価が上昇した場合です。それは買う前にわかることではありません。買う時から売ることを考えると、予測できないはずの株価を追ってしまいます。

バリュー株投資家が投資しているのは、株価ではなく企業の本質的な価値です。株価の動きは私たちに恩恵をもたらしてくれますが、それ自体に意味はありません。

短期での売却を重ねるとうっかり短期志向に陥ってしまいがちですが、原則はいつも株価が価値を大幅に下回るときに投資することです。それを間違わないためにも、やはりバリュー株投資は「長期投資」であることを肝に銘じておかなければなりません。

※本記事は会員向けレポートの一部を抜粋したものです。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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