23年4月1日付けでディズニーランドなどを運営するオリエンタルランドの株式が、1株あたり5株の割合で分割されました。
分割前は一株あたり22,000円前後だった株価は4,500円となり、個人投資家でも単元で買いやすい水準となりました。しかし、オリエンタルランドのPERは108倍です。日本の平均PERは15倍前後ですから、異常とも言える割高水準です。そんなオリエンタルランドのビジネスモデル・成長性を分析し、どんな人なら買って良いのかを考えます。
目次
TDRは年々人気が高まっている
オリエンタルランドの業績は2019年まで右肩上がりでした。1996年約1,700億円だった売上は2019年には約5,260億円に成長し、23年で3倍になりました。この間、原価率を下げるなどの取り組みで利益率も向上しています。現在はコロナ禍からの回復途上です。
出典:SPEEDAより作成
オリエンタルランドのセグメントは大きく3種に別れています。
- テーマパーク事業:ディズニーリゾートの運営
- ホテル事業:リゾート周辺ホテルの運営
- その他:イクスピアリ、モノレールの運営
22年3月期のセグメント別売上割合を見るとテーマパーク事業が約80%を占めます。私たちにもお馴染みのディズニーリゾートが主な収益源です。
出典:オリエンタルランド 22年3月期 決算短信より作成
この成長を支える、最大の強みはロイヤル顧客の存在です。年間入園者数の9割は2回以上の来園をしているリピーターです。この顧客はコロナ前は年間3,000万人に到達しました。
出典:SPEEDAより作成
なぜ顧客が増えるのでしょうか?理由は二つあると考えます。
顧客が増える理由①コンテンツのアップデート
オリエンタルランドは周年イベントや新規アトラクションへの投資に積極的です。常に新規アトラクションやイベントを計画し、顧客を飽きさせない、また来たいと思わせる仕組みを作っています。
オープン年 | 主要アトラクション・イベント |
1983年 | 東京ディズニーランド開業、スペースマウンテン |
1987年 | ビックサンダーマウンテン |
1992年 | スプラッシュマウンテン |
2001年 | 東京ディズニーシー開業 |
2006年 | タワー・オブ・テラー |
2012年 | トイストーリーマニア |
2014年 | ワンス・アポン・ア・タイム |
2018年 | ディズニー35周年イベント |
2019年 | ソアリン |
2023年 | ディズニー40周年イベント |
2024年 | ディズニーシー 新エリア解放予定 |
2027年 | スペースマウンテン リニューアルオープン予定 |
出典:CASTELより作成
顧客が増える理由②競合がほとんどいない
あなたはディズニーの代わりになる施設を挙げられますか?
テーマパークは全国各地に存在していますが、ディズニーリゾートを超える完成度の施設はほとんどないと思います。
対抗馬となり得るのはUSJですが、コロナ前の2019年の入場者数は1,450万人です。同年のディズニーの入場者数は3,255万人ですから、倍以上の差があります。テーマパークといえばディズニーであり、替えが効かない存在になっていると推察します。
株価は何故ここまで上がるのか?今後の成長を考える
オリエンタルランドの株価は綺麗な右肩上がりです。96年から業績は3倍になっているのに対し、株価は10倍です。業績の推移以上に株価が評価されていると感じます。
出典:株探
この、株価に対する期待(23年4月5日現在のPERは約110倍)の根拠は何でしょうか?それは常に新しいコンテンツを作り続け、投資家に売上が伸びる期待を持たせることだと考えます。
目先、23年4月から24年3月まで40周年イベントが開催されます。5年前の35周年イベントで過去最高益を更新していることからも期待が高まります。
さらに2024年にディズニーシーで新規エリアのファンタジースプリングが開業し、27年にはスペースマウンテン周辺エリアがニューオープンする予定です。
外部要因ではコロナの収束に伴い、国内来園者が戻る可能性やインバウンドの回復も見込まれます。
さらにコロナによって得られたものもあります。それは客単価の向上です。2003年代の一人当たり売上高は9200円前後だったのに対し、最新の2023年3月期の予想では15,759円と70%近く単価が向上しています。
出典:SPEEDAより作成
自治体からの要請で入場制限を強いられた代わりに、チケットの値上げやファストパスの有料化など、高付加価値戦略に舵を切りました。消費者視点で値上げは残念ですが、
「値上げをしたからディズニーに行かない」という顧客は少ないのではないのか、と推察します。
過去の来園者推移から年間3,000万人までは来場者が戻る可能性があります。2024年には2,600万人まで戻る見込みですが、客単価が向上している事をふまえると、今後数年以内に過去最高の営業利益1,300億円を更新する可能性も十分に考えられます。
あなたは買って良い人?ダメな人?優待狙いは?
以上のようにポジティブ要因が続くオリエンタルランドですが、リスクもあります。
人口減少が続く日本でしかビジネスを行っていないことや、パンデミックや気象変動など外部要因に弱い側面も露呈しています。さらに新エリア・アトラクションへの投資は継続的に必要であるため、設備投資でキャッシュを圧迫する可能性もあります。
そして注意していただきたいのが、株主優待です。株式分割で1株の値段は下がりましたが、実は株主優待の基準は500株保有に変更されています。つまり、優待を受けるための必要資金は変わっていないのです。100株買ったとしてもディズニーチケットは配られませんから、注意しましょう。
これらリスクと成長要因を受け入れて、今から買って良い人はどんな人でしょうか?
一言で表せば「買ったら離さない人」だと思います。
すでに割安・割高で判断できる企業ではありませんから、キャピタルゲインで儲けようとは考えず、家や車と同じように一つの資産として持ちつづける気持ちがある方は買っても良いでしょう。言い換えればディズニーが好きか否か、かつディズニーの今後の成長を信じているか、この気持ち次第で売買を判断すべきだと考えます。
オリエンタルランドのような成長株は、安い時に買おうと考えてもなかなか機会はありません(コロナショックなどの機会がないわけではありません)。長い目線で単元未満株なども活用しながら少しづつ買い進め、優待をもらうことを一つの目標としても面白いかもしれません。
長期的に500株保有を目指し株主優待を子供にプレゼントすることを目標にしても良いでしょう。他には今後もロイヤル顧客は存在する可能性が高いことから、長い目線で見れば株価は上がると信じて、買ったらほとんど株価は見ないという方も向いていると考えます。
いずれにせよ今からオリエンタルランドに投資する場合は、大切な宝物のように考えて、損得は気にせず、持っていることが価値と考えて投資してはいかがでしょうか。
いかがでしたでしょうか?今後も企業分析や投資に関する情報を発信して行きますのでメールマガジンの登録をお忘れなくお願いします!
執筆者
佐々木 悠(ささき はるか)
つばめ投資顧問 アナリスト 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。
協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。
銀行勤務時は投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。
2022年につばめ投資顧問へ入社。
プレゼント①『株式市場の敗者になる前に読む本』
プレゼント②『企業分析による長期投資マスター講座』第一章
プレゼント③『YouTubeプレゼン資料』
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オリエンタルランドの株主優待ですが、2023年9月を基準に3年保有すれば100株でもチケット1枚もらえますよ。
コメントありがとうございます。長期保有株主向けの制度ですね。
正しい情報をご紹介いただきありがとうございます
https://www.olc.co.jp/ja/ir/benefit/benefit_long_202309.html