中途採用市場7年で2倍!転職関連注目7銘柄

2023年4月20日、日経新聞の一面に気になる記事が投稿されました。

中途採用比率過去最高に、日本型雇用変わる?

記事の内容は

  • 採用の37.6%は中途人材
  • この比率は2016年から7年で2倍になった
  • 即戦力人材の需要が高まっている

このように転職市場が活性化し、人材の流動性が高くなっています。

ではこの潮流の中で、利益を上げている企業はあるのでしょうか?

中途採用が増える中で気になるのは、転職支援・人材派遣企業の業績の動向です。

今回は人材関連の企業を7社紹介します。株価・利益を見て気になる企業を見つけてみましょう!

なぜ転職市場が活性化しているのか?

まずは、市場全体の理解をしましょう。なぜ転職する人が増えているのでしょうか?

マクロ・企業・転職者3つの視点で考えてみます。

マクロ視点:労働力人口減少

dudaの転職市場予測2023上半期によると、IT通信・法務・電気機械など14の業界・職種すべての分野で求人が増えることが予想されています。求人が増えることは転職市場の活性化を促すでしょう。

なぜ求人が増えるのでしょうか?

まずは日本の生産年齢人口(労働の中核となる15~64歳の人口)は1990年と比較し、10%減少しています。(参考:労働力人口・就業者数の推移

人口が減っている中でも、一方で企業は成長のために人財は必要不可欠な存在ですから、少ないパイの取り合いが起こる構造になっているのです。

企業視点:DXの即戦力が欲しい

企業側が転職者に求めるものはなんでしょうか?

年齢によって求められる能力は違うと思います。若手であれば、仕事へのモチベーションなどが重視され、中堅になれば経験やスキルが重要視されるでしょう。

しかし、企業側が最も求めているものは即戦力人材です。特にITスキルを持っている即戦力人材の需要が高まっています。

今やどこの企業もDXを活用した効率的な経営を目指しています。しかし、多くの企業はそれを実行できるIT人材を有しているわけではありません。そこでDXに強い、即戦力人材を中途採用に求めているのです。

出典:アクサス株式会社 プレスリリース

このように、自社で足りない部分を転職者など外部の人間に頼ることで、転職市場が活性化していくのです。

転職者視点:給料アップ

では、転職者が求めるものはなんでしょうか。それは給料アップです。

私の個人的な話ですが、私が転職を意識したのは、前職で将来想定される給与水準が納得できるものではない、と気づいた時でした。ものすごく少ないわけではないけれども、なんか物足りない…そんなモヤモヤを抱えていました。

実際に、転職が盛んなIT業界の転職者も給与・待遇を重要視しています。

出典:CodeZine

ITエンジニアの転職先の決定要因は収入・待遇が51.2%でトップになっています。終身雇用と年功序列の文化が終わりつつある今、転職によって給与アップを狙う労働者が増えているのです。

転職・中途採用は成長業界!

転職市場が活性化している理由をまとめます。

マクロ視点:労働人口の減少が起こっている

企業視点:業種業界を問わずDX促進が重要であるが、自社に人材育成できるノウハウがないため、即戦力を求め、中途採用を増やしている

転職者視点:終身雇用と年功序列の文化が終わりつつある今、転職によって給与アップを狙う労働者が増えている

ここで、投資家の視点に移ります。

これだけ転職者が増える潮流が揃っているのですから、転職支援・人材派遣に注目しない理由はありません。転職が増えるに連れて利益を伸ばせる企業があるのではないでしょうか?

転職支援・人材派遣会社にはどんなものがあるのか?

転職関連企業の4つのビジネスモデル

一言で転職業界といっても、企業によって利益を出す仕組みが違います。今回は代表的なビジネスモデルである

①エージェント型、②広告型、③人材派遣型、④その他 に分類して考えます。

まずは大まかなビジネスモデルの特徴を説明します。

  1. エージェント型:企業と転職者の間に転職エージェントを設置する。転職が決まった場合は、企業側から採用者の年収の数十%の成功報酬を徴収するビジネスモデル
  2. 広告型:転職サイトに求人広告を出すことで利益を得る。企業側から報酬をもらうビジネスモデル。エージェント型に比べて単価が安い
  3. 人材派遣型:企業に人材を派遣するビジネスモデル。派遣先から徴収する派遣費用と、派遣者に払う給料の差額が収益源となる
  4. その他:上記3つに分類されないもの

それでは、実際に企業を紹介していきます!企業名の下に上記ビジネスモデルのどれに該当するのか、番号を振ってあります。

リクルート(6098)

ビジネスモデル ①エージェント型 ②広告型 ③人材派遣型

出典:リクルート

1960年創業。時価総額6兆4,000億円の世界的人材サービス大手。

SUUMO、ゼクシィ、リクナビなど個人と企業クライアントをマッチングするプラットフォームを運営。

2018年米国の求人情報サイトindeedを買収し、2022年に大幅に米国において利益拡大した。しかし、目先人材コスト増を背景に求人需要が一服し、増収減益の見通し。23年4月21日現在のPER22.6倍

出典:有価証券報告書・株探より作成

エン・ジャパン(4849)

ビジネスモデル ①エージェント型 ②広告型 ③人材派遣型

出典:enジャパン

2000年創業。時価総額1,000億円。求人サイト「エンジャパン」・若手ハイクラス向け求人サイト「AMBI」・派遣会社の集合サイト「エン派遣」を運営。収入は求人サイト内の広告掲載料と、人材紹介による成功報酬がメインである。

2023年3月決算は求人情報プラットフォームの広告宣伝費などの先行投資が収益を圧迫し営業利益▲50%となる見通し。23年4月21日現在のPER31.2倍

出典:有価証券報告書・株探より作成

パーソル(2181)

ビジネスモデル ①エージェント型 ②広告型 ③人材派遣型

出典:doda

1973年創業。時価総額6,000億円。人材派遣の「テンプスタッフ」、転職の「doda」をなどを運営。人材派遣業では派遣先企業からの派遣料金を徴収し派遣社員に給与を支払う。転職サイトでは広告掲載料が主な収入源。売上の30%がオーストラリアなど海外での売上。23年4月21日現在のPERは30倍。

出典:有価証券報告書・株探より作成

JAC(2124)

ビジネスモデル ①エージェント型

出典:JAC Recruitment

1988年創業。時価総額1,000億円。管理職・外資系企業・海外進出企業などハイクラス転職に特化したジェイ・エイ・シー リクルートメントを運営。2013年以降はコロナの影響があった2020年を除けば、毎年増収増益と成長している企業。クライアント企業からの成功報酬が主な収入源であり、転職エージェントの質と人数が業績の鍵を握る。エージェント採用人数増加傾向。23年4月21日現在のPER19.2倍。

出典:有価証券報告書・株探より作成

アトラエ(6194)

ビジネスモデル ②広告型

出典:Green

2003年創業。時価総額200億円。IT/web業界に強い転職サイト「Green」を運営。成功報酬型の広告が主な収入源。求職者と企業の間にエージェントを介していないため、安価な成功報酬を実現。23年9月期は広告宣伝費などが収益を圧迫するが、求職者の選考データの解析などを武器に増益予想。2020年にPER200倍の水準まで株価が釣り上る。23年4月21日現在のPERは31.9倍。

出典:有価証券報告書・株探より作成

学情(2301)

ビジネスモデル ④その他

出典:学情

1977年創業。時価総額200億円。新卒者や第2新卒者など、若手向け就職・転職サービスを提供。中堅・中小・ベンチャー企業が主な顧客。23年10月期決算は過去最高を更新予定。コロナの反動で合同企業説明会のニーズが高まり、自社で運営するイベント「就職博」による売上が増える見通し。23年4月21日現在のPER15.2倍

出典:有価証券報告書・株探より作成

ウォンテッドリー(3991)

ビジネスモデル ④その他

出典:Wantedly

2010年創業。時価総額100億円。個人と企業の仕事、副業のマッチングサービス「Wantedly」を運営。個人・法人の両方向に向けて有料サービスを展開している。主力のWantedlyの利用者が急速に伸びたことで22年8月期の営業利益は202%増加した。23年4月21日現在のPERは20倍。

出典:有価証券報告書・株探より作成

成長が見込まれる人材サービス企業に今後も注目

いかがでしたでしょうか?人材関連の企業を比べると、どこから収益を得ているか・株価の推移など違いが明確になりますね。

時価総額で比べるとリクルートが飛び抜けて大きい企業であることがわかります。アメリカにおいても大きな収入源があることが大きな特徴です。

また、時価総額100〜200億円、かつ2000年以降創業のベンチャー企業も多いです。転職エージェントを雇わず利益を伸ばしたアトラエや、合同企業説明を強みとして運営した学情など個性豊かな企業が多い印象です。

今後も転職市場の動向を観察していきたいと思います。さまざまな企業があるため、それぞれのリスクや割高・割安性も比較しながら、気になる企業をもっと深く理解してみましょう!

 

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執筆者

執筆者:佐々木 悠

佐々木 悠(ささき はるか)

つばめ投資顧問 アナリスト 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。
協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。
銀行勤務時は投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。
2022年につばめ投資顧問へ入社。

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