株は不景気の時に買うほうがいい

世界の景気は、この10年間で最高と言える水準に達しています。失業率は低下し、日本やアメリカ、ドイツなどの先進国では完全雇用に近い状況です。

この好調な景気には、複数の要因があると考えています。

①リーマン・ショックの反動

1つ目は、リーマン・ショックからの反動です。2008年に発生した金融危機では、世界中の企業が一斉に投資を控えました。企業の活動が鈍ると、雇用や賃金にも影響が出ますから、家計の消費も減退します。

しかし、危機を脱して企業活動が活発になると、雇用や賃金も回復し、消費も活発化します。すると、これまで我慢してきた大型の投資が行われます。具体的には、企業では生産のための設備投資、家計では住宅や自動車などの大型投資です。

これらは本来平準化されることが望ましいのですが、過去の歴史を見ても波が繰り返されています。つまり、落ち込みが大きいほど、その後の反動も大きくなるのです。

リーマン・ショックによる経済活動の停滞は凄まじいものがありましたから、その反動によりアメリカでは8年にも及ぶ景気拡大期が続いています。(日本では東日本大震災による落ち込みがあったため、そこまで長くなってはいません。)

しかし、いつまでも景気の拡大が続くことはありません。アメリカでは、自動車販売台数がピークを超えたことから、すでに需要は減退しつつあると考えています。

②スマートフォンの爆発的な普及

2つ目は、ITの発展による需要拡大です。IoT機器など小難しいことが言われていますが、景気を左右するほどの需要を発生させているのはスマートフォンで間違いありません

2017年は、初代iPhoneが発売されてちょうど10年です。わずか10年の間に、スマートフォンの普及率は世界の多くの国で6割を超え、昨年の世界出荷台数は14億台にも上ります。

買い換え周期も2~3年と短く、生産のための関連部品向上はフル稼働が続いています。ここ数年は新興国への普及も進み、そこへ売り込むべく中国企業を中心に設備投資に拍車がかかっています。この状況が、半導体製造装置メーカー等の「バブル」を生んでいるのです。

③世界的な金融緩和

3つ目は、世界的な金融緩和です。日米欧では、政策金利を下げると同時に、資産買い入れによる量的緩和を実施してきました。この影響により、世界にはお金が溢れています。

金融緩和はリーマン・ショックからの回復には大きな役割を果たしました。これがなければ、景気悪化はより深刻なものになっていたかもしれません。

しかし、金融緩和には副作用があります。それは資産価格の高騰です。必要な設備投資にお金が回っているうちは問題ありませんが、投資先がなくなってお金が余ると、それは株や不動産などの金融資産に回ります。

その結果、ダウ平均が上昇を続けるような相場を作り出しているのです。しかし、実体のない株価上昇はやがて修正される時がやってきます。特に景気悪化の兆候が見られたときに、そうなる可能性が高いと考えます。

金融緩和が今後も続くとなれば、資産価格の上昇を助長し、その反動はより大きくなります。それを防ぐために、中央銀行は早めの出口戦略を考えなければならないのです。

株は不景気の時に買うほうがいい

皆さんに覚えていただきたいのは、今は景気がとても良いということです。

マスコミは不景気だとばかり言いたがりますが、決してそんなことはありません。そして、景気は必ず循環するため、遅かれ早かれ再び不景気はやってきます

もちろん、不景気の後は再び好景気が訪れ、長期的には世界経済は成長するでしょう。だからこそ、好況時に株を買うよりも不況時に買った方がリターンが高くなることはおわかりいただけると思います。

今は好景気の時です。株価が上昇しているからと言って、無理な投資をしないことが肝心です。このようなときほど慎重すぎるくらいのほうが、数年後には良い結果をもたらすでしょう。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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2 件のコメント

  • 今、私は株式投資は保有株は有りません、好景気(好調?!)な時はなるべく買いません、割安株(割安感)のある銘柄は無い訳ではないのですが市場の殆ど銘柄が割高になっています。つまり割安株を探すことが事が困難になっています。投資家の多くは”安心感で買えば上がる、上がるから買いの好循環で下げる事は確立としてはほぼ無いだろう!”と思っている!と錯覚している、何かのきっかけに下げに転じると今迄に上昇した分下げがかなりキツイと思います。
     過去の長期のチャートが教えています。

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