GWの空港は大混雑!JALとANAの株価はコロナ前に戻るのか?

GWはどう過ごされましたか?世間では空港や駅が旅行客で溢れている様子がニュースになっていましたね。

「そろそろ航空株いけるんじゃないか?」

と想像をしたのではないでしょうか?

そこで今回は航空株を詳し、

  • 航空株に投資して良いのか?
  • 株価はコロナ前に戻るのか?
  • JAL、ANA買うならどちらか?

といった疑問に答えていきます。

それでは早速見ていきましょう!

国内旅行の需要が戻っている

あなたも感じられているように、旅行需要が回復しています。

具体的にどれくらい回復しているのでしょうか?

コロナの影響がなく、GWの日程が同じである18年と23年のGWを比較してみます。ANAとJALの予約座席数を路線別で見てみましょう。

出典:JALANAプレスリリース、トラベルWatchより作成

両社ともに国内線の予約数が回復しています。特にJALはコロナ前を上回る座席を提供し、予約率も同水準です。もはや、コロナ禍は過去のものとなりつつあるようです。

では「GWでは人が戻ったし、航空株には追い風が吹いている!投資すべき!」と

考えて良いでしょうか?

いえいえ、実際はコロナ禍で航空会社の情勢は大きく変わりました

特に財務状況と株価について、大きな変化があります。

コロナ前後で変わった3つのポイント

国際線

国内線は回復したものの、国際線の提供座席数と予約率は未だ回復していません。

その理由は何でしょうか?

大きな影響を与えているのが為替です。

コロナ前は2018年は1ドル110円前後でしたが、23年5月現在は135円前後です。加えて欧米諸国のインフレも影響しています。とあるツイートによるとアメリカでランチをしたら12,000円したそうです…

円安かつ物価高で海外旅行へ行く動機は抑えられてしまうと感じます。コロナ禍が収束しても、日本人が海外に行くハードルは上がってしまっているように感じられます。

しかし国際線の利用者は日本人だけではありません

実は国際線利用者はJALで70%が外国人、ANAは50%です。

下のグラフから訪日外国人と出国日本人の比率を見ると、コロナ前の2019年は訪日外国人の方が多いことがわかります。同様に国際線の回復も、外国人(インバウンド)の動向が重要になるのです。

出典:国土交通省

支払利息

コロナ禍で航空会社は利益を大きく減らしました

ANAの2018年3月期の営業利益は1,650億円でしたが、2020年3月期は▲4,647億円まで減少し、JALも1,745億円の営業利益が▲3,904億円まで減少しました。

この収入減に伴う現預金の減少を補填するために、両社は金融機関からの借入で資金調達を行いました。

その結果、2018年3月期と比べて支払利息がANAは69億円→253億円3.6倍、JALは8億円→91億円11倍にまで膨れ上がりました。

結果、両社の経常利益は、支払利息によってコロナ前と比較して約20%減少することになってしまったのです。

コロナ禍の借入増加は、当面利益を圧迫し続けるでしょう。

公募増資(希薄化)

両社とも資金難が問題になる中、借入に加え株式市場から資金調達を行いました。

それが公募増資です。

公募増資によって発行株数が増えることで1株あたり利益(EPS)が下落します。すなわち、1株あたりの価値が減少し、同じPERで考えると株価は低くなってしまいます。これを「株式価値の希薄化」と呼びます。

今から航空株に投資するのはアリ?ナシ?

コロナ禍からの回復と、ダメージの様子を分析してみました。では以上を踏まえて、航空株投資に関する3つの疑問の答えを考えてみます。

業績はコロナ前に戻るのか?

両社の24年3月期の業績予想を確認してみましょう。

売上はほぼ回復する見込みですが、当期純利益は未だ回復しない見込みです。2018年3月期の水準に戻るためには、当期純利益は2倍近くまで伸ばす必要があります。

出典:各社決算短信より作成

なぜ売上が回復しても、利益が伸びないのでしょうか?

最大の理由は支払利息の負担であると考えます。客足が戻り、売上や営業利益が回復したとしても、支払利息が重く、利益を圧迫しているのです。

アナリスト予想を参考にすると、2025年3月期のANAの営業利益予想は1,640億円です。これは過去最高益を達成した、2019年3月期の1,650億円とほぼ同じです。

しかし、当期純利益の25年3月期予想は981億円と、19年3月期の1,110億円には届きません。なお、JALの25年3月期予想は営業利益、当期純利益、共にコロナ前を下回る予想です。

つまり、コロナ禍の借入の増加により、数年に渡り当期純利益を圧迫する財務内容に変わってしまったのです。

株価はコロナ前に戻るのか?

「いやいや、株価はコロナ前水準に戻っていないからチャンスはあるだろう!」と考える方もいらっしゃると思います。

しかし、ANAであれば2019年末水準である4,500円、JALであれば4,000円に戻る可能性は低いと考えます。

理由は利益が出づらいことに加え、発行済株式総数が大きく変化しているためです。

ANAの発行済株式総数は2019年3月期で3億4,000万株でしたが、22年3月期では4億8,000株です。JALは3億5,000万株でしたが、22年3月期では4億3,000株まで増加しました。

本来は公募増資によって調達した資金を設備投資などに使うことで、新たにキャッシュを生み出せば良いのです。しかし両社はあくまで資金不足に対応するための資金調達です。

従って公募増資によって株が増えたにも関わらず、資金を設備投資などに新たなキャッシュ創出のために使用できるわけではないのです。

その結果、ANAの2019年3月期のEPSは235.5円でしたが、25年3月期アナリスト予想純利益に対するEPSを計算すると202.6円です。JALは345.1円が215.5円となる見込みです。

すなわち需要が回復したとしてもEPSは以前より低く、結果として株価は上がりづらいと考えています。

買うならどちらか?

それでも航空株に投資をしたい、という場合はどちらが良いでしょうか?

私なら国際線の外国人利用率が高いJALに興味があります。

今後は国際線の回復がポイントだと考えています。インフレと円安の影響から、日本人が海外旅行をするよりも、インバウンド需要による国際線の活性化が見込まれます。これが実現した場合、JALの方が早く業績に影響が出ると予想します。

一方で、ANAは世界各国の空港とネットワークを持っており、国際線が弱いわけではありません。

両社とも、コロナで受けたダメージを上回る収益回復ができるのか、今後も注目していきたいと思います。

Print Friendly, PDF & Email

執筆者

執筆者:佐々木 悠

佐々木 悠(ささき はるか)

つばめ投資顧問 アナリスト 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。
協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。
銀行勤務時は投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。
2022年につばめ投資顧問へ入社。

詳細はこちら
サイト訪問者限定プレゼント
あなたの資産形成を加速させる3種の神器を無料プレゼント

プレゼント①『株式市場の敗者になる前に読む本』
プレゼント②『企業分析による長期投資マスター講座』第一章
プレゼント③『YouTubeプレゼン資料』

メールアドレスを送信して、特典をお受取りください。
メールアドレス *
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。

※個人情報の取り扱いは本>プライバシーポリシー(個人情報保護方針)に基づいて行われます。
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。

気に入ったらシェアしてもらえると嬉しいです!

コメントを残す

Popular Article - よく読まれている記事Popular Article

  • 銀行株は今後どうなる?そろそろ売り時?
    今回は銀行株についてです。 銀行株が上がりましたが、もう売るべきなのか、まだ持ち続けるべきなのか、悩んでいる方はぜひお読みください。 売るか...
  • 【LIXIL】配当利回り4.75%の裏にあるヤバい現実
    LIXILは住宅設備の最大手である LIXILの中核事業会社、株式会社LIXILは、2011年に国内の主要な建材・設備機器メーカーのトステム...
  • REITの利回り4.65%!今買うべき?
    今、株式市場で流行っているものといえば半導体株です。 半導体株が上昇し、それにつられて日経平均株価も上昇しています。 しかし、今、半導体に投...
  • 【さくらインターネット/住石ホールディングス/三井E&S】売るべきか買うべきか
    今回は「仕手株の流儀」についてお話します。 最初に断っておきますが、つばめ投資顧問では仕手株を推奨していま...
  • 日の丸半導体ルネサス 時価総額6倍は達成可能か?AI半導体ブームに隠れたリスク
    ルネサスは、日本を代表する半導体製造メーカーであり近年業績を拡大させています。 一方で、2010年代の初頭は赤字が続く厳しい時期もありました...

Article List - 記事一覧Article List

カテゴリから記事を探す