日本製鉄、今は買い?売り? シクリカル銘柄の取扱い

日本製鉄はここのところ非常に調子が良く、配当利回りも6%超ということで人気がありました。

しかし、直近の決算で、47%の減益40円の減配を発表しました。

日本製鉄の株を持っている方も多いかと思われますが、果たしてこのまま持っていてもよいのでしょうか。

業績は「鉄鋼価格」次第

日本製鉄の株価はこの1年好調に推移してきました。

株価も上がっていて配当利回りも高い、良い銘柄に見えますが、これを額面通りに受け取ってはいけないと思います。

日本製鉄の株価が上がってきた背景には業績が好調だったことがあります。

「製鉄」というと、さえない業界というイメージもありますが、このように業績が伸びていると、いよいよ成長しているのかとも思えます。

実際、日本製鉄はここ最近かなり改革を行ってきました。

国内の製鉄所を休止するなどコスト削減に努めてきました。

コスト削減が必要だった理由は業績が苦しかったからです。

赤字を出した年も度々ありました。

中国が鉄鋼の生産量をものすごく増やしたために、世界の鉄鋼価格が値崩れしてしまい、いくら売っても利益が出ない状況がありました。

この状況を改善するために、製鉄所の休止や、価値あるものはきちんと高く売ろうという動きをしてきました。

その成果が出て、直近の右肩上がりの業績となっています。

ただし、自助努力の成果も確かにあるのですが、それだけではありません。

鉄鋼で利益を出すために重要なのは鉄鋼の価格です。

簡単に言うと、鉄鋼の価格が上がるほど利益を出しやすくなります。

鋼材価格の推移を見ると、2007年から2009年にかけて大きく上がり、その後は低迷していました。

しかし、直近で大きく上がっています。

上昇した要因としては、原材料高があります。

様々なものの価格が上がっていて、鉄鋼においても価格に転嫁しやすい状況でした。

さらに、中国も生産しすぎて儲からなくなり、減産の方向に動きました。

その結果、鉄鋼の価格が上昇して利益が出たということになります。

鉄鋼価格と日本製鉄の業績は重なるように推移していて、つまり、日本製鉄の業績は鉄鋼価格に依存しているということになります。

資源価格などの外部要因によって業績が大きく動かされてしまう『シクリカル銘柄』ということです。

日本製鉄が今好調なのは、コスト削減や海外進出などの自助努力が功を奏している部分もありますが、大部分は鉄鋼価格が上がっているからということになります。

直近で減益になっているのは、鋼材市況もピークを迎えて右肩下がりになりつつあるからだと考えられます。

鋼材価格が今後も上昇し続ける可能性も無いわけではありませんが、経済の一般原則的に、価格が上がって利益が出るようになれば、供給が増えて価格が下がる、ということが繰り返されるはずです。

これが『シクリカル(サイクル)銘柄』の名の所以となっています。

シクリカル銘柄への投資を考える

では、シクリカル銘柄の「買い時」「売り時」について考えてみたいと思います。

もちろん、会社としての優劣や長期的な成長もありますが、長期的には業績や株価は上下するものです。

一方で、日本製鉄のような会社は”そうそう無くならないだろう”という面もあります。

ぜひ覚えていていただきたいことは、業績が悪い時に買うということです。

日本製鉄は度々赤字を計上していることは先ほど示しましたが、その時は当然株価も下がります。

日本製鉄が赤字ということは、世の中の製鉄会社もみんな赤字ということになります。

そういう時には生産調整を行うことになります。

供給量が減って、やがて需要が供給を上回って価格が上がっていけば利益が出て、株価も上がるということになります。

従って、業績が悪い時(PERが高い時)に投資することによって、やがて世の中が循環してまた利益が出るようになります。

逆に、業績が好調の時は供給量も増えて値崩れが起こり業績も下がりやすくなるので「売り時」ということになります。

日本製鉄は「売り時」か

私の見方としては、日本製鉄はすでに下落の兆候が見えているので、売りに転じてよいのではないかと思います。

その企業が継続的な企業であるならば、市況が悪い時に買って良い時に売るということが大原則となります。

株価が上がらなくても配当があればいいという考え方もあると思いますが、日本製鉄は今回の減配で明らかになったように、利益が減れば配当も減る会社です。

しかも装置産業なので、工場に投資するお金を手元に残しておく必要があり、配当を多く出し続けられる会社でもありません

今は表面上は4.9%という高めの利回りとなっていますが、これをあてにするべきではありません。

業績がさらに悪化したり、今季はともかく来季以降はさらに少なくなっていく可能性があります。

業績が下がれば、株価も下がりやすく、配当も減りやすい、ということとなり、これから持っているメリットは見出せないように思います。


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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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