日経平均がバブル後最高値…なのに持ち株が上がらないあなたへ

日経平均株価がバブル後最高値を更新しています。
にもかかわらず、自分の持っている株だけ上がっていないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

その株が上がっていない理由を説明しますので、これから取るべき方向性を見出していただければと思います。

全部が上がっているわけではない?日経平均のカラクリ

日経平均株価は過去1年で15%以上も上がっています。(6/5時点)

特にこの1ヶ月で特に上がっていて、バブル後最高値を更新するほどとなっています。

しかし、日経平均はバブル後高値を更新しているのに自分のポートフォリオは上がっていないという方、非常に多いのではないかと思います。
それはなぜなのか、数字を調べてみました。

これは、過去1ヶ月の株価の推移を上昇と下落に分けて記したものです。
全銘柄で見ると(左上)、日経平均が10%以上上がっている中で、上昇した銘柄は45.7%、下落した銘柄が54.3%と、下落した銘柄の方が多いという状況なのです。
銘柄の数で言えば下落した銘柄の方が多いということは、単純に考えるとあなたのポートフォリオも下がっている方が多いということになります。

なぜこういうことが起こるのかというと、私の調べでは時価総額によるものが大きいということです。
時価総額1000億円未満の銘柄を見ると(右上)、上昇が41.9%、下落が58.1%となり、全銘柄と比べると上昇の割合がさらに小さくなっています。
つまり、時価総額が小さい銘柄ほど下落している割合が多くなっているということです。

逆に、時価総額1000億円以上の銘柄(左下)では上昇が61.6%、下落が38.4%と逆転し、時価総額1兆円以上(右下)だと上昇が76.6%下落が23.4%とさらにはっきりしてきます。

簡単に言うと、今、日本株で上昇しているのは大型株だけというわけです。

なぜこういうことが起きるのでしょうか。

外国人投資家の動き

ここからは仮説も含まれてきますが、こういった状況になる背景には外国人投資家の影響が大きいです。
日本株といっても、取引主体の売買代金で考えると7割は外国人投資家です。
すなわち、外国人投資家が日本株のアップダウンを大きく左右しているということになります。

投資主体別売買動向を見ると、外国人投資家は4月以降ずっと買い越し続けていて、だからこそ日本の株価が上がっているのですが、彼らが何を買っているのかというと、それが大型株なのです。
海外投資家は規模が大きく、中・小型株は流動性の問題や情報の取得の難しさもあり、中・小型株はあまり買わず、大型株を買うことになります。

ではなぜ日本の大型株を買っているのかというと、一つには日本の株が割安で、その割安が解消される期待が高まっているという仮説があります。
しかし、それを鵜呑みにしてはいけないと私は考えています。
なぜなら、日本の上昇している銘柄を見ると、必ずしも割安株に資金が集まっているわけではないと感じるからです。
時価総額1兆円以上の銘柄を上昇している順に並べると、PBRが1倍を割っているような割安な銘柄は上位にはあまり無かったりします。
PBRが高い低いはあまり関係が無いように見えるわけです。
このことから、割安感の解消期待によるものではないと思われます。

ではなぜ外国人投資家が日本株を買っているかというと、トータルで言い表すことは難しいですが、彼らの性質として、お金が集まっているところにこぞって集まるという特性があります。
投資手法としてはいわゆる「順張り」ということです。
今日本株が上がっているからとりあえず日本株を買っておこうと考えている投資家が多いのではないかと思います。
また、諸外国に比べて日本は経済の落ち込みがそこまで見られていないことと、日銀が金融緩和を続けると言っていることで、買いやすい雰囲気ができているということもあります。
そして外国人投資家が日本株を買おうとした時に何を買うかというと、日本株について中・小型株の情報までは手に入れにくいので、とりあえず大型株を買うという”大型株インデックス”的な買い方になっているのだと思います。
その証拠に、全ての東証銘柄の加重平均であるトピックスは日経平均に比べて上がっていません

大型で買いやすいところに集まっていて、外国人投資家の「雰囲気買い」という部分が大きいと考えられます。

ただ、株価にはジョージ・ソロスの言う『再帰性』というものがあり、株価が上がっているところにはさらに資金が集まってくるという特殊な性質があります。
普段は日本の中・小型株を買っている人でも、今は大型株を買っていないとパフォーマンスが上がらないということで大型株を買うようになり、どんどん大型株にお金が集まり、結果として一部の大型株だけが上がって日経平均が最高値を記録するという状況になっているのです。

下落の原因は個々にあり。冷静に注視すべし!

冒頭に戻りますと、あなたの株が上がっていないのは、業績などファンダメンタルズが悪いわけではない可能性も十分にあるわけです。(もちろん本当に悪い場合もありますが)
特に中・小型株で上がっていないものに関しては、業績や今後の先行きに不安が無いのであれば、余計な心配をする必要はないと考えています。

今後も日本の大型株だけが上がっていくかというとそういうことでもなく、株価が上がると利益確定の売りが入り、資金は次のところへと移動して行きます。
それを追いかけるという投資手法もありますが、腰を据えた長期の投資家ならそれほど気にすることではないと思います。

今株価が大きく上がっている銘柄の上位に並ぶのは半導体関連銘柄で、生成AIブームの影響があり、これは雰囲気買いではなく実需によるものですが、半導体関連以外で上位のT&Dやエーザイを見ると、その前に下がった分が戻っただけに過ぎないという状況です。
最終的には個別で動向を見ることが投資家にとって大事なことだと思います。

では、大型株で下がっている銘柄はどういうものがあるのかというと、一番下落しているものは楽天です。
公募増資もあり、携帯電話事業が赤字と、明らかにファンダメンタルズが悪い銘柄は下がっています
日本郵政も業績が右肩下がりなので株価も下がっていますが、日本ペイントなどはその前に上がった分の調整で下がっているに過ぎないと思われます。
下落の原因を個別でよく観察することで、少なくとも心を落ち着かせることはできるのではないでしょうか。
その上で最後は自分の納得できる売買方針を取っていただけたらと思います。

今後どうなるか、という予想は難しいですが、相場全体としては過熱感があるように私は感じています。
今は大型株に資金が集まっていますが、これはやがて去っていくことも考えられますし、景気後退が間近に迫っていると言われている中、目先では楽観しすぎない方がいいかと思います。

短期的た視点で見ると、今半導体が盛り上がっていて、ファンダメンタルズの方が盛り上がるのではないかという動きがあるので、そういった銘柄に注目してみるもの面白いと思いますが、一方で中・長期的には今下がっている中・小型株の中にお宝が眠っている可能性もあるので、そういった観点でも銘柄探しをしていきたいです。


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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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