日本銀行の植田総裁が、ついにマイナス金利政策の解除を示唆しています。
この発言を受けて、銀行株価が上昇しています。
マイナス金利が解消されれば、銀行の業績にどのくらいのインパクトがあるのでしょうか。
また、投資家としてどのように行動するべきか考えてみたいと思います。
植田総裁の発言で銀行株が上昇
日銀の植田総裁が、マイナス金利政策の解除後も物価目標を達成できると判断すれば年末までにマイナス金利政策を解除する可能性があると9月6日に読売新聞の単独インタビューで述べました。
この発言から判断すると、2024年の初め頃にはマイナス金利が解除される可能性があると言えます。
植田総裁は春に就任しましたが、黒田総裁の時代から続いていたマイナス金利等の金融緩和政策はなかなか解除しないという見方が大勢でした。
これにより、アメリカの金利が高く日本の金利が低いために円安が進み、一時1ドル=150円近くにまでなりました。
しかし、今回の植田総裁の発言はこれまでの彼の保守的な発言から一歩踏み込んだものと見られ、それによって銀行株が高騰しています。
三菱UFJフィナンシャルグループは8日から12日までの間に株価が17%上昇、三井住友フィナンシャルグループも17%上昇、みずほフィナンシャルグループも15%、株価が上昇しました。
今年に入ってからこれらの銀行株は大幅に上昇していて、年初から見ると、三菱UFJは38%、三井住友フィナンシャルグループは37%、みずほフィナンシャルグループは36%のプラスとなっていて、日経平均株価を大きく上回って上昇しています。
この上昇の背景には、長期金利の上昇やマイナス金利政策の見直しなどが影響しています。
さらに、バフェット氏が日本株市場に興味を示し、割安な株に投資したことも、銀行株を含む日本株を上昇させる一因となっています。
このような要因が組み合わさり、銀行株は追い風を受けて上昇したと言えます。
マイナス金利解消で銀行の利益はどのくらい増える?
ここで「マイナス金利」とは何か、改めて確認しましょう。
マイナス金利は、預金者ではなく、銀行が日本銀行に預ける際に金利がマイナスになるということです。
個人や一般企業には直接影響はありません。
マイナス金利政策は、日本のデフレを克服するために2016年に導入されました。
銀行が日銀にお金を預けると手数料がかかることになるため、企業への貸し出しを促し、銀行がため込んでいるお金を市場に流すことを意図した政策です。
しかし、金利が低下すると、企業や個人への貸し出し金利も下がり、銀行の収益性が悪化することとなりました。
銀行は預金者に金利を支払わなければないため、預金金利はあまり下がりませんが、貸し出し金利は低下します。
このため、銀行の利ざやが縮小しました。
実際に、マイナス金利導入後の銀行の金利収入は減少し、三菱UFJが510億円、三井住友フィナンシャルグル
ープが1,530億円、みずほフィナンシャルグループが1,220億円の減少となりました。
逆に言うと、マイナス金利が解消された場合、金利がわずかにでも上昇すれば、このくらいの利益が戻ってくることが考えられるわけです。
しかし、マイナス金利解消による利益の改善率としては、三菱UFJが1.1%で、三井住友が9%、みずほが8.5%しかありません。
それに対して今回の植田総裁のインタビュー記事公開からの株価の上昇率は、三菱UFJが17%、三井住友も17%、みずほが15%と、利益の上昇幅に比べて株価が大きく上昇しています。
市場が過剰反応しているのではないかと思える数字です。
マイナス金利が解消されて、その後も金利が上昇し続けるのならばあり得る数字ですが、実際は-0.1%というマイナス金利が解消されて、長期金利が1%くらいになる程度なので、それに対して株価が上がりすぎていると思われます。
今の銀行株の状況に限らず、株価は常に過剰反応するものだと私は考えています。
なぜなら、特に機関投資家は上昇が見込まれる株には次から次に買いを入れるところがあるからです。
ただしそれはいつまでも続くわけではなく、行き過ぎた分はいずれ調整されることになります。
私たちが見るべきものは業績がどうなるかという「実態」の方です。
すなわち、銀行の利益の増加は、三菱UFJが1%程度、三井住友とみずほが10%弱程度に過ぎないというのが私の試算です。
本当にマイナス金利は解除されるのか?
しかし、そもそもマイナス金利の解除や金利の動向は不確かな部分が多く、物価の上昇も円安や原油高の影響によるもので、日銀が目指す需要の増加による物価上昇ではありません。
今回の植田総裁のインタビュー記事が発表されたことも、急速に進む円安への”口先介入”の可能性があります。
物価上昇率2%が達成されたらマイナス金利を解除すると言っていますが、その前に景気が悪化すると逆に物価が下がる可能性もあります。
世界的に景気が悪化するとアメリカも金利を下げざるを得なくなり、そうなると円高に傾くことになるため、物価が下がることも考えられます。
様々な経済状況次第ではありますが、このまま金利が上がり続けるとは考えにくいです。
また、「中立金利」の考え方では金利の上昇は潜在成長率などによって決まりますが、日本の潜在成長率は1%程度とされ、それ以上に金利が上がるとは想定しづらいです。
金利を上げると国の財政を圧迫するので、多くの債務を抱える日本が大きく金利を上げるとも思えません。
仮にマイナス金利が解消したとしても、日本は銀行が多すぎる「オーバーバンキング」の状態なので、競争が激しく、果たして利益が取れるのかという疑問もあります。
長期投資家としての見方と取るべき行動
今、銀行株が上昇していることは確かですが、この上昇がずっと続くような成長株ではないと思います。
過去の業績や資本効率、経営の状況を見ても、大きく成長するような動きではありません。
銀行業で大事なことはいかにリスクをコントロールするかということです。
リスクを避けすぎると利益が出ませんし、リスクを取りすぎると貸し出し先の企業の倒産などが起こり得ます。
金利の動きなどは外部環境の影響が大きく、そうそう読めるものではありません。
それよりも個々の企業を見てその企業が成長するかどうかを見極めることに注力した方が良いというのが私たちの考え方です。
今回の銀行株の上昇のように、非成長株が外部環境などで大きく上昇した時は基本的に売りのタイミングであると判断します。
私たち長期投資家は、10年先まで成長する企業を見極めて、その株を持ち続ければよいという考え方を提案します。
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