2023年10月、株価急落!その要因と今長期投資家が取るべき行動を解説

2023年10月4日、日経平均株価は大幅に下落しました。
日本のみならず、世界中で株価が下がっており、長期投資家として、買いのタイミングがやっと来たと感じています。
一方で、この下落が続く可能性や不安を感じている人も多いでしょう。
今回は、日経平均株価の下落要因と、長期投資家として心得るべきことについてお話します。

株価急落の要因は?

日経平均株価が急落し、10月2日からの3日間で約1500円も下落しました。

出典:Yahoo!ファイナンス

これはおよそ5%の大きな下落です。
これまでは日経平均は3万円を超えたところで安定していましたが、急速に3万円を割り込む可能性が高まっています。

この下落は日本だけでなく、アメリカのダウ平均株価も下げており、世界的にリスク回避の動きが出ているように感じられます。
特にこれといった原因は見当たりませんが、長期金利の上昇が影響していると言われています。
アメリカの10年国債利回りが4.8%に上昇しており、インフレを抑えるためにFRBが金利を引き上げる可能性があるとの観測が高まっています。

出典:CNBC

金利上昇は一般的に株式市場にとってマイナスとされ、株価の下落につながります。
特に高PER銘柄において、債券と比べて株式に魅力が無くなるからです。

また、金利上昇により設備投資や住宅投資の金利も上昇し、景気の悪化が懸念されます。

さらに、日米金利差の拡大により円安が進行しています。
ただし、これは日本企業にとってプラスの要因であるため、日経平均株価には追い風となると思われます。

金利上昇に関しては既に織り込まれている部分もあり、今さら大きく株価が下がる要因になるとは考えにくいです。

 

金利の上昇は確かに株価下落の要因になり得ますが、今回の急落の元凶とは言い切れないところです。

機関投資家の事情と心理

では何が原因なのかというと、投資家の心理が鍵だと私は考えています。

株価は投資家の売買活動によって決まるもので、その背後には投資家の心理が影響しています。
世界の株式市場において、大部分を占めるのは海外の機関投資家であり、日本市場においても売買代金の7割は彼らによって占められています。
したがって、彼らの気持ちを読むことは非常に重要です。

日経平均株価について言えば、今年の初めから非常に好調で、他の市場が下落している中でプラス20%弱の成績を収めています。

出典:Yahoo!ファイナンス

このような状況下で、毎年のパフォーマンスを評価される立場の期間投資家は、好調な日本株を売って利益確定し、最低限の今年のパフォーマンスを確保しようとします。

実際に今売られている日本株は、海外の機関投資家が好む、ファーストリテイリングや東京エレクトロンなどの大型株です。

これから年末にかけては機関投資家は買い戻さないと思うので、株価もこのままぐずつくのではないかと私は考えていますが、短期的な動きに関しては予想できないので実際はどうなるかは分かりません。

景気後退する?しない?

中期的または長期的な視点で考えると、実態経済が大きく影響してきます。

これは私がよく使う「相場循環図」というものです。
まず金利が下がって市場にお金が流れる【金融相場】となり、実体経済にもお金が入ってきて企業の業績が上がる【業績相場】が訪れ、その後インフレの抑制のために金利が上がり株価が下がる【逆金融相場】、実体経済に影響が及び【逆業績相場】になり、不景気になると金利が下がってまた【金融相場】が来るということを示しています。

この相場循環図において今がどの位置にあるかというと、逆金融相場と逆業績相場の間あたりです。

現在、金利は引き上げられているのに逆業績相場が訪れず、投資家は次にどのフェーズが来るのかを見極めるのが難しい状況です。
逆業績相場は訪れることなく、程よくインフレがおさまり、そのまま金融相場に入るのではないかという見方もあります。

強い個人消費と賃金の上昇

景気が悪化していない最大の要因は、アメリカの個人消費が強いことです。
その背景にあるのが賃金の上昇です。
コロナショックで多くの労働者が解雇されたものの、給付金などで逆に貯蓄が増え、コロナ後に雇うためには賃金を上げる必要があったためです。
賃金の上昇に合わせて物価も上がり、インフレを加速させました。

名目値ではあるものの、賃金が上がっているため、それが個人消費の強さにつながっています。

 

これを考えると、市場が息切れする時というのは、それはおそらく賃金が上がらなくなった時、つまり賃金を上げずに人を採用できる状況になったときです。
これにより、毎月のように賃金が上昇していた労働者にとっては、給料が上がらなくなることに気づき、支出を控え、市場の勢いが衰える可能性があります。

 

これはindeedの、アメリカの新規採用のポジションの増減を表したものです。

出典:indeed

2020年2月を100とした指標で、コロナで新規採用が減ったものの、今では148と、50%近く増えていて、”労働力インフレ”と言える状態です。
ただこれが弱まってくると、景気の減退も考えられます。

しかし、これまで移民を受け入れることによって充足させてきた労働力が、トランプ政権以降、移民の流入が停滞してきているので、労働力不足が続く可能性もあります。

好景気の継続と景気の後退、どちらの可能性も考えられます。

 

つまり、私たちとしてはどちらかに賭けるのではなく、両方の可能性を考えておくべきだと思います。

景気後退する場合

賃金の上昇が止まって景気が後退する場合、株価は下落することになるでしょう。
しかし、その後はFRBが金利を引き下げ、その結果、成長株やハイテク株など、いわゆるグロース株が上昇すると考えられます。
これはPER水準の上昇を意味します。

景気後退しない場合

景気後退しない場合、株価は停滞すると思われます。
これまで日本において上がってきたバリュー株(割安株)は、PERの上昇に伴って上がってきたものなので、その上昇には限界があります。
しかし、PERは上がらなくても、業績が上がる銘柄は業績が上がった分だけ株価も上がります。

結論

今回の株価の下落要因ははっきりしないものの、今後景気後退が訪れる場合にも訪れない場合にも対応できるのは、「長期的に成長する企業を買う」ことです。

半年~1年といった短期間においてはバリュー株に劣るかもしれませんが、数年以上の期間で考えると、業績が伸びる企業を買っておけば間違いないということです。

だからこそ私は長期投資をおすすめしているわけです。

今回のような株価が下落した時に、業績が伸びる企業が買えたら良いということになります。
もちろん、この後さらに下がる可能性もありますが、それは予想できるものではありません。
私たちに分かることは企業の良さと業績の見通しです。

今取るべき行動

1.良い企業なら間違っても売らない

投資というものは基本的に「安く買って高く売る」ものなので、今の下がったタイミングで売るのは絶対に避けるべきです。
さらに下がる不安もあるかと思いますが、業績が良ければ株価はちゃんとついてくるものです。

2.余力を残しながら買い下がる

せっかくの下落局面なので、余力を残しつつ買い下がっていくべきです。
今が一旦の底かもしれないので、買い始めるタイミングだと思います。
長期で成長する企業の例としては、半導体・医療・海外消費財などが挙げられますが、特に日本の半導体企業は世の中が「ソフトからハードへ」という流れになっている中で有力です。

3.余力がなくなったらより良いものに厳選する

余力がなくなったらあとは放っておくという考え方もありますが、より投資を上達させたいのであれば、持っている銘柄の中から、今一つなものを(損益に関わらず)売って、より良いものを買い、より厳選されたポートフォリオを作りましょう。

4.長期的に見守り、良いものを残す

あとは業績や経営を見守り、業績が落ちたり経営方針に疑問が生じた銘柄に関しては売却するなどして、良いものだけを残していきましょう。

5.やがて企業の成長とともに資産は育つ

この動きを繰り返すことで長期投資家として成長することができます。

 

ぜひこの下落局面を捉えて、デキる長期投資家としての第一歩としてください!


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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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