今回はワークマンについてです。
ワークマンの業績は好調に見えますが、株価は実はこの2、3年ぐらい右肩下がりとなり、ついにピークから半分以下になってしまいました。
コロナ禍でアウトドアブームも下火になり、暗雲が立ち込めていますが、実はそれ以上にワークマンの経営はかなり難しい局面に立たされているように感じられます。
ワークマンの経営を通じて、長期投資の本質についてお話ししたいと思います。
ブームから一転?
まず、業績についてです。
過去10数年間の業績について、特に2019年から売上と利益が大きく伸び始め、約5年前からは既に利益が倍増している状況です。
また、今期も増収増益の予想となっています。
しかし、株価を見ると、2020年のコロナショック前に一旦ピークを打ち、その後急落しました。
その後は一度1万円に戻りましたが、現在は約4300円で、1万円から半分以下になっています。
かなり話題になった銘柄で、保有している方々もどうすべきか迷っているかもしれません。
このような方々や、安いから購入しようと考えている方々に、ワークマンの現状を分かりやすく説明したいと思います。
ワークマン成功と陰り
さて、ワークマンがどのように成功してきたか考えてみたいと思います。
ワークマンは昔から存在する企業で、ベイシアグループの一部です。
ワークマンはもともと作業服や屋外労働者向けの商品を扱っており、言ってしまえば地味な存在でした。
そこに、ベイシアグループの創業家の親族である土屋さんが専務として参加し、改革を進めました。
その改革の中で、Excelを用いた経営を導入し、売上の数値を細かく管理しました。
この経営改革により、予想外の商品が売れていることが明らかになり、商品の一般向け展開が始まりました。
特に、滑りにくい靴などが好評で、妊婦さんやママ向けにも売れることが分かりました。
ワークマンは元々地道な経営を進めていましたが、Excelの数字から予測外の需要に気づくことができました。
さらに、ワークマンはスケールメリットを活かし、高品質で技術的に高度な商品を安く提供できました。
これにより、アウトドア商品市場に進出し、客層が広がりました。
一般向けに商品を提供することで、ワークマンのファッション業界への進出が進み、カジュアルウェアも提供するようになりました。
さらに、「#ワークマン女子」として女性向けのファッションにも進出しています。
最近の売上の伸びについては、主にカジュアルウェアの拡大が大きな要因です。
ただし、この快進撃にもかかわらず、最近ではアウトドアブームがやや鈍化している兆候が見られます。
月次の売上高、客数、客単価のグラフを見ると、特にこの半年間、客数が減少傾向にあり、客単価が上昇していても、売上高は客数の減少により減少していることが多いです。
ワークマンは既存店舗数を増やしているため、売上自体は増加していますが、既存店売上高が前年を下回る傾向が見られます。
最近の株価の下落はこの辺りに起因しています。
実際、今期の業績についても、増収増益が予想されていましたが、直近の第一四半期(2023年6月30日まで)の決算を見ると、減益になっていることが分かります。
原材料高の影響も確かにありますが、店舗数の増加にもかかわらず既存店舗が前年割れしているのが一因です。
ワークマンが抱える問題
足元の経営状況は、アウトドアブームの終焉、カジュアル衣料の難しさ、そして顧客離れという3つの大きな問題があります。
アウトドアブームの終焉
まず、アウトドアブームの終焉は、アウトドア関連の人気ブランドであるスノーピークが減益となっており、ブームの終焉と指摘されています。
しかし、ブームというものは波を繰り返すもので、その波に業績が影響されるのはある程度仕方ないことであり、本質的な問題ではないと言えます。
カジュアル衣料の難しさ
より大きな問題はカジュアル衣料の難しさです。
ワークマンはこれまで主に作業服を販売してきたため、作業服の市場は一度仕入れればいずれ売れる性質の商品が多く、値引き販売や在庫処理の必要がほぼありませんでした。
しかし、カジュアル衣料は毎年のようにトレンドが変わるため、需要予測が非常に難しいです。
需要を予測し、在庫を最小限に抑えることはアパレル業界全体にとって課題となっています。
ワークマンはカジュアル衣料に進出し、店舗数や売上も増加していますが、これは在庫が増える可能性があることを示唆しています。
ワークマンの棚卸資産は2020年頃から急激に増えていて、2023年3月期にはさらに大きく増えています。
売れ残りの商品が溜まってきているのではないかという見方ができるわけです。
作業服は需要の予測がしやすいため在庫のリスクが低いですが、カジュアル衣料の需要の変動が大きい中での在庫管理は難しい側面もあります。
入荷を少なくすると、在庫切れによって顧客を失望させる可能性もあります。
顧客離れ
店舗がカジュアル寄りになったことによって、今まで作業服を買っていた人たちが入りづらくなっているのではないかと考えられます。
カジュアル衣料という新たな市場で新規顧客を掴めないことはある程度仕方ないことではありますが、カジュアルの方に店舗を転換したことによって、元々の安定顧客が離れていっている可能性があるわけです。
【テレビに出たお店が潰れる理由】
テレビで取り上げられたことによって急激に新規のお客さんが入ると、既存のお客さんにとって居心地が悪くなり、足が向かなくなってしまいます。
話題に飛びつくミーハーなお客さんは定着せず、元々のお客さんも戻ってこなくて、結果的にお店が潰れてしまうということが多くあります。
ワークマンの状況を見ると、新規顧客である「アスレジャー」が伸びていて全体の売り上げも伸びているのですが、既存顧客である「ワーク」がわずかながらマイナスになっていて、既存顧客離れの傾向があるのではないかと見えるわけです。
長期経営で大切なこと
長期経営で大切なのは「既存顧客」です。
既存顧客をいかに定着させて、彼らの来店頻度や一人当たりの売上高を伸ばすことが長期の経営において王道となります。
長期経営と長期投資の考え方は常にリンクしていて、私たちも長期的な視野で経営を見ていかなければなりません。
これは、ワークマンのライバルでもあるモノタロウの、顧客の登録年度を1とした時の顧客一人当たりの売り上げの推移です。
モノタロウは作業用品の通販を手掛ける会社ですが、コロナ禍のバブル的な部分を除いて、一人当たりの購入金額が年々増えていることが示されています。
それほどモノタロウが使いやすくて商品がそろっているということでしょう。
毎年お客さんが増え、かつ一人ひとりの購入金額が増えていくことで、盤石に右肩上がりの業績を築くことができるわけです。
新規の顧客を獲得することは難しい一方、既存の顧客をいかに伸ばすかを考える方が、労力も少なく効果ものぞめるのです。
ワークマンは新規の顧客に軸足を持って行ったがために既存の顧客が離れかねない状況になっています。
ワークもカジュアルも定着させることが理想ではありますが、カジュアルの新規顧客を定着させることはかなり難しく、せめてワークだけでもきちんと維持していくということが最も現実的な戦略だと思います。
カジュアルを追い求めすぎてワークが疎かになると、最終的に何も残らないということになってしまうので、そうならないように今対策を打つことが、ワークマンに求められることでしょう。
まとめ
- 急拡大の「ツケ」が回ってきている段階
- 少なくとも数年内に在庫ロスが発生しそう
- 既存顧客離れが進んでいれば危険な状況
- 今は長期的に成長できるかの岐路にある
- 無理に投資する段階ではない
今、ワークマンの株を持っていて、ワークマンの成長を確信しているなら持ち続けて良いと思いますが、経営に疑問があるなら、一旦身を引いておいて、また良くなりそうだったら戻ってくるという戦略がベターではないかと思います。
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