トヨタ自動車(7203)は日本を代表する企業です。
投資家からの注目度も高く、時価総額は43兆円と日本トップ。2位のソニーは15兆円ですから、その巨大さがわかります。24年3月期は過去最高の売上/利益となる予想であり、成長が続いていると言って良いでしょう。
しかし、「なんとなくトヨタはヤバい。テスラに負けている」というイメージを持っている方もいるようです。実際はどうなんでしょうか?ここから更に成長するには何が必要か?トヨタの強さは何なのか?を考えていきます。
世界最大の販売台数を誇る
「トヨタは世界的な企業だけど、実はそんなにすごくないんじゃない?」と思われるかもしれませんが、トヨタの車の販売台数は世界トップです。テスラの9倍近くの車を販売しています。
出典:各社IR/ニュースより作成
そのトヨタが最も車を販売している地域は北米です。ついで日本、アジアと続き世界中で車を販売していることがわかります。
出典:決算説明資料より作成
トヨタはアメリカでその強さを発揮していると言えます。アメリカ人の中には、トヨタはアメリカの会社である、と勘違いしている人もいるようです。それだけ馴染んでいるとも言えますね。
当然、国内においてもトヨタが販売台数首位です。特に店舗数はトヨタが5,000超えであるのに対し、ホンダ2,360、日産1,449、SUZUKI930と圧倒していることがわかります。当然販売店が多い方がよく車が売れますから、日本においては盤石の地位と言えるでしょう。
では、なぜトヨタはここまで大きく成長できたのでしょうか?トヨタの特徴を解説します。
トヨタの強みはトヨタ生産方式
トヨタが成長できた大きな理由は「トヨタ生産方式」という考え方です。
その主体となっているのがジャストインタイムと自働化。
ジャストインタイムとは「必要なものを必要な時に必要な分だけ造る」というものです。注文から生産までの時間をできるかぎり短縮し、更に在庫も最小限に抑える、という考え方です。
自働化は、「生産ラインが自ら働く仕組みであり、特に異常チェックを厳しく行う」というものです。つまり生産ライン上の作業時間や工程を定め、その決まりから外れ異常が発生した場合は、機械が自動でラインを止めるようになっています。そして、異常が発生した箇所を整備士やエンジニアが調整を行うことで、不良品発生率の低下を図っています。結果的に修理コストなどを低下させ、原価率を下げることに繋がるのです。
これらの考え方によって在庫を少なく、大量生産ができることから、コストを削減し単価を落とすことができます。
結果的にトヨタの営業利益率は、これだけの大企業ながら営業利益率7~9%で推移しています。ホンダや日産は5%前後で推移していますから、効率的な生産・販売体制を確立してることがわかります。
「その戦略は有名だし、ほかの会社も真似してるんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、実はそうではありません。というのも、トヨタが初めてアメリカで工場を建てた際は、この生産方式が全く馴染まなかったようです。その理由は、アメリカ人は「ラインを止めたらクビ」と教育されているため。同じ車の製造でも、会社や国の文化の違いから、海外競合他社が真似できそうで真似できないのがトヨタ生産方式なのです。
そしてトヨタの世界トップの地位を確かなものにしたのはプリウスだと言われています。プリウスは1997年に誕生した、世界初の量産型ハイブリッド車です。当時としては圧倒的な低燃費を実現したこと、更にそれが手が届く範囲の値段で売り出されたことでヒットしました。
競合他社はその技術に圧倒され、同様のものを作っても単価が高くなるというジレンマを抱えていたと言います。トヨタ生産方式で生まれたハイブリッド車によって、現在の自動車業界トップの座を取ったということです。
しかし、CASEという新たなトレンドが、トヨタを脅かしていると言われます。
それはどんなものなのでしょうか?
電気自動車の波に乗れていない
あなたも感じるかもしれませんが、自動車業界で大きな変革が起きています。
それがCASEです。それはConnected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字から取った言葉です。
特に今回注目したいのは、Electric(電動化)です。電動化といえばアメリカのテスラや中国のBYDなどを思い浮かべるでしょう。
確かに、トヨタは電気自動車(EV)に強いとは言えず、販売数に占めるEV車の割合は1%以下であり、ガソリン車とハイブリッド車がその大半を占めています。
出典:決算説明資料より作成
トヨタの現状は、この電動化の流れに遅れていると言って良いでしょう。
しかも、主戦場であるアメリカではテスラやその他の競合他社も存在しています。
トヨタの今後を考えるために、アメリカのEV市場の動向を確認しましょう。
アメリカの電気自動車の現状を考える
まず、政治的には2032年までに2026年比で排ガスの56%減を要求しています。バイデン政権は、自動車メーカーに過去最も厳しい排出基準を課すことで、排ガス削減と電気自動車の普及を加速させたい意向です。これは、トヨタにとって向かい風と言えるでしょう。
これを受けて競合他社もEVへの投資を強化しています。
テスラ
新興企業であるため、開発→実装までのスピード感がある。EV専門で車を作り、広告宣伝費を行わないなど工夫しながら利益を上げ、EVの世界トップシェアである。今期は70億ドル(約1兆円)の投資を行う予定。
GM
35年までに新車販売のすべてをEVや燃料電池車(FCV)などゼロエミッション車にする計画を進めている。中期的には25年までに30車種以上のEVを発売し、EVと自動運転車に350億ドル(約4兆円)投資する計画。
フォード
30年までに世界販売の5割をEVにする計画。中期的には25年までに300億ドル(約3兆6000億円)を電動化へ投資すると発表しており、さらに投資額の増額を視野に入れているとされる。
このように、国はEV化を促進し、自動車メーカー各社もEV化を進める流れになっています。
しかし、アメリカの販売台数に占めるEVのシェアは6.7%と決して高い訳ではありません。
出典:【2023年最新】EVの普及率はどのくらい?日本と世界のEV事情を解説
また、消費者目線ではEVの課題を感じていることから、トヨタに強みがあるハイブリッド車に注目が集まっている現状もあります。
HV北米においてハイブリッド車の需要が増えている。完全EV社の人気低迷の理由として、初期コストの高さ、航続距離への懸念、充電時間の長さ、充電ステーションの不足などが挙げられている。
〜中略〜
歴史的に見ると、米国ではHVが全体の販売に占める割合は10%未満で推移、モデル別ではトヨタのプリウスが長年にわたり人気を維持してきた。トヨタは完全EVへの投資をゆっくりと拡大する中で、HVが同社の長期的なEV化計画において重要な役割を担うとの見解を一貫して示してきた。
ロイターより引用
このようにアメリカの現状は、「国と競合他社はEV化に向いている。しかし消費者側はEVが普及している訳ではなく、EV特有の課題も感じている」このような現状だと考えます。
トヨタは大丈夫?
それに対し、トヨタは全方位戦略を打ち出しています。それは「EVもやるけど、ハイブリッドもプラグインも強化します」というものです。ハイブリッドにはすでに強みがありますから、EVに対する力感が気になります。
トヨタはBEVファクトリーというプランを打ち出し、26年までに2.5兆円を投資します。この金額は23年の営業利益額とほぼ同等の巨大投資です。更に10月19日には、トヨタがテスラと同じ規格のEV充電を採用する、というニュースも入ってきました。やはり、EVの波についていかなくてはいけない、という使命感を感じます。
まとめると、アメリカ市場全体ではEVへの移行フェーズはあるものの、安全性能の懸念や充電設備の問題もあり、変化のスピードは決して早くない。
トヨタとしては全方位戦略でEVを拡充しながらも、市場ではハイブリッドが見直される展開が散見されるため、同社にとってやや良い市場動向に傾いてきている、
このような現状であると考えます。
従って、トヨタがアメリカで成功するためには
- EVの流れについていけるように投資を継続する
- EVの課題に注目が集まり、ハイブリッドの価値が見直される
このようなシナリオが必要だと考えます。トヨタはシナリオ1を継続しながらも、実現可能性がやや高くなってきているのはシナリオ2の方だと感じます。
なぜならば、車においてはガラケー→スマホのような大変革は起きづらいためです。
車は製造工程が多岐に渡り、商品自体も巨大です。更に充電設備など周辺機器を整える必要があります。従って、EV化が普及するとしても、速度は速くないと考えます。EVが普及していく中で、代替品としてのハイブリッドの利便性が見直されるフェーズにあります。
トヨタは確かにEVに遅れをとっていますが、そこまで悲観する必要はないと考えています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回はトヨタの投資判断やその他地域の動向について考えていきます。
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執筆者
佐々木 悠(ささき はるか)
つばめ投資顧問 アナリスト 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。
協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。
銀行勤務時は投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。
2022年につばめ投資顧問へ入社。
プレゼント①『株式市場の敗者になる前に読む本』
プレゼント②『企業分析による長期投資マスター講座』第一章
プレゼント③『YouTubeプレゼン資料』
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EVの最終形態をもっとも早くから認識しているのがトヨタです。
それに向けて研究開発を進めていますが技術的社会環境的にまだ解答にたどり着けておらずそれが実現するまでには長い時間を要します。
その結果が全方位戦略です。効率が悪くても最悪の事態を避けることを目的とし、無駄を抱えていても十分存続可能な高い収益性を抱えていればこそ可能な力業です。
その間に少しでもEVの良さを取り入れた製品をと開発した結果がHVであり、最終形態へ向けての試作品がFCVです。
HVに関しては長期に渡ってメインストリームの一角を占めるでしょう。現在ガソリン車とEVの両方でトップレベルの技術を持つトヨタとまともに勝負できる企業が存在しませんがトヨタのHVは高価格高付加価値路線のため低価格中付加価値路線のメーカーが登場すればいつまでもトヨタの独占は続かないでしょう。
▶プリウス4台目の新型車両購入し4台目初期型以外の今年5台目のプリウスより4台目の初期の方が格好いいね。
▶8年目のの98,000キロ乗っても故障が無い、好きな野菜百姓?しながら地元の街から実家25キロ離れた畑に休み毎出掛ける。
▶空気は良くて手作りハウスを自分で考えブドウ園を作りたいと68歳でバイトしながら畑いじりしてます。
▶プリウス燃費28,4キロ電気自動車にはとても乗れないですよ。バッテリー交換4年や5年で交換も有りうる車には乗れない。