ブラックマンデーの再来?暴落が起きたらどうする?

最近の株式市場の様子を見ていると、多くの専門家がブラックマンデーと現在の状況が似ているのではないかと指摘されています。
ブラックマンデーは1987年の出来事ですが、本当に似ているのでしょうか?
そして、我々は今何に備えるべきかを考えてみたいと思います。

今の状況はブラックマンデーと類似?

現在の市場は、ブラックマンデーに似ている可能性が指摘されています。

  1. 金利上昇下での株価上昇
    一般的に、金利が上昇すると株価が下落しやすいと言われています。
    これは、金利上昇により債券の魅力が増すためです。
    例えば、アメリカの10年国債の利回りが5%である場合、株式の配当利回りが5%に満たないことが多いため、債券の方が魅力的に見えることになります。
    しかし、現在は金利が上がっているにもかかわらず株価は下がっていません。
    長く続いている金融緩和で資金が溢れていて、ある種バブル的な状況になっているのではないかという見方もあります。
  2. インフレの進行
    政策当局が金利を上げてインフレを抑えようとしているため、これも株価に悪影響を及ぼす可能性があります。
  3. 中東不安
    さらに、中東の不安定な情勢も、かつてのオイルショックのように世界経済に影響を与える可能性があると言われています。

これらの要因から、市場がブラックマンデーのように暴落するのではないかと懸念されています。

 

ブラックマンデーはなぜ起きたのでしょうか。

ブラックマンデーは、前夜まで株価上昇が続いていたことがまずあります。
短期的に見ると、上がった株価には下げ圧力が加わりやすくなります。
信用取引を行っていた人たちが同時に利益確定をしようとすると、売り圧力が高まるからです。

出典:投資の森

これは当時のアメリカのダウ平均株価の推移です。
1985年のプラザ合意で米国ドル安が容認され、アメリカでインフレが進みました。
そのインフレを抑えるために利上げが行われていたのですが、プラザ合意からブラックマンデー直前までの約2年間で株価は2倍以上となっていました。
株価が上がっていた分、急落もしやすくなり、ブラックマンデー1日で22%も下落しました。これは過去最大の下落です。

また、それまでは無かったコンピューター取引が増えてきていて、パニックを引き起こす要因となった可能性も考えられます。

さらに、国際関係で経済的な緊張も高まっていた時期で、市場が過敏に反応しやすかったことも要因として挙げられます。

これらの要因からパニック売りが起こってしまい、それがブラックマンデーとなりました。

 

例えばリーマンショックの時には、リーマン・ブラザーズが破綻するなど実体経済に起因する、あるいは、実体経済に影響を与えるものでしたが、ブラックマンデーによって景気後退が起こったということはなく、あくまで株価のみが混乱によって下がってしまったというものでした。

今の状況も、実体経済に関わらず株価だけが下がってしまう事態を想定しているものと思われます。

金利の上昇が株価に与える影響

出典:Investing.com

現在の市場でもポイントとなるのは金利であり、アメリカの国債利回りは2023年に入ってから上昇を続け、直近では5%を一時超えるほどとなりました。
10月に入ってから株価が下落しているのもこの金利の上昇が背景にあるものと思われます。

金利の上昇が株価に与える影響としては以下のようなものがあります。

債券への資金流出

債券の方が株式に比べて魅力的になってしまい、株式を売って債券を買う動きとなり、株価が下落してしまいます。

レバレッジ投資の巻き戻し

レバレッジ投資、つまり借金をして投資を行っていた人たちにとって、金利が上がると借金の金利が膨れ上がってしまうので、そうなる前に取引を解消(=株式を売る)しようとし、株価の下げ圧力となります。

割引率の上昇

金利が上がることによって、資金調達コストが上がり、「あるべきPER」が引き下がります。それに合わせて株価引き下がることになります。

事業・不動産投資の縮小

借入に対する利息が上がってしまうので、投資が縮小し、経済の循環が鈍ってしまいます。

景況感の悪化

借金の利息が増えることによって利益が減り、景気の悪化につながります。

ハワード・マークス氏の警鐘

オークツリー・キャピタルというファンドの創設者であり、「投資で一番大切な20の教え」の著者であるハワード・マークス氏が、大きな変化についてのさらなる考察の中で、今の株価や金利に対して警鐘を鳴らしています。

出典:TRADING ECONOMICS

1980年頃から金利は下がり続けていて、多くの人にとって経験したことのない金利の上昇局面が訪れ、投資環境が大きく変わる可能性があることが指摘されています。

ハワード氏は金利上昇に伴い、債券への投資を勧めていますが、オークツリー・キャピタルは債券のファンドなので、これは営業トークであるとも考えられます。

しかし、金利が株価に与える影響は大きいということは確かです。

今後、何らかの要因で金利が急上昇するようなことになれば、市場にパニックが起こる可能性もあります。

暴落は怖くない?

確かに暴落が起こる可能性はあります。
しかし、私はそれほど悲観的になる必要はないと考えています。
金利が上昇した場合、ハワード氏のような専門家は、株式有利の市場から債券有利に変わると言っていますが、私たちが行っている投資は、株式と債券の競争を意識しているわけではありません。
株式の性質は企業の成長によって株価が伸びるということです。
したがって、金利が高いか低いか、債券との比較に関係なく、企業の業績が成長している限り株価は上昇するという考え方で投資します。

私たちのような投資家は、金利の上昇によって株価下落が起こった場合には、借金の少ない優良企業を買えば良いのではないかと考えています。
金利が上昇する局面においては、借金が多いと利払いが重しになってしまいます。
昔はそれ自体が経済の停滞につながるものでしたが、今のITなどの成長企業はそこまで借金を抱えていません。
外部環境に関係なく、社会の進展に伴って成長していくような企業に目を向けていれば金利の上昇はそれほど気にすることはないと考えています。

債券のリスク

株式には確かにリスクがありますが、債券にリスクが無いというわけでもありません。
債券の大きなリスクとしてインフレリスクがあります。
仮に5%のリターンがあったとしても、それ以上に物価が上がってしまうと実質リターンはマイナスになってしまいます。

一方株式は、変動はあるものの、インフレが起きた場合はコストを価格に転嫁できるので、インフレ並みに株式の価値が増えることになります。

債券に投資するということはある意味インフレリスクを無視しているということであり、長期的に考えるなら債券より株式の方が圧倒的にリターンが多いと私は考えます。

長期投資の心構え

素晴らしい企業は右肩上がりで成長し続けます。
つまり、見つけた時が一番安いということです。

一方で暴落が起こることもあります。
暴落時に買えればそれはそれで良いことですが、暴落時であってもその時の株価はさらに以前の株価とさほど変わらなかったりします。

見つけた時に買って、もし暴落があった時にはその時にも買えば、単純に2倍買うことができます。

大事なことは、タイミングを待つことではなく、良い企業を見つけ出して、すぐにでもまず買うことです。

そして暴落があればさらに買うということで、今後金利の上昇などによって暴落が起きるとしたら、その時にまた買えるように今のうちに良い企業に目を付けておきましょう。

それが、最善の「暴落への備え」になると考えます。


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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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