短期投資と長期投資。儲かるのはどっち?

今回は、投資において短期投資と長期投資、どちらが儲かるかというお話です。

投資を始めようと考えている方にとっては重要なテーマだと思います。
絶対的な答えは無く、最終的にはご自身で決めていただくことになりますが、どちらかを選ぶためのヒントになればと思います。

短期投資と長期投資の違い

短期投資と長期投資、どちらが儲かるでしょうか。

実は手っ取り早く儲けたいなら短期が良いと言えます。
例えば、1年で成果を出したいと考えるならば、長期投資は適していません。
ただし、物事には二面性があり、短期投資にも難しい点はあります。

長期投資とは具体的に何年のことかという質問をよくされますが、私は「最低でも5年」としています。
これも明確な基準があるわけではないのですが、少なくとも5年くらいしないと長期投資の成果は分からないということです。

実は、短期投資と長期投資の違いは、「期間」の違いではなく、「見ているもの」の違いなのです。
この見ているものの違いによって結果的に期間に違いが出てくるということです。

見るものの違い

短期投資は何を見るかというと、「株価」です。
株価がどう動いてきて、これからどう動くのかを考えます。

一方で長期投資で見るものは「会社」です。
資本主義の原則に基づいた考え方で、会社が利益を生んでいるからこそその株式に価値があるという考えのもと投資するのが長期投資です。

それぞれが見ているものの背景にあるものは何でしょうか。

株価を動かすものは、端的に言うと人間心理です。
具体的には、株を売りたい人がいくらで売りたいかと、買いたい人がいくらで買いたいかという気持ちが合致すると、その時点で株価が形成されます。
ただし、これは全ての人が同意しているわけではなく、売りたい人や買いたい人の状況や必要性によって株価が決まってきます。

よって、取引する人たちの気持ちが読めないと目先の株価の動きを読むことはできません。
その人間心理を読むためには、日々のニュースをチェックしたり、それによって他の投資家がどう動くかを考えなければなりません。
また、現在ではAIの動きも考えなければなりません。

一方で、長期投資は企業価値がどれくらいかを考えます。
企業価値とは、企業が将来にわたってどれだけの利益を出していくのかということです。
その企業がこれからどれくらいの利益をあげて、どれくらいの配当を将来もたらしてくれるかということを考えます。
そのためには、企業の業績、事業内容、商品、競合他者などを総合的に見ながら将来の利益を予測する必要があります。

 

短期投資の「株価を見る」というのは分かりやすいと思いますが、長期投資の「価値を見る」ということについては少し分かりにくいかもしれません。

これを説明する言葉で、「短期的には美人投票、長期的には重量計」というものがあります。

美人投票というのはケインズが使った言葉で、美人投票においては、その人が美人かどうかということよりも、人々が誰に投票するかということを考えなければならないということです。

しかし、この”美人かどうか”という部分がだんだん数字に表れてくることになります。
株式で言うと、PERなどのことです。
そして、企業の利益が増えると、PER等の計算によって株価も上がっていき、株価と業績が似通ってくることになります。
そういう意味で、長期的には重さがそのまま数字に表れる「重量計」であるということになります。

これは私がよく使用する、株価の説明力と時間のグラフです。
20ヶ月くらいまでは、株価を決定づける要因として、金利が少し大きくなっているものの、大部分は「不明」となっています。
しかし、時間が経過するとともに「企業収益」つまり「業績」による部分が大きくなり、10年経つ頃には株価の約60%は業績によって決まるということになります。

これくらいの長い期間で考えるなら、業績を見ておけばよい言えます。

短期 vs 長期

労力面

短期投資は一見すると簡単に見えるかもしれませんが、勝ち続けようとするならそう簡単ではありません。勝ち続けるためには様々な要因を考慮し、戦略をアップデートし続ける必要があります。
世界の情勢や株価の動きに対する予測や企業ごとの投資判断、資金の使い方など、常に意識を傾けて動かなければなりません。
さらに今では人間だけでなく、システムトレードやAIも参入し、ますます複雑化しています。

ラッキーで勝つこともありますが、確度高く勝ち続けることは決して簡単ではなく、大変な作業をずっと続けていかなければなりません。

もちろん長期投資も簡単ではなく、企業分析や経営学の勉強などを行う必要がありますが、一度投資する企業を決めたら、あとは待つだけということになります。
長い期間にならないと結果は出ないですし、その間の株価変動を見ても無意味ということになります。

また、本当に強い企業であるなら、その強さはそれほど変化するものではありません。
むしろ、強さを増していく傾向があります。

本当に良い企業を見つけてしまえば放っておくだけということになりますし、放っている間にも利益をもたらしてくれます。

短期投資だと常に株価と闘っていく必要があるので、いつまでも投資から離れられなくなってしまいます。

リスク面

短期投資がリスクが高いと一概に言えることはなく、例えば分散投資という方法もあります。
しかし、短期投資では常に株価を見ておく必要があり、分散投資すればするほど見るものが増えてしまうことになってしまいます。
そのため、短期投資家は少数の銘柄で勝負せざるを得ず、もちろん勝ち続けられれば大きく利益をあげることができますが、負けると大きく資産を減らすことになってしまいます。

この、分散投資の難しさが短期投資のリスクと言えるでしょう。

一方で長期投資は分散しやすいとされます。
複数の銘柄に投資することで、個々の企業で良し悪しがあったとしても、全体のポートフォリオが安定しやすくなります。

複利

短期投資においては、短い期間で大きく資産を増やすことも可能です。
少ない資金をすぐに増やしたいとか、ゼロになるリスクを負っても短期で結果が欲しいという方はチャレンジしても良いと思います。
ただし、一度成功してもその次に勝てるかは不確かであり、勝ち続けるには相当な努力が必要です。
多くの場合は勝ったり負けたりを繰り返し、厳しくなって投資を辞めてしまうケースも非常に多いです。
辞めてしまうと当然、複利の効果は享受できません。

一方で長期投資は福利の効果が大きく、配当を再投資する複利効果もありますし、企業が利益を投資にまわしてさらに利益を増やすという複利効果もあります。
それによって、時間の経過とともに右肩上がりに資産が増えていくというのが長期投資の特徴です。

まとめ

  • どちらが儲かるか」という観点では、目先は運が良ければ短期投資の方が儲かるし、努力を続けセンスを磨けば大きな利益をあげられる可能性はある。
  • しかし、成功を「続ける」には、不断の努力が必要。相場は常に変化するため、多くの成功した短期投資家は血尿が出るほどの努力を続けている。
  • 長期投資は、最初の儲けはたかが知れている。リスクを避けて分散投資するとなおさら。
  • しかし、優秀な企業は時間の経過の中で利益を創出し、価値を増やす。結果として、時間が経つほど複利効果で時間が経つほど増えていく。
  • 重要なのはまさに「時間」の概念。長期投資では「今すぐ」は儲けられないが、やがて儲かるもの。

私が長期投資を選ぶ理由

長期投資をするということは、企業を分析すること、ひいては社会を分析することになります。
その過程でどんどん知識が深まっていくというのが長期投資の副産物としてあります。
知識が深まると企業分析の精度も上がり、良い企業を見つけやすくなり、投資の成績も上がる、つまり、『知の複利効果』があると考えています。

こうやって、知ることを楽しみながら資産を増やしていければよいのではないかというのが私からの提案です。


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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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